木走日記

場末の時事評論

辟易する一部マスメディアが繰り返す「公平中立」な「言葉狩り」〜「NHK経営委員 不適格なのは明らかだ」(毎日社説)

 6日付け東京新聞記事から。

中国「歴史に逆行」 南京大虐殺否定 百田氏発言批判

2014年2月6日 朝刊

 【北京=佐藤大】NHK経営委員で小説家の百田(ひゃくた)尚樹氏が東京都知事選の街頭演説で南京大虐殺を否定する発言をしたことに対し、中国外務省の洪磊(こうらい)副報道局長は五日、「日本の指導者が歴史に逆行する行動を取っていることと同じ流れをくんでいる」と批判するコメントを発表した。
 洪副局長は「日本の軍国主義が中国への侵略戦争で犯した残虐な犯罪行為」と強調。「日本国内の極めて少数がこれらの歴史を抹殺し、覆い隠し、歪曲(わいきょく)しようとたくらんでいる」と非難し「日本が侵略の歴史を正視し、深刻に反省するよう強く促す」と述べた。
 百田氏は三日、元航空幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄氏の応援演説で、南京大虐殺について「そんなことはなかった」と発言した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014020602000118.html

 で、百田氏の発言要旨を時事通信記事より。

百田氏発言要旨

 NHK経営委員の百田尚樹氏が3日行った街頭演説での発言の要旨は次の通り。

 (第2次世界大戦で)日本は戦争に負け、連合国軍総司令部(GHQ)が当時の日本人に何をしたか。徹底した自虐思想を植え付けた。「日本人、おまえたちが悪いことをしたんだよ」と植え付けた。なぜか。極東国際軍事裁判東京裁判)のせいだ。東京の惨状、広島、長崎の悲惨な状況を見て、恐らくやり過ぎたと思ったんだろう。これほど悲惨な戦争犯罪はない。一般の無辜(むこ)の民を何十万人虐殺した。
 東京も4度の大空襲に遭った。これほど悲惨な戦争犯罪はあるかという残虐な行為だった。広島と長崎の原爆もそうだ。完全に人体実験だ。広島、長崎に一般爆弾を落とさなかった。(米軍は)原爆の威力を見たかった。これは大虐殺だ。
 東京裁判は大虐殺をごまかすための裁判だった。1938年に蒋介石が「日本軍が南京大虐殺をした」とやたら宣伝したが、世界の国は無視した。なぜか。そんなことはなかったからだ。戦後、東京裁判で突然、亡霊のごとく南京大虐殺が出てきた。米軍が自分たちの罪を相殺するためだ。東京大空襲、原爆投下は、米軍が悪いのではない。おまえたちが悪いことをしたから、こうなったんだということで、米軍が持ってきたのが南京大虐殺だった。(被害者は)最初は20万人だったが少ないと言うことで、30万人にした。とんでもない話だ。
 確かに戦争だから残虐行為はあった。日本軍も残虐なことをした。でも、これは米軍もしたし、ソ連人もしたし、中国人もした。どこの国もした。これは歴史の裏面、黒い面だ。(2014/02/04-14:57)

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014020400522

 この発言は内外に波紋を広げており、毎日新聞東京新聞は6日付け社説にて批判しています。

毎日新聞社説】NHK経営委員 不適格なのは明らかだ
http://mainichi.jp/opinion/news/20140206k0000m070121000c.html
東京新聞社説】NHK経営委員 公共放送の信用損なう
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014020602000125.html

 両社説より当該部分を抜粋。

毎日新聞社説】

 一方、やはり新しく経営委員になった作家の百田尚樹氏は都知事選で特定候補を応援する街頭演説で、南京大虐殺真珠湾攻撃東京裁判などについて持論を展開した。そして、「中国・韓国の顔色を見ながら政治をする人は不必要。彼らは売国奴」と言い、自分が応援する以外の候補を「人間のクズみたいなやつ」と呼んだ。

東京新聞社説】

「戦争に負け、連合国軍総司令部が、徹底した自虐思想を植え付けた」「東京裁判で突然、亡霊のごとく南京大虐殺が出てきた」と語ったのは、作家の百田尚樹氏だ。南京大虐殺については「そんなことはなかった」と否定もした。しかも、東京都知事選の立候補者の応援演説の場だった。

 毎日社説は「NHKは不偏不党、公平中立を求められるからこそ、経営委員には節度が必要」であり、「偏狭なナショナリズムの主張や極端な私見を聞くと、公共放送の経営にかかわるのにふさわしい人たちとは思えない」と結論づけています。

 厳密にいえば、放送法にはNHK経営委員に政治活動を制限する記述はない。しかし、「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」から選ぶと定められている。NHKは不偏不党、公平中立を求められるからこそ、経営委員には節度が必要だ。

 偏狭なナショナリズムの主張や極端な私見を聞くと、公共放送の経営にかかわるのにふさわしい人たちとは思えない。

 「不偏不党、公平中立」な「公共放送」ですか。

 今までの過去のNHKの報道が「不偏不党、公平中立」を守ってきたとは個人的にとても思えないのですが、それはさておき毎日新聞東京新聞の求める「公平中立」って何を意味するのでしょうか?

 まあ、毎日社説によれば、百田氏は「中国・韓国の顔色を見ながら政治をする人は不必要。彼らは売国奴」と言い、自分が応援する以外の候補を「人間のクズみたいなやつ」と呼んだそうですから、確かにお下品な言い方です。

 ただ、上記の百田氏の発言の詳細を何度も読み返しましたが、結びの「確かに戦争だから残虐行為はあった。日本軍も残虐なことをした。でも、これは米軍もしたし、ソ連人もしたし、中国人もした。どこの国もした。」との発言は極めて常識的でまっとうだと思えます。

 また、南京大虐殺「そんなことはなかった」と否定した点が問題視されていますが、後段の発言「(被害者は)最初は20万人だったが少ないと言うことで、30万人にした。とんでもない話だ。」「確かに戦争だから残虐行為はあった。日本軍も残虐なことをした。」を続けて読めば、彼の「そんなこと」が残虐行為の否定にあるのではなく中国が主張する「30万人」という被害者数によりウエイトがあると読み解けるのですが問題があるのでしょうか。

 東京裁判史観を批判し南京大虐殺を「否定」している人たちは別に百田氏だけではありません。

 南京大虐殺自体がなかったとの主張やいや30万人は多すぎだとの主張など諸説論じられていますが、当ブログはもちろん専門家ではないのでその諸説の真偽を論じる能力はありませんし、ここで今論じようとも思いません。

 ただ、毎日新聞東京新聞が言うところの「偏狭なナショナリズムの主張や極端な私見」が「公平中立」でないとするならば、「公平中立」な発言とは何を意味することでしょうか?

 毎日新聞東京新聞が日々主張しているような左翼的言動ならば目をつぶるということでしょうか?

 それとも「公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者」から選ぶと定められているNHK経営委員は私見を述べてはいけないと言うことでしょうか?

 東京裁判に関しても、南京大虐殺に関しても、自由に議論して何が問題があるのでしょう。

 一部マスメディアが繰り返す「公平中立」な「言葉狩り」はもうやめませんか。



(木走まさみず)