木走日記

場末の時事評論

また出た!現実主義者安倍晋三!!〜「竹島の日」式典の政府主催見送りと尖閣諸島公務員常駐見送り

 22日付けNHKニュースWEB記事から。

尖閣諸島に安保適用 米で法案成立
12月22日 9時9分

アメリカ議会は、中国が領有権を主張している沖縄県尖閣諸島について、アメリカの防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用範囲内であることを明記した法案を可決成立させ、立場を改めて明確にすることで、中国をけん制するねらいがあるものとみられます。

アメリカ議会上院は21日、本会議を開き、議会下院が前の日に可決した2013会計年度の国防予算の大枠を定める国防権限法案を可決し、法案が成立しました。
この法案には、中国が領有権を主張している沖縄県尖閣諸島を巡る条項が盛り込まれ、「アメリカは領有権に関して特定の立場をとらないが、尖閣諸島は日本の施政下にあり、第三国の一方的な行為によってこの認識が変わることはない」と明記されています。
そのうえで、「日本の施政権が及ぶ地域に対して、アメリカは日米安全保障条約の第5条に基づき、防衛の義務がある」として、尖閣諸島は、日米安全保障条約の適用範囲内であると指摘しています。

(後略)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121222/k10014370531000.html

 うむ、米議会が「尖閣諸島は日本の施政下にあり、第三国の一方的な行為によってこの認識が変わることはない」と明記し「日本の施政権が及ぶ地域に対して、アメリカは日米安全保障条約の第5条に基づき、防衛の義務がある」とはっきり尖閣諸島日米安全保障条約の適用範囲内であるとうたった法案を可決したのであります。

 これは我が国にとって有り難い援護射撃ですね、中国が迂闊に尖閣に手を出すと日本だけでなくアメリカと直接対峙することに成りかねないわけです。

 しかしながら日本国民として勘違いしてはいけないのは、日本の国土はまず日本自身が守ると言う強い自覚を持たなければならないことです。

 尖閣の防衛は一次的にはまず日本自身の責務なのであります。

 22日付け共同通信記事から。

安倍総裁、尖閣公務員常駐先送り 中国へ特使派遣検討

 自民党安倍晋三総裁は22日、沖縄・尖閣諸島の実効支配を強化するため現地に公務員を常駐させるとした衆院選公約の実施を、当面先送りする方針を固めた。反発が予想される中国に配慮したためで、政権発足後には特使の派遣も検討する。対中柔軟姿勢で、尖閣国有化をめぐり悪化した日中関係の改善に取り組む意向だ。

 ただ「竹島の日」式典の政府主催見送りに続く後退で、保守層から公約違反との指摘も出そうだ。

 安倍氏は22日午前、訪問先の山口県長門市で記者団に「日中関係は極めて重要な2国間関係の一つだ。戦略的互恵関係の原点に戻れるように努力していきたい」と強調。

http://www.47news.jp/CN/201212/CN2012122201001404.html

 うーん、「竹島の日」式典の政府主催見送りに続き、尖閣諸島の実効支配を強化するため現地に公務員を常駐させるとした衆院選公約の実施を当面先送りする方針を固めた安倍さんなのであります。

 私はこのような現実主義は歓迎ですが、彼を支持してきた保守派からは批判が起こりそうですね。

 これはデジャブです。

 6年前とそっくりです。

 6年前、首相になった安倍さんはそれまでの勇ましい保守派的論説を引っ込めて現実主義者となり、最初の訪問国を中国とし靖国参拝にこだわった小泉政権ですっかり冷え込んだ日中関係の改善を目指します。

 さらに代表質問への答弁で、過去の侵略戦争と植民地支配を認める村山首相談話を引用して、「政府の認識」に変わりはないと述べ、従軍慰安婦の問題で旧日本軍の関与を認め、謝罪した河野官房長官談話を「受け継いでいる」と明言いたします。

 そして自らは首相として靖国参拝を見合わせます。

 ・・・

 再び現実主義者となった安倍さんに6年前よりも領土問題に関しては保守的になっているであろうこの国の国民はどう評価しますのでしょう、興味深いです。

 彼にとって幸いなことは国民はもともと自民党の政策など余り評価していない(自民の政策を評価した7%)わけで、とにかく民主党政権を終わらせたかった(民主党じゃない政権だから支持した60%)だけですから、「竹島の日」式典の政府主催見送りも今回の尖閣諸島公務員常駐見送りも、それほど批判を受けないかもしれません。

 しかしなあ、安倍さんは正直な人です、対中国カードとして温存しておくならば公務員常駐見送りをあえて明言する必要があったのか疑問です。

 明確なことを何も言わないことも外交術の一つだからです。

 はっきり見送りを発言したのはもちろん中国へのシグナルなのでしょう。

 六年前とそっくりです、また出た!現実主義者安倍晋三!!なのであります。



(木走まさみず)