木走日記

場末の時事評論

辺野古移設問題:翁長知事の法廷闘争を断固支持する〜この停滞局面を打破するには法廷で白黒決着を着けるのがよろしい

 3月23日午後、沖縄県翁長雄志知事が県庁で会見を行い、普天間基地移設計画に伴い沖縄防衛局が名護市辺野古で実施している工事を1週間以内に停止するよう指示したことを明らかにいたしました。

 これに従わない場合、岩礁破壊の許可を取り消す可能性も示唆し、翁長知事は「腹は決めている」 と覚悟を述べています。

 さてこの沖縄知事の停止指示を受けてメディアは一斉に社説を掲げ論陣を張っています。

 まずは知事を支持するのは、朝日新聞そして沖縄の地方紙2紙。

朝日新聞辺野古移設 沖縄の問いに答えよ
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11666073.html
沖縄タイムス】社説[辺野古 作業停止指示]筋を通した重い判断だ
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=108428
琉球新報】新基地停止指示 安倍政権は従うべきだ 知事判断に正当性あり
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-240804-storytopic-11.html

 支持派は一様に「許可区域外にコンクリートブロックを設置し、サンゴを傷つけていたこと」を批判しています。

 沖縄タイムスの社説より当該部分を抜粋。

沖縄タイムス社説)
 翁長知事にとっては就任以来、最も重い政治決断といえる。なぜ、何を根拠に、知事は作業の停止を求めたのか。一連の経過を冷静に吟味すれば、筋の通った毅然(きぜん)とした判断であることが理解できる。

 県は昨年8月、仲井真弘多前知事の時に、県漁業調整規則に基づき埋め立てに必要な岩礁破砕を許可した。

 しかし今年2月、海底ボーリング調査を再開するため海中にコンクリート製の大型ブロックを投入した際、許可区域外にコンクリートブロックを設置し、サンゴを傷つけていたことが県の潜水調査で分かった。

 翁長知事は「漁業調整規則違反の懸念が払拭(ふっしょく)できない」と主張、調査が終了するまでのすべての作業の中止を指示したのである。

岩礁破砕の許可には条件がついており、条件に反する行為が確認されれば、許可を取り消すのは当然」との主張です。

沖縄タイムス社説)
 菅義偉官房長官は「国としては十分な調整を行った上で許可をいただき工事をしている。全く問題ない」と法的正当性を強調する。だが、岩礁破砕の許可には条件がついており、条件に反する行為が確認されれば、許可を取り消すのは当然である。

 「米軍は、県の立ち入り調査を認めていない」、「県の調査だけを認めないというのは、嫌がらせと言うしかない」と憤ります。

沖縄タイムス社説)
 併せて県は、臨時制限区域への立ち入り調査を認めるようあらためて沖縄防衛局に申請した。公務遂行のための調査であるにもかかわらず、米軍は、県の立ち入り調査を認めていないからだ。

 臨時制限区域内では、民間の工事船や海上保安庁の警備船が多数出入りし、沖縄防衛局も独自の潜水調査を実施している。なのに、県の調査だけを認めないというのは、嫌がらせと言うしかない。

 朝日社説は「知事の行政権限を駆使して沖縄の立場を訴える行動に出るのは当然の流れ」と主張します。

 知事選で辺野古移設阻止を公約して当選した翁長知事にしてみれば、知事の行政権限を駆使して沖縄の立場を訴える行動に出るのは当然の流れだろう。

 ・・・

 対して知事の指示に反対なのは産経新聞・読売新聞の保守系2紙。

産経新聞辺野古移設 知事は停止指示の撤回を
http://www.sankei.com/column/news/150324/clm1503240003-n1.html
【読売新聞】辺野古移設作業 冷静さを欠く知事の停止指示
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150324-OYT1T50157.html

 こちらの論で共通しているのは、そもそも支持派が批判している「許可区域外にコンクリートブロックを設置し、サンゴを傷つけていたこと」は、昨年認可する際、「県は政府との交渉で、埋め立て予定区域に隣接する臨時制限区域に、コンクリートブロックを投下することに問題はないとの立場を示していた」じゃないか、という点です。

産経新聞社説)
 いったん認可した事業のどこが問題なのか。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)前知事時代、県は政府との交渉で、埋め立て予定区域に隣接する臨時制限区域に、コンクリートブロックを投下することに問題はないとの立場を示していたという。

 そして「行政には継続性と公平性が求められる」わけで、「県と十分に調整したうえで作業を実施している」という政府の主張に理解を示します。

読売新聞社説)
 防衛省は、県に事前確認し、昨年6月、アンカー設置に県の許可は不要との回答を受けている。

 さらに県は、那覇空港第2滑走路建設工事でも、今回と同様なアンカー設置について、許可は要らないとの立場を示している。

 行政には継続性と公平性が求められる。「県と十分に調整したうえで作業を実施している」という政府の主張は、理解できる。

 ・・・

 さて両者の言い分を理解したうえでそれでもこれ以上沖縄を追い詰めるなと、沖縄に同情的なのが毎日新聞社説です。

毎日新聞】沖縄の対抗措置 政府は追い詰めるな
http://mainichi.jp/opinion/news/20150324k0000m070151000c.html

