木走日記

場末の時事評論

「一人当たり所得」統計的日米比較検証〜おそらく相対としてアメリカよりも「地域(所得)格差」は「拡大」している可能性が高い

●はじめに

 資本主義経済は競争原理を土台としており、必然的に格差を生むシステムであります。

 したがって、経済発展を遂げても格差はなくならず、また新たな格差が生じるという問題があるのは必然です。

 格差問題はその国の経済的成熟度にもより、多様多面多層な様相を示し、地政学的な要素が関わる地域間格差だけでなく、地域内における社会階層の固定化や資産・所得の格差拡大など、ある閉じた地域内の所得格差も地理的ポイントに深化した格差問題なのであります。

 つまり「一人当たり県民所得」にこだわった前々回の私のエントリーで扱ったのは、多様多面多層な様相を示す格差問題の中で、「地域(所得)間格差」だけにスポットを当てたものであり、例えば東京都在住でもその閉じた空間にさらに、地域内格差や社会階層格差がある点にはふれていません。 

 しかしその「地域(所得)間格差」においてすら一部「シンクタンク」やメディアの論説ではそのような「地域間格差」の「拡大」傾向は日本では顕在化していないという意見があります。

 私はそのような主張に違和感を感じ、前々回のエントリーでこの国で「格差」が「拡大」している統計的事実を示して反論を試みたのでした。

 いたずらに格差拡大を煽る必要はまったく意味がありませんが、しかしながら、正しい統計的事実を示し議論することは大切なことであります。

 格差の存在しない国はありません。しかし、もしそれが拡大傾向にあるならば、経済発展、貧困、援助、人間の幸福など、あらゆる角度から取り組むべきイデオロギーとは関係のない価値のあるテーマとなりましょう。

 さて。

 前々回の当ブログのエントリー。

■[社会]地域格差拡大否定論を統計的に批判検証してみる
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070813

 ここで私はあるシンクタンクのレポートについて統計的な反論を試みました。

地域格差」は拡大しているか
統計的実態と格差意識の乖離が示唆するもの〜

2006年9月27日

株式会社日本総合研究所
調査部 マクロ経済研究センター
http://www.jri.co.jp/press/2006/jri_060927.pdf

 当該レポートが採用している「1人当たり雇用者報酬」という指標の持つ限界性を指摘し、「1人当たり県民所得」を用いて地域経済を統計的に比較することを試み、東京一極集中、少なくとも「地方(所得)格差」がここ9年で「拡大」していることを、統計実態として示してみました。

 このエントリーはネット上少し話題になり、ブクマやリンク、あるいはコメント欄にて賛否両論、有意義なご意見をいただきました。

 徹底して根拠あるデータを元に統計学的に得られた値だけを扱って、「地域格差拡大否定論を統計的に批判検証してみる」試みでしたが、国際的に見ても日本がそんなに格差拡大しているのかは疑問であるという貴重なご意見もいただきました。

 そこで今回はやはり、徹底して根拠あるデータを元に統計学的に得られた値だけを扱って、科学的アプローチで日米の国際比較を試みてみたいと思います。

 アメリカを選んだのは言うまでもなく同じ先進国であり所得水準も近いからです。

 始めに結論ありきではなく、科学的にアプローチした結果をそのままここにお示しし、この問題に関する読者のみな様の考察の一助になればと思っております。

 なお、私は工学系技術者として統計処理は商売道具ではありますが、経済学者でもましてや統計の専門家でもありません。

 また、アメリカ側の資料提供や情報アドバイスとして私のアメリカ人の友人であるスティーブ氏にいろいろなアメリカの情報提供や助言をいただきました。



アメリカ合衆国の「1人当たり州民所得」を徹底検証する

 ご存知のとおりアメリカ合衆国は50の州より構成され、幸いなことに各種州別経済動向が日本以上に細かく分析されかつ公開されています。

 ここに商務省経済分析局(BEA)のサイトがあります。

U.S. Department of Commerce
Bureau of Economic Analysis

http://www.bea.gov/index.htm

 このサイト内の以下の表には興味深い最近の州別の「1人当たり州民所得」が掲載されています。

Table 1. Per Capita Personal Income, Personal Income, and Population, by State and Region, 2005–2006
http://www.bea.gov/newsreleases/regional/spi/spi_newsrelease.htm

