木走日記

場末の時事評論

満州事変に触れた天皇陛下の年頭のご感想について

 明けましておめでとうございます。

 さて、元旦の「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」が宮内庁公式サイトに掲載されましたが、満州事変に触れているということで話題になっています。

平成27年

昨年は大雪や大雨,さらに御嶽山の噴火による災害で多くの人命が失われ,家族や住む家をなくした人々の気持ちを察しています。

また,東日本大震災からは4度目の冬になり,放射能汚染により,かつて住んだ土地に戻れずにいる人々や仮設住宅で厳しい冬を過ごす人々もいまだ多いことも案じられます。昨今の状況を思う時,それぞれの地域で人々が防災に関心を寄せ,地域を守っていくことが,いかに重要かということを感じています。

本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

この1年が,我が国の人々,そして世界の人々にとり,幸せな年となることを心より祈ります。

※太字は木走付記(以下同様)
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h27.html

 うむ、「この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています」とのご感想部分であります。

 ちょうど良い機会でもありますので、今上天皇がご即位されてからの過去の「ご感想」を改めて確認し、今回のご感想を含めて振り返りたいと思います。

 まず冷静に過去26年分の「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」を検証、今回のご感想の日本のメディアの報道を検証、そのうえで韓国の報道を分析、今回の天皇陛下の「ご感想」について、当ブログとして総合的に考察いたしたいと思います。

 ・・・

●過去26年分の「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」を検証

 宮内庁のサイトでは平成に入ってからの過去26年分の「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」を確認できます。

 過去戦争に触れたご感想は6回出現いたします。

 まず平成7年戦後50年を迎えてのご感想。

 「過去を振り返り,戦争の犠牲者に思いをいたすとともに,今日の繁栄を築いた人々の労苦をしのび,改めて世界の平和を祈りたい」とあります。

平成7年

新しい年が,日本及び世界の人々にとって,幸せな年であるよう願っています。

50年前,日本の国民は最も厳しい戦争の終局を迎え,戦後は困難な復興を果たしつつ,世界の国々との関係の改善に尽してきました。この節目の年にあたり,過去を振り返り,戦争の犠牲者に思いをいたすとともに,今日の繁栄を築いた人々の労苦をしのび,改めて世界の平和を祈りたいと思います。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h07.html

 その翌年には「過去の歴史に対する認識を深め,平和への願いを新たにする意味深い年であった」とあります。

平成8年

戦後最大の災害となり,多くの人々に深い悲しみをもたらした阪神・淡路大震災から一年がたとうとしています。この一年,被災者には,肉親や知人を亡くし,あるいは住む家を失った悲しみに耐え,懸命に生きてこられました。寒さの一段と増す折から,厳しい環境にある被災者,特に,高齢者の健康が案じられます。被災地の復興が一日も早く成し遂げられ,人々の生活が安らかになるよう念願しています。

昨年は,戦後50年という節目を迎え,様々な行事が行われました。私ども皆にとり,戦没者を悼むとともに,過去の歴史に対する認識を深め,平和への願いを新たにする意味深い年であったと思います。

夏の始めには,長雨が続き,一昨年の冷夏を思い返し案じていましたが,天候が回復し,多くの地域で農作物の作柄が順調だったことは喜ばしいことでした。

新しい年が我が国民にとっても世界の人々にとっても幸せな年であるよう切に希望いたします。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h08.html

 平成10年には「日本国憲法施行から50年,沖縄返還から25年の節目に当たり,我が国の歩んできた過去を振り返った年である」とされています。

平成10年

昨年は,日本国憲法施行から50年,沖縄返還から25年の節目に当たり,我が国の歩んできた過去を振り返った年であるとともに,地球温暖化防止京都会議が開催され,環境という視点に立って地球の将来に目を向けた年でもあったと思います。

厳しい経済情勢の下で,国民生活には今後とも様々な苦労があることと案じていますが,国民が互いに助け合い,世界の人々と共に,より良い未来を築くために力を尽くしていくことを期待しています。

年頭に当たり,本年が国民にとって良い年となることを念願し,皆の幸せを祈ります。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h10.html

 平成14年には、「戦後の苦難を克服した国民の英知と努力を思い,国民がこの困難を必ず乗り越えていく」との表現が見られます。

平成14年

昨年は,同時多発テロという悲惨な事件が起こり,日本人24人を含み,3千人を超える死者行方不明者が生じました。この事件により,米国,日本を含む各地の経済情勢は,今一層の厳しさを増しています。世界の安定と平和を維持するため,国々の間に更なる友好と協力が強く求められていることを感じます。

