木走日記

場末の時事評論

メア氏メモ(原文)と産経コラム「産経抄」に共通する醜悪な特徴

 10日付け産経新聞電子版速報記事から。

米政府、沖縄「ゆすり名人」発言のメア氏を更迭 米高官が松本外相に謝罪
2011.3.10 10:01
 在日米大使館は10日、「沖縄はゆすりの名人」などと発言した米国務省のメア日本部長の更迭を発表した。発言で日本側の反発を招いた事態を重視し、早期の収拾を図った。後任にはラスト・デミング元駐日首席公使を起用する。発令は10日付。

 これに関し、来日中のキャンベル米国務次官補は10日午前、外務省で松本剛明外相と会談し、メア氏の発言について米政府として公式に謝罪。メア氏の更迭を伝達した。

 メア氏の発言をめぐっては、沖縄県議会が発言撤回と謝罪を求める決議を全会一致で可決。菅直人首相も「大変遺憾に思う」と述べるなど、反発が広まっていた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110310/plc11031010010010-n1.htm

 在日米大使館が「沖縄はゆすりの名人」などと発言した米国務省日本部長で元沖縄総領事のケビン・メア氏の更迭を発表、あわせて米政府は日本政府に公式に謝罪しました。

 米国務省日本部長という要職にありながらのこの発言、更迭および米政府の公式謝罪は当然といえましょう。

 メア氏は、昨年末、国務省内で行われた米大学生らへの講義で「沖縄の人々はごまかしとゆすりの名人だ」と発言した上で「米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)は(住宅地に近い)福岡空港伊丹空港と同じだ」と指摘、「日本政府は沖縄県知事に『お金がほしいならサインしろ』というべきだ」「改憲されていたら米国の国益を増進するため日本の土地を使うことができなくなっていた」などと語ったとされています。

 外交シーンではなく米国大学生相手のいわば身内だけのオフレコ講義という状況での発言です、このメモ内容が正しければまさに親日家メア氏の本音が出たのだと推測できます。

 メア氏の講義を学生が取ったメモの原文はこちら。

United States Department of States Briefing
December 3rd,4pm,at the Department of State
http://www.news-pj.net/pdf/2011/american-university.pdf

 日本語訳は琉球新報が8日付けで記事にしています。

メア氏講義メモ全文(日本語訳)
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-174366-storytopic-3.html

 さて日本語訳ではなく原文のほうでこの講義メモを読み解くとひとつの特徴が浮き彫りになります、この観点での報道が少ないようなので今回はこの話題のメモの原文を検証したいのであります。

 原文を読むとすぐに気づくのはメア氏が沖縄県民のことを"Okinawans"(沖縄人)と表現し、"main land"(本土)の"Japanese"(日本人)と明確に区別していることです、この短い文の中で"Okinawans"は10回も登場しています。

 特に問題となった「沖縄の人々はゆすりをかける名人」発言あたりを原文であたって見ましょう。

Japanese culture is a culture of "Wa(harmony)"that is based on consensus. Consensus building is important in japanese culture. While the Japanese would call this "consensus", they mean "extortion" and use this culture of consensus as a means od "extortion". By pretending to seek consensus,people try to get as much money as possible. Okinawans are masters of "manipulation" and "extortion" of Tokyo.

 日本の「和(調和)」を重んずる文化は意見の一致に基づいている。合意形成は日本文化において重要なものだ。日本人はこれを「合意」と呼ぶ一方、それは「ゆすり」を意味し、彼らは「合意」の文化を「ゆすり」の手段に使っている。合意を模索するとみせかけ、できるだけお金を引き出そうとするのだ。沖縄人は日本政府を巧みに操り、ゆすりをかける名人である。

 見事に"japanese"(日本人)と"Okinawans"(沖縄人)を明確に使い分けています。

 上記に続く文章でもこの傾向は顕著であります。

Okinawa's main induustry is tourism.While there is an agricultural industry, the main industry is tourism. Although Okinawans grow goya, other prefectures grow more than Okinawa,Okinawans are too lazy to grow goya.
Okinawa has highest divorce rate, birthrate (especially out of wedlock) and drunk-driving rate due to Okinawa's culture of drinking liquor with high alcohol content.

