「現行案回帰」に及んで「埋め立ては自然への冒涜」発言を修正する鳩山首相の厚顔無恥
「5月末決着」の方向性が見えてきました。
20日付け朝日新聞記事から。
日米両政府は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、移設先を同県名護市辺野古周辺と明記した共同声明を取りまとめる方向で最終調整に入ったことがわかった。鳩山由紀夫首相が決着期限としている5月末に、両国の外務・防衛担当4閣僚(2プラス2)の合意として発表する方針だ。
28日にも、首相が記者会見する方向で調整している。
声明には、辺野古沿岸部を埋め立てる現行案を前提に進められてきた環境影響評価(アセスメント)のやり直しはしない方針も盛り込む方向で調整している。2014年までに移設を完了する計画を遅らせたくない米側の強い意向があるためだ。
具体的な工法については触れない方向だが、新たなアセス無しでは、現行案では2本の滑走路を1本にしたり、建設場所を数十メートル程度沖合にずらしたりといった微修正しかできない見通しだ。「最低でも県外」と訴えてきた鳩山首相の政治責任が厳しく問われることは必至で、県外移設を主張する社民党も強く反発すると見られる。日米合意について、閣議決定や閣議了解などの手続きを取れない可能性もある。
首相は、辺野古周辺を埋め立てる現行計画を「自然への冒涜(ぼうとく)」と強く批判。そのため日本側は海底に数千本のくいを打ち、その上に1800メートル規模の滑走路1本を建設する「くい打ち桟橋方式」を、米側に提案してきた。
しかし、桟橋方式は、規模が大きい場合、新たなアセスが必要となる。さらに、強度に不安があり、水中に爆弾を仕掛けるなどのテロ攻撃に弱いとして米側が難色を示しており、実現は困難だ。
このため鳩山政権内では、公共工事などで海に流れ込んだ赤土などによるヘドロを掘り返して埋め立てに使う構想が浮上。周辺の海洋環境を再生させた上で、埋め立て地内に水路を造り、サンゴ礁や藻場の定着などを促進して環境への配慮を示す構想で、アセスのやり直しの必要がなければ、今後の選択肢として検討されると見られる。政府関係者によると、首相もこの案に関心を示しているという。
声明には、沖縄の負担軽減策として、海兵隊の訓練の県外移転についても盛り込む。ただし、鹿児島県・徳之島などの具体的な移転先の地名は書き込まない方向だ。地元の同意が得られる見通しが立たないためと見られる。
声明では、海兵隊をはじめとする在沖縄米軍の抑止力の重要性について確認。現行案に盛り込まれている在沖縄海兵隊約8600人とその家族のグアム移転を進めていく方針も改めて明記する。
21日の岡田克也外相とクリントン国務長官との会談では、実務者間の協議を続けていくことを確認。来週以降も断続的に協議を続け、最終的な声明を固める見通しだ。(伊藤宏)
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■日米の外務・防衛担当閣僚(2プラス2)による共同声明案の主な内容
・新たな環境影響評価(アセスメント)を必要としない施設
・在沖縄海兵隊の訓練の一部を県外に移転。徳之島は明記しない方向
・在沖縄米軍の抑止力の重要性を確認
http://www.asahi.com/politics/update/0519/TKY201005190459.html
5月末に日米共同声明発表、工法は明記しないものの「普天間飛行場の移設先は沖縄県名護市辺野古周辺」としかつ「新たな環境影響評価(アセスメント)を必要としない施設」ということで、「2014年までに移設を完了する計画を遅らせたくない米側の強い意向」に配慮するかたちをとっており、消去法で現行回帰の「埋め立て方式」が有力視されはじめました。
「5月末決着」の方向性がようやくその輪郭がはっきりしてきたわけですが、この日米共同声明で「普天間飛行場の移設先は沖縄県名護市辺野古周辺」と明記する方針は、あきらかに鳩山首相のこれまでの「埋め立ては自然への冒涜」発言と相容れない内容であります。
