木走日記

場末の時事評論

北朝鮮の労働新聞と日本の朝日新聞〜どっちが異常なんだか、わけわかりません(爆)

北朝鮮労働党機関紙・労働新聞の叙事詩「祖国の人材になれ」〜労働新聞よ、お前はノストラダムスか?(爆

 10日の朝日新聞記事から・・・

核実験に触れる内容? 北朝鮮紙叙事詩掲載

2006年10月09日17時45分
 朝鮮中央通信によると、北朝鮮労働党機関紙・労働新聞は9日、「祖国の人材になれ」と題する叙事詩を掲載し、「今後、世界は再び知ることになる。われわれの知識、頭脳がどのようにしてごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる戦争抑止力の雷鳴をとどろかすのかを」と報じた。朝鮮通信(東京)が伝えた。

 北朝鮮が同日実施したと発表した核実験に触れた内容とも受け取れる。さらに叙事詩では「将来、世界は見ることになる。(人工衛星の)『光明星1号』が2号、3号の爆音へとつながって全世界を震撼(しんかん)させるのかを」と強調しており、ミサイル発射など今後の強硬措置をにおわせている。(時事)
http://www.asahi.com/special/nuclear/JJT200610090016.html

 ううん、北朝鮮労働党機関紙・労働新聞が、核実験を行った同じ9日に、「祖国の人材になれ」と題する叙事詩を掲載し、「今後、世界は再び知ることになる。われわれの知識、頭脳がどのようにしてごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる戦争抑止力の雷鳴をとどろかすのかを」と報じたそうであります。l

 「ごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる戦争抑止力の雷鳴をとどろかす」ですか・・・

 「『光明星1号』が2号、3号の爆音へとつながって全世界を震撼(しんかん)させる」ですか・・・

 ・・・(汗

 労働新聞よ、お前はノストラダムスか?(爆

 叙事詩で未来を予言する予言者か?

 ・・・(汗

 失礼しました。

 国際公約を一方的に踏みにじり核実験を強行した同じ日に、機関紙にこんなたわけた『叙事詩』を載せるとは、国際社会を完全に舐めきった腹立たしい愚行なのでありますが、それにしてもこの『叙事詩』、原文はどんななのでしょう、とても興味を持ちました。

 で、叙事詩の原文はこちら。

주체95(2006)년 10월 9일 《로동신문》에 실린 시

서사시

조국의 인재가 되라

조선작가동맹 시문학분과위원회

主体95(2006)年 10月 9日 《労動新聞》掲載

敍事詩

祖国の人材になれ

朝鮮作家同盟詩文学分科委員会
http://www.uriminzokkiri.com/Newspaper/RoDong/
(注:リンク先の350番の記事が当該記事です)

 それにしても、な、長い(汗

 本当にこれが全文労働党機関紙・労働新聞に掲載されたのでしょうか?

 全部で3節に分かれて記述されている長文の敍事詩なのですが、不肖・木走はハングルは日常会話しかできません(汗)ので、翻訳ツールとハングル辞書を引きながら、斜め読みしてみました。

 朝日記事が触れているのは第三節の以下の記述部分です。

이제 세계는 또다시 알게 되리라

우리의 지식, 우리의 두뇌가

어떻게 오만한 원쑤들을 전률케 하는

전쟁억제력의 뢰성을 터쳐올리는가를

今後、世界は再び知ることになろう

われらが知識、われらが頭脳が

どのようにしてごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる

戦争抑止力の雷鳴をとどろかすのかを

앞날에 세상은 보게 되리라

어떻게 《광명성1호》가

2호, 3호의 폭음으로 이어져

온 세상을 진감시키는가를 보게 되리라

将来、世界は見ることになる

どのように 《光明星1号》が

2号, 3号の爆音へとつながって

世界中を震撼(しんかん)させるかを見るようになろう

 すごい・・・(汗

 詩全編に渡り、親愛なる私たちの将軍様(사랑하노라 우리 장군님)の偉大さを讃え、偉大なる祖国の科学者達の偉業を讃えているのでありますが、特に興味深かったのは第三節冒頭の次のくだり。

