「政治に左右されない不偏不党」メディアだと?朝日新聞がどの口で言う?
現在のNHK(日本放送協会)は放送法に基づく特殊法人として1950年に設立されたものです。
設立目的は、放送法により「公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うこと」とされています。
で、NHKは公共放送であり、これは国が直接運営する国営放送とは異なります。
しかし、国営放送と区別される公共放送と言っても、事業予算・経営委員任命には国会の承認が必要であるなど、経営・番組編集方針には国会の意向が間接的に反映される形となっている。総務大臣はNHKに対して国際放送の実施、放送に関する研究を命じることができ、その費用は国(日本国政府)が負担することになっています。
さて放送法によればNHKでは12人の委員からなる経営委員会が設置され、経営委員会には会長・副会長の人事権など大きな権限が与えられています。
任期3年の委員は、「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」こととなっています。
放送法『第3章 日本放送協会』『第3節 経営委員会』第33条より。
(委員の任命)
第31条 委員は、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない。
政府が任命するこの委員会はNHK内で大きな権限を有していますので下手をすると番組制作に政治的干渉や政治的圧力が及ぶ可能性があります。
そこで平成19年の改正で委員は「個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない」、「個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない」と、個別の番組介入が一切してはならないことが明文化されました。
(委員の権限等)
第32条 委員は、この法律又はこの法律に基づく命令に別段の定めがある場合を除き、個別の放送番組の編集その他の協会の業務を執行することができない。
2 委員は、個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない。
NHK経営委員会委員は会長人事権も掌握しているほど大きな権限を有しており、その任命権は「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」、すなわちときの政権与党が有しています。
それがためにNHKの個別の番組制作に委員による政治的介入を防ぐために、法律により委員は個別の番組制作に一切タッチすることを禁じられているわけです。
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さて13日付けFNNニュース記事から。
NHK経営委員会の委員に選ばれた百田尚樹氏らに対する辞令交付式
NHK経営委員会の委員に選ばれた作家・百田尚樹氏らに対する辞令交付式が、総務省で行われた。
新藤総務相は、作家・百田尚樹氏と、日本たばこ産業の元社長で、顧問を務める本田勝彦氏にNHK経営委員の辞令を交付した。
百田氏は「より良いNHKに、そして、視聴者のためにということを考えて、何が一番いい方法か、自分のベストをつくしていきたいと思っています」と話した。
経営委員会は、NHKの最高意思決定機関で、2014年1月に任期を迎えるNHK会長を選ぶ権限がある。
安倍首相に近いとされる、百田氏や本田氏らが経営委員に起用されたことなどから、NHKの次の会長選びに影響するとの声も出ている。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00257786.html
新たに作家・百田尚樹氏ら4名がNHK経営委員会の委員に選ばれたわけですが、記事にもあるとおり「安倍首相に近いとされる、百田氏や本田氏らが経営委員に起用されたことなどから、NHKの次の会長選びに影響するとの声も出ている」、安倍さんのこの「お友達人事」が一部から批判を受けているようです。
百田尚樹氏はネットで「百田さんの就任でNHKの中立性が壊れると言われていますが…」と記者から尋ねられオカンムリです。
で、勇み足でしょう、NHKのことを「公共放送」ではなく「国営放送」といい間違えてしまいます。
この発言がネット上で炎上します、「私のアンチが鬼の首を取ったみたいにおおはしゃぎ。私をまるで低脳扱い。ふー」とお嘆きになります。