 この表に基づき50州の最新(2006年)の「1人当たり州民所得」を作成してみました。

 なお、表では、後で偏差値の計算等に使用するために、州名略号、全米平均を100としての相対値、平均との差異、差異の2乗を併記しました。また全米平均は最下行となります。

【表1:1人当たり州民所得】(単位:$)

州名 略号 一人当たり所得 相対値 平均からの差 差の2乗
Connecticut CT 49,852 137 +37 1369
Maine ME 32,348 89 -11 121
Massachusetts MA 45,877 126 +26 676
New Hampshire NH 39,311 108 + 8 64
Rhode Island RI 37,388 103 + 3 9
Vermont VT 34,264 94 - 6 36
Delaware DE 39,022 108 + 8 64
Maryland MD 44,077 122 +22 484
New Jersey NJ 46,344 128 +28 784
New York NY 42,392 117 +17 289
Pennsylvania PA 36,680 101 + 1 1
Illinois IL 38,215 105 + 5 25
Indiana IN 32,526 90 -10 100
Michigan MI 33,847 93 - 7 49
Ohio OH 33,338 92 - 8 64
Wisconsin WI 34,701 96 - 4 16
Iowa IA 33,236 92 - 8 64
Kansas KS 34,743 96 - 4 16
Minnesota MN 38,712 107 + 7 49
Missouri MO 32,705 90 -10 100
Nebraska NE 34,397 95 - 5 25
North Dakota ND 32,552 90 -10 100
South Dakota SD 33,929 94 - 6 36
Alabama AL 31,295 86 -14 196
Arkansas AR 27,935 77 -23 529
Florida FL 35,798 99 - 1 1
Georgia GA 31,891 88 -12 144
Kentucky KY 29,352 81 -19 361
Louisiana LA 30,952 85 -15 225
Mississippi MS 26,535 73 -27 729
North Carolina NC 32,234 89 -11 121
South Carolina SC 29,515 81 -19 361
Tennessee TN 32,304 89 -11 121
Virginia VA 39,173 108 + 8 64
West Virginia WV 27,897 77 -23 529
Arizona AZ 31,458 87 -13 169
New Mexico NM 29,673 82 -18 324
Oklahoma OK 32,210 89 -11 121
Texas TX 34,257 94 - 6 36
Colorado CO 39,186 108 + 8 64
Idaho ID 29,952 83 -17 289
Montana MT 30,688 85 -15 225
Utah UT 29,108 80 -20 400
Wyoming WY 40,676 112 +12 144
Alaska AK 37,271 103 + 3 9
California CA 38,956 107 + 7 49
Hawaii HI 36,299 100 0 0
Nevada NV 37,089 102 + 2 4
Oregon OR 33,666 93 - 7 49
Washington WA 37,423 103 + 3 9
United States ** 36,276 100 0 9814

 全米平均が36,276ドル(約417万円(ドル=114円換算))の2006年の「1人当たり州民所得」なのでありますが、最高所得がコネチカット州(Connecticut:CT)で49,852ドル、全米平均を100とした場合の相対値が137、最低所得がミシシッピー州(Mississippi:MS)で26,535ドル、相対値が 73であることがわかります。

 さて、少し統計的用語を整理しておきます、了承くださいませ。

 これから、上記アメリカの「1人当たり州民所得」の散らばり具合、すなわち地域格差の度合いを統計的に調べるために、Standard Deviationすなわち標準偏差(ひょうじゅんへんさ)を求めます。

 つまり標準偏差(ひょうじゅんへんさ、Standard Deviation)は、統計値や確率変数の散らばり具合を表す数値のひとつで σ(しぐま)で表します。

 で、標準偏差 σを求めるためには平方偏差(σの2乗)をまず求めます。

 上記表によれば*差の2乗欄の平均が平方偏差(σの2乗)になります。

 よって、

平方偏差(σの2乗)= 9814 / 50 = 196.28
標準偏差(σ)= √196.28 = ±14.01

 2006年におけるアメリカ50州の「1人当たり州民所得」の散らばり具合、標準偏差(σ)は14.01と求まりました。

 標準偏差14.01という散らばり具合ですが、所得分布としては相当高い数字であります。一般には学力などの評価に利用される偏差値(へんさち、Standard score)が「平均値が50、標準偏差が10となるように標本変数を規格化したもの」であります。