철새는 보금자리를 옮겨도

행복을 찾을수 있고

나무는 다른 땅에 옮겨도

뿌리를 내리며 살수 있더라

渡り鳥はねぐらを移しても

幸せを捜すことができるし

木は他の地に移しても

根付きながら暮すことができたよ

허나 이 땅의 지식인들은

옮길수도 없고

옮겨서는 살수도 없는

삶의 터전에 억세게 뿌리를 내렸나니

しかしこの地の知識人たちは

移すこともできなくて

移しては暮すこともできない

生の基盤に強く根付いたのだ

 詩の前後の文脈から、「将軍様の愛の世界に住む私たち」であり、深く祖国に根付いたので、将軍様の愛のない他の国などには北朝鮮の知識人たちは移動しようともできないのだと読めるわけですが、うーん、まあようするに・・・

 知識人は「脱北」ゆるさん!!

 ってことでしょうか?(爆笑)

 ・・・

 正直、戦慄が走りますね。

 なんだか読んでいて、このようなおぞましい「叙事詩」が新聞に堂々と掲載されるかの国の異常さに、あらためて恐ろしくなってしまいました。

 正気な「詩」とはとても考えられない「叙事詩」、このような「詩」を堂々と載せている新聞、情報過疎の中わずかな情報源としてこの新聞を熱心に読んでいるであろう人民たち・・・

 私たち日本人は想像しがたいとんでもない隣国と同地域・同時代を生きているのですね、そしてそのような国が今まさに核兵器を手にしようとしているわけです。

 この異様な「叙事詩」は、あらためて事の重大さ・深刻さを、私たち日本人に教えてくれているのであります。

 ・・・

 ふう。



●「衛星名の由来からして虚構だ」と喝破する産経抄

 北朝鮮労働党機関紙・労働新聞でトンデモない叙事詩を掲載するならば、我が日本のメディアも負けてられません。

 ここは反共・反将軍様の雄(?)、産経新聞の名物コラムで対抗いたしましょう(苦笑

 今日(12日)の産経新聞コラム『産経抄』から。

「核実験するぞ」と脅すだけなら北朝鮮将軍様は、安倍首相にはピースメーカー(平和の創造者)かもしれないと先週書いた。日中、日韓首脳会談で、中韓が持ち出す歴史問題の比重が下がるからだ。北の拉致事件指導力を発揮した安倍さんは、北からの脅しなどものともしない。

 ▼それが「核実験をやったぞ」となると、将軍様は一転して平和の破壊者だ。核の恐怖のばらまきだけではない。「血の友誼(ゆうぎ)」を結ぶ中国はメンツを失い、「太陽政策」を掲げる韓国は一切ムダだったことが露見した。かくして中韓は守勢に回る。

 ▼北は「朝鮮半島の非核化のための核保有だ」というから凡夫には理解不能だ。おまけに「核爆弾はテロ国家に渡さない」ともっともらしいことをいう。暴力団の親分が「他の組には渡さない」というに等しい。「核はつくらない」といっていた国家の約束など誰も信じまい。

 ▼核実験を強行した日の労働新聞は、得意げに叙事詩を掲載した。「愚かで憎むべき敵どもの頭上に雷を落とす」。雷鳴は一つでは終わらずに、つぎは人工衛星光明星2号、3号によって、「世界を震撼(しんかん)させる」のだそうだ。

 ▼光明星1号は人工衛星を装うミサイル「テポドン」のウソだった。今回の核実験によって、つぎは核爆弾を載せる核ミサイルへと進む。光明星の名は、「白頭山に白頭光明星、独立の天馬に乗って現れた」という将軍様の伝説からくる。衛星名の由来からして虚構だ。

 ▼凶悪な犯罪国家が核を手にして、日本周辺は劇的に変わった。ミサイル防衛を急がねばならないのに、嘉手納基地への配備を邪魔する“市民”がいた。野党などは集団的自衛権を認めようともしない。天馬が列島に出現したら、誰がどうする。

http://www.sankei.co.jp/news/061012/col000.htm

 ううむ、「光明星の名は、「白頭山に白頭光明星、独立の天馬に乗って現れた」という将軍様の伝説からくる」そうであり、「衛星名の由来からして虚構だ」と喝破する産経抄なのであります。

