木走日記

場末の時事評論

感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証3

過去3回の以下のエントリーの続きです。
(未読でお時間のある読者は是非御一読あれ。)

2020-04-14
なぜか理由はわからないが、東アジア諸国では感染者数の爆発が抑制されており、また人口あたりの死亡者も欧米ほど増えていない事実
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/14/160555

2020-04-28
感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証する
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/28/065338

2020-05-06
感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証2
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/05/06/162040

ロシアの「感染者爆発」により、ついにアメリカに次いで感染者数が世界2位となりました。

そして驚くべき数値として、ロシアが公式に発表した致死率はイタリアやスペイン、米国と比較して桁違いに低くとどまっていることです。ここを正確な最新のデータで検証いたしましょう。

なお以降、感染者数・死者数等の基礎的情報ソースは以下のサイトよりを参照いたします。

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan

外務省海外安全情報ホームページ
各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

感染者数上位15ヵ国と参考までに日本を加えた16ヶ国の感染者数と死者数等を図表にまとめましょう。

f:id:kibashiri:20200515122028p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

感染者数順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515122653p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

トップのアメリカが、139万人と、50万人分2回折り返しているところをご注意ください。

さてロシアです。

なぜロシアが注目されているかと言いますと、BCG接種国にもかかわらず「感染者爆発」を起こしているかなり特異な国だからです。

いわゆる「BCG仮説」です。

疫学的にBCG接種状況と死亡率の相関関係が指摘されています。日本では基本的に1951年以降生まれの人には接種されていますが、イタリアやアメリカはBCGの普遍的な接種プログラムがありません。またスペイン、フランス、ドイツなどはBCG接種が推奨されていません。

一方、中国、トルコ、ロシア(ここまでロシア株)、そして日本(日本株)はBCGが定期接種されております。
BCG株にはいくつかの亜種があるのですが、ヨーロッパでもちいられたのはデンマーク株であり、BCG株の種類による違いもあるようです(日本株とロシア株が有効?)。

話を戻します。

世界第二位の感染者数を数えるロシアなのですが、その死者数の少なさも特異です。

死者数順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515123641p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

感染者数は24万を超え世界2位にもかかわらず、その死者数はわずか2208名なのです。

ロシアの「致死率」が著しく低いのです。

致死率 = 死者数 × 100 ÷ 感染者総数 [単位:%]

致死率順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515125034p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

ご覧のように、ロシアの致死率0.91は、10.0を超えているヨーロッパ諸国に比較し桁違いに低いのです。

さて上記致死率のグラフを着目いただくと、BCG接種国の致死率が総じて低いことが見て取れます。

もうひとつ死者の割合を比較するのに『人口100万人あたりの死者数』という指標(人口の大小に依拠しない公正性をもつ)をみてみましょう。

『人口100万人あたりの死者数』高い順にグラフ化します。

f:id:kibashiri:20200515130119p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

この指標ではより明確にBCG接種国と非接種国が割れています。

ロシアが感染者爆発し世界第二位の感染者数を発生させながら、今のところ、致死率0.91という低さを維持しています。

まとめます。

BCGソ連株接種国とBCG日本株接種国はともに致死率が低く抑えられています。

特にBCG日本株は、日本(台湾、タイ、イラクなど)では、BCG接種を多くの人が受けていることで、ウイルスの増殖が抑えられ症状が出にくい、また感染者数そのものを抑制している可能性はあります。

一方BCGソ連株は、日本株より少し抑制効果が弱く、感染者数爆発を招いてしまったのかもしれません。

いずれにせよ、ロシアの今後の致死率の動向に注目です。

もしBCG接種国であるロシアによる感染爆発において、このまま致死率が抑えれれたとすれば、またひとつこの『BCG仮説』を裏付けるデータとなるかもしれません。



(木走まさみず)

「我々が世界になった」全能感全開の神がかった韓国大統領〜どうかあやしい全能感に日本を巻き込まないで欲しいと願うだけ

今回は「K防疫」を取り上げたいと思います。

お隣の国、韓国が「K防疫」でわいています。

次の中央日報記事の抜粋をまずはご一読あれ。

(前略)