 この14.01というアメリカの数値は後で日米比較で利用しますので是非覚えておいてください。

 さて、標準偏差が求まれば各値のStandard score:偏差値が導かれます。

 経済指標に偏差値を用いるのは一般の経済学者はまずトライしないでしょうが、こちらは素人ですし、所得の分散具合が視覚的に読者のみなさまにご理解されやすいと思います。

 以下の表は標準偏差より各州の偏差値を求め高い順に並び替えたものです。

【表2:1人当たり州民所得偏差値ランキング】

州名 略号 一人当たり所得 相対値 平均からの差 差の2乗 偏差値
Connecticut CT 49,852 137 +37 1369 76.4
New Jersey NJ 46,344 128 +28 784 70.0
Massachusetts MA 45,877 126 +26 676 68.6
Maryland MD 44,077 122 +22 484 65.7
New York NY 42,392 117 +17 289 62.1
Wyoming WY 40,676 112 +12 144 58.6
Virginia VA 39,173 108 + 8 64 55.7
New Hampshire NH 39,311 108 + 8 64 55.7
Delaware DE 39,022 108 + 8 64 55.7
Colorado CO 39,186 108 + 8 64 55.7
Minnesota MN 38,712 107 + 7 49 55.0
California CA 38,956 107 + 7 49 55.0
Illinois IL 38,215 105 + 5 25 53.6
Alaska AK 37,271 103 + 3 9 52.1
Rhode Island RI 37,388 103 + 3 9 52.1
Washington WA 37,423 103 + 3 9 52.1
Nevada NV 37,089 102 + 2 4 51.4
Pennsylvania PA 36,680 101 + 1 1 50.7
Hawaii HI 36,299 100 0 0 50.0
Florida FL 35,798 99 - 1 1 49.3
Wisconsin WI 34,701 96 - 4 16 47.1
Kansas KS 34,743 96 - 4 16 47.1
Nebraska NE 34,397 95 - 5 25 46.4
Texas TX 34,257 94 - 6 36 45.7
South Dakota SD 33,929 94 - 6 36 45.7
Vermont VT 34,264 94 - 6 36 45.7
Oregon OR 33,666 93 - 7 49 45.0
Michigan MI 33,847 93 - 7 49 45.0
Ohio OH 33,338 92 - 8 64 44.3
Iowa IA 33,236 92 - 8 64 44.3
Indiana IN 32,526 90 -10 100 42.9
Missouri MO 32,705 90 -10 100 42.9
North Dakota ND 32,552 90 -10 100 42.9
North Carolina NC 32,234 89 -11 121 42.1
Maine ME 32,348 89 -11 121 42.1
Oklahoma OK 32,210 89 -11 121 42.1
Tennessee TN 32,304 89 -11 121 42.1
Georgia GA 31,891 88 -12 144 41.4
Arizona AZ 31,458 87 -13 169 40.7
Alabama AL 31,295 86 -14 196 40.0
Louisiana LA 30,952 85 -15 225 39.3
Montana MT 30,688 85 -15 225 39.3
Idaho ID 29,952 83 -17 289 37.9
New Mexico NM 29,673 82 -18 324 37.2
Kentucky KY 29,352 81 -19 361 36.4
South Carolina SC 29,515 81 -19 361 36.4
Utah UT 29,108 80 -20 400 35.7
West Virginia WV 27,897 77 -23 529 33.6
Arkansas AR 27,935 77 -23 529 33.6
Mississippi MS 26,535 73 -27 729 30.8

 いかがでしょうか。

 簡単に解説をいたしますと、まずコネチカット(Connecticut:CT)、ニュージャージー(New Jersey :NJ)、マサチューセッツ(Massachusetts :MA)、メリーランド(Maryland:MD)、ニューヨーク(New York:NY)の偏差値60を越えている所得上位5州ですが、すべて地理的にはニューイングランド(New England)地区、ミッドイースト(Mideast)地区といわれるアメリカ東部中でも北東部に集中しています。

 北東部出身のスティーブ氏によればこの上位の顔ぶれは実は常連であり、アメリカでは歴史的に所得水準の地域間格差が大きく、入植時代からの歴史的背景があり、ニューヨークやボストンを抱えてアメリカのエスタブリッシュメントの多くが住む北東部はアメリカの中でも最も所得の高い地域なのであります。

 それに対し、南部、特にディープサウスと言われる地域の所得は最も低いです。
 上記偏差値ランキングでも最下位はディープサウスのミシシッピー州(Mississippi:MS)であり、偏差値はわずか30.8であります。

