木走日記

場末の時事評論

オソマツな外務大臣がオソマツなトラブル中の件


 ニュージーランド地震に対する緊急援助はもちろんしっかりやってもらわなければなりませんが、前原誠司外相は急変する世界の動向を正確に分析・対応し、この国の国益を損なわぬよう、ときに迅速にときに柔軟にアメリカなど同盟国と密に連絡をとりつつ外交戦略をたてていかなければなりません。

 ドミノ現象を示している中東の民主化デモは、リビアにて大きな局面を迎えています。

 遙か中東のことではありません、産油国リビアの騒乱は世界そして日本に、今、確実に影響を及ぼそうとしています。

 23日付け産経記事から。

天安門事件のようにデモ隊を叩き潰す」カダフィ氏、退陣拒否も政権の亀裂拡大
2011.2.23 08:55

 【カイロ=大内清】騒乱が続くリビアでオベイディ公安相が22日夜、反体制派に合流するとして辞任を表明、軍部隊に対し、最高指導者カダフィ大佐(68)への反乱を呼びかけた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラが、声明を読み上げる公安相の映像を放映した。政権中枢からも公然とカダフィ氏排除の動きが出始めたことで、カダフィ政権はますます危機的な状況に陥っている。

 軍出身のオベイディ氏は一連の反体制デモ発生後、デモ隊に対する外国人傭兵(ようへい)部隊の投入に反対したとされる人物。同国北東部の部族出身で、東部住民や軍に影響力があるといわれる。オベイディ氏は辞任後、中東の衛星テレビ局アルアラビーヤとの電話インタビューで、現在は北東部にある第2の都市ベンガジにいることを明らかにした。

 カダフィ大佐は同日夕、国営テレビで1時間以上にわたり演説、「国を去ることはない。死んで殉教者となるまで(国を)導く」「最後の血の一滴まで戦う」「(中国の)天安門事件のようにデモ隊を叩きつぶす」などと述べ、改めて退陣や亡命を否定した。

(後略)

http://sankei.jp.msn.com/world/news/110223/mds11022308570011-n1.htm

 往生際が悪いと申して良いでしょう、「天安門事件のようにデモ隊を叩き潰す」とカダフィ大佐が吠えています。

 カダフィ大佐が吠えるほど往生際が悪いほどあたかも現地では混乱に拍車が掛かっているように見えます。

 ついに石油生産の停止を伝えるロイター記事から。

レプソルとENI、リビアでの石油生産を停止
2011年 02月 23日 05:11

 [ロンドン/ローマ 22日 ロイター] リビアでの反政府デモによる混乱拡大を受けて、新たにスペインのレプソル(REP.MC: 株価, 企業情報, レポート)と伊ENI(ENI.MI: 株価, 企業情報, レポート)の石油会社2社が、リビアでの原油生産を停止した。

 両社ともに生産停止による影響の規模については明らかにしていないが、業界筋によると、レプソルが生産停止を表明したエル・シャララ油田の生産量は日量約20万バレルで、リビアの生産量の13%前後に相当する。

 レプソル広報担当は「暴動と不透明感を受けて、リビアでの生産をすべて停止した」と明らかにした。

 ENIは天然ガスの生産を一部停止したことを明らかにしたが、施設への打撃は及んでいないとした。

(後略)

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19671220110222

 結果、中東産原油市場は急騰しています、日本市場でも一時、前日終値比2350円高の1キロリットル=5万5000円(1バレル=104.99ドル)まで急騰、約2年4カ月ぶりの高値水準となりました。

 毎日記事から。

原油リビア緊迫化で価格高騰 世界経済に影

 産油国であるリビアの情勢緊迫化を受け、世界の原油価格が急騰している。原油価格上昇は企業業績や個人消費の下押し要因となることから、東京株式市場は全面安の展開となり、日経平均株価終値は前日比192円83銭安の1万664円70銭となった。原油がすぐに供給不安に陥る可能性は低いものの、中東各地に混乱が波及すれば、世界経済の減速要因となることは必至だ。【宮崎泰宏、清水憲司、米川直己、ロンドン会川晴之】

 「石油の供給源を多様化して安定確保できるよう努力する。オールジャパンでやらねばいけない課題だ」。菅直人首相は22日夕、報道陣に対し、原油高騰の影響を最小限に抑える姿勢を強調した。

(後略)

http://mainichi.jp/life/money/news/20110223k0000m020107000c.html

 で、石油が上がれば安全資産とされる米国債が買われ、米国債が買われれば日米の金利差が縮小し、結果ドルを売り円を買う動きが出るわけで、円が急上昇はじめています。

 朝日記事から。

中東情勢悪化で円上昇、1ドル=82円台後半

2011年2月23日13時39分

 23日の東京外国為替市場の円相場は中東情勢の悪化を受けて上昇し、1ドル=82円台後半で推移。午後1時現在、前日午後5時時点より65銭円高ドル安の1ドル=82円59〜60銭。対ユーロでは同32銭円安ユーロ高の1ユーロ=113円10〜13銭。