 「政府は昨年、破砕許可を得る過程で、ブイや重りの設置について県に問い合わせたが、手続きは不要だという回答を受けた」のは事実だが、「県から見れば、重りの設置手続きが不要という昨年の回答は、サンゴ礁を傷つけるほど大型のブロックを想定していなかったため」と、沖縄知事の判断に理解を示します。

 一方、政府は昨年、破砕許可を得る過程で、ブイや重りの設置について県に問い合わせたが、手続きは不要だという回答を受けた。菅義偉官房長官は「この期に及んではなはだ遺憾だ。法律に基づいて粛々と工事を進める」と県の対応を批判した。

 だが、政府の一連の行政手続きの前提となっている前知事の辺野古埋め立て承認は、昨秋の知事選で県民から信任を得られなかった。

 県から見れば、重りの設置手続きが不要という昨年の回答は、サンゴ礁を傷つけるほど大型のブロックを想定していなかったためだ。許可区域外でサンゴ礁の破壊が明らかになった以上、防衛局は許可を取り直すべきだということになる。

 県の岩礁破砕許可は、県漁業調整規則に基づき「公益上の理由により別途指示する場合は従うこと」「条件に違反した場合は許可を取り消すことがある」と規定している。県はこれに従って、許可の取り消しを検討すると説明している。

 ・・・

 本件ではネット上でも賛否両論論じられていますが、民主党小沢一郎氏も意見されているのには苦笑せざるを得ません。

 BLOGOSから。

民主党
2015年03月24日 11:35
【コメント】沖縄県知事による海上作業停止指示について
http://blogos.com/article/108567/

 失礼して抜粋。

 沖縄の負担軽減と日米同盟の着実な深化を円滑に進めるためにも、政府がより沖縄県民の心に寄り添った姿勢を示すことを強く求める。

 普天間基地移転問題をここまでこじらせた張本人・鳩山民主党政権自己批判・総括もせずして、「沖縄県民の心に寄り添った姿勢」とは笑止です。

 一方、小沢氏は強引に辺野古へ移設することに反対だとおっしゃっております。

 やはりBLOGOSから。

小沢一郎
2015年03月23日 13:25
「あまりにも子どもじみた」安倍政権の辺野古への対応
http://blogos.com/article/108484/

 失礼して抜粋。

しかし、今回の強引な方法は決して国民のためを考えてのことではないと思います。強引に辺野古へ移設することは沖縄県民にとっても、また国にとっても何のプラスにもなりません。むしろ、こうしたやり方は、日本と国民のために大きな汚点を残すことになるだけです。

 小沢氏に関しては、なにをかいわんやです、当ブログとして、辺野古にゴージャスな別荘建てておいてよく言うよと批判したエントリーをしていますので、未読の読者はお時間あればお読みください。

2015-03-24 小沢一郎辺野古ゴージャス別荘」の七不思議
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20150324

 ・・・

 まとめます。

 知事の停止指示、賛成派・反対派それぞれの主張・意見の乖離ははなはだしいです。

琉球新報社説)
 民主主義を重んじる正当性は沖縄にある。安倍政権は工事停止指示を受け入れるべきだ。追い込まれているのは政権の側である。

産経新聞社説)
 沖縄の島である尖閣諸島(同県石垣市)をはじめ南西諸島の安全は、中国の軍事的台頭により脅かされている。沖縄はいや応なくその最前線になっている。

 辺野古移設は、日米同盟の抑止力維持の観点から、沖縄県民を含む国民全体の利益となることを理解してほしい。

 とても建設的な議論ができるとは思えません。

 ここまでこじれると正直、話し合いで解決するのは不可能だと思われます。

 ならばです。

 翁長知事は、辺野古移設を阻止するため、法廷闘争も辞さない構えです。

読売新聞社説)
 翁長知事は、辺野古移設を阻止するため、法廷闘争も辞さない構えを見せている。政治的パフォーマンスに走らず、冷静に政府との接点を探るべきではないか。

 この局面は法廷で白黒決着を着けるのがよろしいでしょう。

 何年も進歩がないこの停滞局面を打破する、ひとつのトリガー(引き金)になれば、法廷闘争もありでしょう。

 当ブログは、政府の方針を支持する立場です。

 しかしもはや話し合いでは局面打破は不可能だと思われます。

 したがってここにいたっては、知事の今回の停止指示は全く支持しませんが、翁長知事の法廷闘争は断固支持します。

 白黒決着を着けるのがよろしい。



(木走まさみず)