木走日記

場末の時事評論

日本における洗脳選挙とマスメディアの関係

 このエントリーは、マスメディア批判であり、特定の政党、特定の候補者を支持もしくは批判するモノではありません。

 報道によれば、小泉自民党が大勝しそうな勢いです。
 小泉首相の選挙戦術の勝利とも言えそうですが、小泉さんのプロパガンダに完全に乗ってしまっている今回の選挙における日本のマスメディア報道の問題点を考察してみたいと思います。



衆院選世論調査:比例投票政党 自民41%、民主26%

 今日の毎日新聞から・・・

衆院選世論調査:比例投票政党 自民41%、民主26%

毎日新聞終盤世論調査 毎日新聞衆院選の投開票日(11日)を直前に控え、7、8両日に緊急世論調査(電話)を実施した。比例代表で投票する政党を聞いたところ、自民党との回答が41%で、民主党の26%を15ポイント上回った。衆院選後に望む政権については「自民党を軸」が54%で、「民主党を軸」は39%だった。小泉内閣内閣支持率は51%で、先月の定例調査と変わらなかった。

 比例代表の投票先についての回答は、自民党41%、民主党26%、公明党8%、共産党5%、社民党3%、新党日本2%、国民新党1%の順。サンプル数などが異なり単純に比較はできないが、今月1〜3日に約9万人を対象に実施した特別世論調査より自民が6ポイント増えたのに対し、民主は2ポイント増にとどまっている。自民の堅調な戦いぶりが目立った中盤情勢の勢いは維持されているようだ。

 内訳は、男性は自民44%、民主30%。女性は自民39%、民主24%。年代別では、自民が70代以上で50%、50代で49%とそれぞれ約半数に達した。若い20代でも37%で、民主に11ポイントの差を付けている。先月13、14日に行った定例調査では、同じ質問への回答は自民36%、民主27%だった。投票先に民主党を挙げる人の割合は、ほぼ横ばいで推移している。

 また、衆院選後に自民党を軸にした政権が続いた方がいいか、民主党を軸にした政権に代わった方がいいかを聞いたところ、「自民軸」(54%)が「民主軸」(39%)を上回った。衆院解散直後の8月8、9日に行った緊急世論調査では、「自民軸」は50%で「民主軸」は35%だった。今回の調査も含め、計4回の同じ質問で「自民軸」はいずれも10ポイント以上「民主軸」を上回り、リードを保ち続けた形だ。「無回答」は衆院解散時の15%から今回は7%まで減少。特定の支持政党を持たない無党派層は「自民軸」が45%、「民主軸」が42%だった。

 一方、小泉内閣の支持率は51%で、先月の定例調査から変わらなかった。不支持は36%で3ポイント増えた。支持の理由は「政治のあり方が変わりそうだから」が40%でトップだが、先月調査より11ポイント減少した。【堀井恵里子】

毎日新聞 2005年9月9日 3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050909k0000m010153000c.html

 投票日まであと2日となりましたが、自民党支持の流れは堅調のようです。このままの勢いで予測すると自民党単独過半数も可能性として十分にあり得そうで、民主党現有議席の確保すらおぼつかない結果になりそうであります。



●今回の選挙における小泉自民党の巧妙な選挙戦術〜徹底的な図式の単純化

 当ブログでも何度か指摘させていただきましたが、ここまでは「小泉郵政劇場」の戦術的大勝利なのであります。

(前略)

不肖・木走は、今回の総選挙は日本人の知性が試される場面であると思っています。

 小泉総理は、今回の選挙で徹底的な図式の単純化と田舎芝居「小泉劇場」の戦術に出たのであります。

 前回は田中真紀子が道具立てでしたが、今回は造反議員を生け贄にした勧善懲悪の村芝居であります。

 造反者に対抗馬を仕向け、自民対自民の争いにマスコミは踊らされ、気がつけば民主党なども反対派と一緒くたに守旧派の扱いであります。
 各メディア世論調査では小泉支持率が軒並みUPしており田舎芝居「小泉劇場」は出足すこぶる好調なのであります。

 選挙は理論だけではない、政治家は理屈だけではない、小泉さんを見ているとその辺が実にうまいのです。

 このままでは岡田民主党は小泉自民党にメディア戦術で完全に負けであります。

(後略)

●「小泉勧善懲悪劇場」VS「タリバン岡田の左斜め上目線」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050814/1123993557

 この「徹底的な図式の単純化」はかなり高等に仕組まれた戦術であり侮ることは出来ません。
 日本の愚かなマスメディアはいっこうに触れていませんが、村山首相以来10年ぶりに出した終戦記念日の日本国総理大臣談話も実に巧妙な争点隠しの戦術の一環なのでした。

(前略)

 いずれにしてもこの談話表明により、選挙の重要な争点のひとつになるはずの小泉首相の外交手腕、とりわけ弱点とも思える靖国参拝問題を、完全に封印してしまったわけです。

 日本のマスメディアが情けないのは、小泉流選挙戦術にまんまとはまり、この歴史的談話表明も、しばらくすれば全く触れられなくなり、郵政改革選挙という小泉さんの焦点絞りにすっかり踊らされているわけです。

(後略)

●「権力争いの茶番」を報道ばかりしている日本メディアの茶番
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050824/1124870469

 善し悪しは別として、選挙には、プロパガンダによる有権者に対する洗脳工作の面があります。小泉首相による「郵政民営化」にYesかNoかという、徹底的な図式の単純化は、まさに有権者に対する徹底的な洗脳工作が功を奏していると言わざるを得ません。
 以前当ブログで紹介したプロパガンダ「7つの方策」を見事に実践しているのです。

