木走日記

場末の時事評論

タブーだった「日本から韓国への経済制裁」記事を掲載し始めた出版系の週刊誌メディア〜日本人の対韓意識が不可逆的勢いで急激に悪化している証(あかし)

 当ブログでは19日付けエントリーで日経社説に反論する形で「韓国大統領の繰り返す非礼な「嫌日」行動を外交上許すべきではない」と主張しました。

2013-11-19■「日本だけを残した韓国外交」(日経社説)に反論する〜韓国大統領の繰り返す非礼な「嫌日」行動を外交上許すべきではない
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20131119

 「今後日韓貿易がさらに大きく冷え込んで」「経済的に困るのは韓国側」だと主張しました、エントリーより抜粋。

(前略)

 このような日本のみをターゲットにした非礼な行動を朴大統領が取り続ける限り、日韓首脳会談は開くべきでは断じてないと考えます。

 日韓関係が冷え込んで日本の対韓投資は冷え込み始めていますが、致し方ないでしょう、今後日韓貿易がさらに大きく冷え込んでも双方の経済規模から日本側はGDP規模で1,2%の影響に留まるのに対して、韓国側はGDP規模で10%近くの大打撃を受けるはずです、経済的に困るのは韓国側なのです。 

 日本として、韓国の「嫌日」行動が韓国自身に打撃を与えるだけであることを、毅然として示すときが、今来ていると私は考えます。

(後略)

 このエントリーは提携先のBLOGOSで150を超える支持を集め、かなりのアクセス数をいただきました。

 私は今、日本の世論の韓国への意識が、大きく変化、不可逆的ともいえる勢いで急激に悪化してきていると感じています。

 この変化は、TVや新聞などの既存メディアには広告主や自主的規制などのいろいろなフィルターがかかって現出していませんが、日本記者クラブには所属していない出版社系の週刊誌やネット言論空間など経済界などからの圧力を受けない、すなわちフィルターが掛かりづらい媒体から変化の兆しが顕われてくることが多いのです。

 今回はTVや大新聞などのマスメディアではない、週刊誌メディアの最近の動きを検証してみます。

 ・・・

 ことの発端は週刊文春のこの記事でした。

2013年11月21日号
韓国の『急所』を突く!
日本メガバンクが融資を打ち切ればサムスンは一日で壊滅する

http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3341

 この文春記事は「日本のメガバンクが融資を打ち切れば、サムスンは1日で崩壊する」と主張するのですが、おもにネット上で話題になります。

 これに対して韓国メディアが反応します。

 16日付け韓国・朝鮮日報記事から。

文春報道は「荒唐無稽」、サムスンや専門家反論
11月16日 09:59

 日本の保守系週刊誌、週刊文春(最新号)が「韓国の『急所』を突く!」と題する記事で、韓国にとって最大の急所は経済であり、金融制裁やウォン高誘導で韓国経済をコントロールできるという趣旨の主張を展開したことが波紋を呼んでいる。しかし、韓国の経済専門家は、同誌の主張は経済的な論理に合わない荒唐無稽な内容だと分析している。

 同誌は「日本のメガバンクが融資を打ち切れば、サムスンは1日で崩壊する」と主張した。これについて、サムスン電子関係者は「借入金もほとんどなく、日本の資金には全く依存していない」と反論した。現在、韓国の金融市場には日系資金が約427億ドル(約4兆2800億円)流入している。極端なケースとして、日系資金が同時に引き揚げられたとしても、外貨準備高(3430億ドル)の一部を一時的に融通し、欧米に借入先を変更すればよい。

 金融業界関係者は「借入金には期限があるため、一気に引き揚げることはできず、日本の金融機関も利益を上げるために韓国に融資や投資を行っているのであって、政治的な論理で資金を一気に引き揚げることはないはずだ」と指摘した。

 さらに、国際金融市場での資金の流れは、国家信用度に左右されるため、日本が資金を引き揚げても、結局は資金が迂回(うかい)して韓国に流れることになる。韓国は最近、ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズなど欧米メディアに「新興国危機で韓国が資金の避難先になっている」と評価されるなど、危機に強い国として国際的に認められている。

方顕哲(パン・ヒョンチョル)記者
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/11/16/2013111600541.html

 うむ、サムスン電子関係者は「借入金もほとんどなく、日本の資金には全く依存していない」と反論しています。

 さて、この日韓メディアの舌戦は、中国のネット上でも注目を集めます。

 21日付けサーチナ記事。

【中国BBS】日韓メディアが舌戦を展開…中国人ユーザーも参戦
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=1121&f=national_1121_010.shtml

 記事より中国人ネットユーザーのコメントを抜粋。 

  「サムスンがつぶれたら韓国は混乱するだろう」

  「サムスンは韓国GDPの2割を占めているんだから、サムスンが終わったら韓国も終わりだよ」

  「日本の融資がなくなればサムスンが崩壊? 日本は自らを高く買いかぶりすぎだ」

  「サムスンが崩壊するわけがないだろ!」

 中国人の意見は賛否両論のようですが、「中国人もサムスンに依存する韓国経済の問題点を認識している」点は興味深いです。

 さてこの舌戦に参戦するかのように最新号の週刊ポストが2つの記事を掲載します。

週刊ポスト2013年11月29日号
韓国経済 日本のメガバンクが融資を引き揚げれば瞬時に危機
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131122/frn1311221131000-n1.htm
片山さつき氏 反日中傷繰り返す韓国に状況次第で経済制裁
http://www.news-postseven.com/archives/20131121_227597.html

