木走日記

場末の時事評論

朝日社説と産経社説〜君たちは実は好き合ってるんじゃないのか?

●好きな女の子にわざといじわるしちゃう幼い男の子の心理

 先日、小学三年生の娘のカナコがブンブン怒りながら帰宅してきました。

 奥さんが聞けば「クラスの男子に意地悪された」そうなんです。

 休み時間に「お習字セット」を隠されたとのことですが、奥さんが「これはいじめか」とひやりとしながら詳しく話を聞いてみたところ、どうもいじめではないらしく、そのいたずら男子はカナコのことに好意を寄せているらしく、それでわざと意地悪をしているようなのだそうです。

 なんとも可愛らしいのは、その男子のお母さん情報によると、その男子は席替えの時いつもカナコの隣を希望しているのだそうです。

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 うん、わかるなあ。

 私にも覚えがありますが好きな女の子にわざといじわるしちゃったり、ちょっかい掛けたりしちゃうんですよね、幼い男の子は・・・

 なんだろう、困ったもんですが、不器用というか拙(つたな)いというか自分の感情の表現方法がよくわかっていないんですよね。

 好きな子に関心を持ってもらいたい、何とかかかわりたい、というアツイ想いはありながら、それを口にしたり行動に示すのが、どうにも恥ずかしく、想いとはうらはらにイジワルしちゃう・・・

 この男子のイジワル話を聞いて、なんだかとても笑ましい話だと思い、いつの時代にも男子の行為というのはあまり変わっていないなあと妙に安心したりもしたのでした。

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 まあ、小学低学年の児童の話なら笑ってすませるのですが・・・



●産経社説〜首相靖国参拝 国民は冷静に受け止めた

 三日前(25日)の産経新聞社説から・・・

■【主張】首相靖国参拝 国民は冷静に受け止めた

 小泉純一郎首相の靖国参拝で日韓外相会談を見送る意向を示していた韓国は、潘基文外交通商相が予定通り、今月末に来日すると伝えた。日本国民は首相の靖国参拝に過剰反応をせず、東アジア外交も、多くのマスコミが指摘したほどには悪化していないようだ。

 小泉首相靖国参拝した翌十八日付の各紙社説は、産経を除き、首相の参拝に批判的な論調が目立った。

 しかし、朝日新聞の緊急世論調査では、首相の靖国参拝を「よかった」とする回答が42%で、「参拝するべきではなかった」の41%をわずかながら上回った。共同通信社の調査でも、参拝支持が48%と不支持の46%を上回った。フジテレビの調査は、「評価する」(47%)が「評価しない」(48%)をわずかに下回った。

 今夏の各紙世論調査では、首相の靖国参拝に反対する意見が賛成意見よりかなり多かったが、その差は縮まり、逆転する傾向すら見せている。日本のマスコミ論調が、必ずしも民意を反映していないことの証左といえる。

 中国は二十三日からの日中外相会談をキャンセルし、抗議の言葉は激しかったが、四月に起きたような暴力的な反日デモは再発していない。当局が力でデモを封じ込めているといわれる。今春の“官製デモ”で、北京の日本大使館の窓ガラスなどが割られる映像が世界中に流れ、国際社会から批判を受けたことの学習効果だろう。

 韓国の“反日”の風潮はもともと、中国とは温度差があった。日韓外相会談を行う方向に転換したのも、日本の冷静な世論を見極め、現実的な選択をしたからだとみられる。

 アジアは中国と韓国だけではない。インドネシアのユドヨノ大統領は六月の安倍晋三自民党幹事長代理との会談で、「国のために戦った兵士のために(小泉首相が)お参りすることは当然だ」と語っている。東南、南西アジア大洋州をも含む広い視野に立ったアジア外交が必要である。

 「継続は力なり」といわれる。小泉首相中韓両国の抗議で途絶えていた靖国参拝の慣例を復活させ、五年間続けた。小泉首相の後、誰が次期首相になっても、参拝を継続し、両国が「靖国」を外交カードとして使えなくなるような関係の構築が大切だ。