◆「ノウハウ伝授してほしい」殺到

新型コロナウイルス感染症新型肺炎)事態を契機に韓国に対する各国の「ラブコール」が殺到している。先月30日と今月2日、国内地域社会の新規感染者数「0」を記録した韓国とは違い、世界は依然として新型コロナで苦しんでいる。2日基準で世界の感染者数は329万2000人、死亡者は23万7000人を超えた。拡大傾向はなかなか収まっていない。特に米国、欧州、日本など先進国が感染病の猛威にもろくも崩れた。

韓経:BBCも産経も「韓国見直した」…「K防疫」好評記事5000件余り(1)
https://japanese.joins.com/JArticle/265554?servcode=A00§code=A00

BBC(英国)も産経(日本)も世界中のメディアが「K防疫」をたたえているという記事の中の一文なのですが、「米国、欧州、日本など先進国が感染病の猛威にもろくも崩れた」中で、「国内地域社会の新規感染者数「0」を記録した韓国」に各国の「ラブコール」が殺到しているというのです。

記事の結びのほうで、大学教授が「韓国が新型コロナ防疫経験共有などを通して外交の地平を広げていくべきだ」と、世界一の「K防疫」で国興しにつなげよと提言しています。

(前略)

◆「外交地平広げる好機」

(前略)

専門家は韓国が新型コロナ防疫経験共有などを通して外交の地平を広げていくべきだと助言する。韓東大学国際地域学科のパク・ウォンゴン教授は「これからは安保分野に劣らず防疫でもグローバル協力の需要が多くなる」としながら「韓国の影響力を拡大していく絶好のチャンスをわれわれ自ら作り出した」と話した。

(後略)

韓経:BBCも産経も「韓国見直した」…「K防疫」好評記事5000件余り(2)
https://japanese.joins.com/JArticle/265554?servcode=A00§code=A00

新型コロナウイルス対策で国際的評価を得た韓国で、その「K防疫」でこれから世界をリードしていこうというのです、いや世界のために国際貢献いただけるのならば、これはけっこうなことであります。

しかしここからの展開が、いかにも韓国らしい「色」がついてくるのです。

まず、日本に対しては日本が頭を下げない限り韓国からは協力はしないと居丈高です。

(関連記事)
安倍首相・茂木外相「コロナで韓国と協力したい」…韓国外交部「要請ない」
https://japanese.joins.com/JArticle/265520

記事のコア部分を抜粋。

最近、国内外のメディアでは、韓国側が日本にマスクや遺伝子増幅(PCR)方式診断キット支援を検討しているという内容が報道された。しかしこの当局者は「国内の事情に余裕ができしだい、要請国(日本)の状況を勘案しながら防疫物品の輸出、人道的支援など海外搬出を積極的に検討していく」とし「日本政府に対する政府レベルの支援を打診したことはなく、要請を受けたこともない」と述べた。日本政府が要請してこない限り、先に支援はしないということでもある。

「日本政府が要請してこない限り、先に支援はしない」のが韓国政府のスタンスなのだそうですが、記事タイトルがなんとも日本政府が韓国政府に媚を売っているように誘導していて不快です、日本政府は韓国だけでなく広く世界と協力していきたいと述べているに過ぎません。

さて鼻息の荒い韓国政府なのです。

嫌な予感が的中します、大統領が「我々が標準になり、我々が世界になった」と、神がかった勝利宣言をのたまうのでした。

(関連記事)
文大統領「我々が標準になり、我々が世界になった」
文大統領就任3周年特別演説
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/05/11/2020051180003.html

