木走日記

場末の時事評論

震度7東京直下型地震に備えよ

 首都直下型地震の1つ「東京湾北部地震」について、従来の想定の震度6強より大きな震度7となる可能性があるとの調査結果を文部科学省のプロジェクトチームがまとめ、7日発表いたしました。

首都直下、震度7の可能性 従来想定より大きく 文科省の調査チーム発表
2012.3.7 12:02
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120307/tky12030711220000-n1.htm

 首都直下型地震で想定されるマグニチュード7クラスの地震が発生すれば、震度7の地点が生じ、震度6強のエリアも拡大するとの結論になり、震度7東京湾沿岸部など地盤が弱い地域などといいます。 

 具体的な各地域の予想震度マップは今回非公開となっていますが、是非早急に公開していただきたいものです。

 都心部震度7地震が襲った場合、最も懸念されるのは建物の損壊です。

 国の中央防災会議が2004年に発表した想定によれば、震度6強だと全壊率は1%以上だが、震度7に達すると16%以上になります。

 耐震基準は1981年の建築基準法改正で厳しくなっており、それより古い建物の全壊率は高くなり、62〜81年の建物は震度6強で10%以上、震度7では65%以上が全壊し、特に老朽化した61年以前の建物は、震度7で84%以上が全壊すると想定しています。

 私達が注意しておきたいのは同じ震度7でも直下型では建物の被害が大きくなるということです。

 昨年の太平洋沖合で起きた東日本大震災では震度7を記録した地域でも震源から距離があり短周期の揺れが比較的弱く建物の被害は軽微でしたが、直下で起きる東京湾北部地震では、最大震度7阪神大震災と同様の、高速道路やビルなどの鉄骨も含めた大きな被害が発生する可能性が高いことです。

 なぜかメディアではあまり注目されていませんが、東京都が行っている「地域危険度測定調査報告書」は、東京直下型の地震が起きた場合の危険なエリアの詳細情報が把握できて有益な資料であります。

 東京都では、東京都震災対策条例に基づき、昭和50年11月に第1回(区部)の地域危険度を公表しました。その後、市街地の変化を表わす建物などの最新データや新たな知見を取入れ、概ね5年ごとに調査を行っており、直近では4年前の平成20年(第6回目)に公表しています。

 この測定調査では、都内の市街化区域の5,099町丁目について、各地域における地震に関する危険性を、建物の倒壊及び地震による火災について測定しています。

地震に関する地域危険度測定調査(第6回)報告書
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/bosai/chousa_6/download/houkoku.pdf