現在,日本は,厳しい状況下にありますが,戦後の苦難を克服した国民の英知と努力を思い,国民がこの困難を必ず乗り越えていくものと信じています。

本年が,日本と世界の人々にとって,明るい兆しの見える年となることを祈っています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h14.html

 翌平成15年には「この50年間に今日の日本を築くために人々が払った非常な努力に思いを致し,より良い未来を求めて皆で力を尽くしていきたい」と戦後を振り返ります。

平成15年

厳しい経済情勢の続く中,新しい年を迎えました。

振り返ると,平和条約が発効して初めて迎えた新年がちょうど50年前になります。この50年間に今日の日本を築くために人々が払った非常な努力に思いを致し,より良い未来を求めて皆で力を尽くしていきたいと思います。

国民の生活には様々な苦労や困難があることが察せられますが,今年が一人一人にとって少しでも良い年となるよう願っています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h15.html

 戦後60年の平成18年には「戦争で亡くなった人々のことを決して忘れることなく,この多くの犠牲の上に今日の日本が築かれたことに思いを致さねばなりません」とご感想を述べられています。

平成18年

昨年は,終戦から60年の年に当たりました。先の大戦では日本人310万人が亡くなり,また,外国人にも多くの犠牲者が生じました。私どもは戦争で亡くなった人々のことを決して忘れることなく,この多くの犠牲の上に今日の日本が築かれたことに思いを致さねばなりません。

暮れになって降り始めた大雪で,各地で大きな被害が生じています。そのために20人を超える人々が亡くなったことを本当に残念に思います。自然災害の被害を受けた地域で,避難生活を続けている人々のことが案じられます。また,帰島を果たした三宅島の人々,帰島を果たせずにいる人々が共に健康を保つよう願っています。

新しい年が皆一人一人にとって幸せなものであることを祈り,より良い社会を作るために皆が助け合って力を尽くしていくことを心から念じています。
http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h18.html

 ・・・

 今回を含めて戦後50年、60年、70年のそれぞれの「ご感想」の過去の戦争に触れた部分をまとめておきます。

 戦後70年の今回。

本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

 戦後60年を振り返った平成18年。

昨年は,終戦から60年の年に当たりました。先の大戦では日本人310万人が亡くなり,また,外国人にも多くの犠牲者が生じました。私どもは戦争で亡くなった人々のことを決して忘れることなく,この多くの犠牲の上に今日の日本が築かれたことに思いを致さねばなりません。

 戦後50年の平成7年。

50年前,日本の国民は最も厳しい戦争の終局を迎え,戦後は困難な復興を果たしつつ,世界の国々との関係の改善に尽してきました。この節目の年にあたり,過去を振り返り,戦争の犠牲者に思いをいたすとともに,今日の繁栄を築いた人々の労苦をしのび,改めて世界の平和を祈りたいと思います。

 ・・・



●記事タイトルが割れるマスメディア〜「歴史学ぶこと大切」(朝日、毎日、日経)vs「日本のあり方考える機会」(読売、産経)

 本件に関しては1日付けで5大紙が一斉に報道いたしますが、記事タイトルが2つに割れています。

 朝日、毎日、日経は「歴史学ぶこと大切」との見出しを付けています。

朝日新聞】戦後70年「歴史学ぶこと大切」 天皇陛下が年頭の感想
2015年1月1日05時00分
http://www.asahi.com/articles/DA3S11532190.html
毎日新聞】皇室:天皇陛下歴史学ぶこと、極めて大切なこと」
2015年01月01日 05時00分(最終更新 01月01日 10時29分)
http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20150101k0000m040103000c.html
日経新聞天皇陛下歴史学ぶことが大切」 新年迎え所感
2015/1/1 5:01
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO81505540R31C14A2CR8000/

 一方、読売、産経は「日本のあり方考える機会」を前面に掲げています。

【読売新聞】天皇陛下「日本のあり方考える機会」
2015年01月01日 05時06分
http://www.yomiuri.co.jp/national/20141231-OYT1T50124.html
産経新聞】「日本のあり方考えていくこと極めて大切」 天皇陛下ご感想(全文)
2015.1.1 05:07
http://www.sankei.com/life/news/140101/lif1401010017-n1.html

 ・・・



●「ご感想」を大きく取り上げる韓国メディア

 今回のご感想は韓国にて複数メディアが大きく取り上げています。

 たとえばchosun.comでは、TV朝鮮のイ·ジョンミン記者がレポートしています。

이정민 TV조선 기자
[출처] 본 기사는 조선닷컴에서 작성된 기사 입니다
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2015/01/02/2015010200736.html

 韓国語原文部分。

아키히토 일왕이 일본 패전 70주년을 맞아 발표한 신년사에서 ‘일본이 전쟁에서 역사를 배워야 하고, 앞으로 일본의 존재 방식을 생각하는 것이 중요하다’고 강조했다. 아키히토 일왕은 특히 일본이 일으킨 전쟁이 1931년 일본이 중국 동북지방을 침공한 사건인 만주사변에서 시작했다고 언급해, 전쟁에 대한 일본의 책임을 시사했다. 노골적으로 과거사를 부정하고 있는 아베 정권에 대한 견제 차원의 발언이라는 분석이다.

