木走日記

場末の時事評論

無差別殺傷を絶対に許さないという法治国家の意志を示せ

秋葉原通り魔:携帯掲示板に予告 警視庁に情報、警戒中〜毎日新聞記事

 毎日新聞記事から。

秋葉原通り魔:携帯掲示板に予告 警視庁に情報、警戒中

加藤智大容疑者が書き込んだ犯行予告 東京・秋葉原で8日起きた通り魔事件で逮捕された加藤容疑者が警視庁捜査本部の調べに対し、事件直前の8日早朝から正午過ぎ、携帯電話サイトの掲示板に、今回の通り魔事件を予告する書き込みをしたことを認める供述をした。容疑者が実際に予告していたことが判明するのは異例。

 警視庁には、この携帯専用掲示板とは別のインターネットの掲示板に「5日以降に秋葉原で惨事」などの書き込みがあるとの情報が寄せられ、万世橋署にも参考連絡していたが、予防はできなかった。

 捜査本部は加藤容疑者の携帯電話を押収し、分析を進めている。

 書き込みは、8日午前5時21分の「秋葉原で人を殺します」という題名で「車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら」という内容から始まった。その後「時間だ出かけよう」(同6時31分)「まあいいや 規模が小さくても、雨天決行」(同7時47分)「秋葉原についた 今日は歩行者天国の日だよね?」(同11時45分)などと続き、「時間です」(午後0時10分)と、事件20分前まで断続的に続いていた。

 ◇携帯電話サイトに書き込んだ内容(原文のまま)
午前5時21分 秋葉原で人を殺します 車でつっこんで、車が使えなくなったらナイフを使います みんなさようなら

午前5時21分 ねむい

午前5時34分 頭痛が治らなかった

午前5時35分 しかも、予報が雨 最悪

午前5時44分 途中で捕まるのが一番しょぼいパターンかな

午前6時00分 俺(おれ)が騙(だま)されてるんじゃない 俺が騙してるのか

午前6時02分 いい人を演じるのには慣れてる みんな簡単に騙される

午前6時03分 大人には評判の良い子だった 大人には

午前6時03分 友達は、できないよね

午前6時04分 ほんの数人、こんな俺に長いことつきあってくれてた奴(やつ)らがいる

午前6時05分 全員一斉送信でメールをくれる そのメンバーの中にまだ入っていることが、少し嬉(うれ)しかった

午前6時10分 使う予定の道路が封鎖中とか やっぱり、全(すべ)てが俺の邪魔をする

午前6時31分 時間だ出かけよう

午前6時39分 頭痛との闘いになりそうだ

午前6時49分 雨とも

午前6時50分 時間とも

午前7時12分 一本早い電車に乗れてしまった

午前7時24分 30分余ってるぜ

午前7時30分 これは酷(ひど)い雨 全部完璧(かんぺき)に準備したのに

午前7時47分 まあいいや 規模が小さくても、雨天決行

午前9時41分 晴れればいいな

午前9時48分 神奈川入って休憩 今のとこ順調かな

午前10時53分 酷い渋滞 時間までに着くかしら

午前11時07分 渋谷ひどい

午前11時17分 こっちは晴れてるね

午前11時45分 秋葉原ついた

午前11時45分 今日は歩行者天国の日だよね?

午後0時10分 時間です

英訳

毎日新聞 2008年6月9日 11時48分(最終更新 6月9日 14時23分)
http://mainichi.jp/select/today/news/20080609k0000e040038000c.html

 「警視庁には、この携帯専用掲示板とは別のインターネットの掲示板に「5日以降に秋葉原で惨事」などの書き込みがあるとの情報が寄せられ、万世橋署にも参考連絡していたが、予防はできなかった」とのことですが、この一点を持って今回の惨事を予防できなかった警察を責めることは酷でありましょう、ネットでは、常日頃から「忍者姿でアキバで殺人してやる」などのデマや虚偽な情報が氾濫しているのも事実だからです。

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秋葉原殺人事件とネット検索領域への期待〜正論編集部Blog

 一部には、犯人が携帯電話サイトの掲示板に通り魔事件を予告する書き込みをしたことを重視、今後の犯罪抑止のためにネットでの監視を強化すべしという論もあるようですがいかがなものでしょう。

