木走日記

場末の時事評論

「沖縄は植民地ではない!!」〜オスプレイ配備に激憤の琉球新報、怒涛の社説群を徹底検証



 2日付け産経新聞電子版記事から。

オスプレイ、さらに3機が普天間に到着
2012.10.2 12:37

 米軍岩国基地山口県岩国市)に一時駐機中の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ3機が2日午前10時ごろ、同基地を離陸し、前日の6機と同じく配備先の普天間飛行場沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)に正午過ぎに到着した。

 岩国基地には12機が駐機していたが、計9機が普天間飛行場に配備された。残る3機には部品交換などが必要な機体があり、普天間飛行場への移動は3日以降にずれ込む見通し。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121002/plc12100212400014-n1.htm

 地元沖縄の人々の猛反対の中、ついにMV22オスプレイ9機が普天間飛行場に配備されました。

 これを受けて2日付けの全国紙の社説ですが、朝日・毎日が取り上げています。

【朝日社説】オスプレイ配備―沖縄の怒りを侮るな 
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【毎日社説】オスプレイ配備 沖縄の不信に向き合え
http://mainichi.jp/opinion/news/20121002k0000m070116000c.html

 両紙とも沖縄県民の怒りに理解を示した上で、政府がその不信を取り除くことが重要であるとしています。

【朝日社説】
 沖縄県民が怒るのは、新型機の安全性の問題だけからではない。米軍基地を沖縄に押し込める構造。それがいつまでたっても改まらない。これらを差別的だと感じていた不満が、一気に噴き出したのだ。

 だからこそ、先月の県民大会には、お年寄りから子供まで、組織されない人たちもふくめて数万人もが集まった。参加者の広がりや、抗議にこめられた思いの強さは、これまでとは明らかに質が異なる。

【毎日社説】
 オスプレイの配備強行で政府と沖縄の関係がさらに悪化することを懸念する。政府は普天間辺野古移設に向け、知事への埋め立て申請などの準備を進めている。しかし、その前にやるべきことがある。沖縄の不信に正面から向き合い、それを取り除くために全力をあげることだ。

 オスプレイ配備に賛成の読売・産経・日経の保守系3紙は社説には取り上げないで沈黙を守っています。

 沖縄には地方紙が琉球新報沖縄タイムスの二紙ありますが、本件では沖縄と本土のメディアの温度差が実に顕著です。

 当ブログとしては激化した中国との領土問題を考えれば、今後の島嶼防衛のために高速で足が長いオスプレイが沖縄海兵隊に配属されたことは、今後の紛争抑止に繋がると評価いたします。

 その上でですが、沖縄の人々の不満に対する政府の無策を危惧しています。

 もとより防衛問題は重要なのですが、何よりも自国民の理解が必要です、そしてそこをないがしろにすることは日本の国家としての品格に悪影響を与えると考えているからです。

 比較的冷静な本土のメディア社説に対して、現地沖縄のメディアは中でも琉球新報社説がアツクなっております。

 今回は、オスプレイ配備に激憤の琉球新報における怒涛の社説群を徹底検証をしてみます。

 ・・・

 過去、半月で二日に1回の割合で琉球新報オスプレイ配備反対の社説を掲げ続けています。

オスプレイと知事 民意反映し阻止の先頭に(2012年9月16日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-196943-storytopic-11.html
安全確保策を了承 命差し出す配備あり得ぬ(2012年9月19日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197051-storytopic-11.html
「安全宣言」と沖縄 「空飛ぶ恥」を飛ばすな(2012年9月20日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197090-storytopic-11.html
試験飛行を強行 落ちない保証にはならぬ(2012年9月22日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197159-storytopic-11.html
知事配備中止要請 民意無視し民主国家か(2012年9月26日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197334-storytopic-11.html
オスプレイ配備/沖縄は植民地ではない 軍事至上主義を改めよ(2012年9月28日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197414-storytopic-11.html
配備阻止行動 非暴力的手段を徹底しよう(2012年9月30日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197485-storytopic-11.html
オスプレイ飛来 恐怖と差別強いる暴挙/日米は民主主義を壊すな(2012年10月2日)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-197577-storytopic-11.html

 メディアとして、ここまでひとつの事象に集中して二日と空けず社説を掲げ続けるのは、やはり尋常ではありません。

 「沖縄は植民地ではない」、「恐怖と差別強いる暴挙」、「日米は民主主義を壊すな」などの過激ともいえる描写の社説タイトルを見れば一目瞭然ですが、オスプレイの沖縄配備に琉球新報社説子は激憤しておるわけです。