上記朝鮮日報記事より、文在寅ムン・ジェイン)大統領発言部分を抜粋。

「我々の目標は世界をリードする大韓民国

「防疫で世界をリードする国になり、『K防疫』は世界の標準になった」

大韓民国の国家的地位と国民的自負心はこれまでにもまして高まった」

「国民の力で防疫戦線を強固に死守し、ウイルスとの戦争に勝ってきた」

「我々は既に我々の防疫と保健医療体系が世界最高水準であることを確認した」

「世界をリードする確実な『防疫1等国家』になる」

「『既に我々は先進国』と言い始めた」

「我々が追いかけたいと思っていた国々が我々に学び始めた」

「我々が標準になり、我々が世界になった」

「今や大韓民国の偉大さを語り始めた」

うーむ、世界で一番早い韓国大統領による「ウイルスとの戦争に勝利宣言」なのであります。

『K防疫』は世界の標準とか、世界をリードする確実な『防疫1等国家』とか、国民の力で防疫戦線を強固に死守とか、なにやら少し軍国主義的言い回しが鼻につくのですが、「我々が標準になり、我々が世界になった」という結論には、神がかった全能感が全開であります。

全能感は心理学用語で、「自分が何でもできる」という感覚を意味する語で、特に、子どもの発達段階において、しばしば見られる現象であります。

ときに自身の能力を過大評価してこの感覚を持つことによって、対人関係などに問題が生じる場合もあるので注意が必要です。

「我々が追いかけたいと思っていた国々が我々に学び始めた」

「我々が標準になり、我々が世界になった」

「今や大韓民国の偉大さを語り始めた」

神がかった全能感が全開です。

なんだかなあ、少しついていけないのです。

『K防疫』により「我々が標準になり、我々が世界になった」と新型コロナウイルスに対する勝利宣言をする韓国大統領なのであります。

読者のみなさん。

このお隣の国の国家的規模のあやしい全能感に、日本を巻き込まないで欲しいなあ、と願うのは私だけでしょうか。



(木走まさみず)

おそらく『第一波』はピークアウトしつつあるが、やがて到来する可能性がある本格的な『第二波』に備えるべき

5月10日の確認感染者数が日本全体で70人、東京都で22人と発表されました。

47都道府県の中で10日に感染者発生が確認されたのは、9都道府県に絞り込まれています。

図で確認します。

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※日本国内の感染者数(NHKまとめ)
https://blogos.com/article/418708/forum/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

明らかに関東(東京)圏、関西(大阪)圏、北海道などに、局所的に感染者発生が押さえ込まれていることがわかります。

日本のここまでの感染者の発生数推移を『七日移動平均』と合わせて確認いたします。

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※日本国内の感染者数(NHKまとめ)
https://blogos.com/article/418708/forum/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

『七日移動平均』で見ると4月15日に535.14人とピークを迎え、その後ほぼ一貫して減少傾向にあると、見てよいでしょう。

念のため東京都のここまでの感染者の発生数推移を『七日移動平均』と合わせて確認いたします。

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※都内の最新感染動向
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

『七日移動平均』で見ると4月14日に160.43人とピークを迎え、その後ほぼ一貫して減少傾向にあると、見てよいでしょう。

統計学的には、日本・東京都ともに、発生感染者数は4月中旬(14、15日あたり)に一旦ピークを迎え、その後20日以上減少傾向が継続している、つまりピークアウトしつつあると、言えるかと思われます。

この動きをとらえて、西村経済再生大臣が会見を行い、13の特定警戒都道府県以外の34県について「緊急事態宣言の解除も視野に入ってきている」とする考えを明かしました。

(関連記事)
西村経済再生相、特定警戒以外の34県について「解除も視野に」
https://news.livedoor.com/article/detail/18238847/

会見で「ここから人数が増える可能性もある」という認識も示した西村大臣は、「14日頃の時点でしっかりと評価をしていただきたい」と話すと、13の特定警戒都道府県については「これまでどおりの取組をお願いしている。皆様の努力でせっかくここまで新規感染者の数が減ってきている。なんとか5月中に収束させたい。その間の事業、雇用、生活をしっかりとお守りする方針で臨んでいきたい」と続けています。

「ここから人数が増える可能性もある」と第二、第三の波の発生可能性にふれながらですが、民意を鼓舞するためでしょう、「5月中に収束させたい」とおっしゃる西村大臣なのです。

