木走日記

場末の時事評論

聡明な読者のみなさん、この朝日社説が何を言いたいのか教えてください〜4日付け朝日社説「少子高齢化―がんばりようがあるか」が何を言いたいのかまったく理解できない私

 今日はダブルエントリーです。

 半年前の読売記名記事ですがとても具体的でわかりやすかったです。

少子高齢化」への対策
就業者増やし「支え手」確保 / 女性・高齢者に働きやすい環境を

 少子高齢化社会保障制度は崩壊する――。若い世代を中心に、そんな悲観論が広まっている。40年後には高齢者1人を現役世代1人で支える「肩車型」になると言われ、世代間の対立感情も強まる一方だ。超高齢社会の荒波を乗り切ることはできるのか。(林真奈美)

 (後略)

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=57914

 記事をなぞりながら説明しますと、今、若い世代を中心に、「少子高齢化社会保障制度は崩壊する」悲観論が広まっています、40年後には高齢者1人を現役世代1人で支える「肩車型」になると言われ、世代間の対立感情も強まる一方です。

 昔は1人のお年寄りを大勢で支える「胴上げ型」、今は3人で支える「騎馬戦型」、2050年代には1人が1人を支える「肩車型」とは野田首相の表現ですが、この超高齢社会の厳しさに、国民の危機感は募る一方です。

 65歳以上の高齢者1人を支える20〜64歳の人数は、将来推計人口などによると1970年の8・5人が2010年には2・6人になり、50年には1・2人まで減る見込み、正直「とても支え切れない」というのが実感でしょう。

 しかし視点を変えれば前向きな議論も可能です。

 社会保障の支え手は働いてお金を稼ぐ就業者ですが、65歳以上でも2割は働いていますし、逆に現役世代でも子育て期の女性を中心に3割近くが就業していません。

 つまり実際の「支える人」と「支えられる人」の割合は、現役世代と高齢世代の人口比率とは全く違うのです。

 権丈善一・慶応大教授は「視点を変えて、社会全体で就業者1人が何人の非就業者を支えるかを見ると、1人程度でこの数十年間ほぼ安定しており、将来もあまり変わらない。実態としては、若い世代の将来の負担が何倍にもなるわけではない」と、指摘しています。

 子供なども含めて広く扶養の負担を見ると、高齢者が増える一方で子供が減り、従来はほぼ一定です。

 今後は高齢者が急増しますが、女性や高齢者の就労拡大が見込まれています。

 09年の年金財政検証で用いた就業率の見通しを基に試算すると、50年でも就業者1人が支える人数は1・1人程度で、今の1割増しにとどまります。

 女性や高齢者が働きやすい環境を整え、支え手に回る人を増やすことで、少子高齢社会の荒波も何とか乗り切れることがわかります。

 年金財政検証の就業率の見通しは、労働政策研究・研修機構の推計値を基にしたもので、女性30〜34歳で10年の64・1%が30年には75・6%、男性65〜69歳で46・8%が62・7%と、かなり大幅に上昇する設定になっています。

 難しい目標ですが総人口が減少に転じ働き手の確保は成長戦略としても欠かせません。

 経済成長は社会保障制度の安定性も高めます。

 具体的にはどのような対策が求められるのか。

 鍵を握るのはやはり女性です。

 第一子の出産前後に退職する女性は6割に上り、20年前から変わっていません。

 保育所不足や長時間労働のため、働く意欲があっても断念している人も多いのです。

 保育サービスなど子育て支援の拡充と、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の確保など働き方の改革の両面から取り組み、働く意欲のある人がすべて働けるようにする必要があります。