 当ブログがこの8本の社説群を精読したうえでその内容を分析しましたが、ズバリそのキーワードは「日米」「植民地」「差別」の3つであります。

 「植民地」は6回出現いたします。

 沖縄には生身の人間が住み、声を上げている。決して政治的無人島でも植民地でもない。だが、日本政府の処し方は、米国の意向一辺倒に物事を進める呪縛にとらわれている。9月20日

 県民大会で10万3千人が反対の意志を示してから、わずか12日後だ。この国は住民の声に耳を傾けることより、米国の言うことに従う植民地なのか。まともな民主主義国家とは到底思えない。9月22日

 配備強行は沖縄を植民地扱いする暴挙だ。このままだと全基地が県民の敵意に囲まれる。強欲な軍事至上主義とも言うべき愚策は容認できない。9月28日

植民地政策
 わたしたちが目の当たりにしているのは、日米両政府による民主主義の破壊、人権蹂躙(じゅうりん)にほかならない。配備強行は植民地政策を想起させる蛮行であり、良識ある市民とメディア、国際世論の力で速やかに止める必要がある。10月2日

 日米は沖縄を植民地扱いし、強権を駆使して抵抗の無力化を図ったり県民世論の分断を試みたりするだろう。だが県民は日米の常とう手段を知っており惑わされない。10月2日

 「差別」は7回出現します。

 基地の島・沖縄からは、この国の成熟度がよく見える。統治機構差別的対応をもはやこれ以上甘受できない。国際社会に向けて、より強く、より徹底的に日米の差別的政策を告発せざるを得ない。9月20日

 米メディアが「空飛ぶ恥」と称したオスプレイの配備強行は、沖縄への構造的差別を帯び、民主主義の価値を破壊する愚行である。9月20日

 疑問の多いオスプレイ「安全宣言」に続き、岩国基地での試験飛行強行。米国に隷従し、なりふり構わず配備への地ならしを進める政府の及び腰は、もはや主権国家の体をなしていない。県民への配慮を欠いた森本防衛相の暴論もあった。こうした沖縄差別ととれる政府の姿勢を、県民が容認し、やがてあきらめると思ったら大間違いだ。9月26日

 沖縄が置かれた非人道的な差別的状況に終止符を打つためにも、県民一人一人が主体的に考え、あらゆる非暴力的な手段を駆使して、配備阻止を実現したい。9月30日

 オスプレイ沖縄本島やその周辺で墜落事故を起こせば大惨事になる可能性が大きい。オスプレイ配備は在沖海兵隊基地の永久固定化の可能性も高める。配備強行は沖縄に過重負担を強いる構造的差別を深刻化させる。県民はこれ以上、差別的扱いを甘受できない。10月2日

 そして「日米」ですが32回出現するのです、気になるのはその使われ方です。

 「日米両政府」や「日米安保」などの通常の用語として以外に次のような使われ方をしているのです。

 基地の島・沖縄からは、この国の成熟度がよく見える。統治機構の差別的対応をもはやこれ以上甘受できない。国際社会に向けて、より強く、より徹底的に日米の差別的政策を告発せざるを得ない。9月20日

 だが、私たちは諦念を抱いたり、打ちひしがれることはない。日米の厚い壁を崩すため、ためらわず、粘り強く自己決定権を取り戻す主張を続けたい。民主主義の正当性は沖縄の側にある。9月20日

 これは一貫して配備に反対している県民総意を無視する蛮行である。日米は民主主義を真っ向から否定する国に成り下がったのか。9月28日

 日米は公憤に駆られた県民の行動を正視すべきだ。9月30日

 日米は沖縄を植民地扱いし、強権を駆使して抵抗の無力化を図ったり県民世論の分断を試みたりするだろう。だが県民は日米の常とう手段を知っており惑わされない。10月2日

 県民は沖縄に公平公正な民主主義が適用されるまであらゆる合法的手段で挑戦を続けるだろう。日米は人間としての尊厳をかけた県民の行動は非暴力的であっても決して無抵抗ではないと知るべきだ。10月2日

 これら「日米」の使い方は、沖縄に対峙して使用されており、この文脈では明らかに「沖縄」は「日本」に含まれていません。

 当ブログはメディアウオッチャーとして琉球新報社説を長らく追ってきましたが、ここまでの内容の激化は記憶にありません。

 今までの日本政府の数々の裏切りに沖縄の人々の忍耐の限界が来ている、この琉球新報の社説群は私達本土の人間に警鐘を鳴らしている、そんな気がしてならず、今回「オスプレイ配備に激憤の琉球新報、怒涛の社説群を徹底検証」と題して、読者のみなさまに紹介したしだいです。



(木走まさみず)