まず短期的なモノサシでは、ここで油断すると感染者数が再度増えてしまう可能性が大いにありますので、警戒は怠れないでしょう。

そのような動向があれば、再度手綱(たづな)を締めて一部店舗の営業再自粛など必要な策を講じ、あるだろう二波、三波の波を徹底的に封じ込めていかなければならないでしょう。

「5月中に収束」(西村大臣)とは何をもって「収束」とするかでも議論があるとは思いますが、現実的に考えて、短期的なモノサシでも少なくとも半年間は、警戒は怠れないでしょう。

同時に私たちは、中長期のモノサシを持つ必要があります、多くの科学者たちが指摘するように、これだけ世界中に広まった新型コロナウイルスとの戦いはおそらく長い時間を要することになるからです。

一部の学者が危惧しているように、現在のパンデミックが大きな意味で『第一波』なのであり、新型コロナウイルスの本格的な『第二波』は、この冬(11月、12月?)以降から世界中を席巻する可能性があるという見方があります。

100年前のパンデミックスペイン風邪』の事例から、『第一波』と『第二波』の詳細を検証しておきましょう。

東京都健康安全研究センター』がスペイン風邪の精密分析を、以下のサイトで公開しています。

日本におけるスペインかぜの精密分析(インフルエンザ スペイン風邪 スパニッシュ・インフルエンザ 流行性感冒 分析 日本):(東京都健康安全研究センター
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/

とても詳しく分析している優れたレポートです。

1918年から1920年の3年間で、『スペイン風邪』は2回の波で日本に襲来しています。

グラフで確認いたします。

f:id:kibashiri:20200511102124p:plain
東京都健康安全研究センター
スペインかぜによる死亡者数の月別推移(実数)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/sflu-trend/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

ご確認できますように、第一波1918年10月頃に日本に到来、翌月には44333人という死者数を記録しています。

そして、第一波到来から1年2ヶ月後の1919年12月頃に到来、翌月には39562人の死者数を記録しています。

ここで細かく数字を抑えるため表でまとめます。

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東京都健康安全研究センター
スペインかぜによる死亡者数の月別推移(実数)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/sflu-trend/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成

実は第一波(8ヶ月で101790人死亡)よりも第二波(7ヶ月で109621人死亡)のほうが、犠牲者が短期に集中していることがわかります。

『日本におけるスペインかぜの精密分析』によれば、これは「原因ウイルスが変異し,その結果として死亡率が大幅に増加した」、つまり第二波においては致死率が高い変異が発生していたというのです。

 第2回目の対患者死亡率が第1回目のそれと比して大幅に大きくなっている点について,「流行性感冒」6)では「患者數ハ前流行ニ比シ約其ノ十分ノ一ニ過キサルモ其病性ハ遙ニ猛烈ニシテ患者ニ對スル死亡率非常ニ高ク三、四月ノ如キハ一〇%以上ニ上リ全流行ヲ通シテ平均五・二九%ニシテ前回ノ約四倍半ニ當レリ」や「流行ノ當初ニ於テハ患者多發スルモ死亡率少ク即チ概シテ病性良ナルモ、流行ノ週末ニ近ツキ又ハ次回ノ流行ニ於テハ患者數少キモ死亡率著シク多ク、之ヲ箇々ノ患者ニ關シ観察スルモ肺炎等ノ危険ナル合併症ハ後期ニ於テ之ヲ來スモノ多キカ如シ」との分析がされている.2004/2005年におけるインフルエンザの流行において,流行の初期と晩期とでは原因ウイルスが微妙に異なっていた.このように,流行時期によりウイルスが変異することが往々にして観測される.スペインかぜ流行の際にも原因ウイルスが変異し,その結果として死亡率が大幅に増加したものと考えることができる.

