木走日記

場末の時事評論

おごれる「アジェンダ」は久しからず〜みんなの党よ、「独善」に陥るなかれ

 13日付け産経新聞電子版記事から。

「公明は与党ぼけ」みんなの党の渡辺代表、参院議長人事で
2010.7.13 22:50

 みんなの党渡辺喜美代表は13日、BSフジの報道番組で、参院議長選出に関し公明党が第1党の民主党から選出すべきだと主張していることについて「横暴な運営を止めさせるには野党統一の議長をつくればいいのに腰が引けている。与党ぼけしているのではないか」と批判した。
 渡辺氏は「菅直人首相らに対する問責決議案をまるで審議せずに通常国会を閉じたのは前代未聞だ」と述べ、民主党出身の江田五月議長の運営手法を批判。野党側から選出すべきだとの考えを強調した。

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/100713/stt1007132250010-n1.htm

 「公明は与党ぼけ」とみんなの党渡辺喜美代表が吠えているわけですが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの政界風雲児となった渡辺氏のこの発言、ややもすると渡辺氏自身がよっぽど「横暴」という印象を与えかねません、参院選で大躍進を果たし11議席(非改選を含む)を確保し同党単独でも法案を提出できるほどの勢力になったのですから責任も当然重くなったことを渡辺氏は自覚しておるのでしょうか、暴言気味の発言は氏のユニークなパーソナリティに依拠するところなんでしょうけど、発言内容には与党だけでなく野党からも注意しないとねたみや反感を買っちゃいますよと御注進申し上げておきます。

 TVの開票速報番組で大躍進の結果に、よほど嬉しいのでしょう満面の笑みを浮かべてインタビューに答えている渡辺氏を見て、私は氏のその憎めない喜怒哀楽を隠せない単純(失礼)な性格にほほえみながら、しかし、あまり調子に乗らないといいのだけれどと、一抹の不安というか危惧がよぎったのであります。

 11日付けロイター記事から。

連立参加を否定、「デフレ脱却法案」提出へ=みんなの党代表
2010年 07月 11日 23:37

 [東京 11日 ロイター] みんなの党渡辺喜美代表は11日夜、参院選出口調査で与党過半数割れが強まっている情勢のなか、民主党との連立について「ノーだ」と否定した。

 一方で、みんなの党の提案に沿った法案や政策では協力していく考えを示し、日銀法改正を中心とした「デフレ脱却法案」を提出する意向を示した。

 民主との連立の可能性について「みんなはアジェンダの党。何をなすべきかは覚悟がいることだが、菅首相はぶれまくっている。覚悟のない政党と一緒になってくれと言われても考える」と述べ、連立を組むことには「ノーだ」と語った。

 一方、法案や政策ごとの連携について「みんなの党アジェンダ(政策課題)に沿った法案にはゲートを開け、そうでない法案にはゲートを閉める」と指摘。具体的には、すでに「デフレ脱却法案を準備中だ」とし、同法案の内容について「日銀法改正が主なものだが、これが成立すれば失業者が100万人以上、経済的な理由による自殺者が5000人以上も救える」などと語った。

 また、「ねじれを終わらせるにはできるだけ早く衆院解散をやるべきだ」とし、来年統一地方選挙が予定されており「これと一緒にやったらよい」と述べた。

(ロイターニュース 吉川 裕子記者 伊藤 純夫記者)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-16230020100711

 民主との連立の可能性について否定した上で、「みんなの党アジェンダ(政策課題)に沿った法案にはゲートを開け、そうでない法案にはゲートを閉める」と指摘、またすでに「デフレ脱却法案を準備中だ」としています。

 民主批判票を取り込んでの大躍進です、安易な民主党との連立は支持者の反発も買う恐れがありますのでそこは慎重なのは理解できます。

 また政策ごとのパーシャル連立にしか活路を見いだせない政府・民主党からも、早くも秋波が送られています。

 13日付け読売新聞から。

みんなの党と歩み寄れる…公務員改革で玄葉氏

 玄葉公務員改革相(民主党政調会長)は13日午前の閣議後の記者会見で、公務員制度改革について、「みんなの党と歩み寄れる余地はあるのではないか。民主党内にプロジェクトチームを立ち上げて、どこまで歩み寄れるのかも含めて検討するのも一つの方法だ」と述べ、みんなの党に連携を求めていく考えを示した。

 消費税率引き上げ問題の扱いについては、「参院選では税制の抜本改正は、丁寧に時間をかけてというメッセージを国民から頂いたと思っている。(改革案の取りまとめが)3月というのはなかなか大変ではないか」と述べ、2011年度度以降に先送りする可能性を示した。

 一方、野田財務相は記者会見で、「消費税を含む税制の抜本改革はやらなければいけない」として、超党派の協議に改めて意欲を示した。

(2010年7月13日12時51分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100713-OYT1T00435.htm

 こうした民主党の動きもみんなの党を強気にさせている要因でありましょう。

 がしかし、問題だと思うのは「アジェンダ(政策課題)に沿った法案にはゲートを開け、そうでない法案にはゲートを閉める」という渡辺氏の閉鎖的ともうつる他党との妥協をいっさい認めないような発言です。

 他の党とのディスカッションの否定を意味するものならば、ここは是非再考をしていただきたいです。

 言うまでもなく参議院で多数派ではなくなった民主党政権は野党との話し合いを重視しなければ一つの法案も成立させることはできなくなったわけで、角度を変えてみればこれは国会を本来の政策議論の場に戻す絶好の機会であるとも言えます。

 政府・民主党の出す法案に厳しくチェックを入れることができるわけで、法案を大いに国会で議論しひとつの政党単独では気づかなかった法案の不備やよりよい改良に国会での議論が役立てば、それは国民の利益にもつながりましょう。

 そして自民党や野党みんなの党が出す法案にも政府との議論の上で日の目を見る機会が訪れたことも意味しています。

 ならばみんなの党の出す法案も他党による厳しいチェックを受け入れるべきですし、自党内の議論では気づかなかった法案の欠陥が見つかった場合など、必要な修正をすることはむしろ歓迎すべき事です。

 国民は「みんなはアジェンダの党」(渡辺氏)は耳タコです、それはよく理解しました、しかしみんなの党が国会に提出すればそれはもう「みんなの党アジェンダ・政策課題」ではなく「日本国の法案」となるわけで、国民の法案となるのですから他党との真摯な議論を避けるべきではないのです。

 しかしみんなの党アジェンダを絶対基準にしてその基準にとどかぬ法案は議論そのものを封印したり、自党の法案ばかりごり押しするとするならば、それは国民が望む国会のあり方に背く「独善」となりましょう。

 私は、「みんなの党アジェンダに沿った法案にはゲートを開け、そうでない法案にはゲートを閉める」(渡辺氏)という発言の持つ、政党としての閉鎖性を危惧します。

 あえて今、渡辺氏率いるみんなの党に警鐘を鳴らしておきます。

 自らの「アジェンダ」のみに執着し国会の議論を軽視するならば国民の支持は維持できないでしょう。

 おごれる「アジェンダ」は久しからず、であります。



(木走まさみず)