木走日記

場末の時事評論

「昭恵氏も自ら国会で説明せよ」(朝日社説ほか)〜「森友学園」問題で現出した異論なき異様なメディアスクラム状態

 さて加熱する一方の「森友学園」問題であります。

 昭恵氏のFBの文面がご本人のそれではないのではないかとの指摘もあり、いろいろ問題が拡散しておるわけですが、ここは本件のそもそもの論点に立ち戻りますと、論点はズバリふたつに絞らることが可能でしょう。

・国有地売却に歪みがなかったかどうか?
・私学行政に歪みがなかったかどうか?

 つまりこの問題の本質は、財務省の8億円の産廃処理費用の妥当性と大阪府の学園認可の妥当性の2点でつきます。

 そして、寄付金の集め方で総理の名前を語ったこと、3つの契約書が存在するなどの異様な状況は、「森友学園」側も認めるとおり、十分に詐欺罪で立件できる可能性を含んでいる事案なわけではあります。

 ここへ来て、「昭恵氏を国会に招致せよ」との論説が強まっておるわけですが、これは昭恵氏(あるいは安倍夫妻)による「権力の私物化」でないのか?との批判です、そのような論説ぼ代表的なものを3つほど、押さえておきます。

 一つ目は私が永年愛読している個人ブログ「kojitakenの日記」さんで知りましたのですが、舩田クラーセンさやか氏の見立てであります、ズバリ「森友学園の疑惑はネポティズム縁故主義)の典型」であると。

森友学園の疑惑はネポティズム縁故主義)の典型」(舩田クラーセンさやか氏のツイートまとめ)

少し古いが、3月20日に発信された下記のツイート及びそこからリンクされている舩田クラーセンさやか氏のツイートのまとめが、森友学園事件(アッキード事件)の本質を突いていると思う。

https://twitter.com/shigeto2006/status/843752030216708097

osaka shigeto
@shigeto2006
森友学園の疑惑はネポティズム縁故主義)の典型でもあるわけで、こんなのを野放しにしていたら経済にも悪影響を及ぼす。経済政策を理由に安倍政権を支持する人こそ、批判すべきだと思うけど。 / “森友学園問題から見えてくる「トップからボ…”
2:12 - 2017年3月20日

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20170326

 なるほど、舩田クラーセンさやか氏は、「こんなネポティズム縁故主義)を野放しにしていたら経済にも悪影響を及ぼす。経済政策を理由に安倍政権を支持する人こそ、批判すべき」と喝破しております。

 さて2つめの論説は小林よしのり氏であります、「昭恵氏による国家システムの私物化を糾弾せよ!」との主張であります。

小林よしのり
2017年03月26日 12:45
国家システムの私物化を糾弾せよ!
http://blogos.com/article/215581/

 小林氏は、「国家システムの私物化」は民主主義を脅かす、「この問題を軽く見てはいけない」と警鐘を鳴らしています。

 失礼して論説の結びを抜粋、ご紹介。

劣化した愛国コネクションのために、「国家システムの私物化」が不問に伏されれば、民主主義の公平性に大きな疑問符がつく。
だからこそ安倍昭恵と迫田元理財局長ら官僚の証人喚問が必要なのである。

「国家システムの私物化」は民主主義を脅かす。

この問題を軽く見てはいけない。

 興味深いのは小林氏がこれは「韓国大統領の権力を、占い師が利用していたスキャンダル」とまったく同質だと指摘している点であります。

「国家システムの私物化」は韓国大統領の権力を、占い師が利用していたスキャンダルと一緒である。
韓国で朴槿恵大統領を弾劾裁判で追放したのと同じように、民主主義の健全化のためには、安倍首相と昭恵夫人共謀罪を問わねばならない。

 で最後3つめ論説ですが、韓国メディアの本件に対する見立てとして朝鮮日報の以下のコラムが興味深いのです。

【萬物相】危機に陥った「裕福な右翼」安倍首相
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員
朝鮮日報朝鮮日報日本語版
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/03/27/2017032701124.html

 このコラムでは「『権力と特別待遇』という政治腐敗の公式がピッタリと当てはまった」と表現しています、該当箇所をご紹介。

 権力と意気投合した理事長は、国有地を購入して小学校校舎を建てた。安倍首相夫人の昭恵氏を名誉校長に掲げた。校名も「安倍晋三記念小学校」にしようとした。「爆弾」は国有地購入価格が世間に知れたことで爆発した。購入価格は鑑定価格の14%に過ぎなかった。「権力と特別待遇」という政治腐敗の公式がピッタリと当てはまったのだ。日本のメディアがハチのように群がった。そのためか。韓国の「崔順実(チェ・スンシル)国政介入事件」や「大統領弾劾」に関するあおり立てるような報道が日本で急減したという。

