木走日記

場末の時事評論

日本経済「実は失われた25年」〜過去50年平均株価推移から検証

 欧米では、1980年代をエイティーズ、1990年代をナインティーズと、ディケード(decade)10年単位でひとまとまりの時代として論説されることが普通であります。

 日本では例えば「懐かしき昭和30年代」といったように「昭和」、「平成」といった元号に基づく和暦が時代を照らす物差しとして一般化していますが、元号を持たない欧米人特に英米など英語圏では80年代や90年代といったディケード(decade)で時代を振り返るのであります。

 で、29日付け朝日新聞記事には思わず苦笑してしまいました。

ナインティーズの次、「00年代」何て呼ぶ? 米で議論

 【ワシントン=勝田敏彦】今年もあと数日。2000年から始まった00年代が終わることになるが、米国ではこれをどう呼ぶべきかが議論になっている。今のところ決まった呼び方がなく、「命名できないまま終わってしまうのではないか」との「危機感」も広がっている。

 英語では、1980年代を「Eighties(エイティーズ)」、90年代を「Nineties(ナインティーズ)」と呼ぶのが一般的。しかし、00年代は呼びにくく、命名のあり方について20世紀半ばから議論があった。

 米タイム誌によると、これまで「Zeroes(ゼロズ)」、「Double O’s(ダブル・オーズ)」「2Ks(トゥーケーズ)」などが提案されているが、決定打にはなっていない。

 また1900年から09年にかけての10年を、ゼロを意味する単語「aught」を使って「Aughts(オーツ)」と呼んだことがあるため、これを転用するアイデアもあるが、つづりがやや特殊でもあり、定着しなかった。

 残された時間は少ない。

 米紙ワシントン・ポストは「この際、球場の命名権を売るみたいに、『00年代』を命名する賞金つきのコンテストを実施してはどうか」というイリノイ大の言語学者デニス・バロン教授の提案を紹介している。

http://www.asahi.com/international/update/1227/TKY200912270263.html

 この記事には触れてないようですが海外記事などで使用されている2000年代の呼称は、個人的にはゼロ(Nought)を意味するノーティーズ("The Noughties")が一般的なのかと思っていましたが、まあ英語の語感的にはノーティーズでは虚無的脱力感が伴うようであまり好まれてはいなかったということでしょうか(苦笑)。

 ・・・

 それはともかく、激動の2009年も終わろうとしているわけですが、すこし時間の尺度をマクロにとりこの10年間、つまり2000年代が終わろうとしているわけでもあります。

 で、本日(30日)は東京株式市場における大納会の日であります。

 日経新聞電子版速報記事から。

日経平均小反落、午前終値27円安の1万610円
 2009年の大納会を迎える30日前場の東京株式市場で、日経平均株価は小反落。前引けは前日終値に比べ27円40銭(0.26%)安の1万0610円66銭だった。経営支援策の不透明感が強まっているJALの株価が急落したことが市場心理に響き、相場全体の頭を押さえた。東証株価指数(TOPIX)も反落。

(後略)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20091230NTE2INK0230122009.html

 この2009年大納会の株価1万610円(午前終値)当たりというのをどう評価すべきなのか、日本経済にとり、2000年から2009年のこの10年は果たして1990年代の「失われた10年」の延長で「失われた20年」だったのか。

 過去の5ディケード(50年間)のその年の最後の株価、つまり大納会時の日経平均株価の推移を押さえておきたいと思いました。

 ネットで調べても最適な該当する資料が無かったので、不肖・木走お得意(?)の統計資料づくりを一人人海戦術(一人だけで無駄に時間を掛けてコツコツデータを集めること)で展開してみました(苦笑)。

