木走日記

場末の時事評論

そのペースについていけない韓国の一連の直情的な騒動〜日本外務省よ、今回の君たちの判断はたぶん正しい

 米国のシャーマン国務次官は27日、戦後70年の節目についてワシントンで講演し、「ナショナリスト的な感覚で敵をけなすことは、国の指導者にとって安っぽい称賛を浴びる容易な方法だが、それは感覚がまひするだけで、進歩は生まない」と語り、日中韓の指導者に自制を求めました。

(参考記事)

「敵けなしても進歩ない」 米高官、日中韓に自制求める
ワシントン=奥寺淳
2015年2月28日23時51分
http://www.asahi.com/articles/ASH2X1P1BH2XUHBI001.html

 この発言を受け韓国メディアと世論は沸騰いたします。

 朝鮮日報社説では、シャーマン国務次官が「日本に対しては、一言も謝罪と反省を求めなかった」点に触れた上で、中韓に対して「外交的には使ってはならない不適切極まりない表現を遠慮なく使った」と強く批判しています。

 シャーマン国務次官は今回、外交的には使ってはならない不適切極まりない表現を遠慮なく使った。次官が言う「安っぽい拍手を受けるために民族の感情を利用する挑発」の主語が誰なのかははっきりしないが、韓国あるいは中国と推測される。米国の同盟国の指導者に対する無礼であり、2大国としてのパートナー・中国に対する挑発だ。

(参考記事)

【社説】看過できない米国務次官の「韓中日共同責任論」
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/03/03/2015030300620.html

 中央日報社説においても、「公開の場の大衆演説であれほど外交的に不適切な表現をしたことは、何らかの意図が込められたと見るほかはない」と批判したうえで、「「過去の歴史は3国みなの責任」というシャーマン式論理は韓日関係の改善に一抹の助けにもならず、反米感情を増幅させるだけだということを明確に認識させなければならない」と、「過去の歴史は3国みなの責任」との論理は「反米感情を増幅させるだけ」と指摘しています。

(参考記事)

【社説】日本が韓日米の三角共助に害するとなぜ説得できないか
2015年03月04日09時56分
http://japanese.joins.com/article/278/197278.html?servcode=100§code=110

 4日には保守系団体などがソウルのアメリカ大使館近くで抗議活動を行い「日本の過去に免罪符を与えたアメリカは謝罪せよ」などと気勢を上げていました。

(参考記事)

韓国 「米高官の発言は日本擁護」と反発
3月4日 14時59分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150304/k10010003691000.html

 韓国がこれほどまでに敏感にシャーマン米国務次官の発言に反応するのは、日本との論争で米国の支持を後ろ盾にしたい韓国は、米国が必ずしも味方ではないとも受け取れる発言に衝撃を受けているとの見方があります。

「米国が日本の肩を持ち始めた」(文化日報)との憂慮が拡散しています。

(参考記事)

日本の肩を持ち始めた…米次官発言に韓国衝撃
2015年03月03日 07時08分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20150302-OYT1T50131.html

 ・・・

 さてこのような韓国内でシャーマン米国務次官の発言を受けての動揺が広まっているところに、3月5日、リッパート駐韓米国大使がソウル市内で韓国人活動家の男に刃物で右頬などを切りつけられ、負傷いたします。

(参考記事)

【駐韓米大使襲撃】
米帝!」「訓練反対!」ひげ面に作務衣姿で凶行…血しぶき生々しく、朝食会は凄惨“暗転”
http://www.sankei.com/world/news/150305/wor1503050037-n1.html

 この事件を受けて韓国メディアの論調は一変いたします。

 朝鮮日報記事では「米国で「嫌韓」高まる恐れも」との危惧を示し、さらに「米大使襲撃事件が日本に有利に働く」との観測にもふれています。

 また洪首席委員は「対米外交において韓国政府の負担が増すことになる」と指摘する。

 韓国と日本が歴史問題をめぐりそれぞれ米国に接近しようとする中、米大使襲撃事件が日本に有利に働くのではないかという観測もある。

 韓国の政府系シンクタンク、国立外交院の関係者は「ワシントンでの日本との外交戦で、韓国が不利になった。しばらくは事件の影響を抑えることに外交力を集中させる必要があるためだ」と話した。

(参考記事)

駐韓米大使襲撃 米国で「嫌韓」高まる恐れも
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/03/05/2015030501916.html

 さて前日(4日)に反米糾弾デモが行われたソウルでは、5日テロ糾弾および米大使の快癒を祈る市民団体のデモが行われました。

<駐韓米大使襲撃>テロ糾弾および米大使の快癒を祈る市民団体
2015年03月06日08時23分
http://japanese.joins.com/article/382/197382.html?servcode=400§code=430&cloc=jp|main|top_photo

 ・・・

 まとめます。

 興味深いことです。

 反米糾弾デモが行われた次の日には反テロ糾弾デモが行われるソウルなのであります。

 すこしペースについていけません。

 そもそもですがシャーマン国務次官のこの発言「ナショナリスト的な感覚で敵をけなすことは、国の指導者にとって安っぽい称賛を浴びる容易な方法だが、それは感覚がまひするだけで、進歩は生まない」(朝日新聞)は、韓国メディアは「米国の同盟国の指導者に対する無礼」(朝鮮日報)であるとしていますが、どこが問題なのか理解できません。

 そもそもシャーマン国務次官のこの発言、国を特定などしていないのですが、それともなんでしょうか、韓国では「国の指導者」が「ナショナリスト的な感覚で敵をけなすこと」で「安っぽい称賛を浴びる容易な方法」を国民に取っていることを自覚しているのでしょうか?

 「米国の同盟国の指導者に対する無礼」(朝鮮日報)ですか。

 では、今回は米国の同盟国=韓国で米大使がテロにあったわけです。

 同盟国の大使の身の安全を暴力から守れない国が、同盟国の官僚が国の指導者に対する言論で無礼を働くことは許さないというわけであります、ああ、ややこしい。

 外務省は1日、日韓関係を紹介するホームページの記載から「自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する」の文言を削除し、「最も重要な隣国」と簡略化いたしました。

 ここ一週間の韓国の一連の直情的な騒動を見ていて考えてしまうのは、残念ながら韓国とはおそらく「基本的価値を共有する」ことは極めて難しいということであります。

 日本外務省よ、今回の君たちの判断はたぶん正しいです。

 ふう。



(木走まさみず)