日本におけるスペインかぜの精密分析(インフルエンザ スペイン風邪 スパニッシュ・インフルエンザ 流行性感冒 分析 日本):(東京都健康安全研究センター) より抜粋
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/

もちろん、新型コロナウイルスはインフルエンザではありませんし、医学も移動手段もそして情報量も現代とは大きく異なる100年前の事例です、あくまでも参考までにご紹介したまでです。

ただ、今回の新型コロナウイルスとも、人類は長期的に関わるしかないのであって、おそらくその勝利条件は、今のインフルエンザと同様、新型コロナウイルスと「共生」していくことになるのだと思います。

繰り返します。

一部の学者が危惧しているように、現在のパンデミックが大きな意味で『第一波』なのであり、新型コロナウイルスの本格的な『第二波』は、この冬(11月、12月?)以降から世界中を席巻する可能性があるという見方があります。

この最悪のシナリオに備えて、医療的には、冬までに検査体制の不備を整えたり、防御備品や医療装置の国内供給体制の確立など、可能な準備をするべきです。

社会的には、全国的なオンライン授業環境の整備、マイナンバーカードと銀行口座のリンクを進め行政サービスのスピード対応・オンライン化を推進するなど、今回浮き彫りになった日本社会の問題と取り組むべきでしょう。

例え『第二波』が日本に到来しなかったとしても、これらの改善や準備は、決して無駄にはなりませんでしょう、今後も新たなウィルスによるパンデミックはいつ起こってもおかしくはないからです。

この危機を、よりよい日本社会に改善するよい機会だと前向きに考えるべきなのだと思います。



(木走まさみず)

世界主要国の新型コロナウイルスの感染状況を、世界全体を俯瞰するような地政学的視点から分析してみる

さて、今回は世界各国の新型コロナウイルスの感染状況を、世界全体を俯瞰するような視点から分析してまいりましょう。

新型コロナウイルスパンデミックでは、欧米では感染者が10万以上に爆発し死者数も万を超えている国が多数発生しているのに対し、東アジアなどでは感染者爆発も10万以内に全ての国が抑えられており、死者数も万を超える国はひとつも現出していないのです。

理由はよく分かりませんが、地政学的に国によってかなり偏向した数値が現れていることは事実です、この点を整理してみたいと思います。

世界200ヶ国のすべての数値を拾うことはほぼ不可能な(かつ、統計的にあまり意味はない)ので、主要30ヵ国に絞って分析いたします。

なお、以降の図表に使用するデータは以下の3つのサイトのデータを情報ソースとしております。

世界の人口 国別ランキング・推移(国連)
https://www.globalnote.jp/post-1555.html
データとグラフで見る「新型コロナウイルス」(世界版)|日テレ ...
https://www.news24.jp/archives/corona_map/index.html
人口あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【国別】
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/index.html?rg=Africa

主要の30国ですが、推計人口上位30ヵ国に絞ることにいたしましょう。

表にまとめます。

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※国連人口部の推計人口統計「World Population Prospects, 2019 Revision」ベース。
※上記サイトを情報ソースにして、『木走日記』作成

直近のデータでは、日本の人口はメキシコに抜かれて11位なのですね。

ちなみにこの30ヶ国で人口の総和は59億7984.3万人になり、世界総人口77億1346.8万人に占める割合は77.5%となります。

さて地政学的に整理するために、この30ヶ国を5つの地域に、整理することにいたします。

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※『木走日記』作成

このグループ分けは、私が一部恣意的に行いましたことをご留意ください。

まずメキシコですが、地政学的には北米なのですが、北米・ヨーロッパではなく、人種構成的に中南米諸国に入れています。

同様にエジプトは、地政学的にはアフリカなのですが、宗教的・文化的繋がりから、中近東・南アジア諸国に入れています。

また、アジアは大きく東アジア諸国と、南アジア諸国に分けましたが、タイ以東7ヶ国を東アジアとし、ミャンマー以西の、バングラディッシュ、インド、パキスタン4ヵ国は、中近東3ヵ国とまとめて一つのグループとしました。

