木走日記

場末の時事評論

日本のソフトウエア生産性と品質は世界最高水準〜なぜ日本のソフトは国際競争力がないのか。

kibashiri2007-03-23




●日本のソフトウエア生産性と品質は世界最高水準〜ではなぜ日本のソフトは国際競争力がないのか。

 私の知人のアメリカ人スティーブ氏はITコンサル業として長年日本で日本人スタッフとともにシステム開発に携わってきました。

 同業者でもある彼は私の良き飲み仲間でもあり、私とは長年仕事の話から政治・経済の話まで本音で話のできる間柄であり、そして双方の奥さん同士も親友という家族ぐるみのつきあいをさせていただいております。

 彼の日本のIT業、特にソフトウエア開発業に関する知見は、日米双方の開発現場を渡り歩いてきた技術者として、とても参考になるのであります。

 彼は大の親日家であり、IT業を通じて日米の架け橋となることを生涯の仕事と心に定めているのであります。

■日本には下らない商習慣が多すぎる

ティーブ「しかし日本のこの会計年度が3月末に集中している悪習はどうにかならんかね。なんで年度末になるとこうも忙しくなるんだ?」
木走「まったくだね。まあお役所の会計年度にあわしているのだろうが、我々経営者からすれば、安定した経営のためにもシーズンを通じて作業量を平準化したいところなんだが、こればかりはお客様企業の都合だからな」
ス「これだけじゃない、日本には下らない商習慣が多すぎるよね、会計処理ひとつとっても国際標準とはかけ離れている。これじゃ日本のソフトハウスがいつまでたっても国際競争力を持つことができないのはよくわかる」

■日本のソフトウエア開発の生産性、品質、言語の壁、はどれも「神話」だ

木「日本の下らない商習慣が日本のソフトウエア開発業の国際化のさまたげになっているというわけか」
ス「そうだ、よく言われる日本のソフトウエア開発の生産性の低さ、品質の悪さ、あるいは日本語という言語の壁、といった問題はどれも些末な事象だ、生産性や品質に関しては「神話」だね」
木「「神話」?」
ス「私は過去10年、アメリカ人のチームともインド人のチームともイギリス人のチームとも仕事をしてきた。その私の経験上、多くの日本人技術チームの生産性は、同規模のアメリカ人チーム、インド人チーム、ヨーロッパチームよりもはるかに優秀だし、その品質も桁違いに高い。過去30年他の産業で顕著に示されている日本人の技能の優秀さは、この業種でもまったく同じなんだ」

■ではなぜ国際競争力がないのかといえば、日本独自の商習慣(仕様)に問題

木「でもOSやミドルウエア、あるいはビジネスアプリにいたるまで日本製ソフトのシェアはゼロに等しいよね。これはやはり日本のソフトウエア開発力に国際競争力がないことの何よりの証左であるのでは?」
ス「OSやミドルウエアがアメリカ主導なことは認めるが、アプリケーションソフトの開発では、日本の技術力は世界最高水準にある。ではなぜ国際競争力がないのかといえば、日本でどんなに優秀な生産管理システムや会計処理システムを開発・構築しても、世界標準の仕様とはほど遠いので、世界ではまったく使いモノにならないからだ」
木「なるほど、日本独自の仕様に問題があると」
ス「そうだ、はっきりいって日本の社会の悪慣習にシステム仕様をあわせざるを得ないので、どんな素晴らしいシステムを日本で開発しても、国際市場にうって出る商品力としてはゼロなんだよ」

■日本独自の商習慣という拘束を解ければ日本のソフトウエア開発力は間違いなく世界水準

木「しかし、日本のソフトウエア開発能力は優れているが日本社会の悪習慣がその国際競争力を落としているというのは、具体的に証明できることなのかな」
ス「できるとも、なによりも私が生き証人だよ(笑 冗談はともかくその証明は簡単だ。まず日本人技術者の生産性の高さ、成果物品質の桁違いの高さは、何人ものアメリカの学者の科学的調査で報告されている。さらに事象として、実は日本はソフトウエアの国際競争力トップの分野がただひとつあるんだ。それはアミューズメント系、ゲームソフトだ。この分野はニンデンドーという先駆者の存在、世界トップの日本のアニメーション製造技術、いくつかの日本に取り有利な条件があったが、日本がトップに君臨している最大の理由は、日本社会の独自習慣に仕様をあわせる必要が無く、はじめから世界標準の「楽しさ」の追及だけで勝負できたからだ」
木「うーん、なるほど、つまり他ならぬアメリカの調査結果が日本人技術者の優秀さを報告している点、日本独自の慣習の拘束から手離れした分野であるゲーム分野では日本のソフトウエア技術力がそのまま国際最高水準に評価されている点、これらが君の主張の根拠となるわけだね」
ス「そうだ、下らない日本独自の商習慣という拘束を解ければ日本のソフトウエア開発力は間違いなく世界水準だよ。あと、忘れて困るのは、「日本のソフトウエア技術は世界最高水準である」という事実は、私自身技術者として、アメリカ、日本、ニュージーランド、インド、世界四カ国で開発参加してきて、その経験上の見てきた実話なんだ」

 上記会話中にある「日本人技術者の生産性の高さ、成果物品質の桁違いの高さは、何人ものアメリカの学者の科学的調査で報告されている」というスティーブ氏の指摘ですが、私の知るところでは代表的なのが、マイケル・A. クスマノ教授 MIT(マサチューセッツ工科大学)の調査報告などがあります。

ソフトウエア企業の競争戦略

ソフトウエア企業の競争戦略

 上記の本によればたしかに国際比較において日本人技術者は優秀であると報告されてはいるようであります。

 ・・・

 日本のソフトウエア技術は世界最高水準であると言い張るスティーブ氏なのであります。

 このエントリーが、年度末でとても忙しくしてるであろう、IT関連業のみなさまの励みになればさいわいでございます。



(木走まさみず)



<参考記事>
システム開発は楽しい NTTデータ 浜口友一社長に聞く
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070323/sng070323000.htm