木走日記

場末の時事評論

政府は不況対策として『高速道路の無料化』を真剣に検討したらどうか

 27日付け日経社説から。

社説1 広がる雇用調整に幾重にも対策を(12/27)

 急激な内外の需要減退の影響で減産が進み、雇用を減らす動きが今後一段と広がる見通しだ。現在、期間従業員派遣社員などの解雇が注目されているが、全体的にはまだ序の口である。雇用問題はこれからさらに悪化し長期化する恐れがある。政労使は短期、長期にわたる対策を幾重にも講じる必要がある。

 総務省が発表した11月の完全失業率は3.9%と前月比0.2ポイント上昇したが、まだ深刻な水準とはいえない。8月の4.2%より低い。IT(情報技術)バブル崩壊後には一時5.8%まで高まった。完全失業者数も256万人で、最悪だったころより120万人少ない。

 しかし非正規労働者の削減などで雇用調整は急ピッチで進んでいるうえに、大幅減産が製造業全体に広がっており、離職者の一層の増加は避けられない状況だ。厚生労働省の調べでは、10月から来年3月までに失業及び失業することになる非正規労働者は約8万5000人となり、11月末調査より3倍近くに増えた。

 厚労省発表の11月の有効求人倍率は10カ月連続して下がり0.76倍にとどまった。求職者が増えているのに求人の減り方が大きいためである。新卒者の採用内定取り消しも増えており、これから職に就けない人が累増することが予想される。

 政府の経済見通しでは、2009年度の完全失業率を4.7%程度と予測している。政府は09年度予算案と第2次補正予算案を合わせて1兆円規模の緊急雇用対策をまとめている。この対策を実行しても09年度の完全失業率は4%台後半まで高まるというわけである。

 対策には効果がはっきりしないものも含まれている。フリーターや高齢者、障害者などを採用すれば、1人当たり数十万円から100万円の奨励金を事業主に支給する制度などは、焼け石に水との印象を否めない。

 基本的には、緊急の対策と長期的な対策を総動員しなければならない。まず急増する離職者に当面の生活と再就職のための職業訓練を保障するセーフティーネットの整備が求められる。行政による住宅支援や臨時雇用の提供は既に始まっている。

 世界的な不況の深刻化に伴い、国内の自動車生産台数は11月に前年同月比で約20%も落ち込んだ。底が見えない状態で、産業によっては規模を縮小し、雇用数を恒久的に減らす可能性もある。離職者を介護、医療、サービスなどの人手不足の分野に誘導する強力な政策も要る。

 政労使は力を合わせて、具体的に対策を練り早急に遂行してほしい。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20081226AS1K2600726122008.html

 社説の結び。

 基本的には、緊急の対策と長期的な対策を総動員しなければならない。まず急増する離職者に当面の生活と再就職のための職業訓練を保障するセーフティーネットの整備が求められる。行政による住宅支援や臨時雇用の提供は既に始まっている。

 世界的な不況の深刻化に伴い、国内の自動車生産台数は11月に前年同月比で約20%も落ち込んだ。底が見えない状態で、産業によっては規模を縮小し、雇用数を恒久的に減らす可能性もある。離職者を介護、医療、サービスなどの人手不足の分野に誘導する強力な政策も要る。

 政労使は力を合わせて、具体的に対策を練り早急に遂行してほしい。

 まず、「緊急の対策と長期的な対策を総動員しなければならない」とありますが、緊急の対策として「急増する離職者に当面の生活と再就職のための職業訓練を保障するセーフティーネットの整備」などを早急に対応することは同感なのですが、長期的な対策は、「世界的な不況の深刻化に伴い、国内の自動車生産台数は11月に前年同月比で約20%も落ち込」む「底が見えない状態」の不況の中で、どうすれば「離職者を介護、医療、サービスなどの人手不足の分野に誘導する強力な政策」を実現できるのか、いまひとつ具体的な政策が見えないのであります。

 すぐ実施可能な介護、医療、サービスなどの人手不足の分野に誘導する策としては、「離職者に」「再就職のための職業訓練を保障するセーフティーネットの整備」する一環として、政府の支援のもとで離職者が介護や医療などの各資格を取りやすくなるよう支援する、また広く一般には、そのような分野をこれから学習しようという人に政府から教育費用を一部援助する制度の導入などがあげられましょう。

 それはそれで有効な策があればぜひ実施していただきたいです。

 しかし、根本的には世界全体の経済が冷え込む中で外需に期待できない以上、何らかの斬新な手法で内需をテコ入れしないと失業者の増加に歯止めをかけることは難しいと思われます。

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 地球環境には全然やさしくない政策であることは理解した上でですが、ここは不況対策として民主党が唱える『高速道路の無料化』を真剣に検討してみてはいかがでしょうか。

 経済状況がここまで悪化した以上、無料化に伴う2兆5千億の財源の問題は、解決するハードルはかなり低くなっていると思います。

 そもそも現在も自動車オーナー達が払っている道路特定財源の一部を回してもよいし、民主党の提案どおり、完全無料化ではなく、首都圏や阪神圏など無料化すると混雑が予想される都市部ではしばらく有料のままに据え置くことで、5000億程度の財源は確保できるはずです。

 もちろん、『高速道路の無料化』にはメリットだけでなくデメリットが伴うわけですが、内需を喚起する不況対策としてはかなり有効なのではないかと思われます。

 まず、物流コストが低減されますから、幅広い産業分野でその経費削減効果が顕れることでしょう。

 また、高速道路を無料化することにより、特に地方経済の活性化により貢献することでしょう。

 物流コストの軽減は、高い土地代を支払って維持してきた都市部の産業拠点の地方への拡散、すなわち物流拠点や生産拠点の地方移転を促すことでしょう。

 物流業だけでなく、観光業や各地地場産業など幅広く活性化をうながし内需を喚起する刺激策としては有効だと思われます。

 そして、何よりインフラの利用料金を低くすれば利用者が増えるのは、インターネットの普及を見ても自明なことであり、消耗品としての自動車の販売に大きくテコ入れができることでしょう。

 政府は民主党案を一蹴していますが、未曾有の不況の中、『高速道路の無料化』は幅広い産業分野の内需喚起と自動車産業活性化という面で、真剣に検討してみる価値があるのではないでしょうか。

 もちろん高速道路6社やJR・航空各社など既得権益にからんだ根強い反対意見が一部にあるのは承知していますが、現下の不況は尋常ではない勢いで深化しているわけで、内需喚起策としての『高速道路の無料化』は、国民の多数が支持すると思いますがいかがでしょう。

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(木走まさみず)