「国立追悼施設を考える会」は空気読めなさすぎでダメダメ!
●「国立追悼施設を考える会」が発足
一昨日(9日)、超党派の「国立追悼施設を考える会」が発足され、代表には自民党の山崎拓前副総裁が就いたことが各紙一斉に報じられていました。
【朝日】自公民約130人で「国立追悼施設を考える会」が発足
http://www.asahi.com/politics/update/1109/007.html
【読売】国立追悼施設議連、設立総会に50人…民主幹部も参加
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051109i315.htm
【毎日】追悼施設議連:福田元官房長官、神崎代表ら設立に80人
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20051110k0000m010098000c.html
【産経】追悼施設促進の議連旗揚げ 日韓改善へ与野党で
http://www.sankei.co.jp/news/051109/sei031.htm
【日経】新追悼施設議連が発足・調査費計上メド立たず
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT1E09013%2009112005&g=P3&d=20051109
えーと、参加国会議員数は【朝日】が130人【読売】が50人【毎日】が80人ですか。
・・・(汗
いったいぜんたい、参加者は何人なんですか?(爆笑
プチリテラシーしておきますと、
各紙の記事を読み比べて見ればそれぞれの数字が何を指しているのかわかりますが、この会の参加申し込みをした国会議員の数が約130人であり、実際発足の会場に足を運んだのが代理(秘書等)も含めて約80人、そのうち国会議員本人の出席が約50人ということのようです。
記事タイトルに少しでも多い(少ない)数字を採用することで各紙の「国立追悼施設を考える会」に対する期待度が出ていますよね。(苦笑)
・・・
しかし、この「国立追悼施設を考える会」、登場人物や外野の発言をまとめてみますと、なんだかなあ、先行きがとても心配なのであります。
各紙記事より発言部分だけ抜粋してみましょう。
【朝日】記事の発言部分
山崎拓氏「国立追悼施設は、無宗教の施設であることと、(靖国神社など)既存の施設と両立できる、という二つの大前提がある。討議を重ねて一定の結論を得たい」
福田氏「この問題はあまり放っておくわけにはいかない。ちょっと早いかなと感じなくもないが、会を作っていただいたことに感謝している」【読売】記事の発言部分
鳩山氏「できるだけ早く調査費をつけたい」
山崎氏「会として調査費計上を求めるかどうかは白紙だ」
福田氏「イラクに自衛隊を派遣しようかという時期で、(自衛隊の犠牲者を想定しているのではないかと)自衛隊との関係を言われないかとの慎重論があった。また、靖国問題が燃えさかった時期で、沈静化を待つべきだとも考えた」
「英霊にこたえる実行委員会」「中国・韓国に迎合する売国的発想だ」
小泉首相「靖国神社に代わる施設ではないですからね」【毎日】記事の発言部分
山崎氏「わだかまりなく追悼するにはどうしたらいいか議論を深めたい」
福田氏「イラクに自衛隊を派遣したこともあり、自衛隊派遣との関係を言われるのではないか、ということがあった」
公明党(幹部)「反小泉の動きと見られてはまずい」
民主党「山崎氏がどういう考えでやってるのか分からないし、公明党を利するだけにもなりかねない」【産経】記事の発言部分
山崎拓氏「戦没者に対しわだかまりなく追悼の誠をささげるにはどうしたら良いか。新しい施設について提言していきたい」
鳩山氏「民主党も3、4年前から関心を持ってきたテーマ。積極的に議論していきたい」【日経】記事の発言部分
小泉首相「議論の推移を見極めていきたい」
なんか、各発言内容がぐちゃぐちゃなんですが、読売が「英霊にこたえる実行委員会」のコメント「中国・韓国に迎合する売国的発想だ」を載せているのと、毎日の公明党(幹部)「反小泉の動きと見られてはまずい」という発言と、民主党「山崎氏がどういう考えでやってるのか分からないし、公明党を利するだけにもなりかねない」という発言が興味深いですね。
しかし日経はとっても冷たいなあ(苦笑
●確かに国民は議論を支持しているのだが・・・
まじめな話をしますと、本来「国立追悼施設」について国会で真摯に議論することはたいへん結構なことでありますし、小泉首相靖国参拝凍結派の不肖・木走としては、この動き自体は全面的に肯定支持いたします。