平成17(2005)年10月25日[火]
http://www.sankei.co.jp/news/051025/morning/editoria.htm

 思いの外、日本国民だけでなく、中国も韓国も冷静に対応しており、参拝支持派の産経としては「してやったり」というところなのでしょう、自分のところを除いては「日本のマスコミ論調が、必ずしも民意を反映していない」じゃないか、「ほれみたことか」という感じであります。

 名指しで朝日新聞の緊急世論調査」でも、「首相の靖国参拝を『よかった』とする回答が42%で、『参拝するべきではなかった』の41%をわずかながら上回った。」と、朝日新聞を皮肉ることも忘れていません。(苦笑)

 この社説も、例によって結語は小泉首相の後、誰が次期首相になっても、参拝を継続し、両国が「靖国」を外交カードとして使えなくなるような関係の構築が大切だ。」と、いつもどおり産経の「願望」をぶつける形で終わっております。

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 まあ、確かに今回の中国・韓国の冷静な対応は予想外であり、中国でも「暴力的な反日デモは再発」していないし、韓国でも「日韓外相会談を行う方向に転換したのも、日本の冷静な世論を見極め、現実的な選択をしたから」なのでしょう。

 というか、当ブログでも何回か指摘させていただきましたが、今回の参拝騒動で一番大騒ぎしていたのは、他ならぬTVや大新聞などの日本のマスメディアだったのではなかったでしょうか。

 産経社説が指摘するとおり国民は冷静だったのは確かですが、大騒ぎしていたマスメディアの筆頭が「朝日」と「産経」だったことは忘れてはいけません。

 今週になってもいまだ靖国参拝問題を社説にまで取り上げているのは産経新聞ぐらいしかないのであって、自分自身が大多数の冷静な国民から遊離してしまっている自覚が、産経新聞には必要なのではないでしょうか。

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 ん?

 やれやれ、なんだかなあ、この「産経」社説の「LOVEコール」にまたしても応えている懲りないメディアがたったひとつありましたです(苦笑)



●朝日社説〜靖国と隣国 静かさを甘く見るな

 今日の朝日新聞の社説から・・・

靖国と隣国 静かさを甘く見るな

 韓国の潘基文外相が来日し、町村外相と会談した。きょう小泉首相とも会う。首相が靖国神社を参拝した後、「雰囲気が適切でない」と先送りする方針だったが、一転、訪日となった。

 外相は来てくれた。ソウルなど街の様子は落ち着いている。町村外相の来訪を拒んだ中国でも、今春のような反日デモの騒ぎは見られない。静かな対応ぶりには私たちもほっとしている。

 そうした反応に、首相は「冷静でいいと思う」「靖国だけが問題ではない」と語り、口ぶりには余裕さえ感じられる。

 毎年、靖国参拝を続けたことで、中韓もいくら反発しても仕方ないとあきらめたのではないか。「靖国カード」はもはや通用しないことがようやく定着してきた――。もし首相がそう考えているとしたら、大きな間違いというものだろう。


 潘外相は、ただ握手をしに来たのではない。訪日を取り消して参拝に抗議するよりも、乗り込んで韓国の憤りや基本的な立場を直接伝えた方が得策だと判断したからだ。

 人々の反応は冷静でも、だから参拝は容認されたということではない。その裏で日本に対する不信といらだちが積み重なり、心の底にたまっていることを見過ごしてはならない。

 経済や人、文化の結びつきがこれだけ太くなると、日本との関係を切ろうにも切れないことを、中国や韓国は百も承知だ。だから関係をむやみに悪くさせたくないと、それなりに腐心している。

 中国政府は参拝直後の外務省声明で、「両国の無数の先人たちが積み重ねてきた成果を顧みず、誤った道を突き進んできた」と首相を名指しして批判した。矛先を首相に絞ることで、日本との関係は大事にしていきたいというメッセージを込めたのだろう。

