木走日記

場末の時事評論

歴史的にも閉鎖的なUKUSA協定諸国だけによる中国批判声明に、日本が参加する義務も同理もなし

さて、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドアメリカ合衆国であります。

これは、大英帝国と、全て大英帝国宗主国とした大英連邦構成国、旧植民地のアングロサクソン白人国家であります。

より厳密には、豪、加、ニュージーランドの3国は現在も大英連邦国家であり、国家元首は英国女王陛下でありますが、独立戦争に勝ったアメリカ合衆国は独自の大統領を国家元首としており大英連邦からは脱退しております。

宗主国英国と、英国国王の名の下で、全て先住民族の土地を追い出す形で勝手に白人がやってきて勝手に白人国家をつくっちゃった4ヵ国なのであります。

これら5ヶ国は現在も非常に仲がいいわけですが、その暗黒の歴史を共有していることでも知られている、旧大英連邦アングロサクソン同盟なわけです。

この5ヵ国がどのくらい仲がいいかの一例ですが、13年前になりますが、2007年9月13日に、国連総会で圧倒的多数144ヶ国の賛成で採択された「先住民族の権利に関する宣言」があるのですが、世界で4ヵ国だけ強硬に反対したのでした。

当時の当ブログのエントリーはその事実を紹介して、ネットで話題をいただきました、未読の読者は読み物としてご一読あれ。

2008-03-25
国連「先住民族の権利に関する宣言」に世界で4カ国だけ反対していた国々
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/20080325/1206430263

まず賛成144国。

In favour: Afghanistan, Albania, Algeria, Andorra, Angola, Antigua and Barbuda, Argentina, Armenia, Austria, Bahamas, Bahrain, Barbados, Belarus, Belgium, Belize, Benin, Bolivia, Bosnia and Herzegovina, Botswana, Brazil, Brunei Darussalam, Bulgaria, Burkina Faso, Cambodia, Cameroon, Cape Verde, Central African Republic, Chile, China, Comoros, Congo, Costa Rica, Croatia, Cuba, Cyprus, Czech Republic, Democratic People’s Republic of Korea, Democratic Republic of the Congo, Denmark, Djibouti, Dominica, Dominican Republic, Ecuador, Egypt, El Salvador, Estonia, Finland, France, Gabon, Germany, Ghana, Greece, Guatemala, Guinea, Guyana, Haiti, Honduras, Hungary, Iceland, India, Indonesia, Iran, Iraq, Ireland, Italy, Jamaica, Japan, Jordan, Kazakhstan, Kuwait, Lao People’s Democratic Republic, Latvia, Lebanon, Lesotho, Liberia, Libya, Liechtenstein, Lithuania, Luxembourg, Madagascar, Malawi, Malaysia, Maldives, Mali, Malta, Mauritius, Mexico, Micronesia (Federated States of), Moldova, Monaco, Mongolia, Mozambique, Myanmar, Namibia, Nepal, Netherlands, Nicaragua, Niger, Norway, Oman, Pakistan, Panama, Paraguay, Peru, Philippines, Poland, Portugal, Qatar, Republic of Korea, Saint Lucia, Saint Vincent and the Grenadines, San Marino, Saudi Arabia, Senegal, Serbia, Sierra Leone, Singapore, Slovakia, Slovenia, South Africa, Spain, Sri Lanka, Sudan, Suriname, Swaziland, Sweden, Switzerland, Syria, Thailand, The former Yugoslav Republic of Macedonia, Timor-Leste, Trinidad and Tobago, Tunisia, Turkey, United Arab Emirates, United Kingdom, United Republic of Tanzania, Uruguay, Venezuela, Viet Nam, Yemen, Zambia, Zimbabwe.

反対4ヵ国。

Against: Australia, Canada, New Zealand, United States.

