木走日記

場末の時事評論

日本は対地震・対津波で世界最強技術を備えた原発輸出国になれる〜ポシティブシンキングでいこう

 19日付けWSJ電子版に興味深いイアン・ブルマ氏によるコラムが掲載されています。

Japan's Shattered Mirror
By IAN BURUMA
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703818204576206550636826640.html?mod=WSJASIA_hpp_MIDDLELSMini

 ブルマ氏は日本は必ず復興する、そしてただ復興するだけでなくより強力になって蘇(よみがえ)ると断言しています。

There is reason to think that Japan will not only bounce back, yet again, but come out stronger.

 日本はただ立ち直るだけでなくより出強くなるだろう、と考えられる理由があるのだ。

 彼が考えられる理由とは何か、記事の該当部分をいくつか抜粋・意訳してみます。

 ひ弱な人間が、活火山斜面でそして地震断層の上に住んでいる意味を理解できるか? 静かにお茶を飲んでいたり食事を作っていたりしている次の瞬間、すべてが土砂、火炎、津波、巨大な大地の揺れで一瞬に消失することを意味するのだ。

 日本人は、台風・地震津波など、古来より常に自然の破壊力を身近に体験してきたのであり、自然の驚異はこの島国に多くの犠牲者を出してきたが、ときにはこの国を救うこともあった、1274年にはモンゴル、中国、朝鮮の16,000の大艦隊を恐ろしい台風が撃破して国を守ったこともある。これが"kamikaze"つまり「神の風」の由来であり、後に第二次大戦の特攻機作戦に名付けられ、当時の軍部の士気高揚に利用される。

 自然災害からの危機感は日本の文化に深く根を降ろしており、 国最古のネイティブの宗教である神道は、文字通り「神々の道」であり、神のように保持されている自然の力をなだめるための儀式で構成されている。

 火山の斜面にそして地震断層の上に住んでいる日本人は永遠の建造物を作らなかったのであり、日本の伝統的な建築物は、柔軟性の紙と木で作られている。この国で最も有名な皇室だけがその大祭司として機能する神聖な神社は、日本の中央部「伊勢」に位置しているが、1500年前に建設されて以来、20年ごとに新しく再構築されてきた。

 東京は1923年に壊滅的な地震で完全に壊滅、1945年には米国の焼夷弾により壊滅と、20世紀に二度破壊された。二回とも、日本人は、速やかに、精力的に、元気に、再び首都を再建設した。 東京はまだ「江戸」と呼ばれた19世紀前半以前でも地震や大火にしばしば襲われたが、大火などは"江戸の花"と誇りを持って呼ばれていたぐらいだ。

 今回も過去1週間で、日本人は驚くべき規律を保持している。 それは幼い頃からすべての日本人に課せられた社会的適合性から来ている。そしてこれから復興する気構えがもうできていることを意味する、何世紀も災害と共に生きてきた日本人の意識の結果である。

日本語の表現で"水に流す"と言う言葉がある、 それは過去のものを綺麗に一切忘れる方法である。 これは、強さ(将来への行動力)でもあり、弱さ(過去の責任を果たしていない)でもある。

 最新の大惨事の全容はわからないが、日本は立ち直ることになる、そして再び、今までより出強くなると考える十分な理由があるのだ。

 日本人は、台風・地震津波など、古来より常に自然の破壊力を身近に体験してきたのであり、そのたびに必ず力強く復興してきた歴史がある、今回も例外ではなくより手強くなって復興することだろう、と、日本にエールを送る意味合いもあるのでしょうが、大変日本人にとって励まされるコラムなのであります。

 ・・・

 「1000年に一度」のM9.0の大震災です、現在でも原発対策や救済支援活動が行われており首都圏でも経験のない「計画停電」が行われており、あらゆる面で厳しい局面が続いております。

 しかし、このWSJコラムでも指摘されているように我々日本人は過去において危機の度にそれを乗り越えて多くの場合、より力強く復興してきた歴史があります。

 「逆手に取る」と言う言葉があります。

 機転を利かせてこの危機的な状況を活かすことです。

 例えば次のようにポシティブに考えればどうでしょう。

 現在も必死の対策が繰り広げられている原発ですが、ここでも前向きに評価してみることはどうでしょう。

 もし現在の福島第一原発の対策が功を奏し、世界中の国家が注目する中で、何とか事態が収拾されたならば、これは危機レベル5か6の事故となりましょうが、非常に貴重な経験を日本は得たことを意味します。

 1000年に一度とも言われるM9.0の大地震と想定外の大津波に襲われた中で悲劇的な大事故の発生を押さえた経験は、世界に類のない貴重な情報・データが集積されたことでしょうし、今後の原発建設に多くの教訓を示すことができるはずです。

 今回得られる貴重な情報は、国内の既存の原発施設に対して津波対策も含めた新たな基準を設定し、安全性をより強化することに利用されましょう。

 世論を考えれば国内での原発の新規建設は当面難しいでしょうが、海外では中国など新興国原発開発計画がラッシュです。

 中国やインドなど新興国では電力需要の急拡大から、日本が協力してもしなくとも、原発の建設は予定通り進めざるを得ない、それぞれの国内事情があります。

 当然ながら発電に多くの水を必要とする原発の建設予定地はほとんどが海岸近くであり、今回の日本の経験および技術はどの国も大変注目しているはずです。

 ならば日本の貴重な経験と技術を生かし、より安全な原発建設に協力することが可能なはずです。

 すなわち今回の事故の経験を生かし、海外に安全な原発を供給する国際貢献とビジネスの機会に変えるわけです。

 つまり「1000年に一度」の大地震・大津波に耐えた日本の原発として、安全な原発を輸出する機会と考えれないでしょうか。

 日本は対地震・対津波で世界最強技術を備えた原発輸出国になれる可能性があるのです。

 

(木走まさみず)