木走日記

場末の時事評論

結語にスタンスが見事に単純に表出する新聞社説〜「中国を中心とする」とか「日本の国益」とか

 久しぶりにマスメディア評論です。

 日本の5大主要紙、朝日・読売・毎日・産経・日経ですが、それぞれ外交スタンスをネットで俗に言われてる特徴で大くくりすれば、まあ、

 朝日・毎日は反米・親中的、読売・日経は親米・親中的、産経は親米・反中的てな、感じでしょうか。

 より細かく私の私見でスタンスを言えば、朝日・毎日も必ずしも反米一色ではなくどっちかというとブッシュ政権がお嫌いな感じでありオバマ政権に対しては好意的なんでありますし、読売・日経は親米・親中的とくくりましたが、日経はどっちかというと日本経済至上原理主義者(失礼)なのであり、日本経済にとってプラスになるのならばそれこそ何処の国ともなかよくしちゃえ、って感じでありますね。

 まあ、朝日は中国に対して特別な思い入れがあり他紙がただアジアと表現するところをあえて「中国」という国名を取り込んで表現するのが大好きだったりしてます。

 あと、産経も親米・反中的ってくくりましたが、反中的ってのはそのとおりだと確信してます(苦笑)が、親米かどうかは微妙なところがありまして、しいて言えば「日本を愛する」という意味で愛国的なんであります。

 産経の外交問題記事にはしばしば「日本の国益」というキーワードが脈絡無く(失礼)登場するのであります。

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●G20金融サミットで主要紙社説が揃い踏み

 20か国・地域(G20)の首脳が参加し、ワシントンで開かれた金融サミットを受け、17日の主要紙社説は一斉にこれを取り上げています。

【朝日社説】G20緊急サミット―この結束を緩めるな
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

【読売社説】金融サミット 発信された危機打開の決意
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20081116-OYT1T00657.htm

【毎日社説】金融サミット 歴史に残る協調を形に
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20081117k0000m070099000c.html

【産経社説】金融サミット 後は実行と改革の詰めだ
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/081117/fnc0811170300000-n1.htm

【日経社説】模範回答の次が問われる金融サミット
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/index20081116AS1K1600216112008.html

 少し驚いたのは、産経を除く4紙が、通常は毎日2本掲げる社説をこれ一本に絞って掲載していることです、それだけ各紙とも力の入った社説となっております。

 全文は是非各紙社説を直接お読みいただくとして、しかし長い割りに各紙にたりよったりであいかわらず、こと国際経済問題になると日本のマスメディアの主張ってのはナンだなあ(苦笑)と思ってしまうのでありますが、概ね各紙とも、今後の実行力が問題と条件付きではありますが今回のサミットを肯定的に評価しているようですね。

 今回のG20サミットが、75年前のロンドンの再現とならず、とにかく合意できる最大公約数だけでも世界へ示すことができた意義は大きい。 (【朝日社説】)

 世界的な金融・経済危機の克服には、先進国だけが話し合っても不可能だ。新興国の首脳らが加わって協議したことに歴史的な意義がある。(【読売社説】)

 すべては、今後の具体策と行動次第だが、非難や対立一色に塗り込められることなく、進むべき方角を明確ではないにしろ確認したことは評価したい。(【毎日社説】)

 先進国と新興国が参加するG20が非難合戦に終わらず、原因の認識を共有できたことは成果だ。対策は原因の共通認識なくして生まれない。ただ原因には異論も多く、さらなる分析が必要だ。(【産経社説】)

 くすぶっていた各国の思惑の違いを封印し、世界経済の主要なメンバーが団結して危機の打開に取り組む姿勢を示したことは歓迎したい。(【日経社説】)

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●結語に各紙スタンスが見事に単純に表出した新聞社説

 似たり寄ったりの論調ではありますが、メディア・ヲッチャー木走としては、やはり些細な各紙の特徴を各社説の結語に見い出したいのであります。

 結びには各紙とも、G20を受けてこれから誰がどうしろという主張が簡潔に表出しているのです。

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 まずは、アジア重視の朝日としては、

 米国は世界中から製品を買い入れ、世界の需要を支えてきた。その穴埋めに最も期待されているのは、中国を中心とするアジアの成長力だ。日本自らを含め、アジアを再び成長軌道に乗せることが世界に対する貢献となる。