 沖縄の主要産業は観光業だ。農業もあるが、主要産業は観光業だ。沖縄人はゴーヤーを栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄人は怠惰すぎて栽培できないからだ。
 沖縄は離婚率、出生率(特に非嫡出子)、度数の高い酒を飲む沖縄文化による飲酒運転率が最も高い。

 メア氏の発言ですが、この原文メモを読むと実にメア氏の心底にある沖縄蔑視(べっし)観が露呈していて、読んでいるこちらがメア氏を嫌悪したくなるような醜悪なセンテンスなのであります。

 一部ではメア氏の発言を「無知からくる暴言」であるとか「沖縄だけでなく日本人全体を侮蔑するもの」という捉え方をしている論説を見受けますが、氏は滞日20年の親日家であり、自他共に認める米政府きっての知日家であり夫人も日本人であり日本語も流暢、そもそも普天間基地問題でも沖縄総領事しとして米政府側担当者として関わってきたのであります。

 このメモの内容が正しければ彼が日本人全体ではなくピンポイントに"Okinawans"(沖縄人)を貶している事は明々白々であります。

 ここで展開されるのは彼の個人的見解なのでありますが、この沖縄県民蔑視(べっし)観は残念ながら一部の本土保守層が持っている沖縄観と共通するところであります。

 9日付け産経新聞コラム「産経抄」から。

3月9日
2011.3.9 02:46

 拝啓 沖縄のみなさまへ。東京は弥生に入っても雪が降りましたが、やんばるのつつじは、もう見ごろでしょうねえ。寒がりの抄子にとってうらやましい限りです。

 ▼さて、メアという米国務省の偉い人がひどいことを言ったようですね。「沖縄の人々は怠惰でゴーヤーも育てられない」と間違った情報を学生に教え、「沖縄の人々は日本政府に対するごまかし、ゆすりの名人だ」と罵(ののし)ったとか。

 ▼「ウチナー時間」といわれるほど時間に大らかでも、離婚率が日本一でも怠惰といわれる筋合いはありません。第一、和名でツルレイシというゴーヤーは、宮崎などでも盛んに栽培されていますが、沖縄が出荷量日本一なのは変わりません。

 ▼「ごまかし、ゆすりの名人」に至っては、何を指しているのかわかりません。まさか、政府が北部振興策や基地対策と称し、湯水のごとく札束をばらまいていることではないはずです。メアという人は何にも知らない素人ですね。

 ▼と思っていたら、20年近くも日本に住み、沖縄で総領事を3年務め、かりゆしまで着ていたとか。沖縄でよほどいやな経験をしたか正直者かのどちらかでしょう。でも、もっと重要なのは「改憲されていたら、米国の国益を増進するため日本の土地を使うことができなくなっていた」という発言です。

 ▼彼の理屈では、日本には戦力と交戦権を否定した憲法9条があるので、自衛隊だけで国を守れず、米軍に頼らざるを得ない、というわけです。悔しいけれど当たっています。地元紙には書いてありませんが、米軍基地をなくす早道は憲法改正しかありません。さあ、沖縄から憲法を変えましょう。デモもできない隣の国が変な気を起こさぬ前に。敬具。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110309/plc11030902480002-n1.htm

 「拝啓」から始まり「敬具」で終わる、書簡の形式を慇懃無礼にコラムしているなど、沖縄県民を小馬鹿にしている点ではメア氏講義メモの上をいっている産経コラムなのであります。

 「「ウチナー時間」といわれるほど時間に大らか」と、コラムの文脈は終始一貫、沖縄県民の気質を馬鹿にしています。

 メア氏の発言を批判する形式をとりながら、実はメア氏と同様の沖縄県民蔑視(べっし)の感情を隠そうとしていません。

 ・・・

 メア氏メモ(原文)と産経コラム「産経抄」に共通するのは、醜悪な沖縄蔑視(べっし)観だと思います。



(木走まさみず)