 あと傾向としてロサンゼルスやサンフランシスコなどの大都市を有する西部諸州はかつての高所得地域から全米平均に近づきつつあるようです、スティーブ氏によれば、これは、この地域に所得水準の低いヒスパニック系の移民が多く流入しているためのようです。

 さてこの標準偏差14.01のアメリカの一人当たり所得分布ですが、スティーブ氏によればかつて大恐慌時代には40.0以上の高い値だったものが1980年代ぐらいまでに15.0前後に収斂し最近でもそのあたりの数値で落ち着いているようです。

 さて偏差値で並べた上記表を視覚的にわかりやすく偏差値5区切りで分布を明示化したのが以下の表です。

【表3:1人当たり所得偏差値分布(アメリカ:2006年)】

偏差値 州名
84-80  
79-75 CT
74-70 NJ
69-65 MA MD
64-60 NY
59-55 WY VA NH DE CO MN CA
54-50 IL AK RI WA NV PA HI
49-45 FL WI KS NE TX SD VT OR MI
44-40 OH IA IN MO ND NC ME OK TN GA AZ AL
39-35 LA MT ID NM KY SC UT
34-30 WV AR MS

●日本国の「1人当たり県民所得」を徹底検証する

 さて、日本においては前々回利用した【1人当たり県民所得】を再度利用いたしましょう。

【表4:1人当たり県民所得】(単位:千円)

都道府県 平成8年度 平成16年度 増減率
01 北海道 2,794 2,535 -9.27%
02 青森県 2,476 2,152 -13.09%
03 岩手県 2,572 2,363 -8.13%
04 宮城県 2,812 2,530 -10.03%
05 秋田県 2,491 2,297 -7.79%
06 山形県 2,604 2,411 -7.41%
07 福島県 2,897 2,712 -6.39%
08 茨城県 3,148 2,929 -6.96%
09 栃木県 3,314 3,062 -7.60%
10 群馬県 3,034 2,828 -6.79%
11 埼玉県 3,324 2,956 -11.07%
12 千葉県 3,116 2,976 -4.49%
13 東京都 4,282 4,559 +6.47%
14 神奈川 3,576 3,174 -11.24%
15 新潟県 2,898 2,688 -7.25%
16 富山県 3,316 3,027 -8.72%
17 石川県 2,979 2,790 -6.34%
18 福井県 2,930 2,832 -3.34%
19 山梨県 2,896 2,548 -12.01%
20 長野県 2,980 2,733 -8.29%
21 岐阜県 2,999 2,701 -9.94%
22 静岡県 3,357 3,247 -3.28%
23 愛知県 3,723 3,440 -7.60%
24 三重県 3,015 2,988 -0.90%
25 滋賀県 3,529 3,235 -8.33%
26 京都府 3,034 2,849 -6.10%
27 大阪府 3,534 3,039 -14.01%
28 兵庫県 3,301 2,651 -19.69%
29 奈良県 2,968 2,599 -12.43%
30 和歌山 2,601 2,525 -2.92%
31 鳥取県 2,621 2,371 -9.54%
32 島根県 2,549 2,425 -4.86%
33 岡山県 2,844 2,578 -9.35%
34 広島県 3,184 2,943 -7.57%
35 山口県 2,899 2,817 -2.83%
36 徳島県 2,784 2,808 +0.86%
37 香川県 2,844 2,630 -7.52%
38 愛媛県 2,637 2,309 -12.44%
39 高知県 2,437 2,171 -10,92%
40 福岡県 2,792 2,570 -7.95%
41 佐賀県 2,597 2,453 -5.54%
42 長崎県 2,380 2,190 -7.98%
43 熊本県 2,460 2,366 -3.82%
44 大分県 2,690 2,653 -1.38%
45 宮崎県 2,415 2,340 -3.11%
46 鹿児島 2,276 2,207 -3.03%
47 沖縄県 2,050 1,987 -3.07%
* 全県計 3,188 2,978 -6.59%
* ブロック別
01 北海道・東北 2,746 2,508 -8.67%
02 関東 3,556 3,427 -3.63%
03 中部 3,374 3,171 -6.02%
04 近畿 3,321 2,868 -13.64%
05 中国 2,935 2,730 -6.98%
06 四国 2,678 2,460 -8.14%
07 九州 2,529 2,391 -5.46%
* 政令指定都市
01 札幌市 3,025 2,700 -10.74%
02 仙台市 3,300 2,935 -11.06%
03 千葉市 3,472 3,348 -3.57%
04 横浜市 3,579 3,110 -13.10%
05 川崎市 3,643 3,281 -9.94%
06 名古屋 3,940 3,241 -17.74%
07 京都市 3,148 2,911 -7.53%
08 大阪市 4,106 3,311 -19.36%
09 神戸市 3,136 2,773 -11.58%
10 北九州 3,048 2,510 -17.65%
11 福岡市 3,338 3,109 -6.86%
* 都市計 3,510 3,052 -13.05%

