木走日記

場末の時事評論

「権力争いの茶番」を報道ばかりしている日本メディアの茶番

kibashiri2005-08-24




●「権力争いの茶番」 岡田氏、長谷川氏の移籍を批判

 今日の産経新聞から・・・

「権力争いの茶番」 岡田氏、長谷川氏の移籍を批判

 民主党岡田克也代表は24日午前、大分県別府市で記者団に対し、長谷川憲正参院議員の国民新党から新党日本への移籍について「自民党の中の権力争いの結果だ。自民党(勢力)の中で(議員を)ぐるぐる回しているだけだ。茶番をやっている」と批判した。

 岡田氏はこれに関連し、自民党分裂選挙について「『刺客』候補は(小選挙区で)2、3万票しか取れず、ほとんど通らないだろうが、(比例代表選などを)盛り上げる効果はある。そういう中で、自民党は(選挙後に新党や無所属の)非公認組を党に戻し、全体の数合わせをやろうとしている」との見方を示した。(共同)

(08/24 12:12)
http://www.sankei.co.jp/news/050824/sei054.htm

 もういいかげんうんざりなのですが、岡田さんの「自民党の中の権力争いの結果だ。自民党(勢力)の中で(議員を)ぐるぐる回しているだけだ。茶番をやっている」という指摘はある意味正しいのでしょうが、世論誘導としては、あいかわらずのマスメディアのお馬鹿な垂れ流し報道も手伝って、序盤戦は小泉さんの圧勝なわけでありまして、政策論争そっちのけのとんだ選挙戦になってしまっているわけです。

 しかし、岡田さんも「『刺客』候補は(小選挙区で)2、3万票しか取れず、ほとんど通らないだろうが、(比例代表選などを)盛り上げる効果はある。そういう中で、自民党は(選挙後に新党や無所属の)非公認組を党に戻し、全体の数合わせをやろうとしている」などと政治評論家みたいなのんきなことを言ってる場合ではないでしょうに。

 ・・・

 なんだろう、なぜこんな論戦不毛な選挙になってしまったのでしょう。



終戦記念日における小泉首相談話及び靖国参拝中止の劇的効果

 やはりこれが効いていますよね、というところで15日の朝日新聞から・・・

首相談話の全文

 政府が15日、閣議決定した首相談話の全文は次の通り。

 私は、終戦60年を迎えるに当たり、改めて今私たちが享受している平和と繁栄は、戦争によって心ならずも命を落とされた多くの方々の尊い犠牲の上にあることに思いを致し、二度と我が国が戦争への道を歩んではならないとの決意を新たにするものであります。

 先の大戦では、300万余の同胞が、祖国を思い、家族を案じつつ戦場に散り、戦禍に倒れ、あるいは、戦後遠い異郷の地に亡くなられています。

 また、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。こうした歴史の事実を謙虚に受け止め、改めて痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ちを表明するとともに、先の大戦における内外のすべての犠牲者に謹んで哀悼の意を表します。悲惨な戦争の教訓を風化させず、二度と戦火を交えることなく世界の平和と繁栄に貢献していく決意です。

 戦後我が国は、国民の不断の努力と多くの国々の支援により廃墟(はいきょ)から立ち上がり、サンフランシスコ平和条約を受け入れて国際社会への復帰の第一歩を踏み出しました。いかなる問題も武力によらず平和的に解決するとの立場を貫き、ODAや国連平和維持活動などを通じて世界の平和と繁栄のため物的・人的両面から積極的に貢献してまいりました。

 我が国の戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の60年であります。
 我が国にあっては、戦後生まれの世代が人口の7割を超えています。日本国民はひとしく、自らの体験や平和を志向する教育を通じて、国際平和を心から希求しています。今世界各地で青年海外協力隊などの多くの日本人が平和と人道支援のために活躍し、現地の人々から信頼と高い評価を受けています。また、アジア諸国との間でもかつてないほど経済、文化等幅広い分野での交流が深まっています。とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。

 国際社会は今、途上国の開発や貧困の克服、地球環境の保全大量破壊兵器不拡散、テロの防止・根絶などかつては想像もできなかったような複雑かつ困難な課題に直面しています。我が国は、世界平和に貢献するために、不戦の誓いを堅持し、唯一の被爆国としての体験や戦後60年の歩みを踏まえ、国際社会の責任ある一員としての役割を積極的に果たしていく考えです。

 戦後60年という節目のこの年に、平和を愛する我が国は、志を同じくするすべての国々とともに人類全体の平和と繁栄を実現するため全力を尽くすことを改めて表明いたします。