オーストラリアにカナダにニュージーランドアメリカ合衆国です。

全て大英帝国宗主国とした旧大英連邦構成国、旧植民地のアングロサクソン白人国家であります。

先住民族の権利に関する宣言」など認めたならば国家の成り立ちそのものが崩壊しかねない国々です、国際社会を全て敵に回して、ある意味とても正直な投票行動だったわけです。

このようにときに国際的に孤立することもときにいとわない、閉鎖的なほど仲のいい、英、米、豪、加、ニュージーランドの5ヶ国なのですが、強固な軍事同盟を結んでもいます。

有名なUKUSA協定(ウクサきょうてい)であります。

UKUSA協定(ウクサきょうてい、英:United Kingdom – United States of America Agreement)とは、アメリカ合衆国国家安全保障局NSA)やイギリスの政府通信本部GCHQ)など5カ国の諜報機関が世界中に張り巡らせたシギントの設備や盗聴情報を、相互利用・共同利用する為に結んだ協定のことである。かつては秘密協定だったが、現在は条文の一部が公開されている。なおUKUSA協定グループのコンピューターネットワークはエシュロンと呼ばれている。

協定締結組織

共通点は、イギリス帝国の植民地を発祥とするアングロサクソン諸国の機関であること(アメリカ以外は今もイギリス連邦構成国)。Five Eyesとも呼ばれる。

アメリカ合衆国 - アメリカ国家安全保障局NSA)[1]
イギリス - 政府通信本部GCHQ)[1]
カナダ - カナダ通信保安局(英語版)(CSEC)[1]
オーストラリア - 参謀本部国防信号局(英語版)(DSD)[1]
ニュージーランド - 政府通信保安局(GCSB)[1]

https://ja.wikipedia.org/wiki/UKUSA%E5%8D%94%E5%AE%9A

 このUKUSA協定の管理するコンピューターネットワークであるエシュロンは、悪名高く、この5ヵ国以外は利用できず、ドイツや日本など、英米以外は同盟国各国もライバルとみなし、要人や政府機関の国際通信を盗聴していたことが、2015年ウィキリークスの暴露により明らかになるわけです。

我が日本政府および政府機関も完全に盗聴されていたわけです。

さて、ここから本題です。

軍事的にも閉鎖的なほど仲のいい、英、米、豪、加、ニュージーランドの5ヶ国なのですが、旧英国領植民地であった香港に対する中国政府からの圧力にたいしては、ときに非常に敏感に反応するわけです。

今回5月28日に、中国政府が香港に国家安全法制を導入する方針を決定した事に対してイギリスとアメリカ、オーストラリア、そして、カナダの4ヵ国は28日、共同声明を発表し、「香港の安定や繁栄が危険にさらされる」との深い懸念を示しました。

声明では、国家安全法制が導入されれば「香港の人々の自由が奪われる恐れがある」と指摘し、「香港社会の分断が悪化する可能性がある」と警告しました。
また、「一国二制度」方式による香港返還を定めた1984年の中英共同宣言に相反する行為だとも批判しました。

共同声明からなぜかニュージーランドがもれていますが、メンバーからして、大英帝国宗主国とした旧大英連邦構成国、旧植民地のアングロサクソン白人国家としての「共同声明」であることは間違いありません。

なによりそれが証拠に、旧大英連邦構成国以外の主要国、独仏や日本すら声明に参加していません。

さて、この共同声明に日本が参加拒否して米国など関係国の間では日本の対応に失望の声が出ている、との内容の記事が共同通信から報道されます。

(参考記事)
日本、中国批判声明に参加拒否 香港安全法巡り、欧米は失望も
6/7(日) 6:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/e1dfcf36d1bbd64a8d7ba8a47eb7cd7b35292aa1?fbclid=IwAR0Z6rbeTOepki8_tiXgjt0tBo49HmJ_MtfY2JrvEUqzWQjBpGEAQ5JbBXM

この報道は少しオカシイです。

「欧米は失望も」とありますが、「英米は失望も」の間違いでしょ、日本だけでなく、英以外の欧州つまり独仏伊など欧州主要国はどこも参加していません。

繰り返しますが、大英帝国宗主国とした旧大英連邦構成国、旧植民地のアングロサクソン白人国家、UKUSA協定5ヶ国は、決して国際社会に協調的ではありませんし、彼らが正義を代弁しているわけではありません。

このような歴史的にも閉鎖的なUKUSA協定諸国による共同声明に、日本が参加する義務も同理もありません。



(木走まさみず)

数値としては危機的な「東京アラート」だが、実は感染者数増加の内容は決して悪くない

東京都は6日、新型コロナウイルスの感染者26人を新たに確認し、1日あたりの感染者が2桁となるのは6日連続です。

都によると、感染者26人のうち現時点で感染経路が不明な人は10人といいます。年代別では20代が12人と最も多く、30代が7人、40代が3人と続きます。男性が22人を占めました。

