木走日記

場末の時事評論

「自然に対する冒涜(ぼうとく)」を選択するなら鳩山首相は責任をとり辞職すべきだ〜「結局、辺野古「埋め立て」へ」(読売スクープ)

 読売のスクープです。

 19日付け読売新聞紙面一面トップ記事から。

結局、辺野古「埋め立て」へ…普天間移設

 米軍普天間飛行場移設問題で、政府は、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部に建設する代替施設の工法を「埋め立て方式」に戻す方向で最終調整に入り、米政府側に伝えた。

 複数の政府筋が18日、明らかにした。

 有力案だった「杭(くい)打ち桟橋」方式は、米政府側が安全・技術面で強い難色を示しているため、断念する方向だ。移設問題は、鳩山政権発足以来8か月間の迷走の末、最終的に、移設場所も工法も、現行計画にほぼ近い案に戻る見通しが強まった。

 政府は17日から都内で開いている日米外務、防衛当局の課長級、審議官級実務者協議で、米側にこうした方針を提示した。沖縄県幹部にも17日、非公式に伝えた模様だ。政府関係者は18日、「杭打ち桟橋方式に対する米側の反応は厳しい。協議に持ち出す雰囲気ではない。こちらももう、考えていない」と語った。

 政府が先にまとめた移設最終案は、2006年に日米が合意したキャンプ・シュワブ沿岸部を埋め立ててV字形に滑走路2本を建設する現行計画を修正し、沖合に杭を打って桟橋を造り、滑走路を建設する内容だった。しかし、米側は、桟橋方式はテロ攻撃やミサイル攻撃に弱いことや、現行計画に基づく環境影響評価以上の手続きが必要となることなどから、強い難色を表明した。政府は、「5月末決着」に向け、米側と一定の合意を得るためには、工法を変えざるを得ない、と判断したものとみられる。

 沖縄県仲井真弘多県知事は従来、滑走路の沖合移動を条件に現行計画を容認し、名護市でも辺野古区など地元の3区は賛成している。市議会でも、半数近くが現行計画容認派だ。埋め立て方式の場合、沖縄県内の建設・土木業者が事業に参画しやすくなる利点がある、との指摘もあり、政府は地元でも一定程度の理解を得られるとみている。

 ただ、政府は「現行計画回帰」との批判を避けるため、滑走路の配置などを修正したい考えだ。米側はその場合でも、現行計画に関する環境影響評価の範囲内で、なおかつ運用上の要求を満たすことができる「微修正」しか応じないものとみられる。

 協議が大詰めに入ったため、鳩山首相クリントン国務長官が21日に来日する機会をとらえ、政府案への理解を自ら求めたい考えだ。北沢防衛相も18日、防衛省でルース駐日米大使と会談し、協力を要請した。

(2010年5月19日03時02分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100518-OYT1T01222.htm

 現在(19日午後1時)のところネットで確認する限り、この報道は読売新聞単独のようでありますが、報道が事実とすれば大きなスクープです。

 「政府は「現行計画回帰」との批判を避けるため、滑走路の配置などを修正したい考え」だそうですが、工法を「埋め立て方式」に戻すこと自体これは現行回帰と見なされることは避けられません、滑走路の位置を微修正したり埋め立て面積を多少減らしたりと、何とか民主党独自色を出したいとするのは理解しますが、記事にもありますが米軍側は「運用上の要求を満たすことができる「微修正」しか応じない」のは明白である限りここは潔く「現行計画回帰」と認めるべきでしょう。

 この読売報道が事実だとすればですが、先月23日に米紙ワシントン・ポストがすっぱ抜いた岡田克也外相とルース駐日大使の密談で、外相が現行案の一部修正を検討していることを伝えた記事が、実は真実であった可能性が大きくなります。

 当時、岡田外相も鳩山首相もこの米紙報道内容を完全否定していました。

 24日当時の時事通信記事から。

鳩山首相「埋め立ては自然への冒涜」=現行案決着を否定−普天間移設

 鳩山由紀夫首相は24日、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設問題で、キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)に移す現行案で決着させる可能性について「辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜(ぼうとく)と感じる。受け入れるという話はあってはならない」と述べ、明確に否定した。
 首相は既に、米側が最善とする現行案を容認しない考えを示していたが、5月末の決着期限を控え、立場に変更がないことを確認した。視察先の群馬県大泉町で記者団の質問に答えた。 
 移設先をめぐる日米間の調整は現在、岡田克也外相とルース駐日大使との間で主に行われており、米紙ワシントン・ポストは23日に両氏が会談し、外相が現行案の一部修正を検討していることを伝えたと報じた。
 これに関し、岡田氏は24日、長崎県佐世保市内で記者団に、会談は認めながらも「そういう事実はない」と報道内容を否定。また、「重要な(沖縄の)県民大会を控えて(米紙報道は)極めて遺憾だ」と語った。
 首相も米紙報道について「内容は必ずしも事実ではない」と強調し、「政府案を真剣に検討している最中で、まだ結論が出ていない」と述べた。
 北沢俊美防衛相も24日、長野市内で記者団に「現行案に戻ることはあり得ない」と指摘した。(2010/04/24-19:36)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201004/2010042400294