国民世論も最近の毎日新聞世論調査によれば、小泉首相の靖国参拝には賛否割れていますが、「国立追悼施設」に関して言えば賛成は66%に達しているわけです。
靖国参拝調査:賛成50% 追悼施設は賛成66%
毎日新聞が10月31日と11月1日に実施した全国世論調査(電話)で、小泉純一郎首相の10月17日の靖国神社参拝について聞いたところ「賛成」との回答が50%で、「反対」の46%を4ポイント上回った。また、靖国神社とは別に戦没者を追悼する無宗教の国立追悼施設を建設することについては66%が「賛成」と回答し、「反対」の29%を大きく上回った。
参拝前の10月調査で、首相が参拝を続けることの是非を聞いた際には、「反対」(51%)が「賛成」(44%)を上回っていた。7月、6月、4月の調査でも反対派が上回っており、賛成派が多数派だったのは昨年12月調査以来。首相が本殿に上がらず「私的参拝」を強調したことや、韓国の反発が抑制的な点が影響した可能性がある。
小泉内閣を支持する層では64%が首相の参拝に「賛成」と答え、不支持層では73%が「反対」と回答。支持政党別では自民支持層の約7割が「賛成」だったが、民主、公明支持層では6割以上が「反対」と答え、支持政党のない無党派層では「賛成」(49%)が「反対」(46%)をやや上回った。
一方、追悼施設建設の賛成派は今年7月の調査からさらに3ポイント増え、同種の質問をした03年1月以来、計4回の調査で最も高水準になった。小泉内閣支持、不支持層とも「賛成」の回答は6割を超えている。支持政党別でも、自民、民主、公明支持層、無党派層のいずれも「賛成」が6割台を占めた。来年度予算への調査費計上について、政府は世論の動向を判断材料の一つに挙げているが、世論のすう勢は容認に傾きつつあるようだ。【中田卓二】
(以下略)
毎日新聞 2005年11月4日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20051104k0000m010114000c.html
国民の3分の2が期待を込めている「国立追悼施設」でありますから、国会議員有志が大いに真摯に議論されることは大歓迎なのです。
しかしです。
あえて苦言を呈させていただきますが、今回の「国立追悼施設を考える会」でありますが、まったくダメなのであります。
これでは国民多数の支持はえられんでしょう。
「国立追悼施設を考える会」は世論の空気読めなさすぎなのであります!
具体的に3つのダメだしをさせていただきます。
●「国立追悼施設を考える会」に三つのダメだしをする!〜空気読めなさすぎ
【ダメだし1:韓国に言われてつくってどうする。】
設立の動機というかきっかけが最低なのです。
上記の産経記事から抜粋します。
議連設立は、山崎氏が10月20日にソウルで鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相と会談した際、戦没者追悼施設の建設を検討するとした日韓首脳会談合意の実現を強く求められたのがきっかけ。山崎氏が帰国後に冬柴、鳩山両氏と対応を協議し設立が決まった。
言うまでもなく「国立追悼施設」は純粋に日本の国内問題であり、他国が干渉する問題ではないのであり、韓国に言われたからといって「考える会」を発足させるなど最低の動機なのです。
こんなことだから「英霊にこたえる実行委員会」に「中国・韓国に迎合する売国的発想だ」と指弾されてしまうのです。
「国立追悼施設」を真剣に取り上げるならば、日本自身の問題として自主的に発足されなければなりません。他国から言われて作ってはいけないのです。
なぜこんな簡単で自明なことわからないのでしょう。
【ダメだし2:公明党目立ちすぎ】
公明党が前面に出て来すぎです。
上記の産経記事から抜粋します。
副会長には冬柴鉄三公明党幹事長も就任。官房長官当時に私的諮問機関から追悼施設建設の提言を受けた福田康夫氏のほか、公明党の神崎武法代表も出席した。
党の代表まで出席しているのは公明党神崎武法代表だけであります。
これではダメです。
多くの国民に公明党・創価学会に対するアレルギーがあることももちろんですが、少なくともこのような超党派の会を発足させるときに特定の政党の代表なんかが参加してはいけません。
これでは公明党本気モードがばればれであり、多くの国民は一歩引かざるを得ないのであります。
本来、「国立追悼施設」は純粋に真摯に検討するに値する内容でありますが、国民的総意を構成するためには特定の宗教団体やその支持を受ける政党が前面に出ていいことなどあるはずないではないですか?