다음은 TV조선 보도 전문.

  • 해당 기사에 대한 TV조선 동영상 보기

[앵커]
일본의 아키히토 일왕이 신년사에서 패전 70주년을 맞아 일본이 전쟁에서 역사를 배워야 한다고 강조했습니다. 특히 일본이 일으킨 전쟁이 만주사변에서 시작됐다고 언급해, 과거사를 부인하는 아베 총리에게 견제구를 날린 것으로 풀이됩니다.

이정민 기자입니다.

[리포트]
일본 패전 70주년을 맞은 2015년 새해 첫날이던 어제, 아키히토 일왕은 궁내청을 통해 신년사를 발표하면서 "만주사변으로 시작한 전쟁의 역사를 충분히 배우고, 앞으로 일본의 존재 방식을 생각하는 것이 지금 무척 중요하다"고 언급했습니다.

올해가 종전 70주년이라는 분기점에 해당한다는 말로 운을 뗀 일왕은, "전장에서 숨지고 히로시마와 나가사키 원폭과 도시의 폭격으로 많은 이들이 숨진 전쟁이었다"고 밝혔습니다.

특히 일본의 패전 70주년에 만주사변을 언급한 것이 이례적입니다.

만주사변은 1931년 일본이 중국 동북 지방을 침략하기 위해 일으킨 전쟁으로, 이후 일본은 중일전쟁과 태평양전쟁을 잇따라 일으켰습니다.

이 때문에 일왕의 만주사변 언급은 과거 일본이 일으킨 전쟁으로 아시아 이웃들이 많은 피해를 입었다고 인정하고 앞으로 평화의 길을 가는 것이 중요하다고 강조한 것으로 풀이됩니다.

또 점점 노골적으로 과거사를 부정하고 있는 아베 정권 대한 견제차원이기도 합니다.

전문가들은 "일왕이 일본이 일으켜온 전쟁이 '만주사변'으로 시작됐다고 직접 밝히면서 평화의 의미를 되새긴 것은 처음이라며 아시아 이웃들을 무시하고 전쟁의 길로 가려는 아베 총리에게 강한 메시지를 전했다는 해석을 내놓고 있습니다.

TV조선 이정민입니다.

[출처] 본 기사는 조선닷컴에서 작성된 기사 입니다

 グーグルの翻訳機能で邦訳いたします。

天皇が日本の敗戦70周年を迎え発表した新年の挨拶で「日本が戦争で歴史を学ばなければならず、今後、日本のあり方を考えることが重要である」と強調した。天皇は、特に日本が起こした戦争が1931年に日本が中国東北地方に侵攻した事件である満州事変から始めた言及し、戦争に対する日本の責任を示唆した。露骨に過去の歴史を否定している安倍政権に対する牽制次元の発言という分析である。

次は、TV朝鮮報道専門。

  • その記事へのTV朝鮮の動画を見る

[アンカー]
日本の天皇が新年の挨拶で敗戦70周年を迎え、日本が戦争で歴史を学ぶべきだと強調しました。特に日本が起こした戦争が満州事変から始まったと述べて、過去の歴史を否定する安倍首相に牽制球を飛ばしたものと解釈されます。

イ·ジョンミン記者です。

[レポート]
日本敗戦70周年を迎えた2015年の新年初日だった昨日、天皇宮内庁を通じて新年のあいさつを発表し、「満州事変で始めた戦争の歴史を十分に学び、これからの日本のあり方を考えることが今非常に重要である」と言及しました。

今年は従来の70周年という分岐点に該当するという言葉で暗示した天皇は、「戦場で死亡し、広島と長崎原爆と都市の爆撃で多くの人々が死亡した戦争だった」と明らかにした。

特に日本の敗戦70周年に満州事変を言及したのが異例です。

満州事変は1931年に日本が中国東北地方を侵略するために起こした戦争で、以降、日本は日中戦争と太平洋戦争を相次いで発生しました。

このため、天皇満州事変言及は、過去日本が起こした戦争でアジア隣人が多くの被害を受けたと認め、今後、平和の道を行くことが重要であると強調したものと解釈されます。

また、ますます露骨に過去の歴史を否定している安倍政権に対する牽制次元でもあります。

専門家は「天皇が日本が起こしてきた戦争が「満州事変」で始まったと直接明らかにし、平和の意味を再刻んだのは初めてだと、アジアの隣人を無視して戦争への道を行こうとする安倍首相に強いメッセージを伝えたという解釈を出しています。