秋葉原殺人事件とネット検索領域への期待

秋葉原殺人事件の加藤智大容疑者(25)は、インターネットの携帯電話サイトの掲示板でさまざまな予告書き込みをしていた。6月8日の事件当日、早朝から正午にかけては、こんな具合に。

秋葉原で人を殺します」(午前5時21分)

「途中で捕まるのが一番しょぼいパターンかな」(午前5時44分)

「時間だ 出かけよう」(午前6時31分)

「神奈川入って休憩 いまのところ順調かな」(午前9時48分)

「酷い渋滞 時間までに着くかしら」(午前10時53分)

秋葉原着いた 今日は歩行者天国の日だよね?」(午前11時45分)

「時間です」(午後0時10分)

事件の3日前には、「『誰でもよかった』  なんかわかる気がする」とも。こういうサイトへの犯行予告を報じる新聞やテレビをみて、思ったのは、ネット検索である。

朝日新聞5月31日付朝刊で、ネット検索最大手グーグルのマリッサ・メイヤー副社長が、インタビューに応じている。メイヤー副社長は、創業(1998年)の翌年、グーグル初の女性技術者として入社。検索と利便性向上担当副社長として、検索エンジンの未来にもっとも影響力のある人物のひとりだという。

記事によれば、メイヤー副社長は、グーグルがこんご10年に力をいれる領域をモード、メディア、パーソナライゼーション、ソーシャルサーチの4つだとしたという。それぞれの用語について、記事はこう説明している。

モードとは、従来のキーワード検索から、「話し言葉」「概念」を理解して最適な検索結果を表示すること。

メディアとは、写真や動画、地図、ニュースなどをまとめて表示し、検索結果が「メディア」のようになる。

パーソナライゼーションとは、利用者1人1人の特性や条件に合わせた結果を表示すること。

パーソナライゼーションとは、「好みが近い人」「特定の知識のある人」との問答に近づけること。

以上、紹介してきたのは、検索がここまで踏み込もうとしているなら、殺意のあるサイトをピックアップして、犯罪を事前にふせぐシステムを具体化してほしいと思ったからである。

(正論編集部Blog)
http://oshimas.iza.ne.jp/blog/entry/604296

 「殺意のあるサイトをピックアップして、犯罪を事前にふせぐシステムを具体化してほしい」というご意見は理解できますが、現実問題としてこのようなカラクリのシステムを運用するのは極めて困難を伴うことでしょう。

 技術的には近い将来に可能であったとしても、このようなシステムが実現したらおそらくネット上の言論の自由を浸食してしまい、「殺人」とか「強姦」とか犯罪に関与する単語の使用制限につながりかねません。

 また、ネット上で虚飾のテキストを起こす(ミステリーノベルやサスペンスノベル等)悪意無き人々にはどう対処するのでしょう。

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●アキバ歩行者天国、当面中止の公算高まる〜読売新聞記事

 読売新聞記事から。

アキバ歩行者天国、当面中止の公算高まる

 東京・秋葉原で8日に起きた無差別殺傷事件を受け、毎週日曜・休日に行われている秋葉原歩行者天国が当面中止になる公算が大きくなったことがわかった。

 千代田区の関係者によると、地元商店や町会から意見を聞いたうえで、警察など関係各機関と会議を開いて決める。模倣犯警戒のため、多くの人員を割かなければならない警察サイドが、続行に難色を示しているため。

 13日にも会議を開き、正式決定する見通し。

(2008年6月10日03時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080610-OYT1T00073.htm?from=main2

 今回の無差別殺傷事件を受け、「秋葉原歩行者天国が当面中止になる公算が大きくなった」そうですが、「模倣犯警戒のため、多くの人員を割かなければならない警察サイドが、続行に難色を示しているため」なのだそうです。

 模倣犯罪を防止する意図は良く理解できますが、犯罪阻止に対する姿勢としては、消極的な印象はぬぐえないと感じました。

 このような愚かな犯罪で一般の人々が集い楽しむ休日の歩行者天国が警察の意向で取りやめになるとしたら、逆のシグナルも発信しかねないでしょう、無差別殺傷が警察を振り回し市民の生活に歩行者天国廃止というかたちで影響を与えるとすれば、休日の歩行者天国は、アキバだけではない、東京中、いや日本中の都市の至る所で行われている事実を忘れてはいけませんでしょう。