 うん、気分がいいぞ(爆

 「凶悪な犯罪国家が核を手にして、日本周辺は劇的に変わった」のであり、それなのに「嘉手納基地への配備を邪魔する“市民”」や「野党などは集団的自衛権を認めようともしない」のはどういういことだと、産経抄子のお怒りは収まりません。

 コラムの結語。

 天馬が列島に出現したら、誰がどうする。

 ううむ、「天馬」って、将軍様伝説は虚構だと言い切ってたのに、産経さんたら結語が弱いんですけど(苦笑

 ・・・

 北朝鮮よりも国内の「市民」や「野党」に対して怒りの矛先が向いてしまっていて、今日の産経コラムは残念ながら、北朝鮮・労働新聞の異常なトンデモない叙事詩の迫力に比べると、迫力不足なのであります。

 もっと、とんでもない叙事詩的な記事じゃないと対決にならんわけですが・・・

 ・・・

 ん?

 こ、これは・・・



●「国益」を超えた「人類益」の立場で〜うーん、「人類益」の立場ってなんだ?(爆

 今日(12日)の朝日新聞の名物コラム、天声人語から・・・

天声人語】2006年10月12日(木曜日)付

 そろって小さな手をあげて、園児が道を渡ってゆく。そばを犬を連れた人が通る。色づいた木々の葉が散りかかる。こんな情景が身にしみるのは、深まる秋のせいだけではない。北朝鮮核兵器を手にしたとすれば、今ここにある当たり前の平和が、いつか揺らぎかねないからだ。

 1914年に第一次世界大戦が始まったころ、ドイツの作家ヘルマン・ヘッセは「平和」という詩を書いた。「みんなそれを持っていた。/だれもそれを大切にしなかった……おお、平和という名は今なんという響きを持つことか!」(高橋健二訳)。

 開戦で、学者や作家は感激的な調子で愛国心をあおった。世界市民的な思いが強かったヘッセは、住んでいたスイスの新聞に書いた。「愛は憎しみより美しく、理解は怒りより高く、平和は戦争より高貴だ」

 彼は裏切り者、売国奴とののしられ脅迫を受けたという。それでも二つの大戦に反対し続け、終結した45年に「平和に向って」を書く。

 「『平和!』だが、心は敢(あ)えて喜ぼうとしない。/心には涙のほうがずっと近いのだ。/私たち哀れな人間は/善いことも悪いこともできる。/動物であると同時に神々なのだ!」。度重なる戦禍の果てにようやくたどりついた平和の重みとかけがえのなさが感じられる。

 暴走する北朝鮮の「核」を、どうしたら不発のまま終わらせられるのか。この難問については、「国益」を超えた「人類益」の立場で、ことにあたってほしい。各国は今の世界にだけではなく、未来に対しても大きな責任を負っている。

http://www.asahi.com/paper/column.html

 ・・・

 コラムの結語。

暴走する北朝鮮の「核」を、どうしたら不発のまま終わらせられるのか。この難問については、「国益」を超えた「人類益」の立場で、ことにあたってほしい。各国は今の世界にだけではなく、未来に対しても大きな責任を負っている。

 ・・・(汗

 じ、「人類益」だああ?

 「国益」を超えた「人類益」の立場って、アンタ?(汗

 ・・・(大汗

 いやまいりました、これはすごい論法ですね。

 ・・・

 機関紙の叙事詩で「『光明星1号』が2号、3号の爆音へとつながって全世界を震撼(しんかん)させる」ことを予言し、「われわれの知識、頭脳がどのようにしてごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる」かみてろよと、うそぶく相手に対して、

 この難問については、「国益」を超えた「人類益」の立場で、ことにあたってほしい

 ですと。

 ・・・

 ふう。

 かたや北朝鮮労働党機関紙・労働新聞の「ごう慢な敵を戦慄(せんりつ)させる」と吠えるトンデモない叙事詩「祖国の人材になれ」と、かたや日本国の朝日新聞天声人語の「暴走する北朝鮮の「核」には「国益」を超えた「人類益」の立場で」と主張するトンデモないコラム・・・

 どっちが異常なんだか、わけわかりません(爆)



(木走まさみず)