TV朝鮮のイ·ジョンミンです。

[ソース]本記事は、朝鮮ドットコムで書かれた記事です

 ・・・

 さてあえて記事原文をご紹介したのは記事原文で七か所出現している「일왕」(イルワン)という単語に注目いただきたいからです。

 グーグル翻訳機能は「일왕」(イルワン)を「日本の天皇」と訳していますが、「일왕」(イルワン)というハングルの意味する単語は「日王」です。

 歴史的経緯もあり韓国では天皇の呼称をマスメディアを始めとする民間では「日王」を使用しているのです。

朝鮮半島における呼称[編集]

朝鮮半島の歴代王朝は長らく中国歴代王朝の冊封国として存在しており、華夷思想では「天子」・「皇帝」とは世界を治める唯一の者、すなわち中国歴代王朝の皇帝の称号であった。そのため日本の天皇が「皇」や「帝」、「天子」などを称することを認めず、「倭国王」「日本国王」等の称号で呼んでいた。
近世に入って日清戦争に勝利した大日本帝国の清への要求により、朝鮮は清の冊封体制から離脱し大韓帝国となると華夷秩序の関係が崩れ、朝鮮国王は自らを「大韓帝国皇帝」と称することで、初めて日本の天皇を皇帝と称した。その後の大日本帝国統治下では天皇の称号が用いられた。
朝鮮半島独立後は、「日本国王」(「日王」)という称号を用いてこれに倣い「皇室」を「王室」、「皇太子」を「王世子」と呼んだ。その後「天皇」と言う称号も一般的に使用されるようになり、「皇室/王室」、「皇太子/王世子」に関しては同等に用いていた。
大統領在任当時、金大中は諸国の慣例に従って「天皇」という称号を用いる様にマスコミ等に働きかけたが、マスコミはそれに従う者と従わない者に二分した。韓国政府としては1998年から「天皇」の称号を使用するようになったが[11]、次の大統領盧武鉉天皇という称号が世界的かどうか確認していないため「天皇」と「日王」どちらを用いるべきか準備ができていないと従来の方針を転換する姿勢を示した。大統領李明博は「天皇」の称号を用いている[11]。しかし、マスメディアを始めとする民間では「日王」を使用している[11][12]。民間における「日王」の呼称の使用については21世紀初頭頃に「天皇」や「日皇」に改めるべきであるとの議論もなされたが、「日王」に統一することとなり現在に至っている[11]。
前大統領、李明博は2009年9月15日にインタビューを受けた際、「日本天皇」という表現を繰り返し用いており、このことが韓国内でニュースとなった[13]。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%9A%87

 ・・・



●まとめ

 改めて今回のご感想の「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び」の部分を再掲。

本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。各戦場で亡くなった人々,広島,長崎の原爆,東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。

 今、検証した通り過去26年の「ご感想」と比較して、「満州事変に始まるこの戦争の歴史」との表現は、冷静に読み解けば初めて「満州事変」という個別事象に触れている点で過去にない一歩踏み込んだ表現であると、言えましょう。

 読売、産経の記事見出しにみられるように、一部保守論壇では今回の「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び」発言を軽視し「日本のあり方考える機会」を主題としてとらえる見方もありますが、当ブログはそのような見方には与しません。

 過去の「ご感想」を冷静に読み返せば、「満州事変」にまでふれた今回の「ご感想」は過去にない一歩踏み込んだ表現であると判断するのが、素直な常識的な解釈でありましょう。

 当ブログとしては、明らかに今上天皇はこの戦後70年の節目の「天皇陛下のご感想(新年に当たり)」で、国民に対してひとつの警鐘を鳴らされているのだ、と素直に承るべきである、と考えます。

 そのうえでです。

 上記韓国メディアの「日王」が「アジアの隣人を無視して戦争への道を行こうとする安倍首相に強いメッセージを伝えた」との拡大解釈に見られるような、この「ご感想」が新たに国内の政争の具に、あるいは韓国や中国との歴史認識外交問題に悪用されることを危惧いたします。

 天皇陛下の今回のご感想は、我々国民一人一人が素直に受け止めればよいのであり、その解釈は日本国民個々にゆだねられてよい性質のものであり、そもそも国民の象徴たる天皇は現憲法下ではいかなる政治的立場にもよらず政治的権力も有さないのであります。

 我々国民に取り今回の「ご感想」はまさに天皇が望まれているように「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていく」機会とすれば、と考えます。

 ただ一部のメディアや韓国などがこのご感想を政治的に悪用することを強く危惧しております。



(木走まさみず)