 まずは過去50年間(1960年〜2009年)の大納会日の株価終値CSV形式でご提供。

【表1】過去50年平均株価推移
1960-12-28,1356.71
1961-12-28,1432.60
1962-12-28,1420.43
1963-12-28,1225.10
1964-12-28,1216.55
1965-12-28,1417.83
1966-12-28,1452.10
1967-12-28,1283.47
1968-12-28,1714.89
1969-12-27,2358.96
1970-12-28,1987.14
1971-12-28,2713.74
1972-12-28,5207.94
1973-12-28,4306.80
1974-12-28,3817.22
1975-12-27,4358.60
1976-12-28,4990.85
1977-12-28,4865.60
1978-12-28,6001.85
1979-12-28,6569.47
1980-12-27,7116.38
1981-12-28,7681.84
1982-12-28,8016.67
1983-12-28,9893.82
1984-12-28,11542.60
1985-12-28,13113.32
1986-12-27,18701.30
1987-12-28,21564.00
1988-12-28,30159.00
1989-12-29,38915.87
1990-12-28,23848.71
1991-12-30,22983.77
1992-12-30,16924.95
1993-12-30,17417.24
1994-12-30,19723.06
1995-12-29,19868.15
1996-12-30,19361.35
1997-12-30,15258.74
1998-12-30,13842.17
1999-12-30,18934.34
2000-12-29,13785.69
2001-12-28,10542.62
2002-12-30,8578.95
2003-12-30,10676.64
2004-12-30,11488.76
2005-12-30,16111.43
2006-12-29,17225.83
2007-12-28,15307.78
2008-12-30,8859.56
2009-12-29,10638.06

 「はてなグラフ」というツールで見やすく折れ線グラフ化してみました。

【図1】過去50年平均株価推移
過去50年平均株価推移
※グラフをクリックすると拡大されます。
 クリックしても拡大しない場合下のURLをクリックしてみてください。
http://graph.hatena.ne.jp/kibashiri/%E9%81%8E%E5%8E%BB%EF%BC%95%EF%BC%90%E5%B9%B4%E5%B9%B3%E5%9D%87%E6%A0%AA%E4%BE%A1%E6%8E%A8%E7%A7%BB/?day=

 うーむ、参考のために株価10000円ラインを赤線で示しましたがいかがでしょう、このあざやかな凸凹(でこぼこ)感は・・・

 「1989-12-29」のピーク値「38915.87円」に比し、この2000年代では、最小値が「2002-12-30」の「8578.95円」、最大値が「2006-12-29」の「17225.83円」、平均値「12321.53円」に喘いでいるのであります。

 資料より年代ごとの平均値、最小値、最高値を表にまとめてみました。

【表2】年代別株価推移
1960年代,1487.86,(1216.55〜2358.96)
1970年代,4484.92,(1987.14〜6569.47)
1980年代,16670.48,(7116.38〜38915.87)
1990年代,18816.25,(13842.17〜23848.71)
2000年代,12321.53,(8578.95〜17225.83)

 株価的にはバブルピークは89年なわけですが、実はバブルが発生した80年代と、よくバブル崩壊後の90年代に「失われた10年」が始まったと言いますが、年代別の平均単価を比べると意外にも90年代の方が若干ですが高いのですよね。

 あらためて80年代の株価推移を見てみましょう。

【表3】80年代平均株価推移
1980-12-27,7116.38
1981-12-28,7681.84
1982-12-28,8016.67
1983-12-28,9893.82
1984-12-28,11542.60
1985-12-28,13113.32
1986-12-27,18701.30
1987-12-28,21564.00
1988-12-28,30159.00
1989-12-29,38915.87

 80年代を通じて株価は上がり続けていますが、実際には10000円を越えるのは84年が初めてでありまして後半の85年から89年に掛けて、一気に株価が3倍以上の暴騰を示しています。

 ですので80年代の平均値としては「16670.48円」となるわけです。

 一方バブル崩壊後の90年代の株価推移を改めて見てみましょう。

【表4】90年代平均株価推移
1990-12-28,23848.71
1991-12-30,22983.77
1992-12-30,16924.95
1993-12-30,17417.24
1994-12-30,19723.06
1995-12-29,19868.15
1996-12-30,19361.35
1997-12-30,15258.74
1998-12-30,13842.17
1999-12-30,18934.34

 90年代を通じて傾向として株価は下がり続けていますが、実際には10000円を割ることもなく最小値も98年の「13842.17円」に留まっています。

 こうしてみるとあらためてこの10年、つまり2000年代の株価の推移を見てみると年代別のその低迷の具合が目だちます。

【表5】00年代平均株価推移
2000-12-29,13785.69
2001-12-28,10542.62
2002-12-30,8578.95
2003-12-30,10676.64
2004-12-30,11488.76
2005-12-30,16111.43
2006-12-29,17225.83
2007-12-28,15307.78
2008-12-30,8859.56
2009-12-29,10638.06

 ・・・

 大納会時の終値株価がどこまでモノサシとして有効なのか議論もありましょうが、大納会時の終値株価を基準に検証すると、日本経済は、初めて10000円越えした84年から、実に25年間の時が失われていたとも表現できそうです。

 このテキストが読者のみなさまの考察の一助となれば幸いです。



(木走まさみず)