 「穴埋めに最も期待されているのは、中国を中心とするアジアの成長力」とします。

 どうでもいいですが、どうしてわざわざ「中国を中心とする」と形容するんだ!?(苦笑)

 「アジアを再び成長軌道に乗せることが世界に対する貢献となる」と言う主張です。

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 親米派の読売はやはりアメリカ新政権の政策が焦点だとし、

 オバマ氏は、ブッシュ政権に比べ、保護貿易主義的な主張を続けてきた。しかし、世界経済を活性化し、成長を加速するには、自由貿易の推進が重要だ。オバマ氏の考え方はいずれ、修正を迫られる公算が大きい。

 来年1月20日に新政権をスタートさせてから、どのような政策を打ち出すか。次回サミットでは、それが最大の焦点になろう。

 「オバマ氏の考え方はいずれ、修正を迫られる公算が大きい」のだそうな。

 アメリカの次期政権が「どのような政策を打ち出すか」、「それが最大の焦点」と、あくまでもアメリカ主導を意識している読売ならではの着眼点であります。

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 どっちかというと反米的な毎日は、 アメリカ一国主導の国際経済は終焉を迎えたという文脈の中で、

 米国の経済力が低下する中で代わりとなる力も不在である。「新ブレトンウッズ体制」の構築はかけ声ほど簡単ではないが、年明けに誕生するオバマ新政権とともに、新しい体制の青写真を具体化していかなければならない。

 首脳らは口々にサミットの歴史的意義を強調した。歴史に残る出発点となるかどうかは、この先の行動で決まる。2008年が歴史的混乱の年としてだけではなく、新たな「グローバル社会」の建造が始まった年として記憶されることを願いたい。

 「米国の経済力が低下する中で代わりとなる力も不在である」そうな。

 アメリカ一国主導体制から脱却し、主要各国が「オバマ新政権とともに、新しい体制の青写真を具体化していかなければならない」と主張します。

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 主要紙で唯一自ら保守と自認する産経ですが、さすが結語も日本の国益を全面に立ててますね、

 麻生太郎首相は今後の国際金融改革で「リーダーシップを発揮したい」と強調した。当然の義務であり、新しい国際金融システムの中での日本の地位確保という国益の観点からも重要だ。

 会合に先立って日中韓財務相会合が行われ、緊急時の外貨融通枠の拡大の検討などで合意したことも、今後のアジアでの金融・経済協力体制の発展の観点から注目していきたい。

 「新しい国際金融システムの中での日本の地位確保という国益の観点からも重要」とします。

 でました、日本の「国益」(苦笑)

 全紙の中で「国益」という文字が登場するのは産経のみであります。

 「日中韓財務相会合」も日本の「国益」という同じ文脈の中で記されているのも、産経らしいといえば産経らしいですよね、いってることは朝日と大差ないんですが。

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 最後に、イデオロギーより日本経済至上主義の日経は、

 日本は今回の金融サミットでIMF、世銀と協調した途上国支援策を打ち出したが、幅広い分野でより積極的な提案をする必要がある。金融規制のあり方では米欧間の活発な論争の陰に隠れた感もある。弱い内需の活性化など、世界第二の経済大国として努力すべきことは多い。

 うむ、日本は「幅広い分野でより積極的な提案をする必要がある」としています。

 なるほど、「弱い内需の活性化など、世界第二の経済大国として努力すべきことは多い」のか。

 うむ、日本経済のために「弱い内需の活性化」がなにより重要ですよね、

 やはり、日本経済第一なのであります。

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 どうでしょう、読者のみなさん。

 G20金融サミットという一見オリジナルの評論を出しづらい、おんなじだらだら主張に見える各紙社説ですけど、あえて結語数行だけ取り上げると興味深いことに、結語に各紙が一番言いたいことがあらわれていると思えます。

 各紙の外交スタンスが見事に単純(?)に表出しているのでございます。



(木走まさみず)