 上記から都道府県データだけを抽出し、アメリカの州のときと同様に標準偏差を求めるために、全県平均を100とした相対値、平均からの差、差の2乗を列記します。

 まず平成8年のデータから。

【表5:1人当たり県民所得(平成8年)】(単位:千円)

都道府県 平成8年度 相対値 平均からの差 差の2乗
01 北海道 2,794 87.64 -12.36 152.77
02 青森県 2,476 77.67 -22.33 498.62
03 岩手県 2,572 80.68 -19.32 373.26
04 宮城県 2,812 88.21 -11.79 139.00
05 秋田県 2,491 78.14 -21.86 477.86
06 山形県 2,604 81.68 -18.32 335.62
07 福島県 2,897 90.87 - 9.13 83.36
08 茨城県 3,148 98.74 - 1.25 1.56
09 栃木県 3,314 103.95 + 3.95 15.60
10 群馬県 3,034 95.17 - 4.83 23.33
11 埼玉県 3,324 104.27 + 4.27 18.23
12 千葉県 3,116 97.74 - 2.26 5.11
13 東京都 4,282 134.32 +34.32 1177.86
14 神奈川 3,576 112.17 +12.17 148.11
15 新潟県 2,898 90.90 - 9.10 82.81
16 富山県 3,316 104.02 + 4.02 16.16
17 石川県 2,979 93.44 - 6.56 43.03
18 福井県 2,930 91.91 - 8.09 65.45
19 山梨県 2,896 90.84 - 9.16 83.91
20 長野県 2,980 93.48 - 6.52 42.51
21 岐阜県 2,999 94.07 - 5.93 35.16
22 静岡県 3,357 105.30 + 5.30 28.09
23 愛知県 3,723 116.78 +16.78 281.57
24 三重県 3,015 94.57 - 5.43 29.48
25 滋賀県 3,529 110.70 +10.70 114.49
26 京都府 3,034 95.17 - 4.83 23.33
27 大阪府 3,534 110.85 +10.85 117.72
28 兵庫県 3,301 103.54 + 3.54 12.53
29 奈良県 2,968 93.10 - 6.90 47.61
30 和歌山 2,601 81.59 -18.41 338.93
31 鳥取県 2,621 82.21 -17.79 316.48
32 島根県 2,549 79.96 -20.04 401.60
33 岡山県 2,844 89.21 -10.79 116.42
34 広島県 3,184 99.87 - 0.13 0.02
35 山口県 2,899 90.93 - 9.07 82.26
36 徳島県 2,784 87.33 -12.67 160.53
37 香川県 2,844 89.21 -10.79 116.42
38 愛媛県 2,637 82.72 -17.28 298.60
39 高知県 2,437 76.44 -23.56 555.07
40 福岡県 2,792 87.59 -12.42 154.26
41 佐賀県 2,597 81.46 -18.54 343.73
42 長崎県 2,380 74.65 -25.35 642.62
43 熊本県 2,460 77.16 -22.84 521.67
44 大分県 2,690 84.38 -15.62 243.98
45 宮崎県 2,415 75.75 -24.25 588.06
46 鹿児島 2,276 71.39 -28.61 818.53
47 沖縄県 2,050 64.30 -35.70 1274.49
* 全県計 3,188 100.00 0.00 11447.81

 さっそく標準偏差を求めてみましょう。

平方偏差(σの2乗)= 11447.81 / 47 = 243.57
標準偏差(σ)= √243.57 = ±15.61

 ここで意外な事実ですが、平成8年の時点で日本の所得のばらつきを示す標準偏差が15.61とアメリカ(2006年)14.01よりも高い、つまり格差が大きいという点です。

 続いて平成16年のデータから。

【表6:1人当たり県民所得(平成16年)】(単位:千円)

