木走日記

場末の時事評論

元旦早々国民のモチベーションをいきなり下げまくっている朝日・読売・日経社説の愚

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

 2011年はどのような年になりますのでしょう。

 当ブログでは例によって主要5紙の元旦社説読み比べとまいりましょう。

【朝日社説】今年こそ改革を―与野党の妥協しかない
http://www.asahi.com/paper/editorial.html
【読売社説】世界の荒波にひるまぬニッポンを 大胆な開国で農業改革を急ごう
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20101231-OYT1T00503.htm
【毎日社説】2011 扉を開こう 底力に自信持ち挑戦を
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110101k0000m070070000c.html
【日経社説】世界でもまれて競争力磨く志を再び
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE0E2EBE2E2E0E4E2E2E3E2E3E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8

 うむ、今年の主要紙元旦社説の特徴は2つ、ひとつは産経新聞が社説を掲載していないことです。

 これは新機軸ですね、日本の新聞は1月1日に長文の社説を掲載するのが慣習でありましたが、まあ今年を占う総論的内容が多いため、ピリリとした論説は少なくていったい誰が読むのだろう的なマンネリ感があったのは事実です、産経の元旦社説不掲載ですがマンネリ化した紙面構成を変革するシグナルだとすれば前向きに評価したいです。

 で、もうひとつの特徴が毎日を除いた各紙、つまり朝日・読売・日経「あらたにす」3兄弟の論調がやたら「暗い」のであります。

 朝日・読売・日経の文頭の書き出し部分を並べて読んでみて下さい、もうね、元旦早々「お通夜モード」(苦笑)なのであります。

 なんとも気の重い年明けである。(朝日)

 四海の波は高く、今にも嵐が襲来する恐れがあるというのに、ニッポン丸の舵(かじ)取りは甚だ心もとない。(読売)

 めでたいとは言い難い年明けだ。(日経)

 3紙とも日本の残念な現状をこれでもかと列挙していくのですが、もうね正月早々読んでいると暗くなってしまうわけです。

 朝日社説は日本は「人類の歴史で初めて体験する厳しい事態」なのだと力説します。

 危機の現状を見てみよう。

 日本の人口は2005年から減少傾向に転じた。現役世代に限ると、減少はすでに1990年代の半ばから始まっていた。この働き消費し納税する現役世代が減り始めたことが、日本経済の長期低迷の根底にある。

 代わって急増するのが引退世代。現在は現役3人弱で引退世代1人を支えているが、20年後には2人弱で1人を支える。そのとき、現役世代は1400万人以上も減っている――。

 人類の歴史で初めて体験する厳しい事態といっていい。

 現在の年金も健康保険も、制度の基本は高度成長の時代につくられた。団塊を先頭とする戦後世代が続々と働き手になる時代だった。それが、いまや低成長に変わって現役世代が減少し、その負担がどんどん増す。来年からは団塊が引退世代へ入り始める。

 正反対への変化を見つめれば、社会保障の仕組みを根本から立て直さないと維持できないことは明らかだ

 読売社説は「日本の存立にかかわる外交力の劣化と安全保障の弱体化」を取り上げています。

 一昨年9月の歴史的な政権交代から1年3か月余り。その間、3党連立政権の崩壊から鳩山前首相退陣、菅後継内閣へと、民主党政権の表紙は替わったものの、政治の機能不全が続いている。

 懸念すべき政治現象の一つが、日本の存立にかかわる外交力の劣化と安全保障の弱体化である。

 それを如実に示したのが、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件と、メドベージェフ露大統領の北方領土視察だ。

 日米同盟の亀裂を見透かした中露両国の露骨な揺さぶりに、「主権」をないがしろにされた菅政権は、非をただすどころか、ただ波風を立てることを恐れ、軟弱な対応に終始した。