接待を伴う飲食店などで感染したとみられる「夜の街」関連は16人。同じ店のホスト12人を含んでいるといいます。この店は新宿エリアにあり、従業員に感染が疑われる症状が出て以降、無症状の従業員もあわせて積極的にPCR検査しており、客にも連絡をとっているといいます。

(関連記事)
東京都で26人が感染 うち12人は同じ店のホスト
https://www.asahi.com/articles/ASN666KG4N66UTIL012.html

さて、東京都の現在の感染状況を、「東京アラート」主な3指標の数値で確認しましょう。

①1日あたりの感染者数(1週間平均)が20人以上、②感染経路が不明な人の割合(同)が50%以上、③週単位の感染者数の増加率が1倍以上、です。

東京都の過去3週間の感染者数のグラフで確認しましょう。

f:id:kibashiri:20200607151628p:plain
※『木走日記』作成

まず①1日あたりの感染者数(1週間平均)が20人以上、ですが、19.7人です、ギリギリセーフです。
②感染経路が不明な人の割合(同)が50%以上ですが、26人中10人が現時点で感染経路不明ですので、10/26=38.5%とこれもクリアです。
最後に、③週単位の感染者数の増加率が1倍以上ですが、グラフで確認できますが、先週の13.43人から今週の19.71人と1.47倍でこれはアウトですね。

グラフで確認いただけますが、東京都では過去3週間、週を追うごとに感染者数が増加しています。

今確認しましたとおり、現在「東京アラート」の主要指標の3つのうち③指標が超えてしまっていますが、いまの増加率だと来週にも①指標:1日あたりの感染者数(1週間平均)が20人以上も、おそらく超えてしまうことでしょう。

しかし東京都のPCR検査方針がここへ来て大きく方向転換していることに着目すべきです。

接待を伴う飲食店などで感染したとみられる「夜の街」関連は16ですが、同じ店のホスト12人を含んでいるわけですが、この店は新宿エリアにあり、従業員に感染が疑われる症状が出て以降、無症状の従業員もあわせて積極的にPCR検査しており、客にも連絡をとって検査を徹底的に拡大しているといいます。

このような積極的検査を徹底すれば、当然以前は見過ごされていただろう無症状感染者もカウントされることになります。

6日現在の26名の感染者数は、このような積極的検査の結果の値なのであり、そしてこの手法で徹底検査をすれば、今まで拾えなかった20代、30代の感染者(ほとんどが無症状)が増加してきているのは当然の傾向とも言えるのです。

以上、ここ3週間感染者数が増加している東京都なのですが、私としては、今までの消極的検査から積極的検査に手法を変えたことによる影響も大きいと、判断いたします。

3週間増加が止まらず数値としては危機的な「東京アラート」なのですが、実は内容は決して悪くないのだと私は評価しています。



(木走まさみず)

実体のない胡散臭い一般社団法人を定款まで準備したのは実は経産省自身であった件

さて、今回は今話題の『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』を取り上げましょう。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会は、中小企業などに最大二百万円を支給する持続化給付金で、経済産業省から769億円分、委託されますが、実際は委託費の97%に当たる749億円で電通に事業を再委託。電通から、人材派遣のパソナ電通子会社など法人の設立に関わった企業に非公表で外注されていました。

野党議員たちが所在地を確認しても誰もおらず、一六年五月の設立から、社団法人に関係する法律で義務付けられている官報などへの決算開示をされておらず、ホームページすらない、代表電話も設置されていない、実体の乏しいこの法人に多額の税金が渡っている構図なのです。

さらに不思議なのは、この胡散臭い民間団体「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が、過去に経済産業省の計14件の事業(総額約1600億円)を受託していたというのです。しかもそのうち少なくとも7件では協議会だけが単独で入札をしていたといいます。

(関連記事)
給付金受託団体、国から14件1600億円 再委託9件
https://www.asahi.com/articles/ASN616744N61ULFA022.html

そもそも『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』が設立された2016年5月16日といえば、偶然にも平成28年5月16日付公募情報「平成27年補正予算「サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関の立ち上げ・運用支援等)」の公募開始日なのです。

このあたりの流れを徹底的に検証しているのが以下のサイトです。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは何者か。「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える。
東京蒸溜所 蒸溜日誌
https://note.com/tokyodistillery/n/n6564a5ecf2a3