 平成17年8月15日

 内閣総理大臣 小泉純一郎

2005年08月15日12時15分 朝日新聞
http://www.asahi.com/politics/update/0815/007.html

 うーん、見事な戦術という他はありません。終戦記念日靖国参拝はせず、なんと千鳥ケ淵戦没者墓苑にて無名戦没者に献花をし、かつ村山総理以来10年ぶりの日本国総理大臣としての「小泉談話」を表明したわけです。

 一部右よりの人達からは多少批判めいた言及をされているようですが、例えば靖国参拝凍結派であった不肖・木走などは、まったくもってその政治手腕に脱帽なのです。

 談話の内容も完全に村山談話を継承しており、戦後日本の歩みに関しては村山談話より一歩踏み込んで積極的な評価を述べていますが、まさに戦争への反省とお詫びを明確に示した上で近隣諸国への配慮もしっかり唱えているわけです。

とりわけ一衣帯水の間にある中国や韓国をはじめとするアジア諸国とは、ともに手を携えてこの地域の平和を維持し、発展を目指すことが必要だと考えます。過去を直視して、歴史を正しく認識し、アジア諸国との相互理解と信頼に基づいた未来志向の協力関係を構築していきたいと考えています。

 中国と韓国を名指ししているところも、そうとう踏み込んだ表現であります。

 ・・・

 いずれにしてもこの談話表明により、選挙の重要な争点のひとつになるはずの小泉首相の外交手腕、とりわけ弱点とも思える靖国参拝問題を、完全に封印してしまったわけです。

 日本のマスメディアが情けないのは、小泉流選挙戦術にまんまとはまり、この歴史的談話表明も、しばらくすれば全く触れられなくなり、郵政改革選挙という小泉さんの焦点絞りにすっかり踊らされているわけです。



小泉首相の狙いを見事に分析しているファイナンシャルタイムス記事

 21日付けの米ファイナンシャルタイムスの記事はこのあたりの事情を見事に分析して見せています。
 日本のマスメディアの体たらくに比し驚くほど冷静に小泉さんの行動を分析していて、感心してしまいました。
 興味深い記事ですので、『木走日記』読者のみなさまにご紹介いたしましょう。

Japan’s Koizumi avoids Yasukuni shrine visit
By David Ibison in Tokyo
Published: August 21 2005 14:11 | Last updated: August 21 2005 14:11

日本の小泉が靖国神社参拝を回避
デヴィッド・アイビソン(東京発)
最終更新日: 2005年8月21日14:11

Junichiro Koizumi, Japan's prime minister, decided not to pay a controversial visit to Tokyo's Yasukuni shrine, sending a clear signal that he wants domestic reform to be at the centre of the coming general election.

 小泉純一郎日本国首相は、彼が国内改革が来たる総選挙の中心論点であることを望んでいるという明確なシグナルを送りつつ、論議を呼んでいた東京の靖国神社への参拝を行わないことを決定した、。

A visit to the shrine by Mr Koizumi on the 60th anniversary of Japan’s surrender in the second world war might have paid political dividends by helping to secure support from conservative voters troubled by his reformist agenda. Some opinion polls had concluded a majority of voters supported a visit.

 第2次世界大戦における日本降伏の60回目の記念日の小泉さんによる神社への参拝は、彼の改革論者的政策に困惑していた保守的な有権者からの支持を担保する助けになり、政治的配当が支払われていたかもしれない。 いくつかの世論調査では、有権者の多数が参拝を支持している結果が出ていたのだ。

Instead of going to Yasukuni, the prime minister on Monday laid flowers at the tomb for the unknown war dead at the Chidorigafuchi National Cemetery and issued a statement that expressed “deep remorse and heartfelt apology” for Japan's colonisation and wartime acts.

 靖国に行くことの代わりに、首相は、月曜日に千鳥ケ淵戦没者墓苑の無名戦死者のために献花し、日本の植民地化政策と戦時中の行動に「深い後悔と心からの謝罪」を言い表した談話を表明した。

“Japan once inflicted a great deal of damage and suffering on people in many countries, especially those in Asia, through its colonial rule and acts of aggression,” the statement said.

 談話では「日本はかつて多くの国の人々、とりわけ植民地支配と侵略行為を通じてアジアの国の人々に多大なる損害と苦しみを与えてしまいました」と書かれている。

But it would also have prompted an angry reaction from China and South Korea and diverted attention to international issues at a time when the prime minister is seeking to make domestic reform the focal point of the coming poll.

