木走日記

場末の時事評論

長期金利が上昇しだしたぞ!アベノミクスの勝負はここからだ!

 27日付け朝日新聞電子版速報記事から。

日経平均、今年の最高値更新 1年10カ月ぶり高値水準

 27日の東京株式市場は、外国為替市場での円安進行を好感して日経平均株価が大幅に値上がりし、3月27日につけた1万0255円15銭を上回り年初来最高値を更新した。午前の終値は、前日終値より140円13銭(1.37%)高い1万0370円49銭。取引時間中としては、東日本大震災が起きた昨年3月11日以来、約1年10カ月ぶりの高値水準となった。

 大胆な金融緩和を打ち出す安倍新政権が発足し、金融市場ではデフレ脱却に向けた取り組みが進むとの見方が高まり、期待感先行で円安と株高が続いている。

(後略)

http://www.asahi.com/business/update/1227/TKY201212270289.html

 うむ、午前の終値は1万0370円49銭と、年初来最高値を更新、約1年10カ月ぶりの高値水準となりました。

 東日本大震災が起きた昨年3月11日以来の高値を安倍政権発足翌日に付けるとは、なんともシンボリック、象徴的ですね、まだ政権としては経済政策は何も手を付けていないわけですがアベノミクスアナウンス効果的面といったところでしょうか。

 野田前首相が衆議院解散を意思表明した11月14日以来の株価と円相場の推移を見てみましょう。

■表1:直近の日経平均と円相場(対ドル)の推移(2012年11月14日〜12月27日)

日付 円相場 日経平均株価
2012年12月27日 85.72 10295.26
2012年12月26日 85.62 10230.36
2012年12月25日 ----- 10080.12
2012年12月24日 84.92 -------
2012年12月21日 84.21 9940.06
2012年12月20日 84.36 10039.33
2012年12月19日 84.40 10160.4
2012年12月18日 84.20 9923.01
2012年12月17日 83.88 9828.88
2012年12月14日 83.47 9737.56
2012年12月13日 83.63 9742.73
2012年12月12日 83.25 9581.46
2012年12月11日 82.51 9525.32
2012年12月10日 82.33 9533.75
2012年12月7日 82.46 9527.39
2012年12月6日 82.39 9545.16
2012年12月5日 82.46 9468.84
2012年12月4日 81.89 9432.46
2012年12月3日 82.23 9458.18
2012年11月30日 82.45 9446.01
2012年11月29日 82.12 9400.88
2012年11月28日 82.05 9308.35
2012年11月27日 82.13 9423.3
2012年11月26日 82.06 9388.94
2012年11月23日 82.41 -------
2012年11月22日 82.45 9366.8
2012年11月21日 82.50 9222.52
2012年11月20日 81.66 9142.64
2012年11月19日 81.40 9153.2
2012年11月16日 81.26 9024.16
2012年11月15日 81.14 8829.72
2012年11月14日 80.24 8664.73

※12月27日以外は終値

 うむ、ご覧のとおり、2012年11月14日では円相場は80.24円、株価は8664.73円でしたが、この一月半ほどで、円相場は85.72円と6.8%の円安、株価は10295.26円と18.8%も上昇しています。

 日経平均と円相場のグラフを重ねてみれば2つの推移が綺麗に相関していることが見て取れます。

■図1:直近の日経平均と円相場(対ドル)の推移(2012年11月14日〜12月27日)

 池田信夫氏によれば、今回の円安局面は「「アベノミクス」のおかげというより、2008年の世界金融危機で相対的に安全な通貨だった円に資金が逃避したリスクオフの動きが、暴落したユーロが落ち着いたことでリスクオンに戻ってきたことが最大の要因」と分析されています。

 、これは「アベノミクス」のおかげというより、2008年の世界金融危機で相対的に安全な通貨だった円に資金が逃避したリスクオフの動きが、暴落したユーロが落ち着いたことでリスクオンに戻ってきたことが最大の要因だ。

安倍=麻生バラマキ政権は「日本売り」のチャンス より抜粋
http://blogos.com/article/53012/

 マクロ的背景には確かにそのような要因があるでしょうが、今確認したとおり衆議院解散が確定してからトレンドが変化していることを考慮すれば、やはり私としてはアベノミクスアナウンス効果に市場が反応したと見立てたほうがすっきりします。

 さて、株高・円安基調が続くとすると私達はもうひとつの重要な経済指標である「長期金利」の動きを警戒する必要があります。

 27日NHKニュースWEB記事から。

 長期金利上昇 0.8%台に
12月27日 13時15分

27日の東京債券市場は、株価が大幅に値上がりしていることや、安倍新内閣の発足で国債の追加発行が避けられないという見方から国債が売られ、長期金利は、0.8%まで上がって、ことし9月以来、およそ3か月ぶりの高い水準となりました。

長期金利は、償還までの期間が10年の国債の利回りが代表的な指標になっており、国債の価格が値下がりすると金利は反対に上昇するという関係になっています。
27日の東京債券市場では、国債を売る動きが強まり、長期金利は0.8%まで上がり、ことし9月21日以来、およそ3か月ぶりの高い水準となりました。
これは、日経平均株価がことしの最高値を更新するなど株価が大幅に上昇していることや、安倍新内閣の発足で経済対策などの財源確保のため、国債の追加発行が避けられないという見方から資金を国債から株式に振り向ける動きが強まっているためです。
市場関係者は「株価の上昇で国債が売られやすい状況が続いていることから、当面、長期金利の上昇傾向が続くのではないか」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121227/k10014469691000.html

 うむ、記事にあるとおり「株価の上昇で国債が売られやすい状況が続いていることから、当面、長期金利の上昇傾向が続くのではないか」(市場関係者)との見方が強まっています。

 事実、11月14日以来の国債10年物の利回りは0.73%から0.80%へと上昇局面となっています。

■図2:直近の長期金利の推移(2012年11月14日〜12月27日)

 3つの指標のグラフを重ねると分かりやすいです。

■図3:直近の日経平均と円相場(対ドル)と長期金利の推移(2012年11月14日〜12月27日)

 円が下がると輸出産業を中心に株価が上昇し、株価が上昇すれば国債が売られ株を購入する動きが始まり国債10年物の利回り、すなわち長期金利が上昇する、ここまでは教科書通りの動きといっていいでしょう。

 アベノミクスに批判的な論者達は、この長期金利上昇がゆくゆく悪性の金利上昇となり悪性の財政インフレを招くことを危惧しています。

 悪性にしないためには、速やかに実体経済を活性化させて円安・株高の動きに連動させていかなければなりません。

 円安は輸出産業を中心にこの国のGDP押し上げに貢献することでしょう。

 株高は資産運用を活性化させ企業の投資意欲を向上させることに帰依することでしょう。

 さらに安倍政権が日銀ともに金融政策、行財政政策を推し進めれば、うまく舵取りできれば長期に渡ったデフレから脱却が出来るかもしれません。

 少なくとも現在の市場の動きはアベノミクスを歓迎しているといえるでしょう。

 さて考えてみれば、安倍政権はまだ何も経済政策は実行していないにもかかわらず、市場は期待感から円安・株高の動きを強めています。

 そして結果的に長期金利もチャートとしてはこの一月半で上昇トレンドに変化したようです。

 勝負はここからです。



(木走まさみず)