都道府県 平成16年度 相対値 平均からの差 差の2乗
01 北海道 2,535 85.12 -14.88 221.41
02 青森県 2,152 72.26 -27.74 769.51
03 岩手県 2,363 79.35 -20.65 426.42
04 宮城県 2,530 84.96 -15.04 226.20
05 秋田県 2,297 77.13 -22.88 523.49
06 山形県 2,411 80.96 -19.04 362.52
07 福島県 2,712 91.07 - 8.93 79.74
08 茨城県 2,929 98.35 - 1.65 2.72
09 栃木県 3,062 102.82 + 2.82 7.95
10 群馬県 2,828 94.96 - 5.04 25.40
11 埼玉県 2,956 99.26 - 0.74 0.55
12 千葉県 2,976 99.93 - 0.07 0.00
13 東京都 4,559 153.09 +53.09 2818.55
14 神奈川 3,174 106.58 + 6.58 43.30
15 新潟県 2,688 90.26 - 9.74 94.87
16 富山県 3,027 101.65 + 1.65 2.72
17 石川県 2,790 93.69 - 6.31 39.82
18 福井県 2,832 95.10 - 4.90 24.01
19 山梨県 2,548 85.56 -14.44 208.51
20 長野県 2,733 91.77 - 8.23 67.73
21 岐阜県 2,701 90.70 - 9.30 86.49
22 静岡県 3,247 109.03 + 9.03 81.54
23 愛知県 3,440 115.51 +15.51 240.56
24 三重県 2,988 100.36 + 0.36 0.13
25 滋賀県 3,235 108.63 + 8.63 74.48
26 京都府 2,849 95.67 - 4.33 18.75
27 大阪府 3,039 102.05 + 2.05 4.20
28 兵庫県 2,651 89.02 -10.98 120.56
29 奈良県 2,599 87.27 -12.73 162.05
30 和歌山 2,525 84.79 -15.21 231.34
31 鳥取県 2,371 79.62 -20.38 415.34
32 島根県 2,425 81.43 -18.57 344.84
33 岡山県 2,578 86.57 -13.43 180.36
34 広島県 2,943 98.82 - 1.18 1.39
35 山口県 2,817 94.59 - 5.41 29.27
36 徳島県 2,808 94.29 - 5.71 32.60
37 香川県 2,630 88.31 -11.69 136.66
38 愛媛県 2,309 77.54 -22.46 504.45
39 高知県 2,171 72.90 -27.10 734.41
40 福岡県 2,570 86.30 -13.70 187.69
41 佐賀県 2,453 82.37 -17.63 310.82
42 長崎県 2,190 73.54 -26.46 700.13
43 熊本県 2,366 79.45 -20.55 422.30
44 大分県 2,653 89.09 -10.91 119.03
45 宮崎県 2,340 78.58 -21.42 458.82
46 鹿児島 2,207 74.11 -25.89 670.29
47 沖縄県 1,987 66.72 -33.28 1107.56
* 全県計 2,978 100.00 0.00 13321.48

