木走日記

場末の時事評論

国の借金を4倍にした「平成」というすごい時代〜後世の人々はこの時代をどう評価するか

 21日付け朝日新聞記事から。

内閣支持率20% 発足以来最低 朝日新聞世論調査
朝日新聞社が19、20日に実施した全国定例世論調査(電話)によると、菅直人内閣の支持率は20%で、昨年6月の内閣発足以来最低となった。不支持率も62%で最高。また、菅首相の進退について聞いたところ、「早くやめてほしい」が49%で、「続けてほしい」の30%を上回った。

(後略)

http://www.asahi.com/politics/update/0221/TKY201102200509.html

 ついに菅直人内閣の支持率が20%にまで落ち込んだことを報じている朝日記事なのでありますが、他社の世論調査でも20%前後や20%割れの数字が並んでいます。

 当ブログでは一年前、鳩山政権(当時)の支持率が20%近くに落ち込んだ昨年4月、時事通信内閣支持率を調査開始した1960年7月以来の歴代の23の内閣の、在職期間と最低支持率、最低支持率を記録した時期について徹底検証してみました。

2010-04-26 支持率20%はこの国の政権のイベント・ホライゾン
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20100426

 その結果、任期中に死去された小渕政権を例外とすれば次の事実がこの国の政権崩壊の過程で成立することを確認しました。

 1.一度20%割れした政権は余命1年ない。
 2.一度20%割れした政権は、その後末期までの期間に差はあるものの、ころがる石のように支持率は低下していき、最後最低支持率を記録して末期を迎える。

 上記ブログをエントリーしたのは昨年4月でまだ鳩山政権支持率はぎりぎり20%台を保っていましたが、翌5月には20%割れし、案の定翌6月8日、鳩山政権は総辞職に追い込まれました。

 菅政権の寿命は果たしてあと何ヶ月ありましょうや、じっくりと見守りたいと思います。

 ・・・

 平成になって22年間、菅首相は実に16番目の内閣総理大臣なのであります、歴代平成首相を在任日数付きで表にまとめてみました。

■表1:平成首相一覧

内閣名称 在任期間 在任日数
01 竹下 登内閣 (昭和62年11月6日〜平成元年6月3日) 576
02 宇野宗佑内閣 (平成元年6月3日〜平成元年8月10日) 69
03 海部俊樹内閣 (平成元年8月10日〜平成3年11月5日) 819
04 宮澤喜一内閣 (平成3年11月5日〜平成5年8月9日) 643
05 細川護煕内閣 (平成5年8月9日〜6年4月28日) 263
06 羽田 孜内閣 (平成6年4月28日〜6年6月30日) 64
07 村山富市内閣 (平成6年6月30日〜8年1月11日) 562
08 橋本龍太郎内閣 (平成8年1月11日〜平成10年7月30日) 932
09 小渕恵三内閣 (平成10年7月30日〜平成12年4月5日) 615
10 森 喜朗内閣 (平成12年4月5日〜平成13年4月26日) 387
11 小泉純一郎内閣 (平成13年4月26日〜平成18年9月26日) 1980
12 安倍晋三内閣 (平成18年9月26日〜平成19年9月26日) 366
13 福田康夫内閣 (平成19年9月26日〜平成20年9月24日) 364
14 麻生太郎内閣 (平成20年9月24日〜平成21年9月16日) 359
15 鳩山由紀夫内閣 (平成21年9月16日〜平成22年6月8日) 266
16 菅 直人内閣 (平成22年6月8日〜 ) 259(2月21日現在)

 ご覧の通り、2年間(730日)持ったのは、海部(818日)、橋本(932日)、小泉(1980日)の3内閣だけです、16人中わずか3人です。

 考えてみれば22年間で16人です、単純にわり算すれば、その平均寿命は1年半です、ほとんどの内閣が2年持たないはずです。

 22年間で16人の首相が入れ替わる間にこの国の財政はどうなったのか、今月財務省が発表した国の借金の速報値は10年12月末時点で実に919兆円と過去最高を更新しています、10日付け毎日新聞記事から。、

国の借金:最高更新919兆円 10年12月末

 財務省は10日、国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の借金が、10年12月末時点で919兆1511億円となり、過去最高を更新したと発表した。前回発表の9月末時点から10兆2894億円の増加。借金を国民1人当たりに換算すると、約721万6000円となる。借金の増加は、社会保障関係費の増大などで膨らんだ予算を国債増発で賄ったことが主な要因。建設国債赤字国債などを合わせた普通国債の残高は、14兆3424億円増の628兆1558億円。財政投融資の財源に使う財投債なども含めた国債全体では753兆8080億円となり、12兆5202億円増えた。国債以外では、民間金融機関などからの借入金が6658億円増の55兆561億円、政府の一時的な資金不足を穴埋めする政府短期証券が2兆8966億円減の110兆2870億円だった。

