木走日記

場末の時事評論

直嶋正行経産相に平野博文官房長官、あなた方には中小零細企業に対する理解はないのか?

 前回のエントリーでも取り上げた、鳩山政権の目玉政策である「子ども手当」の財源について地方自治体や企業などにも負担を求めることを示唆する平野官房長官トンデモ発言ですが、当然ながら民主党内外に大きな波紋を広げているわけです。

 日テレニュース記事から。

橋下知事が「独裁政治」と激怒

 鳩山政権の目玉政策である「子ども手当」の財源について地方自治体などにも負担を求める可能性があることを示唆する平野官房長官の発言をめぐり、大阪・橋下府知事は20日、「国が決めた政策に全部地方が金を出せになるので、以前の自民政権よりもひどい状況になりそうですね」と語り、さらに「超中央集権、独裁政治ですね。これは抵抗するしかない」と述べた。

http://www.news24.jp/articles/2009/10/21/04146203.html

 この記事もそうですが、どうも大新聞などメディアも平野官房長官トンデモ発言の『地方自治体負担』の部分ばかり報じていますが、前回のエントリーでも指摘した通り、民主党政権が視野に入れているのは『負担の内訳は国・地方自治体・事業主、3者による財源負担』(財務省)なのであり、橋下知事も「超中央集権、独裁政治」と民主を批判するなら、地方自治体分だけでなく企業負担分にもぜひ言及していただかないと困ります。

 本件では、全国知事会会長の福岡・麻生県知事も「今までの話とは違ってきた。この際、国と地方の役割を明確に役割分担の考え方を導入すべき」と強く反発していますし、閣内からも強い反発が出ています。

 報道によれば、子ども手当を担当する長妻厚労相は「子ども手当については(概算要求は)全額国費で請求していて、私としても国費でお願いしたい」と述べていますし、地方行政を担当する原口総務相は「マニフェストで約束し、国がやるという基本認識を変えてはいけない」と述べています。

 このように地方行政を担当する立場などから「地方自治体負担分」に対しては反対意見が相次いでいますが、それはそれでけっこうなことですが、不思議なほど「企業負担分」の話がメディアで取り上げられず、不肖・木走としては大いに不満であります。

 負担が現在と同様の割合と仮定した場合ですが、1兆から5兆4千億と予算規模からの単純試算すれば、企業負担は現状の児童手当事業主負担分の5倍以上に膨張することになり、とても看過できる話ではありません。

 現在の児童手当拠出金を元に私が単純に試算した例では、従業員100人規模で会社負担は年間500万円ほどの費用となります。

 これすべて経費・法定福利費、すなわち純粋に利益を圧縮するわけです。

 どうした、政府の企業担当である直嶋経産相はなぜ、反論の声を出さない?
 
 ・・・

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 騒ぎの拡大をみて、鳩山首相は全額国費で負担すべきだとの考えを示しました。

 朝日新聞記事から。

子ども手当「地方負担は今、私の頭にない」 鳩山首相

2009年10月21日1時10分

 鳩山首相は20日、閣内から「子ども手当」の財源負担を地方自治体にも求める案が出ていることについて、「財務省発でそういう話が今出ているが、本来、国ががんばらなきゃいけない話で、地方に負担をさせるということは今、私の頭の中にあるわけではない」と述べ、全額国費で負担すべきだとの考えを示した。川崎市内で記者団に語った。

 首相は「国の財政も厳しいから、そこから地方も負担しろという話になっている」と説明。民主党マニフェスト政権公約)では全額国費を想定していたことを指摘し、「基本的には国費でまかなうと、その思いでみんな(衆院選の際には)話をしたはず」と語った。

 ただ、平野博文官房長官は20日夕の会見で、「どういう風な財源でやっていくかは政府が真剣に考えることだ」と述べ、なお複数の選択肢を検討する考えを示した。

http://www.asahi.com/politics/update/1021/TKY200910200499.html

 「本来、国ががんばらなきゃいけない話で、地方に負担をさせるということは今、私の頭の中にあるわけではない」とは、なんとも頼りない言い方です、「今、私の頭の中にあるわけではない」かもしれないが将来は可能性があるとでも言うのでしょうか。

 とんでもないことです。

 「企業負担分」について無視している点も不満ですが、鳩山首相は是非、全額国費を貫いてほしいです。

 しかし、この期に及んで平野博文官房長官はいまだ発言を撤回しようとはしていません。

 「どういう風な財源でやっていくかは政府が真剣に考えることだ」と、なお複数の選択肢を検討する考えを示しているのはどういう了見なのでしょうか。

 ・・・

 ふう。

 本件はただ地方自治体の問題だけではなく、もし企業負担が増えるとすれば日本経済に深刻な影響を及ぼしかねないわけですが、政府の企業担当である直嶋経産相が本件で完全に沈黙を守っている点、政府の扇の要である官房長官がいっこうにトンデモ発言を撤回しないのは、まったく納得がいきません。

 直嶋正行経産相平野博文官房長官、あなた方には、中小零細企業に対する理解はまったくないのか?

 少し前ですが週刊文春10月15日号に、この二人は大企業の労組出身だから中小企業に理解がないのではないか、という民主党関係者の発言が載っていました。

 当該部分を紹介。

(前略)

 現在、大塚耕平副大臣をトップに据えた作業チームで法案作りを進めているが、難航が予想される。というのも平野官房長官直嶋正行経産相がモラトリアムに反対しているのだ。
「二人ともパナソニックトヨタという大企業の労組出身だから中小企業に理解がないのでしょうか。特に直嶋経産相は党政調会長としてマニフェストのとりまとめをしていた頃から、返済猶予法案には否定的でした。民主党では大塚氏がアイデアを出して、今年三月には緊急資金繰り対策として元本返済猶予を発表しています。ところが、マニフェストには入れられなかったのです」(別の民主党関係者)
 たしかに候補者用に作られた主要政策の解説集には、中小企業政策の中に「返済条件の緩和(元本返済猶予等)」と書かれているが、マニフェストにはない。これはどういうことなのか。
 「幹部会で鳩山氏も小沢氏も了承していたにもかかわらず、『印刷が間に合わなかった』という理由で掲載されなかったんです。しかし、他の修正点は、その後の刷り直しで盛り込まれている。つまり、政調会長だった直嶋氏の意向で外されたということ」(同前)
 直嶋氏は経産相に就任後も、モラトリアムについて質問する記者に対して、「モラトリアムってどういう意味ですか?」と聞き返すなど、否定的なスタンスを変えていないようだ。

(後略)

週刊文春 10月15日号 『民主政権一ヶ月でわかった 使える大臣、ダメな大臣実力ランキング』より

 文春記事にあるとおり、二人ともパナソニックトヨタという大企業の労組出身です。

 中小零細企業の苦しい現状など関心もないということでしょうか。。

 平野博文官房長官直嶋正行経産相、あなた方には、中小零細企業に対する理解はないのか?

 だとすれば、民主党政権はとんでもない人を要職に付けていることになります。



(木走まさみず)