英タイムスが報じる東条由布子さんと古賀誠会長のイタイ発言
今日も靖国参拝問題に関連するエントリーです。
●ブログをまたいで盛り上がる熱き論争
靖国参拝問題ですが、当ブログの10日付けエントリーのコメント欄でも熱く議論されており、議論に参加されているくまりんさんと福山達也さんは、それぞれのご自身のブログでも論説を熱く展開されています。
とても興味深い論争であり為になりますので読者のみなさまも是非一読をお奨めいたします。
元になる木走のエントリーおよびコメント欄
●「人間爆弾」桜花からの生還〜「出撃した日は、桜が満開でした」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050610関連するくまりんさんのエントリー
木走日記にハマってしまった
http://ngp-mac.com/kumarin/index.php?p=819
第二次大戦を反省する方法論についての議論
http://ngp-mac.com/kumarin/index.php?p=820
「批判」としての「文学」
http://ngp-mac.com/kumarin/index.php?p=821関連する福山達也さんのエントリー
大日本帝国は無条件降伏していなかったのか?
http://blogs.yahoo.co.jp/peace12hope/5040374.html
私の拙いエントリーをきっかけにレベルの高い有意義な議論が広がることは、とても光栄なことなのでありまして、興味深く議論の成り行きを見守りたいと思います。
●英タイムスにさっそく取り上げられた二人の人物の発言
最近当ブログでは、靖国参拝問題をめぐる二人の人物の発言を批判的に取り上げてきました。
●東条由布子さんは「正義の人」なのか?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050611/1118466427
●産経にプーチンの爪のあかでも飲めとなじられたバルカン政治家古賀誠氏
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050616/1118899994
東条由布子さんも古賀誠氏も、それぞれ東条英機元首相のご遺族、日本遺族会会長という、靖国問題に関しては慎重な発言が求められるべきお立場だと木走は判断しておりますが、ご両人共に最近の積極的な一歩踏み込んだご発言は多くの物議をかもしております。
最近、当ブログで取り上げることが多い英タイムスの東京特派員リチャード・ロイド・パリイ記者の記事なのですが、14日、さっそく問題発言としてこの二人の人物の発言が記事として掲載されました。
では、14日付け英タイムス記事「東条家は神社の分祀を拒否」です。
なお例によって記事中の強調文字は木走が付記したモノです。
June 14, 2005
Tojo family rejects shrine deal
From Richard Lloyd Parry in Tokyo2005年6月14日
東条家は神社の分祀を拒否
リチャードロイドパリイ(東京発)THE family of Hideki Tojo, the Japanese wartime Prime Minister hanged by an Allied tribunal for war crimes, has rejected once and for all a plan to defuse a bitter dispute with China by “removing” his deified spirit from a nationalist Shinto shrine.
戦争犯罪のため連合国裁判により絞首刑になった日本の戦時中の総理大臣だった東条英機の遺族が、国家主義的な神道の祭殿から祀られている彼の御霊(みたま)を「除去」することにより中国との激しい論争を静めるプランを、きっぱりと拒絶した。
The statement, made by Tojo’s granddaughter in an interview with The Times, will further complicate efforts to quell the smouldering dispute which led to violent demonstrations in several Chinese cities in April.
タイムズとのインタビューで東条の孫娘によって出された声明は、4月に起こった中国各都市での暴力的抗議デモの原因となった激しい論争を静めるための取り組みを、いっそう複雑にするものとなろう。
The Chinese Government is furious about annual visits made by Junichiro Koizumi, Japan’s Prime Minister, to the Yasukuni shrine in Tokyo. Yasukuni enshrines as Shinto deities the souls of 2.5 million Japanese war dead, but controversy focuses on 14 of them — the Class A war criminals, including Tojo who was hanged along with six of the others in 1948 for their role in Japan’s war effort.
中国政府は、日本国首相小泉純一郎による毎年の東京靖国神社参拝に関して怒り狂っている。靖国では神道の神々として250万人の日本人戦死者の魂が奉安されているが、論争の焦点はその中の14人、つまり日本の戦争遂行における責任のために6人の他のものと共に1948年に絞首刑にされた東条を含むA級戦犯達である。
Mr Koizumi insists that he visits the shrine to pray for peace, but China claims that by honouring war criminals he is demonstrating Japan’s lack of penitence for its wartime aggression. Recently, members of Mr Koizumi’s Liberal Democratic Party have proposed a compromise — that the souls of the convicted Class A war criminals be ritually removed from Yasukuni, and re-enshrined elsewhere.
小泉氏は平和祈念のため神社に参拝していると主張しているが、中国は、戦争犯罪人を尊敬することによって侵略戦争に対する反省が全く不足していることを示しているのだと文句を付けている。最近、小泉氏の所属する自由民主党の議員達は、断罪されたA級戦犯の御霊(みたま)を靖国から儀式上外してどこかほかの場所に分祀する妥協案を提案している。
But such a ceremony would require the permission of the relatives of the dead men, and yesterday, Yuko Tojo, the 65-year-old granddaughter of General Tojo, said that her family would never consent to such a suggestion.