 「戦略的互恵」「善隣友好」という表層的な外交標語に隠れて、一時を糊塗(こと)したに過ぎない。

 それもこれも外交・安全保障の基軸である、日米同盟をおろそかにしたからである。

 日本を抜きつつある経済力を背景に、軍事力を増強する「膨張中国」。海洋資源・権益と海上交通路の確保を目指し、外洋への海軍展開を進めている。

 国内のナショナリズム台頭をにらんで、不法に占拠した北方4島の領有を誇示するロシア。

 「強盛大国」を掲げ、権力継承の不安定な過渡期に、危険な挑発を繰り返す北朝鮮

 日経社説が国際比較の具体的数値を出して「近未来の経済の姿を示す指標で日本は劣る」と日本がいかに落ち目の三度笠なのかしつこく指摘します。

 国内総生産(GDP)で中国に並ばれ、日本はアジアでも経済超大国ではない。しかも近未来の経済の姿を示す指標で日本は劣る。

 経営開発国際研究所(IMD)によれば、国・地域の競争力は世界1位がシンガポール、2位が香港。日本は台湾(8位)や中国(18位)、韓国(23位)にも及ばず27位だ。

 経済協力開発機構OECD)の学習到達度調査では15歳の読解力で日本は8位と、上海(1位)、韓国(2位)、香港(4位)などの下。また、物理と化学の専門論文の発表数で日本は中国を下回っている。

 一方で、長期停滞のなかで育った若い世代には「努力しても、そんなに豊かにはなれない」というあきらめもあるようだ。そこそこの生活ができれば、あくせく競うのは避けたいという気持ちもあるのだろう。

 いやはや事実は事実として受け止めるべきなのは理解しますが、正月早々こう「暗い」指摘をされてしまうとせっかくのおせち料理ものどのとおりが悪くなると言うモノです。

 で、この「暗い」社説の結論はというと朝日と読売が同じで民主・自民の大連立しかないのですと。

 朝日社説。

 思えば一体改革も自由貿易も、もとは自民党政権が試みてきた政策だ。選挙で負けるのが怖くて、ずるずる先送りしてきたにすぎない。民主党政権がいま検討している内容も、前政権とさして変わらない。どちらも10年がかりで進めるべき息の長い改革だ。

 だとすれば、政権交代の可能性のある両党が協調する以外には、とるべき道がないではないか。

 読売社説。

 結局のところ、普天間移設、TPP、消費税率引き上げといった緊急かつ重要な課題を解決するには、安定した強力な政権を誕生させるしか道はあるまい。

 本来なら、衆院解散・総選挙を断行した上で、単独にせよ連立にせよ、衆参ねじれ現象の政治的矛盾を解く新政権をつくるのが筋だろう。

 しかし現状では、支持率低下により次期総選挙敗北必至と見られる菅首相が、衆院解散に打って出る可能性はきわめて小さい。

 だとすれば、次善の策として、懸案処理のための政治休戦と、暫定的な連立政権の構築を模索すべきではないか。

 なんだかなあ、政治の閉塞状況を打破するには大連立しかないと主張する朝日・読売両紙なのであります。

 一方、日経はキャメロン英首相やアップル、グーグルなど米企業を例に出し、日本の「政治家と経営者」の責任は重いとまとめています。

 外科手術が必要なのに、痛み止めを与える。そんな政策を民主党政権自民党政権と同様、続けている。八方美人の政策は有害でしかない。嫌われても嫌われても、必要な政策を断行するキャメロン英首相(44)の勇気に倣うべきだ。

 日本再生のもう一方の主役は企業経営者。技術力はあるのに、アップル、グーグルなど米企業に新製品や新サービスで先を越されている。また、何社もがひしめき、大型の研究開発や投資で外国勢に後れを取る業界も多い。保守的な経営が働き手の潜在力を殺してはいないか。

 政治家と経営者は、日本経済のこの大転換期に極めて重大な責任を負っていることを自覚してほしい。

 ・・・

 ふう。

 どうなんでしょうか、正月早々「お通夜モード」全開で日本の悪いところや問題点を列挙する主要3紙なのでありますが、これは国民のモチベーションをいきなり下げまくっていると言う点で逆効果じゃないのかなと思うのですよね。

 元旦なんですから、同じ問題点を指摘するにしても、毎日社説のようにまず日本に自信を持とうと明るくモチベーションを上げたうえで問題点を解決していこうと論を進めていくべきでしょ。

 各紙とも「ほめて育てる」視点が完全に欠落しているので、日本国民としては読んでいて暗くなっちゃうばかりなのであります。

 このような煽るような危機意識の強制というのはマスメディアの悪い癖だと思います。

 元旦早々国民を落ち込ます朝日・読売・日経「あらたにす」3兄弟社説なのであります。

 確かにこんな元旦社説なら産経のように不掲載が正解なのかもです。



(木走まさみず)