(前略)

 本書の前書きで一つの本が紹介されています。そこには、コロンビア大学のミラー教授が設立した「宣伝分析研究所」が発表した内容をもとに川上和久明治学院大学教授がプロパガンダ「7つの方策」が書かれているそうです。

 プロパガンダ「7つの方策」

(1)ネーム・コーリング(悪いイメージのレッテル張り)

(2)華麗な言葉による普遍化(「自由」「博愛」「愛」「平和」といった不変的な価値との結びつけ)

(3)転移(権威ある存在を味方につけ、自らを正当化)

(4)証言利用(有名人の発言を利用)

(5)平凡化(立場を似せて、親近感を得る)

(6)カードスタッキング(都合のいいことの強調と、都合の悪いことの隠蔽)

(7)バンドワゴン(ある事柄を、世の趨勢であるかのように宣伝)

 三浦さんは選挙キャンペーンマネージャーとして、これらの方策を実践していくのです。そして、選挙はプロパガンダによる洗脳工作だと言い切っています。

 「選挙は単純なメッセージの刷り込み(洗脳工作)の積み重ねである。」

 いや、この本には政略も崇高な政治理念も一切出現しません。しかし、現在の選挙戦における戦術面が余すことなく赤裸々に語られていてとても貴重な情報を得ることができました。

(後略)

●選挙はプロパガンダによる洗脳工作だそうな
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050904/1125824376

 徹底的な対抗馬に対する「反改革派」のレッテル張りというネーム・コーリング手法、「郵政民営化」にYesかNoかという徹底的な図式の単純化によるカードスタッキング(都合のいいことの強調と、都合の悪いことの隠蔽)手法バンドワゴン(ある事柄を、世の趨勢であるかのように宣伝)手法、単純なプロパガンダにより、見事に洗脳されつつある日本の多くの選挙民。



●「日本のマスコミは大バカ」か

 そして、より深刻な問題として、なんの工夫もなくプロパガンダを拡大再生産するがごとく、ただ表層的な動きだけを垂れ流す日本のマスメディアの無責任な報道姿勢があります。

 インターネット新聞JANJANにおいても日本のマスコミを痛烈に批判する記事が昨日掲載されていました。

(前略)

マスコミ報道で有権者が勘違いした結果……
 マスコミが「改革」を過剰に宣伝するため、世論は小泉首相を「自民党の内部改革者」と勘違いしてしまっているようだ。その勘違いが、これまで自民党を嫌っていた「都市部無党派層」を自民支持にシフトチェンジさせ、小泉自民党の支持率を上昇させている。その結果が「自民優勢 過半数の勢い」(朝日4日付)という選挙予測につながっている。
 「無党派層の動向」「投票率の上昇」「若者の選挙参加」という言葉は、これまで、「非自民票の拡大」と同意語だった。それが今回の総選挙ではまったく逆の意味、逆の結果として出てくるだろう。

 加えて農家がコメの収獲に追われる9月の選挙で、昨今、自民党離れが顕著な「非自民農村票」が頭打ちとなる。話題の「刺客」候補たちは政策立案能力・政治に賭ける情熱などはまったく問われず、タレントなみのマスコミ露出度、好感度で判断される――これでは、いくら真正面から「日本をあきらめない」と叫んでも政権交代は難しい。

(後略)

「マスコミ料理教室」(11)「日本のマスコミは大バカ」か
http://www.janjan.jp/media/0509/0509062080/1.php

 重要なことは選挙とは善し悪しは別としてプロパガンダによる有権者に対する洗脳工作の面があり、私は小泉自民党の手法を批判しているのではありません。

 小泉自民党は上手にテクニックを駆使し目的を果たそうとしているのに過ぎません。

 私は、メディアの持つ重要な役割を果たしていない日本のマスメディアの不甲斐なさを批判しているのです。

 メディアは本来多様な争点を選挙民に提示し、特定の政党がプロパガンダをすれば、それがいかなる勢力であろうとも(自民であれ民主であれ)、批判的に対峙すべきであり、虚像を取り払った核心の議論を提示すべきなのです。

 小泉自民党による周到に準備された「郵政民営化」にYesかNoかという徹底的な図式の単純化によるプロパガンダ選挙に対し、なんら工夫することもなく公選法で守られた「報道の自由」に甘えだらしなく表層的な報道を垂れ流す日本の既存マスメディアは、まさに「大バカ」なのかも知れません。

 このあたりの公職選挙法と既存マスメディアに関わる問題を提起するために、本日JANJANに掲載された私の記事は、以下のエントリーを書き直したモノです。

●ネットと公職選挙法報道に見る日本メディアの閉鎖的体質
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050907/1126086088

 JANJANに掲載された記事は以下です。

時代遅れの公選法に沈黙する政治とマスコミ
http://www.janjan.jp/media/0509/0509072139/1.php

 本質的な報道も出来ず、表層的な報道を垂れ流している日本の「マスコミ」の現状をみるにつけ、単純なプロパガンタに乗せられることなく、多層的な議論を誘発させるためにも、ブログを含めたネットメディアの活性化が必要なのだと痛感いたします。



(木走まさみず)



<関連テキスト>
●選挙はプロパガンダによる洗脳工作だそうな
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050904/1125824376
●ネットと公職選挙法報道に見る日本メディアの閉鎖的体質
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050907/1126086088
●「権力争いの茶番」を報道ばかりしている日本メディアの茶番
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050824/1124870469
●「小泉勧善懲悪劇場」VS「タリバン岡田の左斜め上目線」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050814/1123993557