時代にとり残された少年法〜「少年法」と「実名・写真」報道に関する考察
今週発売の週刊新潮が「川崎中1殺人」の「18歳主犯」の少年の実名と顔写真を掲載しています。
救いがない「川崎中1殺人」の全景 鑑別所でも更生しなかった「18歳主犯」の身上報告
「少年法」と「実名・写真」報道に関する考察
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/
うむ、新潮は以前より凶悪な少年犯罪に関して実名報道を繰り返しています。
「週刊新潮」酒井逸史編集長の見解。
「今回の事件の残虐性と社会に与えた影響の大きさ、そして主犯格とされる18歳の少年の経歴などを総合的に勘案し、実名と顔写真を報道しました」
対して、人権派で知られる元日弁連会長の宇都宮健児弁護士はこう述べています。
「少年法の精神は、社会復帰することを前提に考えている。その際、実名や顔写真が出回っていた場合、更生の障害になる可能性が高いわけです。だから、報道は慎重に扱ってほしいということです」
確かに少年法の第61条には、「本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない」と明文化されています。
(記事等の掲載の禁止)
第61条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であること推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
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さて現行の少年法が施行されたのは、67年前、昭和23年7月15日であります。
当時は戦後まだ3年、少年犯罪うんぬんを問題視するどころか日本国自体が空襲で焼け野原となった混乱の中、外地からの帰還者を受け入れつつ、都市にはたくさんの戦災孤児が飢えに耐えながら物乞いをするというような、敗戦の絶望と貧困とに喘いでいるさなかでありました。
統計で見ても凶悪な少年犯罪は現在より多数発生していました。
当時のこの国の方針は一日も早く産業復興し秩序を取り戻し国民皆が生きていくのに必要な衣食住が満たされることでありました。
敗戦の混乱の中、当時の少年法は「社会復帰することを前提」にするのは、歴史的に見ても社会の要請であったのは自明でありました。
当時、犯罪を犯す少年たちの更生は、その発生数の多さと敗戦という大人の事情の犠牲者という同情すべき側面から、社会的要請だったのだと思われます。
あれから67年です。
日本はいろいろな意味で豊かになりました。
そして凶悪な少年犯罪に対する国民の意識も大きく変わってきたのだと感じます。
少年の実名報道ですが、それが正しいことか、当ブログは結論は出せていません。
しかしながら、少年法がいかに禁じようが、ネットがこれほど普及すれば、本人の顔写真も本名も、真贋(しんがん)ともかく、あっという間に広まってしまっている事実があります。
今回、新潮報道とネットに流布している情報はほぼ一致しています。
ネット情報の信ぴょう性は絶えず疑っておくべきですが、重要なのは、法律でいかに縛ろうとも情報は勝手に流されるという、この現在のネット社会の存在です。
現実として、少年法61条は形骸化してしまっています。
法律が時代にとり残されてはいないでしょうか?
61条も含めてですが少年法は全面的に見直す必要があると考えます。
読者のみなさんは、今回の週刊新潮の実名報道をどう評価されますか?
(木走まさみず)