アベノミクスは成功するのか〜大企業を「守銭奴」から国内「投資家」に変えられるかがカギ
6日付け読売新聞記事から。
内部留保は「守銭奴」…麻生氏、賀詞交歓会で
2015年01月06日 07時43分麻生副総理・財務相は5日、東京都内で開かれた信託協会の賀詞交歓会であいさつし、企業が手元にためる内部留保(利益剰余金)が増えていることについて、「まだお金をためたいなんて、単なる守銭奴に過ぎない」と述べた。
麻生氏はこれまでも、黒字企業が積極的に設備投資や賃上げをしていないと批判してきたが、「守銭奴発言」で波紋が広がりそうだ。
麻生氏は「内部留保は昨年9月までの1年で304兆円から328兆円に増えた。毎月2兆円ずつたまった計算だ」と指摘。「その金を使って、何をするかを考えるのが当たり前だ。今の日本企業は間違いなくおかしい」と強調した。
(後略)
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150105-OYT1T50170.html
うむ、麻生さんが都内で開かれた賀詞交歓会で、史上空前の規模で膨れ続けている大企業が手元にためこんでいる内部留保(利益剰余金)について、「まだお金をためたいなんて、単なる守銭奴に過ぎない」、「今の日本企業は間違いなくおかしい」と痛罵(つうば)したとのことであります。
麻生さん、よく言ってくれました。
今回はこの史上空前の規模で膨れ続けている大企業が手元にためこんでいる内部留保金の問題について、読者のみなさんとともに考えたいと思います。
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当ブログでは2年前の1月、まさにこの問題を取り上げ、アベノミクスを支持しつつ、アベノミクスが単純なGDP成長だけを目指すなら失敗に終わることに警鐘を鳴らしました。
2013-01-14■予言しましょう、ここを守れなければ自民党政権は必ず崩壊する〜アベノミクスの目指すべきはGDP成長だけではダメな理由を統計データで徹底検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20130114
このエントリーはネットで少なからずの議論をいただきましたが少し内容を抜粋して再掲しましょう。
さて、日本の戦後最長の好景気は、2002年2月から景気回復期に入って、2007年10月まで、実に69カ月間も好景気が続いたと後に認定され、それまでの過去最長だった「いざなぎ景気」の57カ月を、丸1年も上回る新記録だった「いざなぎ越え景気」でありました。
自民党の政権でいいますと、小泉政権(5年)、安倍前政権(1年)あたりの時代と重なっています。
見やすいようにグラフ上で「いざなぎ越え景気」の期間を紫色で示しました(以下のグラフにても同じ)が、ご覧いただいたとおり、この期間で企業経常利益総計は、2002年の31.0兆から2007 年の53.5兆にほぼ右肩上がりに伸びていたことが見て取れます。
ピークは2006年の54.4兆で日本の企業収益は戦後最高値を記録します。
確かに統計データからはこの期間で日本経済が好景気であったことを示しています。
■図2:日本の実質GDPの推移(1996−2010)
ご覧の通り日本の実質GDPも、2002年の477.9兆から2007年の523.7兆へと一本調子で拡大しています。
図1と図2のふたつのグラフを重ねてみれば企業経常利益の増減と実質GDPの増減がほぼ連動していることがわかります。
■図3:企業経常利益総計とGDPの推移(1996−2010)
さて、この小泉政権と安倍前政権時代の戦後最長と言われた「いざなぎ越え景気」でありますが、多くの国民に取りまったく実感がない「好景気」として印象が薄いのです。
この期間、実は一部大企業にその益はとどまり、それ以外の中小企業や一般庶民には「好景気」の果実がまったく還元されなかったのです。
それどころかこの期間「好景気」にもかかわらず民間会社の平均給与は下がり続けています。
■図4:民間(1996−2010平均給与の推移)