なぜ空気が読めないのかなあ、不思議なのであります。
【ダメだし3:タマ悪すぎ】
超党派などと言っておりますが、なぜ、社民党、共産党、無所属の各議員を排除しているのでしょう。
これでは、国民的総意を代表してないのではないかと思えてしまいます。
社民党の辻元氏や無所属の田中真紀子氏や我らが『汚れた鳩派』新党大地の鈴木宗男氏などにも参加を呼びかけるべきでしょう。
そうすれば多様な意見も議論できますし、少なくとも公明党色はずっと薄まったのではないですか。
本当に国民的議論にまで高めようと思っているのでしょうか?
なんともタマ(メンバー)が偏り過ぎなのであります。
●「俗臭芬々(ふんぷん)」、「背筋が寒くなる」と言いたい放題の産経抄
こんなことだから、ほれ見てご覧なさい。
今日(11日)の産経抄は言いたい放題なのであります。
「小人閑居して不善をなす」とはよくいったものだが、国会議員もヒマになると似てくるものらしい。国立の戦没者追悼施設建設を推進する超党派の議員連盟が結成されたが、集まった先生方をながめてみると…。
▼首相になるチャンスを決断力のなさからフイにした加藤紘一さん、無役ながら「ポスト小泉」候補の一人とされる福田康夫さん、そして下半身スキャンダルを週刊誌に散々とりあげられた山崎拓さんが会長におさまっている。俗臭芬々(ふんぷん)と言いたくなってくる。民主党の前原誠司代表が参加をとりやめたのは実に賢明だった。
▼「政局的な思惑は一切ない」という山崎さんの言葉を信じるにしても、韓国要人から靖国神社に代わる施設建設を求められ、帰国直後にバタバタと議連設置を決めたのはどういう了見か。彼がどこかのマスコミが噂(うわさ)した外相に抜擢(ばってき)されていたら、と思うと背筋が寒くなる。
▼もっと解せないのは、宗教にはもっとも理解のある政党だと思っていた公明党が「無宗教」の施設建設にいたく熱心なことだ。共産国家でもないのに死者を追悼する場が「無宗教」で本当にいいのだろうか。
▼議連の先生方は、理想型として米ワシントンにある国立アーリントン墓地を頭に描いているようだが、この墓地の入り口には「わが国の最も神聖な聖地(SHRINE)」という看板が立てられている。靖国神社も英訳すれば、「YASUKUNI SHRINE」となる。
▼そんなに「国立」がいいなら、国家護持法案をつくって靖国神社を国営化する方法を考えてはどうなのか。国論を二分するのが確実な事業に、貴重な税金をつぎこむことはない。他国よりも、戦死者のご遺族の声を十分に聞いてこそ日本の「政治家」だろう。
平成17(2005)年11月11日[金] 産経抄
http://www.sankei.co.jp/news/column.htm
「首相になるチャンスを決断力のなさからフイにした加藤紘一さん」とか、「下半身スキャンダルを週刊誌に散々とりあげられた山崎拓さん」とか、「宗教にはもっとも理解のある政党だと思っていた公明党が「無宗教」の施設建設にいたく熱心」とか、もう言いたい放題なのであります。(苦笑
・・・
それにしても、動機が不純でタマも偏っていてはどうしようもありません。
「国立追悼施設を考える会」
空気読めなさすぎであります。
(木走まさみず)