ご本人も間違いと認めている「国営放送」発言ですが、日本共産党機関紙しんぶん赤旗が食い付いて記事にします。
NHK経営委員/“他国が攻めてきたら9条教信者を前線に送る”/作家 百田 尚樹氏の“見識”
http://blogos.com/article/73807/
赤旗記事より。
経営委員が番組に介入できないのは当然です。しかし、番組制作をつかさどる会長の任免権を持つうえに、2008年の放送法改定で経営委員会の権限が強化されました。委員には政治権力から自立した関係と資質がいっそう厳しく問われることを、百田氏は理解しているのでしょうか。
13日付のブログで百田氏はこう続けています。「NHKが日本の国営放送局として国民のためになる番組や報道を提供できる放送局になれば素晴らしいことだと思う」。NHKは国民の受信料で成り立つ公共放送であり、断じて政府ヒモつきの「国営放送局」ではありません。早くも百田氏の委員としての資格が問われています。(佐)
ネット上でのささやきの言い間違いだけで、赤旗記事に「NHKは国民の受信料で成り立つ公共放送であり、断じて政府ヒモつきの「国営放送局」ではありません。早くも百田氏の委員としての資格が問われています。」と断罪されるとは、少々お気の毒なのであります。
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で、真打ち登場とばかりに安倍政権の政策には必ず一言物申すメディア、朝日新聞が主要紙でただ一紙だけ、この問題で社説をわざわざおこします。
公共放送―政治では変えられない
http://digital.asahi.com/articles/TKY201311170266.html
社説冒頭で「お友達人事」をいきなり批判です。
これで公正・中立な公共放送が保たれるのだろうか。
NHK経営委員に作家の百田尚樹氏ら5人(うち再任1人)を充てる人事が国会の同意をうけ、経営委員会の顔ぶれが変わった。新任の4人は百田氏をはじめ、哲学者の長谷川三千子氏ら、いずれも安倍首相と近い間柄だ。
安倍色の濃い人事に、野党は「経営委の私物化だ」と反発した。NHK内部では「これほど首相に近い人物をそろえた露骨な人事は前例がない」と職員らが不安を募らせている。
「視聴者が期待するのは、政治に左右されない不偏不党の公共放送」であると指摘します。
視聴者が期待するのは、政治に左右されない不偏不党の公共放送だろう。NHKトップには、受信料を納得して払ってもらえる番組づくりに専念できるよう、現場環境を整えるリーダーシップが求められる。
社説は「放送現場や視聴者の支持を抜きにして、公共放送を変えることはできない」と結ばれています。
首相と親しいからといって、よもやその意を体して会長を決めるようなことはあるまい。良識が発揮されると期待する。
放送現場や視聴者の支持を抜きにして、公共放送を変えることはできない。
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朝日新聞が求めている「政治に左右されない不偏不党の公共放送」ですが、たいへん立派な主張であり朝日新聞自身を含め「政治に左右されない不偏不党」の報道姿勢をメディアが理想として求めてきたのは認めるものです。
しかし社説にてNHKは「政治に左右されない不偏不党の公共放送」を目指せと、安倍政権のNHK経営委員会人事を批判する資格が、果たして朝日新聞にあるのでしょうか。
朝日新聞の言う「政治に左右されない不偏不党の公共放送」のその中身が朝日社説で垣間見えていますので、さっそく抜粋。
松本正之会長の任期は来年1月で切れる。政権内には、最近のNHK報道が原発やオスプレイの問題で反対の方に偏っているとの不満がくすぶる。そんな折の人事。公共放送への政治介入が疑われかねない。
何のことはない朝日が主張する「原発反対」「オスプレイ反対」に同じく偏向しているNHKの報道姿勢を守りたいだけではないですか?
これって十分政治的偏向報道だと思われますが、これを守ることが朝日新聞の言うところの「政治に左右されない不偏不党」のメディアの報道姿勢ということなのであります。
ふう。
当ブログでは従軍慰安婦捏造報道をはじめいくつかの朝日新聞の偏向報道を批判してきました。
その朝日新聞が社説にて堂々と「政治に左右されない不偏不党」のメディアをNHKに求めているのです。
いったい、どの口で言えるのでしょうか?
このあたりの「上から目線的自分は棚に上げといて的主張」を堂々と恥じることなく開陳できるのが、まあ朝日新聞らしい感性なのかもしれません。
(木走まさみず)