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私は普天間移設問題は国外移設以外は現実的選択肢は現行案しかないと考えておりましたので、この日米共同声明案は評価いたします。
予定通り2014年までに移設を完了することを重視するならこの案しかありますまい。
が、しかし鳩山首相の一国の首相としての無責任極まる言動の変節ぶりは、おそらく大きな禍根を残したと危惧しております。
地元沖縄の人々だけでなく、多くの日本国民にしても、また関わった米軍関係者にとっても、この経過を見てきた世界のメディア関係者にとっても、こう言動が変節してしまっては今後彼の発言内容を信じることはできないでしょう。
普天間移設問題は民主党がどう取り繕い言い訳しても、読売新聞が報じたとおりこれは「現行回帰」です、移設先が「辺野古」で工法が明記はしないが消去法で「埋め立て方式」しかあり得ないからです。
民主党はなんとか独自色を出そうと環境に優しい「赤土」を利用した方式などを強調したいようですが、そのような環境への配慮の必要性は認めるものの、そもそも「環境に優しい埋め立て方式」などあるわけがないという基本的事実は素直に認めなければいけません。
ことここに及んでは必要なのは「言い訳」ではないでしょう、毅然としたそして責任ある真摯な対応と必要ならば誠意を込めた謝罪でしょう。
この案は誰が判断しても「現行案回帰」なのですから。
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「最低でも県外」と訴えてきた鳩山首相の政治責任が厳しく問われることは必至です。
県外移設を主張する社民党も強く反発するでしょう。
この日米合意について閣議決定や閣議了解などの手続きを取れないでしょう。
そして一番の問題は地元沖縄の同意をどう取り付けるのか、まったくめどが立たなくなったことです。
鳩山首相の一連の無責任な言動「最低でも県外」「自然への冒涜」等は、その時点でいかに鳩山氏の本音であったとしてもです、結果としてですがその言動が意味もなく沖縄県民の哀れな県外移転という期待を最後まで引っ張ってきてしまったことになり、最後の最後でのこの変節は、地元沖縄にしてみれば「裏切り」としか移らないのではないでしょうか、沖縄県民の反発を最大限にしてしまったとするさらば、鳩山首相の責任は極めて重いと言わざるを得ません。
しかし。
20日付け日経新聞記事から。
首相、「埋め立ては自然への冒涜」発言を修正 普天間問題
2010/5/20 1:26鳩山由紀夫首相は19日、沖縄の米軍普天間基地移設問題に関して、米軍キャンプ・シュワブ沿岸部の埋め立てを「自然への冒涜(ぼうとく)」とした自らの発言について「埋め立てをむやみに行うことに対してそう発言した」と述べた。「むやみ」という言葉を使うことで、埋め立て工法を必ずしも排除しない考えを示したものだ。首相官邸で記者団の質問に答えた。
首相は4月24日、シュワブ沿岸部を埋め立てる現行案について「辺野古の海が埋め立てられることは自然への冒涜と大変強く感じる。現行案が受け入れられるような話はあってはならない」と強く否定していた。
「自然への冒涜」は「埋め立てをむやみに行うことに対してそう発言した」のであると・・・
なんという厚顔無恥なのでしょう・・・
鳩山氏はもしかしてわざと沖縄県民の怒りを一身に浴びようとしているのでしょうか?
いまこの瞬間に求められているのはエクスキューズ(言い訳)では断じてないことを理解されていないのでしょうか。
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それにしても日本の大新聞もおかしな媒体です。
現行案しかないと考えていたからでしょう、朝日・読売・毎日・産経・日経、五大主要紙のいずれも、この鳩山氏の無責任な変節を内心は歓迎しているのでしょう、現時点(20日)でいっさいの批判をしてはいません、その社説は沈黙を守っています。
私はこの普天間問題における鳩山氏の一連の無責任な発言と問題解決能力の欠如は、一国の首相としては、強く批判されるべきであると考えます。
(木走まさみず)