 国の借金をめぐっては、政府が1月、11年度末には997兆7098億円に達し、1000兆円の大台に迫るとの見通しを国会に提出している。

http://mainichi.jp/life/money/news/20110211k0000m020060000c.html

 記事の結びにあるとおり、政府の先月国会に提出した資料では11年度末には997兆7098億円とついに国の借金は1000兆円の大台に迫るとのことであります。

 919兆のうち、国債全体では753兆、さらにその大半を占める628兆が普通国債なのですが、この普通国債の発行残高を一つの指標にして、平成の22年間で普通国債残高がどのように膨らんできたのかを検証してみましょう。
 ここに「戦後の国債管理政策の推移」という資料(PDFファイル)があります。

戦後の国債管理政策の推移
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/siryou/hakkou01.pdf

 この資料で示されている「国債」とは注釈にも明記されていますが国債全体ではなく「普通国債」のことであります。

 この資料をもとにして平成22年間の普通国債残高の推移を表にまとめてみました。

 参考までにその年の首相も備考欄に示します。

■表2:平成における普通国債残高推移

年度 国債発行額 国債依存度 国債残高 残高/GDP 首相
 元 21.7兆 10.1% 160.9兆 38.8% 竹下・宇野・海部
02 26.0  10.6  166.3  37.0  海部
03 25.6   9.5  171.6  36.3  海部・宮澤
04 31.0  13.5  178.3  36.9  宮澤
05 38.0  21.5  192.5  40.1  宮澤・細川
06 39.4  22.4  206.6  42.4  細川・羽田・村山
07 46.6  28.0  225.1  45.4  村山
08 48.3  27.6  244.7  48.1  村山・橋本
09 49.9  23.5  258.0  50.3  橋本
10 76.4  40.3  295.2  58.7  橋本・小渕
11 77.6  42.1  331.7  66.4  小渕
12 86.3  36.9  367.6  72.9  小渕・森
13 133.2 35.4  392.4  79.5  森・小泉
14 136.4 41.8  421.1  86.0  小泉
15 138.8 42.9  457.0  92.6  小泉
16 160.1 41.8  499.0  100.1 小泉
17 165.0 36.6  526.9  104.6 小泉
18 161.2 33.7  531.7  104.1 小泉・安倍
19 141.3 31.0  541.4  105.0 安倍・福田
20 135.7 39.2  545.9  110.5 福田・麻生
21 151.8 51.5  594.0  124.8 麻生・鳩山
22 162.4 48.0  637.0  134.0 鳩山・菅

 見て下さい、平成元年には国債発行額21.7兆、予算における国債依存度は10.1%、国債残高は160.9兆だったのが、この22年間で見る見る悪化し、平成22年には国債発行額162.7兆と7.5倍、予算における国債依存度は48%と4.8倍、国債残高は628兆(表では637兆ですがこれは見込み値なので毎日記事の速報値を使用します)と3.9倍なのであります。

 ※この表の国債残高は国の借金の中の普通国債の残高だけを示しており、もちろん借金総額は毎日記事にあるとおり平成22年919兆円におよんでいます。

 そして情けないのは、この22年間のこの国の首相の延べ人数であります。

 平成元年から平成22年までの22年間、多い年で年3人、大抵が年2人、その年を一人の首相で乗り越えたのは22年間の中で半分に満たない9年だけなのであります。

 平成時代前半22年間で、首相は16人量産され、国の借金は4倍になり1000兆に届こうとしています。

 数値が示す平成の前半22年間は、歴史的トピックといってもよいでしょう、すごい時代なのであります。

 後世の人々は、この時代をどう評価するか、この時代を過ごしてきた今の私たちをどう思うか、考えるのが少し怖いです。



(木走まさみず)


<テキスト修正履歴>2011/2/22 14:10
表1の在任日数の計算値が間違っていましたので修正いたしました。
「数字が間違ってますよ」様、ご指摘ありがとうございます。
>あ、こっそり直してある
ご指摘が朝だったので通勤前にこっそり直したんですが、間違いが1カ所じゃなかったんですね(笑)
電卓じゃダメだなあ、今回はエクセルマクロを使ってみました。