 アキバだけでの限定対応でどこまで模倣犯抑止効果があるのか、当局は冷静に検討していただきたいと思います。

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●無差別殺傷を絶対に許さないという法治国家の意志を示せ〜犯人射殺を含めた警察の断固たる行動を求める

 今回の事件を受けてネット上でも様々な議論が起こっていますが、興味深いDr Marks氏のブログから、失礼して一部引用。

Comments by Dr Marks
■ アキバの悲惨な事件と日本の警察および死刑制度など + 警察の怠慢(コメント欄参照)

(前略)

よくこのような犯罪者は、「死にたくてやった」などと嘯くが、それならなおさらのこと、構うことはない、短時間の審理で事件後すぐに死刑にするか、現場で射殺したほうがいい。真犯人かよくわからず死刑をためらうケースがあることは認めるが、このように犯罪が明らかである場合はなるべく効果的に、現場での射殺を含め、死刑にするべきである。これは、精神鑑定で無罪になるようなケースではない。また、そのような時間と費用の無駄をするべきではない。無辜の人を意図的に殺めておいて、その犯人がのうのうと生きながらえるような社会はあってはならない。犯人の生い立ちがどうの、環境や状況がどうのと、知識人は言い出すだろうが、Decisions can be made, lives can be altered。そんな知識人よ、甘えさせるのもいい加減にしてほしい、否、甘えるのもいい加減にしろ。

http://d.hatena.ne.jp/DrMarks/20080609/1212997508

 一つの正論でしょう、TV等の映像で現場の惨状を見た者の一人として、もしアメリカのように警官が凶悪犯を「現場で射殺」する行為が一般に広く認められているとしたならば、今回の犠牲者数も抑制できた可能性はあるのではないか、と思います。

 そして当局がそのような厳しい行動をもし取ることが可能ならば、それが映像等で報道されることにより類似犯による模倣犯罪に対する抑制にも少なからずの効果があることでしょう。

 歩行者天国という一般の人々が溢れている中で警官が銃を放つ行為は誤射する危険性をはらんでいることでしょうし、今回の事件で実際警官が銃を使用する機会があったのか、メディア報道だけの情報源しか持たない私にはよくわかりませんが、Dr Marks氏の指摘する「このように犯罪が明らかである場合はなるべく効果的に、現場での射殺を含め、死刑にするべき」という意見には同意いたします。

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 ネット上での監視を強めよという正論編集部氏の意見も理解できます。

 アキバでの歩行者天国を当面中止という警視庁の方針も、模倣犯罪防止の観点から理解できます。

 しかし、そのような消極的犯罪防止策だけで、このような「死にたくてやった」などと身勝手に嘯く、無差別殺戮が防ぎきれるとは思えません。

 そのような抑止策を講じるのはそれが有効ならばよろしいでしょう、しかし、と同時に、今回のような明らかな凶悪犯罪においては、これ以上被害者を増やさないために犯人射殺を含めた警察の断固たる行動が求められるのだと思いました。

 このような無差別殺傷を絶対に許さないという法治国家・日本の国民の総意として。

 日本を警察国家にするつもりか、と反論もあることでしょう、小さな犯罪でも国家権力が暴力装置として過剰反応することにつながらないかという疑念もあることでしょう。

 しかし、ネットで犯罪予告しつつ「死にたくてやった」という身勝手な動機で、実際に多数の無垢な人々を無差別殺傷してしまう輩が出現している時代なのです。

 無差別殺傷をネットで予告しただけで射殺したらそれは過度の「警察国家」となりましょう、もちろん私はそのような極論を論じるつもりはありません。

 そうではなく、今回のように、実際にひとりでも無垢の犠牲者が目の前で発生して、つまり冤罪の可能性がゼロに等しいならば、このまま犯人を放置すると無差別殺傷につながる可能性が大な場合は、警察は犯人射殺に躊躇すべきではないと主張いたします。

 国家として無差別殺傷を絶対に許さないという意志を示すべきです。

 その意味で実際に無差別殺傷が発生したら、これ以上の犠牲者を増やさないために警察が犯人射殺を含めた断固たる行動を取ることを一人の国民として求めたいのです。
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 読者のみなさまはいかがなご意見をお持ちでしょうか。



(木走まさみず)