興味のある読者は是非上記サイトを直接お読みください、読みごたえありです。

さて以下、興味深い事実だけ上記サイトを参考に押さえていきましょう。

『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』の定款情報が次のサイトにPDFファイルとして公開されています。

おもてなし規格認証
運営者情報
https://www.service-design.jp/administrator/

でPDFファイルの「定款」を開いていますと。

f:id:kibashiri:20200604102853p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf

まあPDF上定款の法人名は『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』なのですが、画面左上の情報に注目ください、アップしますと。

f:id:kibashiri:20200604102909p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf<<

補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)』と、赤裸々な名称になっております。

興味深いのは『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』ではなく、『補助金執行一般社団法人(仮称)』と、執行もされていないはずなのに補助金執行と明確にうたわれているのですよね。

さらに興味深いのがこのファイルのプロパティ(属性)を表示して見たならば、なんと本当のタイトルと本当の作成者が痕跡を残しているではありませんか。

f:id:kibashiri:20200604102926p:plain
https://web.archive.org/web/20180218031829/https://www.service-design.jp/files/user/omotenashi/pdf/SDEC_AOI_20161213.pdf

作成者:情報システム厚生課が、この定款の作成者の名前なのでした。これこそがこのいかがわしい法人の首謀者と目される存在です。

「情報システム厚生課」とは、経済産業省大臣官房に属する純然たる内局組織なのであります。

ここまでデジタル上痕跡を残しそれをネット上でさらしていたとは、このファイル(定款)の作成者の経済産業省情報システム厚生課も、それを流用してネットで公開し続けた『一般社団法人サービスデザイン推進協議会』側(その実態は電通スタッフか)も、あまりにITリテラシーがなさすぎです。

おそらく経産省側はマイクロソフト・オフィスの仕様を知らなかったのでしょう。WordなどのOfficeソフトから書き出したPDFには、PDFのファイル名を変えたとしても、元ファイル(Wordであればdocまたはdocxファイル)のタイトル名や作成者が保存されることを知らず、委託先にファイルを渡してしまったのです。

そして委託先もまた、それに気づかず、タイトルと作成者情報をそのままにして、ワードからPDFを書き出してしまったのです。

これはデジタル的にはいろいろな意味で完全にアウトです、動かぬ証拠です。

以上、実体のない胡散臭い一般社団法人を定款まで準備したのは実は経産省自身であったという件でした。



(木走まさみず)

東京も北九州も「第二波」ではない〜 ワクチンがない現在、経済活動を復活させる限り、小さな「波」は不可避

東京都は30日、都内で新たに14人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

これで5日連続で2桁台となり、一部メディアでは東京(と北九州)に「第二波襲来」かと騒ぎ始めています。

東京の過去2週間の感染者発生数をグラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200531135758p:plain
※『木走日記』作成

ご確認いただけますように、前の七日間の感染者数41人に対して今週七日間は94人となっております。

つまり、週単位の増加比率は2.29、2倍を超えているのです。

2週間前の全国39県の非常事態宣言解除、1週間前の8都道府県の非常事態宣言解除による本格的影響はこれから出るものと予想されますから、この拡大傾向はしっかり注視していかなければなりません。

東京の感染者数は今後2週間でさらに増大することが予想できます。

しかしです。

このような小さな波を「第二波」と大袈裟に表現することには反対です。

それをみとめれば各地域ごとに小さな流行ごとに「波」をカウントせねばならず、半年後には「東京に第十二波襲来」などと波をカウントする意味すら薄れてしまいます。

かつての北海道も含めて現在の東京も北九州も、大きな意味で第一波のぶり返しであり第一波に含めるべきであります。

さて、東京と北九州のこの状況を受けて、西村経済再生相は「東京 北九州市の再指定考えず」と緊急事態宣言の復活を考えていないことを明言いたします。

(関連記事)
「東京 北九州市の再指定考えず」西村経済再生相 緊急事態宣言
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200531/k10012452321000.html

西村大臣のこの認識は重要です。

「小さな流行は、日本全国どこでも起こりうることを認識しなければいけない。大きな流行にしないことが大事だ」(西村経済再生担当大臣)

当ブログは西村大臣のこの発言を強く支持するものであります。

この程度の「小さな流行は、日本全国どこでも起こりうる」、今後中長期に渡って各地で繰り返されるこの程度の「小さな流行」「波」を大仰に「第二波」「第三波」と数えるのは無意味ともいえましょう。