 相手のある外交交渉はすべてをオープンにするわけにも当然行かないわけで、メディアに対してときにおとぼけやごまかしなど政治家がはぐらかすことは認めましょう、最良の結果を求める場合中途経過は秘匿すべきことも多いものです。

 それにしても当時の鳩山首相の「辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜(ぼうとく)と感じる。受け入れるという話はあってはならない」という、発言はいかがなものでしょうか。

 桟橋方式というのが頭にあったのでしょうが、「辺野古の海が埋め立てられることは自然に対する冒涜(ぼうとく)」と言う発言は、現行計画回帰で埋め立て方式に戻るとしたこの読売スクープ記事が事実とすれば、結果的にですが、鳩山首相は自ら「自然に対する冒涜(ぼうとく)」と発言した「埋め立て方式」を選択するということになるわけです。

 ・・・

 一事が万事、鳩山首相のその場しのぎの発言は思慮が足りないと言わざるをえません。

 「埋め立て方式の現行計画回帰は現段階でまったく検討してはいない」ぐらいの表現で淡々と否定しておけば禍根は残らないものを、鳩山氏は「自然に対する冒涜(ぼうとく)」などと強烈な表現を用いて余計な修飾を不用意にしてしまうのです。
 
 結局埋め立て方式に戻るならば、この余計な修飾は完全に無駄な表現でした、いやそれ以上に移設反対派に哀れな余計な「期待」を膨らませておいて結果的に失望させたわけですから、これは一国の総理大臣としていかがなものでしょうか。

 現行計画回帰ならば、鳩山首相は一連の迷走劇の責任をとりいさぎよく辞職すべきです。



(木走まさみず)



<追記>05/16 16:05

 読売スクープですがただの「飛ばし」記事ではないようです。

 朝日新聞が後追いフォロー記事を速報しています。

辺野古・ヘドロ埋め立て浮上 工法決定、5月は見送りへ

2010年5月19日15時1分

 沖縄県の米軍普天間飛行場宜野湾市)の移設問題で、鳩山政権が同県名護市の辺野古沿岸部に検討している「くい打ち桟橋方式」と並行して、周辺環境への影響を最小限にとどめた形での埋め立ても検討していることが明らかになった。

 ただ、鳩山由紀夫首相が決着期限としている5月末までに米側と具体的な工法については合意できない見込みで、6月以降も米側と調整を続ける方針だ。

 現行案の埋め立ては、海砂などを使うことが想定されており、海の環境への悪影響が指摘されている。政権内で浮上している埋め立て案は、公共工事などで海に流れ込んだ赤土などがもとになったヘドロを掘り返して使う構想。周辺の海洋環境を再生するほか、埋め立て地内に水路を造り、サンゴ礁や藻場の定着などを促進して新たな生態系作りも視野に入れている。政府関係者によると、鳩山首相自身も関心を示しているという。

 首相が移設問題の「5月末決着」を掲げていることから、日米は何らかの形で合意文書を作る方向で協議を進めている。政府高官は19日午前「具体的な工法は文書に盛り込まない方向だ」と語り、その後も調整が続く見通しだ。

 辺野古沿岸部への移設案をめぐっては、鳩山首相が4月下旬、埋め立てを伴う現行案について「自然への冒涜(ぼうとく)」と厳しく批判。政権内では「環境に配慮した工法」として桟橋方式を軸に検討してきた。

 だが、断続的に開かれている日米の外務・防衛の実務者協議で、米側は桟橋方式について、新たな環境影響評価(アセスメント)が必要になる可能性があり、移設が現行案より大幅に遅れる可能性があることや、構造上の弱点などから難色を示している。

http://www.asahi.com/politics/update/0519/TKY201005190185.html

 なんでも「公共工事などで海に流れ込んだ赤土などがもとになったヘドロを掘り返して」埋め立てに使う方式を検討していて「政府関係者によると、鳩山首相自身も関心を示している」とあります。

 「赤土」を使い「埋め立て地内に水路」を作り海洋環境にできるかぎり配慮するようです。

 環境に優しい埋め立て方式ですか。

 意味がよくわかりませんが、そうきましたか。

 なんか脱力です。