 首相の靖国参拝に対する中韓の姿勢は厳しいままである。その影響は、ビジネスや観光など多方面に出ている。

 深刻なのは、4年間も日中の首脳往来が途絶えていることだ。今後も首相の在任中はほぼ絶望的だろう。日韓の首脳交流もどうなるかわからない。

 第三国での国際会議の際に会うのとは違い、首脳が相手の国を訪ね合うことは、国民との交流をはじめ相互理解を深める貴重な機会のはずだ。なのに、それが失われてしまう。
 参拝に込める首相の思いはどうあれ、結果として、東京裁判を否定したりする勢力を勢いづけ、「日本は過去を清算できない」という負のイメージを世界に広めている。

 首相の靖国参拝への批判や懸念は、シンガポールやマレーシアといったアジアをはじめ、欧米各国でもメディアに取り上げられた。米下院のハイド外交委員長も「(参拝でアジアでの)対話が疎外されるとしたら残念だ」との書簡を日本側に送った。

 静かに広がる批判の重さを、首相は読み間違ってはならない。

【社説】2005年10月28日(金曜日)付 朝日新聞
http://www.asahi.com/paper/editorial.html

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 誰が読んでもこの朝日社説は産経社説へのカウンター論説でありまして、もうタイトルからして産経の「首相靖国参拝 国民は冷静に受け止めた」に対して朝日の「靖国と隣国 静かさを甘く見るな」で、見事にリターンしているのです(苦笑

 「毎年、靖国参拝を続けたことで、中韓もいくら反発しても仕方ないとあきらめたのではないか。「靖国カード」はもはや通用しないことがようやく定着してきた――。もし首相がそう考えているとしたら、大きな間違いというものだろう。 」と朝日社説は説いてます。

 また、中国や韓国だけでない諸外国も批判しているんだという証として、「首相の靖国参拝への批判や懸念は、シンガポールやマレーシアといったアジアをはじめ、欧米各国でもメディアに取り上げられた。米下院のハイド外交委員長も「(参拝でアジアでの)対話が疎外されるとしたら残念だ」との書簡を日本側に送った。 」事実も載せています。

 うーん、社説の結語「静かに広がる批判の重さを、首相は読み間違ってはならない」は、仮にも一国の首相たるもの、国内世論の動向や国際的外交面での諸外国の動向を「読み間違ってはならない」点ではよく理解できます。

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 しかしなあ、場の雰囲気を理解していない、流れをつかめていないという意味じゃ、どうなんでしょう、アツク語っているこの朝日社説よりも国民の冷静さのほうが正しいんじゃないでしょうか。

 産経社説へのカウンター社説であることはよくわかっていますが、どうにもこの「朝日」と「産経」の靖国論争ゲーム、ラリーの応酬で実は当事者だけが熱くなっていて、観客である読者の方はすっかり白けてしまっている気がするのですが。



●朝日と産経〜君たちは実は好き合ってるんじゃないのか?

 最近の靖国に対する報道のしつこさを考えてみると、この両紙、主義主張は180度違うものの「靖国についてアツク語りたい」という根っこの部分では、実は「相思相愛」の関係なのかも知れません。

 国民の冷静さをよそに、2紙だけで社説まで使って主張しあい、片方が投げたボールには必ず丁寧に片方がリターンしているこの様子を見ていると、なんだかこれは、冒頭でふれた好きな女の子にわざといじわるを繰り返しちゃう幼い男の子みたいなんですよね。

 しかも朝日と産経の場合、どうも両者とも互いに気になってしようがないらしいので、読者の気持ちなどお構いなしに、世論と完全に遊離して論争しているところが、よりしまつが悪いのであります。(苦笑)

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 なんだかなあ。

 靖国参拝問題を冷静に真摯に議論することは全く異論ありませんが、この両紙の読者無視のアツイ社説の応酬には、なんか子供じみていて正直ついていけません。



 朝日新聞産経新聞、君たちは実は好き合ってるんじゃないですか?



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●徹底検証!小泉首相靖国参拝速報〜マスメディアは自己主張しすぎ
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051017/1129516850
靖国参拝報道で一番の問題は日本のメディアのマッチポンプ体質かも
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051018/1129622165