我々は、大きな意味でいまだ新型感染ウイルス「第一波」のただ中にいるのだと、その「第一波」がいまだくすぶっているのだと、冷静に考えるべきなのだと思います。

繰り返します。

小さな波は、当面、日本全国どこでも起こりうることを認識しなければなりません。

ウイルスの特効薬がない現在、その中で経済活動を復活させる限り、このことは残念ながら不可避なのです。

小波に冷静に対処しながら、ワクチンや特効薬ができるまでのあいだ、長期の持久戦に持ち込むしかありません。

今後、この程度の小波のたびに、いちいち緊急事態宣言を復活させては、日本経済が持ちません。



(木走まさみず)

世界各国の新型コロナウイルスの感染状況について、死者数を国別・地域別に定量的に分析してみる

今回は2020年5月23日現在での世界各国の新型コロナウイルスの感染状況について、その死者数を国別・地域別にできうる限り正確な数値を用いて定量的に分析してみます。

なお、途中の分析はデータ量も多いですので、お時間のない読者は最後の■まとめまで、飛ばしていただいて構いません。



■情報ソース

最新の感染者数(死者数)情報は米ジョンズホプキンス大学のサイトをデータソースとします。

ジョンズホプキンス大学(JHU)のシステムサイエンスおよびエンジニアリングセンター(CSSE)によるCOVID-19ダッシュボード
https://coronavirus.jhu.edu/map.html

各国の人口推計は国連人口部の2019年の推計をデータソースとします。

国連人口部の推計人口統計「World Population Prospects, 2019 Revision」ベース。
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/

各国のグループ分けは、外務省の採用している7つのエリア分け、アジア、大洋州、北米、中南米、欧州、中東、アフリカに準拠するものとします。

外務省 世界の国・地域
f:id:kibashiri:20200524035127g:plain
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html#region

■世界163ヵ国をDB化する

2020年5月23日現在の感染者数(死者数)情報を米ジョンズホプキンス大学のサイトより収集し、データベース化しました。

それによれば、1人以上死者を計上している国は世界163ヵ国とクルーズ船2隻に及びます。

死者を発生させた世界163ヵ国を死者数の多い順に並べます。

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※『木走日記』作成

字が小さすぎて潰れていますが、気にしないでください、現段階の作業の手順を俯瞰的にご理解いただければ十分です。

ちなみに、参考までに上位30ヶ国を拡大しておきます、日本が28番目にいます。

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※『木走日記』作成

■世界163ヵ国の人口情報を結合してDB化する

この163ヵ国のデータに、国連人口部の推計人口統計のデータを結合します。

なおかつ、結合した上で、死者数と人口から『人口10万人あたりの死者数』を算出します。

f:id:kibashiri:20200524050040p:plain
※『木走日記』作成

参考までに上位30ヶ国を拡大しておきます、日本が28番目にいます。

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※『木走日記』作成

最上位のUS(アメリカ)を見れば、左から、死者数96007人、人口3億2906万5千人(単位:千人)、『人口10万人あたりの死者数』が29.18人であることがわかります。

ちなみにですが、この163ヵ国の人口推計合計は74億2822万1千人であり、国連人口推計総計77億1346万8千人の96.3%を占めます。

国連人口推計では234の国・地域がデータ化されているので、世界234ヵ国・地域の中で163ヵ国を減じれば、71ヵ国・地域が死亡者ゼロであることがわかります。



■世界163ヵ国の人口情報を7つの地域グループに分けてDB化する

次に、各国のグループ分けは、外務省の採用している7つのエリア分け、アジア、大洋州、北米、中南米、欧州、中東、アフリカに準拠するものとします。

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※『木走日記』作成

参考までに上位30ヶ国を拡大しておきます、日本が28番目にいます。

f:id:kibashiri:20200524052751p:plain
※『木走日記』作成

■世界163ヵ国の情報を7つの地域グループ別にまとめる。

地域別に表にまとめていきます。

なお表は、『人口10万人あたりの死者数』が多い順に並べてあります。

・アジア(17)

f:id:kibashiri:20200524054807p:plain
※『木走日記』作成

アジア17ヵ国を『人口10万人あたりの死者数』が多い順に並べて見ると、日本は上から3番目です。

国際的に欧米に比較し死者数が少ないと賞賛されている日本ですが、アジア諸国の中ではフィリピン、モルディブに続いて死者数の多さが下から三番目に悪いことがわかります。

最終行に注目してください、アジア17ヵ国としては、死者数13368人、『人口10万人あたりの死者数』が0.34人であることがわかります。

上位6ヶ国の死者数、US 96007、United Kingdom 36475、Italy 32616、Spain 28628、France 28218、Brazil 21048人と比較すれば、アジア全体で死者数13368人の少なさは象徴的です。

