木走日記

場末の時事評論

「尖閣では日米安保条約は発動せず」との前提で日本政府は冷静に対処していくことが必要

 今日はダブルエントリーとなります。

 前エントリーでも触れましたが「日米安全保障条約があるから中国は戦争を仕掛けてこない」という見方がありますが、ちょっとその考え方に警鐘を鳴らしたいと思います。

 今回の尖閣をめぐる中国との問題は、日本にとって戦後最大の国際紛争の危機であるといえます。

 両国政府は冷静な対応をすべきであり、間違っても軍事的衝突は絶対避けなければなりません。

 紛争を避けることが大前提ですが、日本人の一部に日米安保への過信があるとすれば、それも戒めなければならないと考えます。

 確かに日米安保がありますので、中国が米軍基地も存在する日本本土も含めた「全面戦争」を仕掛けてくることは、可能性としてゼロに近いでしょうが、かつて英国とアルゼンチンが局地戦を展開した『フォークランド紛争』のような尖閣諸島に限定した軍事衝突の可能性は、もちろんその確率は限りなく小さいでしょうがゼロとは否定できないと思うからです。

 「全面戦争」は安保条約が抑止してくれましょうが、局地的な軍事紛争は可能性を否定できない、もし尖閣諸島局地戦においては米軍が動かないと中国が確信を持って判断した場合、中国軍の暴発的局地的軍事行動は有りうるかもしれません。


 17日付け朝日新聞記事から。

尖閣日米安保の対象」 米国防長官、防衛相らと会談

 玄葉光一郎外相と森本敏防衛相は17日、来日したパネッタ米国防長官と相次いで会談した。玄葉氏とパネッタ氏は尖閣諸島沖縄県石垣市)をめぐる日中の対立について、「日中関係が大きく損なわれないよう日米間で協力する」ことで一致。米国が日本防衛の義務を負う日米安全保障条約が、尖閣諸島にも適用されることも改めて確認したとみられる。

 玄葉氏は会談で、野田政権による尖閣諸島の国有化について説明。そのうえで「大局的な観点から冷静に対処していく」と対中関係に配慮する考えを伝えた。竹島(韓国名・独島〈トクト〉)をめぐる日韓関係でも冷静に対応すると述べ、パネッタ氏と「日韓や日米韓3カ国の連携は重要で、安全保障分野での協力を停滞させない」との認識で一致した。

 パネッタ氏は、森本氏との会談後の共同記者会見で「尖閣諸島での日中の対立は懸念している。当事者が冷静に対応することだ」と述べ、外交手段を通じた平和的解決を求めた。尖閣諸島への日米安保条約の適用については「我々は条約上の義務を守る」と述べたうえで、「主権に関する対立では特定の立場をとらない」とも語った。
(後略)

http://www.asahi.com/politics/update/0917/TKY201209170185.html

 うむ、この時期に急遽予定を変更して来日したパネッタ氏ですが、尖閣諸島への日米安保条約の適用については「我々は条約上の義務を守る」としたうえで、「主権に関する対立では特定の立場をとらない」と尖閣については中立である立場も合わせて表明しています。

 日中の軍事衝突を望んでいる日本人など一人もいませんでしょうし、絶対に避けなければなりませんが、ここにひとつ冷静に我々日本人が考慮しておかなければならないことは、万が一中国が尖閣諸島に対し軍事的行動を起こした場合、本当に日米安全保障条約がはたらき米軍が日本に対して「義務を守る」のか、慎重に予測しておかなければならない点であります。

 アメリカが本気で誰も住んでいない何の施設もないちっぽけな日本の無人島のために、自国の青年達の命を賭して守ろうとするのか、ここは冷静に考えておくべきです。

 本件では共産党機関紙『しんぶん赤旗』が17日付けでスクープ記事を起こしています。

米、「尖閣」は中立
“安保適用”と解釈 解禁文書に明記
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-17/2012091702_01_1.html

 記事によれば、米国務省が72年3月に作成した公式文書が米情報公開法に基づいて公開され、そこに「米国はあくまでも中立」としたうえで、米軍は尖閣諸島を「防衛」するという「解釈」を日本側に与えるとの立場としています。

 米国務省が72年3月に作成した「報道手引」(注)は「(日中間の)尖閣諸島の領有権争いについて中立であるという米国の基本的な立場に変更はない」との立場を示した上で、安保条約が適用されるかどうか問われた際「安保条約の条項は“日本施政下”に適用される、それゆえ尖閣諸島にも適用されると解釈できるようにこたえるべきである」と明記しています。

 米軍は尖閣諸島を「防衛」するという「解釈」を日本側に与えるとの立場です。

 米国務省は現在もこの立場を踏襲しているように思われます。

 この記事から考えられることは、米軍基地がある日本本土や沖縄本島への攻撃に関してはアメリカは参戦するが、無人島である尖閣が攻撃された場合、実際には米軍は動かない可能性のほうが高いと考えたほうがよさそうです。

 中国に限らずアメリカ軍と直接戦火を交えようとする国はいないでしょう。

 ただしかし、中国が尖閣では米軍がぜったい動かないと何らかの手段で情報を確信を持って得た場合、局地的軍事衝突の可能性は否定できないと思うのです。

 領土紛争はちょっとしたきっかけで軍事衝突に暴発する可能性があることを、私達日本人も冷静に心に刻み込んでおいたほうがよろしいです。

 さらに「尖閣では日米安保条約は発動せず」との前提で日本政府は冷静に対処していくことが必要だと考えます。



(木走まさみず)