 リビアの混乱拡大から投資家のリスク回避姿勢が広がり、22日のニューヨーク市場で安全資産とされる米国債を買う動きが強まって米長期金利が低下。日米の金利差が縮小するとの見方からドルを売り、円を買う動きが強まった。東京市場でもこの流れを引き継いでいる。ユーロは、ユーロ圏の利上げ観測から円に対して買われた。

 23日の東京債券市場では日本国債も買われ、長期金利の代表的指標の新発10年物国債の流通利回りは一時、前日終値より0.035%幅低い年1.235%をつけた。

http://www.asahi.com/business/update/0223/TKY201102230096.html

 で、円高になればおきまりでありますように、日本株は一段安となるわけです。

 日経記事から。

日経平均、下げ幅拡大 一時1万571円
2011/2/23 14:10

 23日後場中ごろの東京株式市場で日経平均株価は一段安になった。一時は前日終値比93円安の1万0571円まで下げ、きょうの安値を更新した。その後も弱含んで推移している。13時前後から株価指数先物へのまとまった売り注文が断続的に出て、先物主導で相場水準を切り下げた。

 外国為替市場で円相場が1ドル=82円台半ばまで強含んだことが重荷となり、自動車や電機など輸出関連の主力銘柄に売りが膨らんだ。このほかに新規の売り材料は特段観測されておらず、市場では「前日に売っていた機関投資家の買い戻しが一巡したようだ」(国内証券の株式情報部門)との声があった。もっとも押し目買いの動きも観測され、25日移動平均(22日時点で1万0548円)を下値に意識した展開が続いている。

 東証株価指数(TOPIX)も下げ幅を広げた。

(後略)
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C938181E29B8181E3E78DE0E1E2E0E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

 中東騒乱がリビアの石油生産に陰を落とし始め、結果原油高を引き起こし、そして危機に強い米国債が買われ始め、結果円高になり、日本株が売られ始め日経平均株価は一段安となりました。

 目まぐるしく動く国際情勢・経済情勢に日本政府はしっかりと対峙していかなければなりません。

 ・・・

 ああそれなのに、我が国の外務大臣は国内で情けないトラブルを引き起こしているようです。

 産経記事から。

富山市長が政府批判「家族を失望させた」 専用機同乗が一転、不可で
2011.2.23 12:31

 ニュージーランド地震で現地に向かう政府専用機をめぐり、富山市の森雅志市長は23日、同市の富山外国語専門学校の関係者を同乗させられないと、政府側が連絡してきたことを明らかにした。

 前原誠司外相は22日夜、現地に派遣する国際緊急援助隊が乗る政府専用機で、被災した生徒の家族らを同乗させる考えを示していた。

 森市長は23日の市幹部を集めた会議で「やっぱり無理と言われた。希望を募っておきながら、いかがなものか」と政府側の対応に苦言を呈した。

 市によると、外務省は22日夜、学校側に同乗をいったん提案したが、搭乗者数の制限などから不可能と伝えてきたという。森市長は「家族はかえって失望してしまう。(政府は)確度の高い情報を出す必要がある」と批判した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110223/plc11022312320013-n1.htm

 なんだかなあ。

 被災した生徒の家族の心労はいかばかりでしょう、一刻も早い救出を祈るばかりですが、それにしてもこの小さな記事で示されていることは、今の民主党政権の無責任ぶりを実に象徴的に現していると私には思えました。

 まず、前原誠司外相が「現地に派遣する国際緊急援助隊が乗る政府専用機で、被災した生徒の家族らを同乗させる」考えをおそらく思いつきなのでしょう、確たる裏もとらないで公言してしまいます。

 で、「外務省は22日夜、学校側に同乗をいったん提案した」わけですが、実際には「搭乗者数の制限などから不可能」と断ることになります。

 この政治家の自らの言葉に対する無定見・無責任、これこそが現在の民主党政権の最大の特徴であり支持率急降下の最大の要因なのだと思います。

 なぜ発言する前にしっかり関係部署に家族を乗せることが可能であることの裏取りをしないのか、そんな簡単な確認作業もせずなぜ「学校側に同乗をいったん提案し」てしまうのか、もし実現できないときには失望を買うことがわかりきっているのに。

 結果、「搭乗者数の制限などから不可能」と勝手に提案して被災した生徒の家族に期待させておいて一方的にやはりダメですとは、何という対応か、これが一国の政府の外務大臣の海外で被災した自国民のその家族に対する対応なのです、なんたるオソマツなことでしょう。

 ・・・

 自国民にすら結果的にウソをついてしまうオソマツな情報収集能力しか持たない政府なのです。

 世界情勢の急展開に迅速に対応できるはずもないでしょう。

 激動の中東騒乱の中、国際情勢に迅速に対峙することではなく、不毛にも自国民にできもしないことでウソついて勝手にトラブるオソマツな日本国外相なのであります。

 オソマツな話です。



(木走まさみず)