以下、6つの地域別に表にまとめます。

大洋州(2)

f:id:kibashiri:20200524061605p:plain
※『木走日記』作成

・北米(2)

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※『木走日記』作成

中南米(28)

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※『木走日記』作成

・欧州(52)

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※『木走日記』作成

・中東(16)

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※『木走日記』作成

・アフリカ(46)

f:id:kibashiri:20200524063110p:plain
※『木走日記』作成

■まとめ

まとめます。

163ヵ国、7地域の新型コロナウイルスの死者数の分布を、地域ごと、『人口10万人あたりの死者数』の小さい順に表にまとめます。

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※『木走日記』作成

『人口10万人あたりの死者数』をグラフに視覚化します。

f:id:kibashiri:20200524185903p:plain
※『木走日記』作成

明らかに3極化していることがわかります。

20人を超える死者数の北米27.93人、欧州20.2人の高死亡率グループ、中南米5.84人、中東3.48人の中死亡率グループ、死亡者が1人未満の大洋州0.41人、アジア0.34人、アフリカ0.26人の低死亡率グループです。
今回は2020年5月23日現在での世界各国の新型コロナウイルスの感染状況について、その死者数を国別・地域別にできうる限り正確な数値を用いて、定量的に分析することを試みました。

結果、理由はわかりませんが、新型コロナウイルスの感染状況には、明らかに統計学的に有意だと思われる、地域による明確なデータの偏位が確認できました。

本エントリーが、読者のみなさんの参考になれば幸いです。



(木走まさみず)


<訂正履歴 2020/5/24 19:00>
Afghanistan(アフガニスタン)が中東でなく中南米に区分されている誤りがありましたので関連図表等を訂正しました。

欧米メディアがざわつき始めた日本の死者数の奇跡的な少なさ

さて、自国内の新型コロナウイルス感染爆発の対応で手一杯であった欧米諸国ですが、ここに来て感染者数、死亡者数ともに発生件数がようやく減少傾向を見せてきています。

第二波を警戒しつつロックダウン(都市封鎖)緩和に一斉に舵を切り始めています。

(関連記事)
欧州各国でロックダウン緩和へ 死者数の減少受け
https://www.bbc.com/japanese/52702252

さて少し余裕ができたため、という訳でもないのでしょうが、ここにきて欧米のメディアで、自国だけでなく世界各国の動向を取り上げる記事が増えています。

で、日本の感染者数と死者数が桁違いに少ないのはなんなんだ?と、ざわつき始めているのです。

日本の感染状況の特異性が取り上げられる頻度が高まっています。

G7各国の感染状況を数値で押さえておきましょう。

表でまとめます。

f:id:kibashiri:20200520082942p:plain
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan
※上記サイトなどのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

感染者数、死者数、100万人あたりの感染者数、100万人あたりの死者数、すべての数値で日本が最小であることがわかります。

特に注目いただきたいのは、4番目の列の『100万人あたりの死者数』であります、日本は文字通り桁違いに少ないことが見て取れます。

日本の特異性が象徴的にあらわれています、グラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200520083020p:plain
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan
※上記サイトなどのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

日本の『人口100万人あたりの死者数』6.03人ですが、イタリア529.38人や英国512.57人に比べると80分の1以下であり、ヨーロッパの中で死者数を低く抑えている優等生であるドイツ95.57人と比べても、15分の1以下と、「桁違い」に少ないわけです。

この特異な日本の数値に対して、欧米メディアがざわついているのです、わけがわからんと。

一例を取り上げましょう。

米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は14日、日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ」と伝えています。

Japan’s Halfhearted Coronavirus Measures Are Working Anyway
とにかく日本の中途半端なコロナウイルス対策が機能している
https://foreignpolicy.com/2020/05/14/japan-coronavirus-pandemic-lockdown-testing/