 このコラムでは、このような腐敗は先進国日本にもあるんだ、韓国だけではないんだと、溜飲を下げて結ばれています。

 日本には「空気を読む」という言葉がある。一般的には「顔色をうかがう」、権力の周辺では「状況を判断してうまくこびへつらう」ことを意味する。国有地売却に首相が直接関与したかどうかは、まだ明らかになっていない。もし関与していなかったとしても、学校をめぐり首相とその夫人の名前が挙がっただけで、日本の社会では公務員たちが状況を判断して特別待遇をしていた可能性があるということだ。資格のない人間が権力をかさに着て「虎の威を借る狐」のようにカネを手にするのは、先進国でも大して変わらないようだ。

 ・・・

 ご紹介した3つの論説をまとめますとこんな感じ。

・「ネポティズム縁故主義)の典型」(舩田クラーセンさやか氏)
・「国家システムの私物化」(小林よしのり氏)
・「裕福な右翼」による「権力と特別待遇」(朝鮮日報コラム)

 ネポティズム縁故主義)、私物化、特別待遇とキーワードは違いますがいわんとすることは同じです。

 ようは、本件のコア部分、国有地売却に歪みがなかったかどうか?、私学行政に歪みがなかったかどうか?この主要点において、昭恵氏側による不平等な「エコヒイキ」が実現した、との判断であります。

 この「エコヒイキ」は担当官僚による「忖度(そんたく)」を伴いつつ実現したのだろうとの主張であります。 

 さて、日本のマスメディアにおいて、機は熟します。

 この週末、朝日・読売・毎日・産経・日経の主要5紙は本件に関する社説をそれぞれ掲げます。

朝日新聞社説】
森友学園問題 説得力ない首相の説明
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_gnavi
読売新聞社説】
森友問題審議 首相夫人の立場を整理したい
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170324-OYT1T50141.html
毎日新聞社説】
夫人付の職員 不自然なファクス送信
http://mainichi.jp/articles/20170325/ddm/005/070/145000c
産経新聞社説】
籠池氏喚問 国有地売却の疑問とけぬ
http://www.sankei.com/column/news/170324/clm1703240002-n1.html
日経新聞社説】
真相解明にはさらなる国会招致がいる
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO14438660U7A320C1EA1000/

 これが気持ち悪いほど同じベクトルの主張をピンポイントで主張しています。

 それは「国会に安倍昭恵を招致せよ」との一点であります。

 各社説の結びの文章だけ抜粋して並べれば、その見事な「メディアスクラム」がご覧いただけます。

朝日新聞社説】
 籠池氏は、虚偽を述べれば偽証罪に問われる証人喚問で証言した。昭恵氏も自ら国会で説明すべきである。

読売新聞社説】
 昭恵氏もフェイスブックで、昭恵氏の同行者が席を外したとする部分を含め、籠池氏の主張を否定した。野党は、昭恵氏らの証人喚問を要求した。関係者は、具体的な説明を続けねばなるまい。

毎日新聞社説】
 昭恵氏は籠池氏の証言を受けて、100万円の寄付を否定するなどのコメントをフェイスブックに載せた。だが、内容は疑問にこたえるものではなかった。国会や記者会見での説明を改めて求めたい。

産経新聞社説】
 100万円の寄付は、籠池氏が冒頭発言で強調した点でもある。主張が百八十度対立している以上、予算委員会として夫人に直接、事実関係を確認する作業も必要となろう。

日経新聞社説】
 政府・与党には昭恵夫人の国会招致について慎重な意見が根強い。しかし様々な疑惑の解明に後ろ向きだと思われれば、政治不信を増大させる結果につながることをよく自覚すべきだ。

 どうでしょう、朝日新聞から産経新聞まで、全マスコミが社説にて「昭恵夫人の国会招致」をピンポイントで主張しています。

 このように、マスメディアが勝手に国民世論を「忖度」し、勝手に国民世論を「代弁」し、一糸乱れず論説を勝手に統一して国民に主張することを「メディアスクラム」といいます。
 ・・・

 ほぼ全てのメディアが、このようなことを許せば民主主義の危機であるとばかり、首相婦人に「権力の私物化」などとレッテル貼りをし、全マスコミが一糸乱れず「昭恵氏を国会招致せよ」と主張しています。
 このような異論なき異様なメディアスクラム状態こそが、はたして「健全な民主主義」とは対極にあるおぞましい状況をかもしだしているかも知れぬ、という疑念は彼らにはないようです。
 マスメディアによるこの異様なメディアスクラム状態をしっかり覚えておきたいと思います。
 そして後日本件ですべてがはっきりしたときに、読者のみなさんともに、この国のマスメディアのこの浮ついた状況について、しっかり批判的に分析・検証してまいりたいと考えます。


(木走まさみず)