 ワーク・ライフ・バランスへの配慮など柔軟な働き方の開拓は、体力や意欲に個人差が大きい高齢者の雇用拡大にも通じることでしょう。

 働く高齢者が増え、年金支給開始年齢の引き上げが可能になれば、支え手の負担も減らせます。

 さらに、低賃金や不安定雇用にあえぐ非正規労働者の処遇改善も急務です。

 子供を産んだ後も女性が働きやすい環境をしっかりと整えれば、長期的には出生率の向上をもたらし、社会保障制度の安定にもつながるわけです。

 具体的な対策を提示していて良記事であります。

 まさにいまこそ、保育所不足の早期解消、子育て女性も安心して働ける働き方の改革等々、具体的に検討すべきテーマを絞り、国民的議論を興しそのうえで政治力で実現していくべきだと思います。

 ・・・

 さてここに4日付けの朝日新聞社説があります。

少子高齢化―がんばりようがあるか
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

 社説冒頭から頭が痛いです。

 たぶん、「がんばりようがある」とわかれば、みんな、なんとか、がんばっちゃうんだと思う。/「がんばりようがない」というときが、いちばん、じつは、くるしいわけで。(糸井重里「羊どろぼう。」から)

 「がんばりようがある」と思うのは、どんなときだろう。

 よくわからない始まり方ですが、続いて「労働経済白書の試算」では「働き手が押しつぶされる肩車型のイメージとは随分違う」と説明していきます。

 65歳以上の高齢者が今年、3千万人を突破した。20〜64歳の現役世代は減少していく。65年に9.1人で1人のお年寄りを支える「胴上げ型」だった日本社会は、いまや2.4人で1人の「騎馬戦型」。2050年には1.2人で1人を支える「肩車型」になる――。

 政府が社会保障と税の一体改革を訴えるため、盛んに発信したメッセージである。

 これで「がんばれる」だろうか。現役世代は肩の荷が際限なく重くなる絶望感を抱き、高齢者は年をとることが何か悪いことのようで不安になる。そんな反応が自然だろう。

 ここで示された人口構成の変化にうそはない。

 だが、「支える」ための負担の重さは本来、「働いていない人」1人を何人の「働いている人」で支えるかで示すべきだ。

 この指標だと、見える風景は違ってくる。

 今年の労働経済白書の試算によると、働いていない人と就業者の比率はここ数十年、1対1前後で安定してきた。

 高齢者が増える一方、子どもの数が減ることで、社会全体としてみると、働いていない人の割合が極端に高まっているわけではないからだ。

 さらに白書は今後、一定の経済成長を達成し、多くの女性や高齢者が働くようになるケースでは、就業者は現状の延長に比べ、2020年で352万人、30年で632万人増えるという見通しも示している。今より働く人の比率が増える。

 働き手が押しつぶされる肩車型のイメージとは随分違う。

 そしてやはり「女性の就業」が鍵を握っていると指摘します。

 もちろん、年金や医療、介護でお金がかかる高齢者が増えるため、社会全体での負担増は避けられない。

 ただ、働いていない人が就業者に回れば肩の荷は軽くなる。

 ことに女性の就業である。女性が働きやすい政策が展開されると、出生率が上昇する傾向は多くの先進国でみられる。子育ての支援は、女性の就業率を向上させながら、少子化も改善するという点で効果が大きい。

 で、結論がこれ。

 働ける人が働くのは「がんばりようがある」世界である。そこに目を向けて、一人ひとりが「がんばっちゃう」と、世の中は変わる。

 一人ひとりが「がんばっちゃう」と、世の中は変わる

 ですか。

 ・・・

 ふう。

 いったいこの社説は何を訴えたいのか、まったく理解できません。

 女性が働きやすくなるための具体的な提言はいっさいまったくなく、「働ける人が働くのは「がんばりようがある」世界」なのだから、「一人ひとりが「がんばっちゃう」と、世の中は変わる」んだと、まったく意味不明で、非建設的で、根性論にもなっていません。

 この朝日社説は読者に何を訴えたいのか、私には全く理解できません。

 おかしいのは私木走なのか、朝日社説のほうなのか、

 聡明な読者のみなさん、この朝日社説が何を言いたいのか教えてください。
 


(木走まさみず)