 最初の記事ではメガバンクが日本政府の意を汲んで融資を引き揚げれば、韓国企業はひとたまりもない」との論調です。

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が世界中で根も葉もない反日中傷話をばらまいていることに対し、官邸内からは「経済制裁を発動して、目に物いわせてやるべきではないか」との声も上がっている。

 経済制裁はかなりオーバーなリアクションではあるが、官邸内外に少しずつそうした対韓強硬論が聞こえ始めた。例えば、金融制裁という手段も韓国経済を瞬時に破綻させる。

 そもそも、金融市場の規模が大きくない韓国では、主要企業にファイナンスしている金融機関のなかで、日本のメガバンクが大きなウェイトを占めている。韓国政府系銀行である韓国輸出入銀行でさえ、今年8月、経営危機に陥った時、日本のみずほ銀行が5億ドル、三菱東京UFJ銀行が2億5000万ドルなどを緊急融資したということがあった。

 それらメガバンクが日本政府の意を汲んで融資を引き揚げれば、韓国企業はひとたまりもない。さらに、韓国経済に詳しい経済評論家の三橋貴明氏はこう指摘する。

 「日本の円安が進めば日本の輸出産業の価格競争力が増し、韓国の製造業に大ダメージを与えますが、企業が倒産するわけではない。

 たとえば、サムスンは54%の株式を外国人が所有する事実上の外資系企業です。なので、韓国国内で製造する競争力が落ちれば、平気で生産拠点を海外に移します。そうすると、韓国では産業の空洞化がますます進み、雇用が失われて失業率が急上昇し、貧困化、犯罪の多発など、社会不安も増大します」

 2つ目の記事では片山さつき氏の「状況次第では経済制裁などの対抗措置を取ることも考えておくべき」との主張を掲載しています。 

 自民党参議院議員片山さつき氏は、「韓国は経済的に見て、日本にとってなくてはならないマーケットではないので、当面はパッシング(無視)していればいい」と述べつつも、状況次第では経済制裁などの対抗措置を取ることも考えておくべきだと主張する。

WTOの規定では、『安全保障上の問題が存在する場合』には経済制裁の発動が許されています。日韓間の安全保障上の問題とは、たとえば、朴大統領による竹島への強行上陸や、韓国軍による竹島占領の強化などが行なわれた場合などが挙げられます。

 ただし、安全保障上の問題とまではいえなくても、国際関係のルール上、“相応の対抗措置”をとれる場合もあると考えています。たとえば、現在、韓国の高裁で新日鉄住金三菱重工に戦時微用工への賠償を命じる判決が出ています。

 もしそれが最高裁で確定するようなら、もちろん日本としては日韓基本条約で解決済みとして支払いを拒絶します。その際、韓国側が差し押さえなどの強制手段をとってきたらWTOなどに訴え、対抗措置を取ることはできるでしょう。

 どういう場合、どういった制裁や対抗措置を行ないうるかという具体的なことは申し上げられませんが、それらについて日本の外交当局と話をしたことはあります。感情論に走るべきではありませんが、粛々と、しかし断固たる姿勢を貫くべきです」

 ・・・

 まとめです。

 ここでは発端となった「日本メガバンクが融資を打ち切ればサムスンは一日で壊滅する」(文春記事)の正誤は問いません。

 個人的には文春記事よりもポスト記事の「サムスンは54%の株式を外国人が所有する事実上の外資系企業です。なので、韓国国内で製造する競争力が落ちれば、平気で生産拠点を海外に移します。そうすると、韓国では産業の空洞化がますます進み、雇用が失われて失業率が急上昇し、貧困化、犯罪の多発など、社会不安も増大します」との解説のほうが説得力があるのではないかと感じますが、これもその正誤は問いません。

 そうではなくて以前なら考えられなかった「日本から韓国への経済制裁」という劇薬的対抗措置が、日本の複数のメディアで取り上げられ始めたことに、注目したいのです。

 まだ週刊誌メディアだけですが、この変化は世論の意識変化を敏感に反映しているものととらえるべきでしょう。

 出版系の週刊誌メディアは基本的に芸能人ゴシップ記事をはじめ、真偽不明の「売らんかな」記事が多いのは事実です。

 しかし彼らは生き残るために、常に読者の現在関心のあることに対してアンテナを張り巡らしています。
 繰り返しになりますが、私は今、日本の世論の韓国への意識が、大きく変化、不可逆的ともいえる勢いで急激に悪化してきていると感じています。

 この変化は、TVや新聞などの既存メディアには広告主や自主的規制などのいろいろなフィルターがかかって現出していませんが、日本記者クラブには所属していない出版社系の週刊誌やネット言論空間など経済界などからの圧力を受けない、すなわちフィルターが掛かりづらい媒体から、変化の兆しが顕われてきているわけです。
 これらの変化はTVや大新聞などのマスメディアだけで情報収集していると、見過ごされてしまいます。

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 出版系の週刊誌メディアがこれまでタブー視されてきた「日本から韓国への経済制裁」について記事を掲載し始めています。

 これは日本人の韓国への意識が不可逆的ともいえる勢いで急激に悪化している証(あかし)だと考えます。



(木走まさみず)