 しかしながら、また首相が国内の改革を次の投票の焦点にしようとしているとき、それ(靖国参拝)は、おそらく中国と韓国から怒りの反応を誘い、注意を外交問題に紛らわしてしまったにちがいない。

“Going to Yasukuni would have been a grave political error. It would have put the focus on [Koizumi's] weakest points - diplomacy, reconciliation and the fact that Japan's future is linked to China's economic growth,” said Jeff Kingston, director of Asian studies at Japan's Temple University.

 「靖国に行っていたならば、重大な政治上の誤りになっっていたでしょう。」 「小泉の最も弱いポイントが焦点になっていたでしょう--外交、和解、そして日本の未来が中国の経済成長にリンクされているという事実」と、ジェフ・キングストン(日本テンプル大学のアジア研究者)は言った。

Mr Koizumi called an election for September 11 after lawmakers rejected a bill to privatise the post office, the centrepiece of his reform agenda. The ballot has developed into a full-scale showdown between pro- and anti-reform elements in Japan.

 小泉さんは、彼の改革政策の本丸である郵便局を民営化する法案を議会が否決したのを受けて、9月11日の選挙を選択した。 投票は、日本における改革賛成派と改革反対派の全面的対決と化したのである。

Visits to the Yasukuni shrine are controversial because it enshrines Class-A war criminals along with the war dead. Previous visits by Japanese politicians have been attacked for allegedly glorifying Japan's era of imperialist expansion in the first half of the last century.

 戦没者の中にA級戦犯が含まれて祀られている理由で、靖国神殿への参拝は論議を呼んでいる。 前世紀前半の日本帝国主義者拡大の時代を賛美するとされているために、日本の政治家による参拝は非難されてきたのである。

Any reaction to a visit by Mr Koizumi on this year's anniversary would have been extreme. The last 12 months have been characterised by a sharp surges in anti-Japanese sentiment in Asia, over various issues such as Japan's interpretation of history and its bid to join the United Nations Security Council.

 今年の記念日における小泉さんによる参拝への反応はいずれにせよ極端なものであっただろう。 歴史に関する日本の解釈や国連安全保障理事会に加わるその努力などの様々な問題の上で、ここ12カ月はアジアの反日感情が激しいうねりによって特色づけられてきた。

The reaction could also have had important economic as well as diplomatic consequences as China is now Japan's largest trading partner and economic recovery is increasingly reliant on maintaining a functioning and mature relationship with China.

 また反応には、中国が現在の日本の最も大きい貿易相手国であり、景気回復がますます中国との機能的で円熟した関係の維持に依存しているので、重大な経済的そして外交的影響を招いていたかもしれない。

Mr Koizumi's decision not to visit the shrine on Monday was in keeping with past behaviour. He has visited Yasukuni every year since he became prime minister in 2001, but never on August 15. Members of his cabinet and other politicians visited the shrine on Monday, but their attendance carries less symbolic weight.

 月曜日に神社を参拝しないという小泉さんの決定は過去の行動と一貫していた。彼が2001年に首相になって以来、8月15日には決してしていないが、毎年靖国を参拝しているのだ。 彼の内閣のメンバーや他の政治家が月曜日に神社に参拝をしたが、彼らの出席はそれほどシンボリックな重さを伴わないようだ。

The outcome of next month's election remains uncertain. The public has started to put its weight behind Mr Koizumi and his support level has grown to around 28 per cent, according to opinion polls, although around 40 per cent of the electorate has yet to make up its mind.

 来月の選挙の結果は予断を許さない。 大衆はその(支持の)ウエイトを小泉さんよりにし始めている、世論調査によれば、彼の支持率はおよそ28パーセントまで伸びてきたのだ。もっとも選挙民のおよそ40パーセントがまだ心を決めてはいないのだが。



(訳:木走まさみず)

ファイナンシャルタイムス 8月21日記事より(写真も同記事より)
http://news.ft.com/cms/s/f5c5a326-0d73-11da-aa67-00000e2511c8.html

 いかがでしょうか。

 「刺客」騒ぎや新党騒動に踊らされている日本のマスメディアに比べてとても冷静な分析がされていると思いました。

 しかし、日本のTVも新聞も、もう少し郵政以外の外交問題などの政策論もしっかり報道してくれないと困ります。

 しっかり論点を作り出せていない民主党も情けないのですが、小泉流世論誘導にまんまとのっかってしまっている日本のメディアの報道姿勢も本当に情けないのです。
 日本のマスメディアの情けなさ、読者のみなさまはいかが、お感じでしょうか。



(木走まさみず)