木走日記

場末の時事評論

「消費税15%」IMF様よりありがたい御神託が開示されました

 増税信者にとりIMF様よりありがたい御神託が開示されました。

 日本の消費税を11年度から段階的に15%まで上げよとの御神託でございます。

 マスメディアはさっそく速報で飛びついております。

朝日新聞】日本に消費増税の11年度着手を提言 IMF年次審査
http://www.asahi.com/business/update/0715/TKY201007150004.html
【読売新聞】日本は11年度から消費税段階上げを…IMF提言
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100715-OYT1T00202.htm
毎日新聞IMF:「日本の財政に不安」 消費税15%例示−−年次報告書
http://mainichi.jp/select/world/news/20100715dde007020022000c.html
産経新聞IMF、日本に消費税の段階引き上げ要請 11年度から最大15%に
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100715/fnc1007150943006-n1.htm
日経新聞】消費税、11年度から段階上げを 日本にIMF提言
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE3E7E2E3E58DE3E7E2E5E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO01

 一番詳しい【日経記事】から。

 (前略)

 報告書は、欧州の信用不安により日本の公的債務への懸念が強まっていると指摘。景気回復への影響に配慮しつつ、財政再建を進める必要があるとした。IMFは5月の対日声明で日本に消費税増税を求めたが、今回は複数のケースを想定し、財政再建の手法などを示した。

 IMFの改革シナリオでは向こう10年の名目成長率を2%程度とし、11年度から17年まで4回に分けて消費税率を計10%引き上げる。社会保障費圧縮なども実施。15年から政府債務のGDP比率を徐々に引き下げる。

 IMFは消費税上げを14年とする先送りシナリオも示したが、この場合、財政収支の改善が遅れ政府債務の水準が長く高止まりする。増税などを実施しないケースでは政府純債務のGDP比率は10年の121%から30年には250%に膨らむとしている。

 増税などの財政改革の景気への影響についても試算。当初、3〜5年間は成長率を年0.3ポイント程度押し下げるが、その後は公的債務減少による信認向上が投資や消費の増加につながると指摘。経済成長が加速するとの見方を示した。

(後略)

 こたびの御神託ではまことにありがたいことに、財政再建の手法の具体的時期や増税率まで御開示いただけました。

 11年度つまり来年から17年までの七年間で4回に分けて消費税率を計10%引き上げ15%にせよ、その期間にあわせて社会保障費の圧縮も実施せよ、とのおおせであります。

 さすれば公的債務減少による信認向上が投資や消費の増加につながり最終的には経済成長が加速するであろうとのありがたき御神託なのであります。

 IMF様の御神託をいただいた以上、ここは官民上げて増税路線を断固実施する覚悟であります。

 いや、ありがたや、ありがたや・・・

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 ふう。

 日本の財政赤字はほぼ国内で貸し借りしているだけで別にIMFから借金しているわけでもない(世界二位の経済規模に応分の出資はしているけどね)のに、なんでIMFごときにここまで手取り足取り増税率や時期まで提案されなきゃいけないのか、私には理解できませんが、これで「外圧大好き」の大新聞の明日以降の社説が、「IMF様からの御神託が降りたのだから消費税15%をめざすべき」との方向一色になることだけは間違いないでしょうね、やれやれ。

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 このIMF提案をまじめに議論するのは他のブログサイトにお任せいたします、当ブログはIMFという組織の悪口に横走りしたいと思います。

 だいたいIMFなんて組織は公平でもなんでもない問題多い組織なんですよね。

 IMF国際通貨基金は47年の設立以来最高責任者の専務理事は欧州出身者で占められておるのは国際社会の暗黙の了解事項なのだそうですが、現在の専務理事のフランス人のストロスカーンさんですが、もうねとんでもない欧州贔屓(びいき)でやりたい放題です、新興国の大顰蹙(ひんしゅく)を買っているわけでしてね。

 何の話かと言えば、今回のギリシャ発端の欧州財政危機の件であります。

 欧州連合が5月に創設を決めた総額7500億ユーロ(82兆円)のEMS・欧州安定化メカニズム(ESM)であります。

 この欧州向け融資制度で、なんとIMFの負担枠は全体の3分の1にあたる2500億ユーロ(約27兆円)。現時点の途上国への支援額(約1800億ドル=約16兆円)を軽く上回り、手持ちで利用できる財源(2400億〜2900億ドル=約21兆〜26兆円)すら越える計算なのであります。

 そもそもこのESMですがユーロ防衛を狙った今回の制度は、個別国だけでなく地域全体も対象にしています。

 個別国を対象に問題発生後に融資することが多かったIMFの今までの手法を完全に無視しています。

 そして驚くべき事実としては、フランス人専務理事のストロスカーンさんたち執行部は、この支援枠への関与を理事会の承認を経ずに独断で決めているのです。

 ありえないこの一地域偏重支援に当然新興国からはIMFに大反発がありましたが、そのときのIMF側の弁解が「財源拡充の発効が間近で、資金は潤沢にある。仮定の数字である支援上限は理事会の承認が不要だ」との説明をしてます。

 しかし事実としては、これでIMFは欧州向け支援で手いっぱいになり他の地域への対応がキャッシュがないので後手を踏むのでは、指摘されております。

 今まではアジアやアフリカなどの国を欧米の資金で「えらそう」に貸してきたわけです。

 思い出してください、1998年に深刻化したアジア通貨危機のときも、IMF融資にすがったインドネシアスハルト大統領(当時)が合意文書に署名する姿を、えらそうに腕組みで見下ろしていたのはIMFのカムドシュ専務理事さんでしたよね、あ、この人もたしかフランス人でした。

 態度だけでなく悪名高い「構造調整プログラム(Structural Adjustment Program)」なる過酷な要求を付けていばっていました。

 ところが今回欧州が支援を受ける側になったらどうでしょう、いわば攻守逆転したら、個別国を対象にしていない欧州向け融資制度でなんと全体の3分の1にあたる2500億ユーロ(約27兆円)をポンと負担することを決めちゃう訳です、しかも理事会かけずにですよ。

 あほらし。

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 今回のIMFの御神託も、私には彼らの本音は「悪いけど日本に貸す金など無いからね、いつまでもしっかり出資してくれるためにもちゃんと国民から増税してくれよな」と穿って聞こえてきそうなのです。

 ああ、それにしても明日からの大新聞の社説群が目に浮かんできます、頭が痛くなりそうなので早く寝ます。



(木走まさみず)