記事は、日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保も中途半端だと指摘。感染防止に有効とされるウイルス検査率も国際社会と比べ低いが「死者数が奇跡的に少ない」と評します。

記事は「結果は敬服すべきものだ」とする一方、「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」と述べます、また、数的に証明はできないが、日本人の衛生意識の高さや握手をしない習慣などが死者数の低さにつながっているとの見方を示します。

この記事は非常に丁寧に取材されており、例えば、検査数が少なかったのは日本の医療体制が整っていなかったことを日本の医師会も認めていることや、感染女性が東京から長野県に帰省し、感染を知りつつ犬が心配でバスで東京に戻ってしまったエピソードまで、詳細に報じています。

欧米のような強制的な都市封鎖ではなくあくまでも「要請」なのに従順に従う日本人の国民性などにもふれています。

一方的な日本賛辞でもなく、単純な日本批判でもなく、この記事が持つ冷静なその視点は好感を持てます。

記事の結びの一文が印象的です。

As everywhere, the big question will be whether Japan can safely take its foot off the brake without creating a new crisis—but perhaps also why it didn’t have one in the first place.
いずこも同じだが、大きな問題は、日本が新たな危機を発生させることなく安全にブレーキを外していくことができるかどうかである、たぶんそもそも危機が(日本には、はなから)なかったのかもしれないのだが。

理由は分からないけれども、何万人も死者を出す欧米のような「危機(クライシス)」は日本には発生しなかった、そもそも日本では危機はなかったかも知れないと結ばれているのです。

この興味深い記事に海外からたくさんのコメントが付けられています。

下記サイトがコメントを邦訳されています。

海外「日本に住んでて良かった」 米誌『日本のコロナ対策の成功は奇妙で奇跡的』
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3452.html

失礼して支持の多かったコメントをいくつか抜粋してご紹介。

■ ニューヨーカーだから本当に興味深く見てる。
  だってトウキョウの人口密度はNYと変わらないし、
  移動は僕らと同じように公共交通機関に依存してる。
  そして高齢者の数もトウキョウの方が多い。
  それなのに亡くなった人の数が大きく違うんだ。
  マスク、他人への配慮、ルールを守る。この3つが鍵なのかな?
  日本は全面的なロックダウンさえしていない。 +24 アメリ

■ 日本人はお辞儀で挨拶して、大声で話さず、
  マスクをして、清潔で、周囲にちゃんと配慮する。
  日本が上手くいってる理由は1つではないよ。 +27 国籍不明

■ 何でメディアはマスクの効果を認めたくないんだろう。
  俺にとってはそれがミステリーだ。 +21 アメリ

   ■ ホントそれ。
     みんな日本政府の要請が成功の全てだと考えてるけど、
     実際には元からマスクをする文化とか、
     そういう要素が大きな影響を与えたと思う。 +8 アメリ

■ 日本は元々文化的に社会的距離があったしマスクもしてた。
  確かに日本は検査の数は少ないけど、
  死亡者数は昨年と同じくらいだったようだよ。
  全ての人が、出来ることをやっていこう。
  そしてガイドラインに従おう。
  不平を言ったりパニックを起こす必要はない。 +25 インド

■ 国民がお互いに思いやり、ガイダンスに従う。
  そういった姿勢がどんなポジティブなことを起こすのか。
  それを日本が示してくれた事は本当に素晴らしい。 +25 国籍不明

■ だって食事がまず優れてるもん。欧米とは全然違う。
  それに国が国民の健康をちゃんと気遣ってるし。
  アメリカの食べ物に何が入ってるのかなんて、
  たぶん誰も知らないんじゃないかな。 +31 アメリ

■ 確かに日本のやり方は中途半端って言われても仕方ないけど、
  シンジュクとかの繁華街は7割以上も人出が減少して、
  ほとんどのバーやレストランが休業に入った。
  しかも現行法や憲法に抵触しないよう、
  強制力をかけずにそれを達成したんだ。

  いずれにしても日本は目標を達成した、
  あるいは比較的その域に達する事ができた。
  完璧とは言い難いけど、注目に値するよ。 +234 日本在住

この記事の海外のコメント欄では、日本の結果を総じてポシティブに評価していただいていることが印象的でした。

まあ、正確を期すならば、死者数が少ない国は、日本だけではなく、台湾や韓国やタイなど、多くの東アジア諸国が該当するのですが、今回の記事のように、日本をターゲットにした記事が多いのは、単純に東アジアでは日本に派遣されている特派員記者が多いという事情もありそうです。

