欧米メディアがざわつき始めた日本の死者数の奇跡的な少なさ
さて、自国内の新型コロナウイルス感染爆発の対応で手一杯であった欧米諸国ですが、ここに来て感染者数、死亡者数ともに発生件数がようやく減少傾向を見せてきています。
第二波を警戒しつつロックダウン(都市封鎖)緩和に一斉に舵を切り始めています。
(関連記事)
欧州各国でロックダウン緩和へ 死者数の減少受け
https://www.bbc.com/japanese/52702252
さて少し余裕ができたため、という訳でもないのでしょうが、ここにきて欧米のメディアで、自国だけでなく世界各国の動向を取り上げる記事が増えています。
で、日本の感染者数と死者数が桁違いに少ないのはなんなんだ?と、ざわつき始めているのです。
日本の感染状況の特異性が取り上げられる頻度が高まっています。
G7各国の感染状況を数値で押さえておきましょう。
表でまとめます。
※札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan
※上記サイトなどのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
感染者数、死者数、100万人あたりの感染者数、100万人あたりの死者数、すべての数値で日本が最小であることがわかります。
特に注目いただきたいのは、4番目の列の『100万人あたりの死者数』であります、日本は文字通り桁違いに少ないことが見て取れます。
日本の特異性が象徴的にあらわれています、グラフで確認します。
※札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/death.html?kw=japan
※上記サイトなどのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
日本の『人口100万人あたりの死者数』6.03人ですが、イタリア529.38人や英国512.57人に比べると80分の1以下であり、ヨーロッパの中で死者数を低く抑えている優等生であるドイツ95.57人と比べても、15分の1以下と、「桁違い」に少ないわけです。
この特異な日本の数値に対して、欧米メディアがざわついているのです、わけがわからんと。
一例を取り上げましょう。
米外交誌フォーリン・ポリシー(電子版)は14日、日本の新型コロナウイルス感染対策はことごとく見当違いに見えるが、結果的には世界で最も死亡率を低く抑えた国の一つであり「(対応は)奇妙にもうまくいっているようだ」と伝えています。
Japan’s Halfhearted Coronavirus Measures Are Working Anyway
とにかく日本の中途半端なコロナウイルス対策が機能している
https://foreignpolicy.com/2020/05/14/japan-coronavirus-pandemic-lockdown-testing/
記事は、日本は中国からの観光客が多く、ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保も中途半端だと指摘。感染防止に有効とされるウイルス検査率も国際社会と比べ低いが「死者数が奇跡的に少ない」と評します。
記事は「結果は敬服すべきものだ」とする一方、「単に幸運だったのか、政策が良かったのかは分からない」と述べます、また、数的に証明はできないが、日本人の衛生意識の高さや握手をしない習慣などが死者数の低さにつながっているとの見方を示します。
この記事は非常に丁寧に取材されており、例えば、検査数が少なかったのは日本の医療体制が整っていなかったことを日本の医師会も認めていることや、感染女性が東京から長野県に帰省し、感染を知りつつ犬が心配でバスで東京に戻ってしまったエピソードまで、詳細に報じています。
欧米のような強制的な都市封鎖ではなくあくまでも「要請」なのに従順に従う日本人の国民性などにもふれています。
一方的な日本賛辞でもなく、単純な日本批判でもなく、この記事が持つ冷静なその視点は好感を持てます。
記事の結びの一文が印象的です。
As everywhere, the big question will be whether Japan can safely take its foot off the brake without creating a new crisis—but perhaps also why it didn’t have one in the first place.
いずこも同じだが、大きな問題は、日本が新たな危機を発生させることなく安全にブレーキを外していくことができるかどうかである、たぶんそもそも危機が(日本には、はなから)なかったのかもしれないのだが。
理由は分からないけれども、何万人も死者を出す欧米のような「危機(クライシス)」は日本には発生しなかった、そもそも日本では危機はなかったかも知れないと結ばれているのです。
この興味深い記事に海外からたくさんのコメントが付けられています。
下記サイトがコメントを邦訳されています。
海外「日本に住んでて良かった」 米誌『日本のコロナ対策の成功は奇妙で奇跡的』
http://kaigainohannoublog.blog55.fc2.com/blog-entry-3452.html
失礼して支持の多かったコメントをいくつか抜粋してご紹介。
■ ニューヨーカーだから本当に興味深く見てる。
だってトウキョウの人口密度はNYと変わらないし、
移動は僕らと同じように公共交通機関に依存してる。
そして高齢者の数もトウキョウの方が多い。
それなのに亡くなった人の数が大きく違うんだ。
マスク、他人への配慮、ルールを守る。この3つが鍵なのかな?
日本は全面的なロックダウンさえしていない。 +24 アメリカ■ 日本人はお辞儀で挨拶して、大声で話さず、
マスクをして、清潔で、周囲にちゃんと配慮する。
日本が上手くいってる理由は1つではないよ。 +27 国籍不明■ 何でメディアはマスクの効果を認めたくないんだろう。
俺にとってはそれがミステリーだ。 +21 アメリカ■ ホントそれ。
みんな日本政府の要請が成功の全てだと考えてるけど、
実際には元からマスクをする文化とか、
そういう要素が大きな影響を与えたと思う。 +8 アメリカ■ 日本は元々文化的に社会的距離があったしマスクもしてた。
確かに日本は検査の数は少ないけど、
死亡者数は昨年と同じくらいだったようだよ。
全ての人が、出来ることをやっていこう。
そしてガイドラインに従おう。
不平を言ったりパニックを起こす必要はない。 +25 インド■ 国民がお互いに思いやり、ガイダンスに従う。
そういった姿勢がどんなポジティブなことを起こすのか。
それを日本が示してくれた事は本当に素晴らしい。 +25 国籍不明■ だって食事がまず優れてるもん。欧米とは全然違う。
それに国が国民の健康をちゃんと気遣ってるし。
アメリカの食べ物に何が入ってるのかなんて、
たぶん誰も知らないんじゃないかな。 +31 アメリカ■ 確かに日本のやり方は中途半端って言われても仕方ないけど、
シンジュクとかの繁華街は7割以上も人出が減少して、
ほとんどのバーやレストランが休業に入った。
しかも現行法や憲法に抵触しないよう、
強制力をかけずにそれを達成したんだ。いずれにしても日本は目標を達成した、
あるいは比較的その域に達する事ができた。
完璧とは言い難いけど、注目に値するよ。 +234 日本在住
この記事の海外のコメント欄では、日本の結果を総じてポシティブに評価していただいていることが印象的でした。
まあ、正確を期すならば、死者数が少ない国は、日本だけではなく、台湾や韓国やタイなど、多くの東アジア諸国が該当するのですが、今回の記事のように、日本をターゲットにした記事が多いのは、単純に東アジアでは日本に派遣されている特派員記者が多いという事情もありそうです。
今回は、「欧米メディアがざわつき始めた日本の死者数の奇跡的な少なさ」と題して、興味深い米メディア記事を取り上げてみました。
このエントリーが読者のみなさんの参考になれば幸いです。
(木走まさみず)