 標準偏差を求めます。

平方偏差(σの2乗)= 13321.48 / 47 = 283.44
標準偏差(σ)= √283.44 = ±16.84

 事実として、平成8年の15.61から平成16年の16.84と、日本の所得のばらつきを示す標準偏差が拡大傾向にあることがわかります。

 ・・・

 日本においてもアメリカと同様に視覚的にご理解いただきやすくしましょう、各県の偏差値を求めます。

 平成8年と平成16年の2つの値から各県のそれぞれの年の所得分布の偏差値を計算した結果を併記し、かつ平成16年の偏差値の高い順に並び替えた表を示します。

【表7:1人当たり県民所得偏差値ランキング(平成16年)】

都道府県 平成8年度偏差値 平成16年度偏差値
13 東京都 72.0 81.5
23 愛知県 60.7 59.2
22 静岡県 53.4 55.4
25 滋賀県 56.8 55.1
14 神奈川 57.8 53.9
09 栃木県 52.5 51.7
27 大阪府 57.0 51.2
16 富山県 52.6 51.0
12 千葉県 48.6 50.0
24 三重県 46.5 49.8
11 埼玉県 52.7 49.6
34 広島県 49.9 49.3
08 茨城県 49.2 49.0
26 京都府 46.9 47.4
18 福井県 44.8 47.1
10 群馬県 46.9 47.0
35 山口県 44.2 46.8
36 徳島県 41.9 46.6
17 石川県 45.8 46.3
20 長野県 45.8 45.1
07 福島県 44.2 44.7
21 岐阜県 46.2 44.5
15 新潟県 44.2 44.2
44 大分県 40.0 43.5
28 兵庫県 52.3 43.4
37 香川県 43.1 43.1
29 奈良県 45.6 42.4
33 岡山県 43.1 42.0
40 福岡県 42.1 41.9
19 山梨県 44.1 41.4
01 北海道 42.1 41.2
04 宮城県 42.4 41.1
30 和歌山 38.2 41.0
41 佐賀県 38.1 39.5
32 島根県 37.2 39.0
06 山形県 38.3 38.7
31 鳥取県 38.6 37.9
43 熊本県 35.4 37.8
03 岩手県 37.6 37.7
45 宮崎県 34.5 37.3
38 愛媛県 38.9 36.7
05 秋田県 36.0 36.4
46 鹿児島 31.7 34.6
42 長崎県 33.8 34.3
39 高知県 34.9 33.9
02 青森県 35.7 33.5
47 沖縄県 27.1 30.2

 各県における平成8年時の偏差値と9年後の偏差値を比べるとなかなか興味深いものがあります。

 ・・・

 さて、作業を続けましょう。

 アメリカのときと同様に偏差値で並べた上記表を視覚的にわかりやすく偏差値5区切りで分布を明示化したのが以下の表です。(平成16年の偏差値を採用しました)

【表8:1人当たり所得偏差値分布(日本:平成16(2004)年)】

偏差値 県名
85-80 東京
79-75  
74-70  
69-65  
64-60  
59-55 愛知 静岡 滋賀
54-50 神奈川 栃木 大阪 富山 千葉
49-45 三重 埼玉 広島 茨城 京都 福井 群馬 山口 徳島 石川 長野
44-40 福島 岐阜 新潟 大分 兵庫 香川 奈良 岡山 福岡 山梨 北海道 宮城 和歌山
39-35 佐賀 島根 山形 鳥取 熊本 岩手 宮崎 愛媛 秋田
34-30 鹿児島 長崎 高知 青森 沖縄

 ある意味でわかりやすい結果が出ました。



●結論:「一人当たり所得」日米偏差値比較

 最後に日米の検証結果を比較いたしましょう。

アメリカ】

【表3:1人当たり所得偏差値分布(アメリカ:2006年)】

偏差値 州名
84-80  
79-75 CT
74-70 NJ
69-65 MA MD
64-60 NY
59-55 WY VA NH DE CO MN CA
54-50 IL AK RI WA NV PA HI
49-45 FL WI KS NE TX SD VT OR MI
44-40 OH IA IN MO ND NC ME OK TN GA AZ AL
39-35 LA MT ID NM KY SC UT
34-30 WV AR MS

標準偏差:14.01

【日本】

【表8:1人当たり所得偏差値分布(日本:平成16(2004)年)】

偏差値 県名
85-80 東京
79-75  
74-70  
69-65  
64-60  
59-55 愛知 静岡 滋賀
54-50 神奈川 栃木 大阪 富山 千葉
49-45 三重 埼玉 広島 茨城 京都 福井 群馬 山口 徳島 石川 長野
44-40 福島 岐阜 新潟 大分 兵庫 香川 奈良 岡山 福岡 山梨 北海道 宮城 和歌山
39-35 佐賀 島根 山形 鳥取 熊本 岩手 宮崎 愛媛 秋田
34-30 鹿児島 長崎 高知 青森 沖縄

標準偏差:16.84


 母集団の違いや調査年度の違いもありますので、あくまで参考資料としての扱いになるとは思いますが、今回の検証の結果、次の傾向は強く推測できると思います。

 アメリカに比し、日本は東京一極集中という傾向が顕著に見られ、かつ、ここ9年でその東京一極集中的格差は「拡大」傾向にあり、おそらく相対としてアメリカよりも「地域(所得)格差」は「拡大」している可能性が高い。

 ・・・

 本エントリーが本件に関する読者のみなさまの考察の一助になれば幸いです。
 (いや、疲れました(苦笑))



(木走まさみず)



<関連テキスト>
■[社会]地域格差拡大否定論を統計的に批判検証してみる

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20070813



<追伸>
 ブログデザインを表の見やすいスタイルに変更してみました。