今回は、「欧米メディアがざわつき始めた日本の死者数の奇跡的な少なさ」と題して、興味深い米メディア記事を取り上げてみました。

このエントリーが読者のみなさんの参考になれば幸いです。



(木走まさみず)

定年延長という「世紀の悪手」から、コロナ下での検察庁法改正案ドタバタのダメダメぶり〜どうも首相の周辺にイエスマンしかおらず、正しくリスク管理をしアドバイスする側近がいない気がする

さて、安倍政権は、検察庁法改正案について今国会成立は見送りの方向で調整に入ったようです。

(関連記事)
検察庁法改正案、今国会成立は見送りも 政府内で浮上
https://www.asahi.com/articles/ASN5L3QZGN5LULFA00C.html?iref=comtop_8_01

改正案は現在63歳の検察官の定年(検事総長は65歳)を段階的に65歳に引き上げることと、役職定年の導入が主な柱で、役職定年に、検事総長次長検事検事長は内閣が、検事正は法相が必要と判断すれば最長3年とどまれる特例が盛り込まれております。

この点が、政権が都合の良い幹部だけをポストにとどめる恣意(しい)的な運用ができる余地があるとの、一部メディアや野党から批判がありました。

ツイッター上で俳優や歌手ら著名人からも「#検察庁法改正案に抗議します」という投稿が相次いだほか、元検事総長を含む検察OBからも反対する意見書が15日に法務省に出されていました。

これですね、安倍政権の答弁や、ネットでも政権支持の論客の論説は、首相官邸の介入が取り沙汰される黒川弘務・東京高検検事長の定年延長は既に決定事項であり、本改正案とは関係ないと繰り返し主張していました。

しかし、この主張は筋が悪すぎて国民の支持を得ることはできないでしょう。

そもそもです、先の黒川弘務・東京高検検事長の定年延長こそが、世紀の悪手なのであり、国民が大きくのけぞってしまったところに、このコロナ惨禍のもとでの、別段急ぐ必要のない、「世紀の悪手」を事後に正当化しようという検察庁法改正案です。

直近の世論調査によれば、改正案に「賛成」は15%にとどまり、「反対」が64%であり、内閣支持層でも「反対」が48%で、「賛成」の27%を上回っています。

(関連記事)
検察庁法改正「反対」64%内閣支持率33% 朝日調査
2020年5月17日 21時19分
https://www.asahi.com/articles/ASN5K66V9N5HUZPS003.html?iref=sp_new_news_list_n

おまけに 安倍内閣の支持率は33%で、4月調査の41%から8ポイント下落したそうですが、さにあらんです。

当ブログは憲法改正賛成派であり、安倍政権支持を明言しています。

ぜひとも安倍政権のもとで憲法改正案を発議していただきたいと願っています。

そのうえでですが、先の黒川弘務・東京高検検事長の定年延長という「世紀の悪手」から、今回のコロナ下での検察庁法改正案のドタバタ(強行しようとしたら与論の反発にあい見送り)のダメダメぶりまで、こんなレベルまで正しいリスク管理ができていないのは、とても残念なことです。

当ブログはひと月前に「首相の側近にはリスク管理ができる賢者はいないのか?」とエントリーいたしました。

嗚呼、マリーアントワネット的浮き世離れの所業の安倍首相〜首相の側近にはリスク管理ができる賢者はいないのか?
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/15/170152

星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」とともに首相がSNSに投稿した動画、これがネットで炎上、こうなると布マスク2枚配布も色が付いてしまうと指摘しました。

まず、星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」とともにSNSに投稿した動画、これはいけませんでした。

(中略)

なんというか、「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」というマリー・アントワネット状態であります。

こうなると布マスク2枚配布という施策も、間の抜けた香ばしさを漂わせるから不思議なものです。

(中略)

SNS投稿動画にせよ側近のアドバイスであることは間違いありません、布マスクと同様です。

首相の側近にはリスク管理ができる賢者はいないのか?

どうも首相の周辺にイエスマンしかおらず、正しくリスク管理をし首相にアドバイスする側近がいないような気がして、とても気掛かりです。



(木走まさみず)