 報告書では東京都の全5,099町丁目の危険度をマップしています。
■図1:総合危険度ランク図

 実に詳細に渡って地域ごとの危険度を測定していますが、興味深いのは総合危険度上位100町丁目のランキングを公表している点です。
■表1:総合危険度上位100町丁目

順位 区市町村 町丁目名
1 墨田区 墨田3丁目
2 新宿区 若葉3丁目
3 荒川区 町屋4丁目
4 品川区 二葉3丁目
5 足立区 千住柳町
6 足立区 千住4丁目
7 墨田区 京島3丁目
8 足立区 柳原2丁目
9 荒川区 荒川6丁目
10 墨田区 東向島1丁目
11 江東区 北砂4丁目
12 墨田区 東向島5丁目
13 文京区 根津2丁目
14 足立区 千住大川町
15 足立区 千住寿町
16 墨田区 京島2丁目
17 荒川区 町屋2丁目
18 足立区 千住龍田町
19 墨田区 八広3丁目
20 北区 十条仲原1丁目
21 荒川区 南千住1丁目
22 足立区 関原2丁目
23 台東区 谷中3丁目
24 荒川区 西尾久5丁目
25 品川区 二葉4丁目
26 新宿区 改代町
27 品川区 旗の台4丁目
28 江東区 北砂3丁目
29 葛飾 東四つ木3丁目
30 北区 赤羽西4丁目
31 墨田区 押上3丁目
32 目黒区 原町1丁目
33 荒川区 西尾久2丁目
34 荒川区 東尾久6丁目
35 荒川区 南千住5丁目
36 大田区 羽田6丁目
37 大田区 南蒲田3丁目
38 墨田区 八広4丁目
39 豊島区 駒込6丁目
40 墨田区 東向島6丁目
41 江東区 北砂6丁目
42 荒川区 荒川3丁目
43 足立区 関原3丁目
44 足立区 千住仲町
45 豊島区 池袋本町3丁目
46 荒川区 町屋3丁目
47 墨田区 墨田4丁目
48 台東区 根岸4丁目
49 足立区 千住元町
50 足立区 千住3丁目
51 台東区 浅草5丁目
52 北区 志茂2丁目
53 墨田区 八広2丁目
54 江東区 大島7丁目
55 台東区 鳥越1丁目
56 大田区 羽田3丁目
57 品川区 西品川2丁目
58 荒川区 荒川2丁目
59 台東区 小島1丁目
60 荒川区 荒川5丁目
61 葛飾 堀切5丁目
62 墨田区 八広1丁目
63 台東区 竜泉3丁目
64 足立区 本木東町
65 渋谷区 本町5丁目
66 葛飾 東四つ木4丁目
67 墨田区 立花2丁目
68 台東区 日本堤2丁目
69 北区 志茂4丁目
70 豊島区 長崎3丁目
71 豊島区 長崎2丁目
72 文京区 千駄木2丁目
73 江戸川区 平井2丁目
74 足立区 梅田3丁目
75 台東区 台東3丁目
76 足立区 本木南町
77 墨田区 向島4丁目
78 台東区 池之端3丁目
79 台東区 日本堤1丁目
80 江東区 東砂5丁目
81 荒川区 東日暮里3丁目
82 葛飾 立石4丁目
83 足立区 本木2丁目
84 新宿区 赤城下町
85 渋谷区 幡ヶ谷3丁目
86 中野区 野方2丁目
87 荒川区 荒川4丁目
88 足立区 中川3丁目
89 荒川区 西尾久6丁目
90 品川区 二葉2丁目
91 豊島区 雑司が谷2丁目
92 江戸川区 松島3丁目
93 足立区 梅田2丁目
94 葛飾 東堀切1丁目
95 江東区 亀戸5丁目
96 中野区 中野1丁目
97 足立区 柳原1丁目
98 北区 岸町2丁目
99 品川区 中延5丁目
100 台東区 橋場2丁目

 ご覧いただければ一目瞭然ですが、ワースト100エリアは足立区、墨田区荒川区台東区江東区、品川区、北区、葛飾区、豊島区等に集中しており、以下の3つの地域が総合危険度の高い地域だと示しています。

・足立区南部から荒川区台東区東部、葛飾区西部、墨田区江東区北部に広がる地域
・品川区南西部
・北区北部から豊島区北西部に広がる地域

■図2:総合危険度ランクが高い地域

 このようなランキングは不必要に不安心理を煽るというマイナス面もありますが、首都で大地震がいつ発生してもおかしくない状況で、具体的な危険エリアの情報開示は、一人でも多くの人に防災意識を高めてもらう啓蒙効果が期待できます。

 ・・・

 残念ながら現在の科学力では大地震の発生を予知することは不可能です。

 過去の統計から今後何年間での発生確率を推測することしかできませんし、その数値すら研究グループによりまちまちなのが現状です。

 首都直下地震は明日発生してもおかしくない状況である以上、国、自治体、企業、家庭、それぞれがしっかりとした防災意識を持ち、備えていかなければなりません。

 私もクライアント企業に大地震に備えてのリスク管理を啓蒙していこうと思いました。



<参考資料(サイト)>
■わが家の防災マニュアル(PDF)
http://www.kunizakinobue.com/bosai/bosai_manual.pdf
■【労務管理地震・災害マニュアルの作成方法
http://allabout.co.jp/gm/gc/379862/
■「福祉・医療施設防災マニュアル作成指針」(全文).pdf 
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a13200/bousai-manual/bousai-manual/apd1_1_2011020131161357.pdf



(木走まさみず)