あらためて上位30ヵ国を地域を色付けしてまとめてみます。

f:id:kibashiri:20200509125013p:plain
※上記サイトを情報ソースにして、『木走日記』作成

前準備の地政学的なグループ分けは終わりましたので、ここで世界各国の新型コロナウイルスの感染状況をまとめていきます。

この30ヵ国の表に、最新の『感染者数』と、感染者数を人口で割った『人口100万人あたりの感染者数』を付け足します。

f:id:kibashiri:20200509094146p:plain
※上記サイトを情報ソースにして、『木走日記』作成

3行目の米国をご覧ください、人口3億2900万3位の米国ですが、感染者数は唯一100万を超えて124万9614人を数えています、結果『人口100万人あたりの感染者数』も3797人を数えます。

ここで各国の感染者の密度の傾向を分析します、『人口100万人あたりの感染者数』高い順に表を並び替えてみます。

f:id:kibashiri:20200509124905p:plain
※上記サイトを情報ソースにして、『木走日記』作成

視覚的によりわかるようにグラフで示します。

f:id:kibashiri:20200509132605p:plain
※上記サイトを情報ソースにして、『木走日記』作成

各地域グループで非常にわかりやすい傾向が表出しています。

まず緑色の『北米・ヨーロッパ』グループですが、7ヵ国全てが感染者数10万人を超えており『人口100万人あたりの感染者数』も4桁を記録しています。

他地域から突出している数値がしめされています。

次に青色の『中近東・南アジア』グループですが、7行目(7位)のトルコから、28位のミャンマーまで順位が散逸しています(その理由は後で考察いたします)。

次に黄色の『中南米』グループ、赤色の『東アジア』グループ、紫色の『アフリカ』グループと、感染者の密度が減少していく傾向がはっきり見て取れます。

紫色の『アフリカ』グループの中で南アフリカが突出していますが、人種構成で白人の比率が高く、従って『北米・ヨーロッパ』グループとの人の移動が他国より活発であったことが推測できます。

また南アフリカ以外のアフリカ諸国の感染者数が少ないのは、医療体制が脆弱で単に検査数が少ないだけで実態はこれから明らかになっていく可能性が高いと思われます。

最後に順位が散逸してしまった『中近東・南アジア』グループですが、これは私のグループ分け自体に問題があったと考えます。

地理的にも人種的にもヨーロッパに近いトルコ(7位)・イラン(8位)と、タイの隣国であるアジアのミャンマー(28位)を同一グループにくくることに無理があったのかも知れません。

さて、理由はよく分かりませんが、地政学的に国によってかなり偏向した数値が現れていることは事実です、この点を今回は俯瞰的に整理してみました。

本エントリーが、読者の皆様の少しでも参考になれば幸いです。



(木走まさみず)

日本で感染者発生が二極化していることを検証〜北海道、関東、関西の3ブロックで、94%が集中

さて、5月6日までの発表によれば、東京の感染者発生数は38人、日本全体では105人となっています。

断定的なことは言えませんが、明らかに日別の感染者数は、東京、日本全体共に減少傾向にあると言えそうです。

今回は47都道府県の直近(5月6日 )の発生者数の状況について分析したいと思います。

都道府県別のデータはNHKのサイトが大変よくまとまっています。

NHK新型コロナウイルス」特設サイト
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/

さっそく、このサイトのデータを情報ソースとして、5月6日の都道府県別発生者数を表にまとめます。

f:id:kibashiri:20200507171253p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

少し驚きましたが、発生者数の有無で47都道府県がきれいに二極化しています。

ご覧いただいて一目瞭然ですが、47都道府県の感染者発生数は13都道府県に集中しており、残りの34県は5月6日の発生者数がゼロを記録しています。

さらにこの13都道府県の地理的ポジションを分析すると、局所的に発生していることがわかります。

都道府県別発生者数をマッピングしてみましょう。

f:id:kibashiri:20200507171312p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