しかし、そのような儀式は遺族の許可を必要とするであろう、そして昨日、東条由布子(東条司令官の65歳の孫娘)は、彼女の家族はそのような提案を決して承諾しないと言ったのである。
“By agreeing to that, we would be accepting the Tokyo tribunal, and [accepting the idea that] Japan fought a war of invasion, and yielding to pressure from foreign countries,” Ms Tojo said.
「それに同意してしまえば、私たちが外国からの圧力に屈して、東京裁判を受け入れ、日本は侵略戦争をおこなったとの考えを受け入れてしまうことになります。」と、東条さんは言った。
The proposal is part of an increasingly anxious effort within Japan to resolve the Yasukuni controversy before it does any more damage to relations between Japan and China, the two most powerful countries in Asia.
その提案は。靖国論争を、アジアで最も強力な2つの国である日本と中国の関係への今以上のダメージを与える前に、解決するための日本国内で高まっている憂慮に基づく試みのひとつなのである。
Despite growing pressure — from Chinese and Korean diplomats, politicians and demonstrators, from politicians within his own party, and from a group of seven former prime ministers — Mr Koizumi shows no sign of abandoning his policy of visiting Yasukuni once every year. He promised to do so before he became Prime Minister in 2001 to members of the Japan War Bereaved Families’ Association, a powerful political lobby. But over the weekend, even the association appeared to indicate its discomfort with the present tensions.
中国や韓国の外交官達・政治家達・デモ参加者達からの、彼が所属する政党の政治家達からの、そして7人の首相経験者達のグループからの、ますます厳しくなってきた圧力にもかかわらず、小泉氏は年に一度の靖国参拝する方針を捨てる兆候を全く示してはいない。総理大臣になる前の2001年、強力な政治団体である日本戦争遺族会の会員達に、彼はそうすると約束していたのだ。しかし、この週末にはその遺族会でさえ現在の緊張に関して不快感を示すようになった。
“It has been an ardent wish of the association [that Japanese prime ministers visit the shrine] and we appreciate it very much but at the same time it is most important that the spirits of the war dead rest in peace,” said a document, apparently issued by Makoto Koga, the LDP politician and association’s head. “It is necessary to give consideration to neighbouring countries and obtain their understanding. ”
「日本の総理大臣に神社に参拝いただくことは遺族会のかねてよりの願いでありましたし、私たちはたいへんそのことに感謝いたしておりますが、同時に、戦没者の御霊(みたま)を安らかに眠らせることが最も重要なことなのです。」 自由民主党政治家で遺族会会長である古賀誠によって表明された文書にはこう語られていた。「近隣諸国に配慮をして、彼らの理解を得ることが必要です。」
His remarks were echoed by Hiroshi Okuda, chairman of Toyota and the Japan Business Federation. But Mr Koizumi shows no sign of changing his mind, hence the proposal to remove the spirits of General Tojo and his fellow convicts.
彼の所見は奥田碩トヨタ社長兼日本経済団体連合会会長に共鳴された。 しかし、小泉氏には、東条司令官と彼の仲間の御霊(みたま)を取り除くという提案にしたがうような気が変わる兆候はまったくないのである。
(訳:木走まさみず)
痛いですね。このような形で海外メディアが記事にするとこの問題で日本国内がそうとう揉めている印象を与えてしまうのでしょう。
それはそれで事実ですから仕方がないですが、案の定、東条さんの分祀など承諾してしまえば「日本は侵略戦争をおこなったとの考えを受け入れてしまうことになります。」発言と、日本遺族会会長としての古賀さんの「近隣諸国に配慮をして、彼らの理解を得ることが必要です。」発言が、実に効果的に記事中に使用されているのです。
このリチャード・ロイド・パリイ記者は日本のことを大変よく勉強されていて、ちゃんと”spirit”と言う単語を使用して御霊(みたま)のことをうまく表現していて感心したのですが、どうなんでしょう、古賀誠発言は「個人的発言」などという言い訳も全く記事にはあらわれません。それどころか、この発言があることにより東条さんが一人孤立している図が記事全体から見えてきてしまいます。
記事自体が偏向しているわけでは全くなく、どちらかと言えば、少々日本に取り自業自得的な痛い記事内容なのでありました。
読者のみなさまのこの問題を考察する際の一助となれば幸いです。
(木走まさみず)
<関連テキスト>
●東条由布子さんは「正義の人」なのか?
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050611/1118466427
●産経にプーチンの爪のあかでも飲めとなじられたバルカン政治家古賀誠氏
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050616/1118899994
●「人間爆弾」桜花からの生還〜「出撃した日は、桜が満開でした」
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050610
●英タイムスで吠えまくった石原都知事の発言内容を検証する
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050602/1117696850
●英タイムスが報じたカミカゼパイロット美談
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050607/1118148066