自民党は無理して世襲を制限する必要はナシ
The mountains have brought forth a mouse.
まさに「大山鳴動鼠一匹」、前触れの騒ぎが大きいわりに結果が伴わない自民党のまたしてもの迷走劇であります。
ねずみ一匹どころか、結論先延ばしであります。
読売新聞電子版記事から。
小泉元首相の次男、自民公認へ…世襲制限の導入先送り方針
自民党は2日、「世襲」新人候補の立候補制限について、次の衆院選からの導入を見送る方針を固めた。
次々回からの導入で調整する。これにより、小泉元首相の次男、進次郎氏(神奈川11区)と臼井日出男・元法相の長男、正一氏(千葉1区)は、次の衆院選で公認されることになる。
同党の党改革実行本部(武部勤本部長)は、世襲制限が必要だとする最終答申を近く麻生首相に提出する予定だが、導入時期は明示しない方向だ。同本部の幹部は2日、「制限がいつからかは答申に書かない。首相を縛る内容にはしない」と語った。
世襲制限の次回衆院選からの導入には、小泉、臼井両氏の地元などが「一度公認を内定しながら、途中で取り消すのは認められない」と強く反発し、党執行部には同調する声も出ていた。制限導入の急先鋒(せんぽう)で首相に近い菅義偉選挙対策副委員長も「党は公認を内定した責任がある。次々回からにすべきだ」と主張していた。同本部でも衆院選前の混乱を避けるため、次回からの導入を見送ることにしたものだが、若手議員らから「世襲制限に踏み切る民主党と比較して批判される」と反発が出ることも予想される。
(2009年6月2日22時00分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090602-OYT1T00884.htm
自民党が「「世襲」新人候補の立候補制限について、次の衆院選からの導入を見送る方針を固めた」そうであります。
これにて小泉ジュニアも目出度く堂々自民党公認候補として選挙を戦えるわけで父君もさぞやお喜びのことでしょう。
あくまで「党改革実行本部(武部勤本部長)は、世襲制限が必要だとする最終答申を近く麻生首相に提出する予定」だそうですが、しかしこんな大騒ぎをした結果の世襲制限導入先送りであります、国民に与える印象の悪さはいかばかりでしょう。
・・・
今度の選挙は正に政権選択選挙であります。
そもそも世襲の制限問題は今度の選挙で争う政策の中では瑣末なことであります、こんなことで政権選択する選挙の投票行動を左右する国民は少ないでしょうし、こんなことなら最初から民主になんて対抗せずに堂々と「世襲のどこが悪い」と開き直っていればよろしかったのに、愚かなことです、自ら負のイメージをばらまいちゃって・・・
落語家だって医者だって企業家だって町の商店だって、世襲するやつは世襲するし、政治家だって同じです、海外を見渡したってブッシュジュニア元大統領も金正日将軍様も世襲であります(←海外の世襲政治家の例が微妙にひどくないかな(苦笑))
政治家が世襲すること自体別に法に触れているわけじゃありません。
それに今の自民党の世襲議員(100人余り)だって、選挙の洗礼を受けて有権者の支持を得て議員になっているのであります。
世襲議員を否定することは有権者の投票行為の結果の否定にもつながりかねません。
・・・
私は政治家の世襲を法律でしばるのはエレガントではないと考えています、本当に世襲に問題があるのならば世襲議員は落選させればいい、選挙民が投票行為でその意思を示せばいいだけであると考えます。
個別の党が内規で世襲を禁じるのはかってですが、法律でしばるのはいただけません、そんな国はあまり聞いたことがありません。
・・・
・・・
ここまで記してふと読者に誤解を招く記述になっていることに気付きましたので、少し補足をします。
私はあくまで政治家の世襲を法律でしばることには反対なのであり、現在の世襲議員の有様を支持しているわけではありません。
逆に、世襲は、広く平等に競争をすることが大前提である選挙のような制度において、条件の平等という意味で潔くないと考えています。
一言で言えば、世襲って「ずるい」よな、ということです。
「地盤」、「看板」、「カバン」をそっくり引き継ぐ世襲候補が有利であるのは、それが法に触れていなくても、これは「ずるい」ことです。
各党の公認候補を一人に絞る小選挙区制になり世襲議員の増加傾向が顕著になっていることも問題視しております。
まず、スタートのときから有利な条件が整っている彼らには、一から這い上がったたたき上げの力強さが感じられません。
どこか浮世離れしたボンボン風味のひ弱さを感じてしまいます。
現にここ4年に限っても、小泉、安倍、福田、麻生と、2世・3世議員ばかりが入れ替わり首相になっては、唐突に政権を投げ出すことを繰り返していることも、淡泊というかひ弱な世襲議員だからだと、私は確信を持ってうがって考えたりしてます。
加えて世襲候補に先代の政治資金管理団体の資金が非課税で相続されている点は、法の網を潜り抜けている問題点だと認識しています。
世襲自体を制限する必要はなくとも資金の相続の問題は見直しが必要でしょう。
さらに「ずるい」世襲議員の増えている自民党が同じく「ずるい」官僚の天下りに大アマなのは、水が低くを流るるがごとく、私にとってはしごく当然に思えるのであります。
世襲制と天下り、たとえ法に触れていなくとも、条件の平等という意味で潔くない点で同等にそうとう「ずるい」のであります。
・・・
さて、結論。
民主党がどうあろうとも、自民党は無理して世襲を制限する必要はありません。
その評価は有権者に正々堂々ゆだねればよろしいのです。
野党は自民党の内規に干渉すべきではありません。
(木走まさみず)
<関連テキスト>
2007-09-21 永田町の「ベルサイユのばら」達
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070921