高齢者不明問題:マスメディアは甘い! 建前論を捨てベクトルを即刻「犯罪」報道に転換せよ!!
高齢者不明問題が大きくクローズアップされています。
6日付け読売新聞記事から。
え!国内最高齢?「119歳」女性も不明
100歳以上の高齢者の所在不明が発覚している問題で、大阪府東大阪市が所在不明と発表した高齢者のなかに、住民登録上、「119歳」の女性と「115歳」の男性が含まれていることが5日、分かった。
厚生労働省が確認している国内最高齢は現在、佐賀県在住の113歳の女性。同市は2人について、「本人を確認できない」として、厚労省に対しては、高齢者としての届け出を行っていなかった。
女性のケースでは、同市は2002年11月、介護保険料が納付されていなかったことから、住民登録上の住所地を訪ねるなど所在確認を行ったが、女性を確認できなかった。その後は再調査せず、住民登録抹消も行っていなかったという。
市は毎年9月、100歳以上の高齢者の人数を厚労省に報告しているが、この女性については報告から除外してきた。最後に安否を確認した時期は不明で、親族の存在も把握できていないという。このケースについて市は「02年の調査以降、放置していたことは怠慢だったかもしれない。今後、所在不明の状態が続けば、住民登録の抹消手続きをとりたい」としている。
(2010年8月6日03時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100806-OYT1T00096.htm?from=main1
なんというかここまで来ると日本人の平均寿命の統計値にも影響が出るんじゃないのかというなさけない有様であります。
主要紙社説から。
【朝日社説】高齢者不明―調査だけでは解決しない
http://www.asahi.com/paper/editorial20100805.html
【読売社説】高齢者所在不明 家族と地域で「長寿」見守ろう
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100804-OYT1T01265.htm
【毎日社説】高齢者の所在不明 これが長寿国の実像か
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/archive/news/20100805ddm005070093000c.html
【産経社説】高齢者所在不明 だれにでも起こる問題だ
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/100805/wlf1008050308000-n1.htm
各紙社説の論調はその結語に表れています、朝日は「孤独死や虐待死」を含めた問題としてとらえています。
自分の周りで孤独死や虐待死、「いるはずのお年寄りが消えていた」という事態が起きたときの衝撃を想像する。それを避けるため何ができるのかを考える。そのきっかけとしたい。
読売は「「長寿」を温かく見守る社会を取り戻す」べく知恵を出そうとまとめています。
近所付き合いの中で高齢者の安否を確認し合う地域の機能も、すっかり衰えてしまったのか。
家族や地域が「長寿」を温かく見守る社会を取り戻すために、知恵を出し合いたい。
毎日は「介護保険や医療保険の使用状況をチェック」し「安否確認を徹底」すべしとしています。
100歳以上は昨年9月時点で4万399人だが、今後は増加の勢いが強まり、30年には27万人、55年には63万人になると推定されている。対策を急がねばならない。せめて年金受給者の所在不明が疑われた場合、すぐに介護保険や医療保険の使用状況をチェックし、利用実績がなければ面会に出向くなどして安否確認を徹底すべきではないか。
産経は少子化のなかで「今回の問題を、長寿社会の安心、安全を考える契機」とすべきと結んでいます。
日本は少子化も急速に進み、社会の支え手は減っていく。すべてを行政に、とはいかない。急増する高齢者を社会、もっといえば共同体でどう支えていくのか。今回の問題を、長寿社会の安心、安全を考える契機としたい。
「長寿社会の安心、安全を考える契機」(産経社説)など、残念ながら各紙社説の論調はきれい事・建前論であります。
判明しつつある事例の少なからずは、「犯罪」行為として扱われるべき性質の悪事、すなわち、調査の甘さを利用し、死亡を隠して親の年金を不正受給を続けていた「犯罪」と見るべきです。
民生委員が訪問しても面会を拒否、あるいは「どこどこにいる」と虚偽報告し、個人の人権やプライバシー尊重をたてに本人死亡の事実を隠匿、何十年も年金等を不正受給してきた行為はこれは立派な「犯罪」行為であります。
4日付け読売新聞記事から。
杉並「113歳」に遺族扶助料…都が50年支給
東京都内で最高齢とされる杉並区の古谷ふささん(113歳)が所在不明となっている問題で、都が先月まで50年間にわたり、古谷さんに対して「遺族扶助料」と呼ばれる手当を支払っていたことがわかった。
都によると、古谷さんの夫は元都職員で、退職後、都の恩給を受けていた。夫の死後の1960年5月からは、「遺族扶助料」として支給が続けられていた。
同扶助料は年4回、古谷さん名義の銀行口座に振り込まれてきた。都は2年に1度、対象者に調査票を送って、住所変更などがないか調べているという。古谷さんあてに最後に送付したのは昨年3月で、同5月に必要事項を記入したはがきが都に返送されてきた。都は「古谷さんの名前で返送されたが、実際に誰が記入したかは不明」としている。
(2010年8月4日14時48分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100804-OYT1T00648.htm
「古谷さんの名前で返送されたが、実際に誰が記入したかは不明」とありますが、これは確信犯でしょう。
すべての事例が確信犯的不正受給であるわけでは当然ないですが、虚偽記載や虚偽報告など明らかに悪意ある不正行為が認められたケースは「犯罪」として扱われるべきです。
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マスメディアは報道姿勢が「甘い」と言わざるを得ません。
高齢者不明問題は、建前論を捨てベクトルを即刻「犯罪」報道に転換すべきです。
(木走まさみず)