木走日記

場末の時事評論

産経新聞の不憫(ふびん)で悲しき選挙分析〜”惨敗は首相が靖国神社に参拝しないから”

 13日付け毎日新聞記事から。

都議選:自公過半数割れ 民主54議席を獲得、初の第1党

東京都議選の当選確実者が続々と決まるなか、昭島市の星氏の当選確実を大喜びする民主党都連広報委員長の蓮★(舟へんに方)参院議員(左)と都連幹事長の鈴木寛参院議員=同党本部で2009年7月12日午後9時2分、山本晋撮影

都議選の選対本部でのインタビュー中、落ち着かない様子の自民党都連会長の石原伸晃幹事長代理=東京都千代田区自民党本部で2009年7月12日午後9時28分、佐々木順一撮影
 東京都議選(定数127、42選挙区)は12日投票、即日開票された。政権奪取を狙い、追い風に乗る民主党(現有34議席)が各選挙区で票を伸ばし、54議席を獲得、初めて第1党となった。麻生政権の支持率低迷で逆風にさらされた自民党(同48議席)は38議席に大幅後退。公明党は現有に1議席を加え23議席としたものの、自公を合わせた与党の議席は勝敗ラインの過半数を割り込んだ。自民党内で麻生太郎首相の責任を問う声が強まるのは必至で、次期衆院選に向け首相の進退に波及する可能性も出てきた。

 投票率は54.49%で、前回(05年)の43.99%を大きく上回った。自民は40年間にわたって維持してきた第1党から転落した。与党の過半数割れで、石原慎太郎知事は難しい議会対応を迫られることになりそうだ。

 民主は38選挙区で公認候補がトップ当選を果たした。七つある1人区のうち、6選挙区で自民党候補らと争い、5選挙区で当選。3人を擁立した世田谷区や練馬区では全員が当選するなど、圧勝した。

 自民の38議席は、第2党に転落した1965年に並ぶ過去最低の議席数。特に1人区では6人が落選する惨敗を喫した。複数人区でも荒川区や北多摩2区で議席を失った。

 公明も逆風下での選挙となったが、支持母体の創価学会を中心に徹底的な組織戦を展開、5回連続の候補者全員当選となった。

 共産党は前々回から続いた退潮傾向から脱せず、現有13議席を8議席に減らした。東京・生活者ネットワークは4議席が2議席になった。社民党議席を回復できなかった。【鮎川耕史】

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20090713k0000m010119000c.html

 大方の予測通り、自民大敗となった都議会選でありますが、各党の獲得議席は、

 民主  54(34)
 自民  38(48)
 公明  23(22)
 共産   8(13)
 その他  4( 8)
 計  127
※()内は前回議席

 でありますが、ちなみに不肖・木走が前回エントリー「東京都議会選挙〜投票日15分前の最終直前予測を試みる」にて予測した数値は次のとおり。

 民主  53(34)
 自民  35(48)
 公明  22(22)
 共産  13(13)
 その他  4( 8)
 計  127
※()内は前回議席

[政治]東京都議会選挙〜投票日15分前の最終直前予測を試みる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20090711

 民主、公明、その他についてはほぼ予測通り(+−1内)でしたが、自民(予測35結果38)と共産(予測13結果8)ははずしてしまいました。

 原因は、最後の議席争いで、共産票を過大予測してしまったようで、共産対自民の争いで読み違いしてしまいました、予想以上に共産党は今回の民主フォローの風に埋没してしまいましたね。

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 とっても興味深い分析記事があります。
 
 メディアでは今後の政局への影響とか自民敗因の分析がかしましいですが、そんな中で異彩を放っているのが、13日付け産経新聞のこの記事であります。

なぜ自民は惨敗したのか 政治部長乾正人
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090713/stt0907130359006-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090713/stt0907130359006-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090713/stt0907130359006-n3.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090713/stt0907130359006-n4.htm

 なぜ自民は惨敗したのか、産経新聞乾正人政治部長によれば、それはズバリ”自民惨敗の理由は首相が靖国神社に参拝しないから”なのだそうです。

異説ではあるが、私は「ポスト小泉」の安倍晋三福田康夫、麻生の3代にわたる首相が靖国神社参拝に踏み切れなかったことを最も大きな理由として挙げたい(むろん、福田氏はまったくその気がなかったろうが)。
 小泉氏は、総裁選出馬時の公約を守って中国や韓国が強く反発するのを承知の上で、在任中、靖国参拝を続けた。むろん、国民の中にも反対派は少なからず存在したが、内政的には「ぶれない指導者」を強く印象づけ、高支持率の基盤をつくった。
 続く安倍氏は「美しい国」づくりを掲げ、首相就任前は、熱心に靖国神社を参拝していた。だが、在任時には「政冷経熱」といわれた日中関係の改善を図ろうと参拝を自粛してしまった。「保守政治家」を自任する麻生首相も参拝する気配はない。
 その結果はどうだっただろうか。確かに日中首脳間の対話は頻繁に行われているが、東シナ海のガス田問題も毒ギョーザ事件も解決していない。それどころか中国は、軍備増強のスピードをさらにあげている。このため自民党支持者の一部は、「他国に遠慮して戦没者の慰霊もできない指導者」と麻生首相らを見放している。
 相次ぐ地方選での自民敗北は、経済政策の失敗だけでは説明できない。自民党が掲げる旗が不鮮明になり、精神的な背骨を失っていると古くからの支持者が判断しているためではないか。
 自民党では「麻生降ろし」の大風が吹くだろうが、国民に醜態をさらすときではない。心静かに敗北の理由を洗い出し、党再生の大手術の準備を急ぐべきだろう。

 「異説ではあるが」と前置きした上で、「安倍晋三福田康夫、麻生の3代にわたる首相が靖国神社参拝に踏み切れなかったことを最も大きな理由」だとしています。

 それはなぜかというと、「相次ぐ地方選での自民敗北は、経済政策の失敗だけでは説明できない」のであり、「自民党が掲げる旗が不鮮明になり、精神的な背骨を失っていると古くからの支持者が判断しているためではないか」との見立てであります。

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 ふう。

 苦笑せざるを得ないのは、「3代にわたる首相が靖国神社参拝に踏み切れなかったこと」の結果として、「その結果はどうだっただろうか。確かに日中首脳間の対話は頻繁に行われているが、東シナ海のガス田問題も毒ギョーザ事件も解決していない。それどころか中国は、軍備増強のスピードをさらにあげている」と説明していますが、これは苦しいなあ、別に日本国首相が靖国参拝してもしなくても、中国は「東シナ海のガス田問題も毒ギョーザ事件も解決」するつもりはないだろうし、「軍備増強のスピード」もさげたりはしないでしょう。

 なんでもかんでも靖国に結びつけて考えるのは産経の悪い癖だと思います。

 それはともかく、今回の都知事選惨敗を「首相が靖国神社に参拝しないから」というこの産経記事の主張ですが、どうなんでしょう、その少々的外れと思われる敗因分析を批判する以前に、私などは保守産経の現状に対する憤り・怒りのようなものを感じてしまい、なんというか不憫(ふびん)だなあ、悲しいなあ、と同情してしまうのであります。



(木走まさみず)