これは各地域で顕著な傾向があらわれています。

北海道ブロックは23人と第二波が収まっていません。

東北ブロックは6県で、関東に隣接する福島県の一人だけです。

関東ブロックは1都6県で、東京38、埼玉9、神奈川7、千葉2、群馬1の57人におよびます。

中部地方ブロックは9県で、石川3,長野1の4人です。

関西地方ブロックは2府5県で、大阪12、京都3、兵庫3の18人です。

中国・四国ブロックは9県で0人です。

最後に九州ブロックは7県で1人となります。

グラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200507171332p:plain
※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

北海道、関東、関西の3ブロックで、94%が集中していることがみてとれます。

感染者の新たな発生で明らかに二極化が見られる日本列島なのであります。

このマップで確認できることは、関東(東京)、関西(大阪)、北海道の発生がいまだ収まらない3地域と他地域との、不要不急の移動(双方向)を極力抑えることが重要なことだとわかります。

断定的なことは言えませんが、明らかに日別の感染者数は、東京、日本全体共に減少傾向にあると言えそうです。

今少しの私たちの辛抱が、非常事態宣言の終了を早めることになるかもしれません。

本エントリーが、読者の皆様の少しでも参考になれば幸いです。



(木走まさみず)

感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証2

過去2回の以下のエントリーの続きです。
(未読でお時間のある読者は是非御一読あれ。)

2020-04-14
なぜか理由はわからないが、東アジア諸国では感染者数の爆発が抑制されており、また人口あたりの死亡者も欧米ほど増えていない事実
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/14/160555

2020-04-28
感染者増加率トップで致死率最低のロシアの特異性について検証する
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2020/04/28/065338

さてロシアの「感染者爆発」が止まりません、ロシア政府は、1日で1万633人増 累計が13万人を超えたことを3日発表しました。

今や1日当たりの新規感染者数が世界で最も多い国となっています。

(関連記事)
ロシアの新型コロナ感染者、24時間で1万633人増 累計13万人超え
2020年5月4日 8:49 発信地:モスクワ/ロシア [ ロシア ロシア・CIS
https://www.afpbb.com/articles/-/3281555

このAFP記事で着目いただきたいのは記事の結び部分です。

 ロシアが公式に発表した致死率はイタリアやスペイン、米国と比較して低くとどまっている。過去24時間の死者数は58人で、これまでの死者の総数は1280人となった。

「ロシアが公式に発表した致死率はイタリアやスペイン、米国と比較して低くとどまっている」、ここを正確な最新のデータで検証いたしましょう。

なお以降、感染者数・死者数等の基礎的情報ソースは以下のサイトよりを参照いたします。

人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】
札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan

外務省海外安全情報ホームページ
各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況
https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/country_count.html

感染者数上位13ヵ国と参考までに日本を加えた14ヶ国の感染者数と死者数を図表にまとめましょう。

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※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

さて6位にランクされているロシアに注目いただくと、感染者数145072人に対して死者数は1354人であり、日本を除き上位13ヵ国で飛び抜けて死者数が少ないことが確認できます。

感染者数の中でどのくらいの割合が死に至るかを『致死率』といいます。

『致死率』は次式で求まります。

致死率 = 死者数 × 100 ÷ 感染者数 (%)

致死率も含めた表にまとめましょう。

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※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

疫学的にBCG接種状況と死亡率の相関関係が指摘されています。日本では基本的に1951年以降生まれの人には接種されていますが、イタリアやアメリカはBCGの普遍的な接種プログラムがありません。またスペイン、フランス、ドイツなどはBCG接種が推奨されていません。

一方、中国、トルコ、ロシア(ここまでロシア株)、そして日本(日本株)はBCGが定期接種されております。
BCG株にはいくつかの亜種があるのですが、ヨーロッパでもちいられたのはデンマーク株であり、BCG株の種類による違いもあるようです(日本株とロシア株が有効?)。

これは仮説なのですが、もし新型コロナウイルス感染の予防効果があるとすると、そのメカニズムはどのようなものでしょう。一般的にBCGの効果は10数年だと言われており、小児以外では効果がなく感染拡大を防ぐことはできないように思われます。しかし、オランダのグループの研究ではBCG接種によりエピジェネティックに免疫状態を変化させ、長期的にウイルス感染を抑制する可能性があるようです。実際にオランダやオーストラリアなどで医療従事者に対してBCG接種を行って新型コロナウイルス感染を予防する研究が始まったようです。

致死率を比較した最新データをグラフにしてみます。

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※上記サイトのデータを情報ソースに『木走日記』作成

日本ではBCG接種を多くの人が受けていることで、ウイルスの増殖が抑えられ症状が出にくい、また感染させにくい状態になっている可能性はあります。

もしBCG接種国であるロシアによる感染爆発において、このまま致死率が抑えれれたとすれば、またひとつこの『仮説』を裏付けるデータとなるかもしれません。



(木走まさみず)

日本(東京含む)の確認感染者数は4月12日前後で一旦ピークアウトと判断

東京都で2日、新たに160人の新型コロナウイルスへの感染が確認されました。

4月29日と30日は50人を下回っていましたが、1日は165人と大幅に増加しており、2日続けて150人を超えました。これで、都内の感染者数は4500人に迫っています。

東京都の感染者の推移をあらためてグラフで確認しましょう。

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※『木走日記』データ集計・作成

せっかく目に見えて減少してきたのに、ここ2日の165人、160人との高い値でがっかりしてしまった読者の方も多いことでしょう。

以前から指摘されていることですが、東京の感染者数の集計は一週間のうち金曜日がピークとなり、そして日曜日、月曜日にボトム(底)になる傾向にあるようです。

おそらく発表数値が、金曜日に集計手段が集中しているなど曜日に依存しているためリアルタイム性に欠けているのでしょう。

けっして褒められたことではないのですが、感染者数の集計業務に東京の医療現場では高い優先順位を付ける余裕はないということなのでしょうか。

いずれにせよ、このように乱高下の激しい数値の動きから、統計的な傾向を見出すための便利な『移動平均』という計算手法を使うことにいたしましょう。

移動平均とは、時系列データにおいて、ある一定区間ごとの平均値を区間をずらしながら求めたものです。

移動平均を用いてグラフを作成すると、長期的な傾向を表す滑らかな曲線が得られます。

例えば5日移動平均の計算方法は極めて単純、次式で求まります。

5日移動平均 = 直近5日間の値の平均値

東京都の感染者の推移をあらためて『5日移動平均』をグラフに重ねて確認しましょう。

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※『木走日記』データ集計・作成

ご確認いただけるように、『5日移動平均』の動きを見れば、4月12日174.6人という値のピークから、4月30日63.2人まで減少が続き、ここ2日で106.0人まで反発していることがわかります。

『5日移動平均』の動きを見る限り、東京都の感染者数は、大きくは減少傾向にあるという判断で問題ないでしょう。

ここで、日本全体の感染者数の動向を俯瞰するために、『5日移動平均』をグラフに重ねて確認してみましょう。

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※『木走日記』データ集計・作成

ご確認いただけるように、『5日移動平均』の動きを見れば、4月12日567.8人という値のピークから、5月2日252.8人まで半減以下の減少が続いているのがわかります。

着目いただきたいのは『5日移動平均』の動きで、東京都のピーク4月12日174.6人と、日本全体のピーク4月12日567.8人が、同じ日であることです。

ここに数学的に必然性はまったくないのですが、日本の中で最も母数のウエイトの高い地区東京がピーク値を記録すれば当然その値は日本全体に波及するということであります。

今、検証したように、東京および日本総体としては、統計的には明らかにピークアウトを迎えたと判断してよろしいかと考えます。

もちろん、第二波の発生懸念もありましょう、ここで油断していいことを意味してはいません。

疫学的には引き続き油断禁物なのでしょう。

しかし数学的事実としては、感染者数は、4月12日付近で頂点に達し、当面それ以上は上がらない状態であり、以降減少傾向に転じていることは統計的には明白だと判断しています。

ここ2日の東京都の感染者数の増加で落胆している読者の皆様に、本エントリーが少しでも励ましになればさいわいです。



(木走まさみず)