木走日記

場末の時事評論

高齢者への接種は危険というイメージが独り歩きしてしまうことを心配する〜高齢者対象のワクチン摂取が開始すれば必ず一定の割合で摂取死亡者が発生する当たり前の事実

日本で真っ先に接種が始まるのは、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したワクチンですが、1月中旬に、世界の医療関係者が注目した報道がありました。

ノルウェーで両社のワクチンを接種した約4万2千人のうち33人が、発熱や吐き気などの副反応を示し、接種後数日以内に亡くなったと報じられました。

大半は80歳以上の高齢者でした。

ファイザー株式会社の広報担当者は、メディアの取材に対し、次のような見解を示しています。

(亡くなった方の)ご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にお見舞いを申し上げます。

ノルウェー当局は老人ホームの入居者等に対するワクチンの接種を優先していますが、その多くは非常に高齢で基礎疾患を有しており、中には終末期の方もいます。

ノルウェー医薬品局は、医学的にリスクの高い人に対する本剤の接種と死亡の関連性は完全には否定できないものの、ワクチン接種との直接的な因果関係を示すエビデンスは得られていないと表明しています。

北欧でワクチン接種後に高齢者死亡…ファイザー社の見解は より抜粋
1/29(金) 11:12配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/a43c9a24429b20174b85edf260c9db6915d97772

一方、ドイツの予防接種常設委員会(STIKO)はアストラ製ワクチンについて、接種対象年齢を18歳から64歳に限定して使用を認めるよう勧告しました。

ドイツ政府のワクチン評価作業を担う同委員会は、アストラのワクチンは他のワクチンと同様に機能するようだとしつつ、65歳以上の高齢者に対する有効性の情報が十分ではないと判断しました。

(関連記事)
ドイツ、アストラゼネカ製ワクチンの推奨対象から高齢者を除外
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-01-28/QNNAJMDWLU6S01

・・・

ノルウェーで80歳以上の高齢者を中心に33人が、発熱や吐き気などの副反応を示し、ワクチン接種後数日以内に亡くなりました。

ノルウェーは日本と同じように高齢者が多い国ですし、その状況は今後も注視すべきだと思います。

またドイツ政府の「アストラゼネカ製ワクチンの対象から65歳以上の高齢者を除外」判断は、「高齢者に対する有効性の情報が十分ではない」との理由に基づくものです。

このふたつの記事を目にして、私は近い将来日本において誤解に基づくワクチン批判報道が跋扈することを恐れています。

高齢者への“ワクチン接種は危険なのではないか”というイメージだけが独り歩きしてしまうことを心配しています。

ファイザーや米国のモデルナが開発したのは“mRNAワクチン”という種類のものです。ファイザーのワクチンは有効性が95%、モデルナは約94%と、非常に優秀です。

さて日本におけるワクチン接種は2月下旬から医療関係者、4月1日以降高齢者と予定されていますが、高齢者のワクチンが始まると、科学的根拠のないマスコミの無責任な批判が巻き起こることを危惧しています。

何故ならワクチンを摂取した高齢者が、摂取後日を置かずにノルウェーのように大量に死亡することが予想されるからです。

日本における高齢者死亡者数を最新のデータから確認しておきます。

厚労省の『令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況』では、いくつかの統計表がPDFファイルとして公開しています。

資料の『図4 死亡数及び死亡率(人口千対)の年次推移』によれば、日本の2019年の死亡数は138万1098人であります。

図4 死亡数及び死亡率(人口千対)の年次推移
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https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/kekka.pdf

その75%以上が75歳以上の高齢者が占めており、『表6-1 年齢(5歳階級)別にみた死亡数・死亡率(人口 10 万対) 』で確認すれば、以下です。

表6-1 年齢(5歳階級)別にみた死亡数・死亡率(人口 10 万対)
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https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/kekka.pdf

2019年には日本の死亡数138万1098人の76.5%105万6367人が75才以上の高齢者が占めております。

年間105万6367人の高齢者が死亡している我が国では、統計上、一日当たり2894.2人の高齢者が亡くなられており、一週間では2万0259.4人が、ひと月では8万8030.6人の高齢者が亡くなられるわけです。

以上の統計上の事実から、4月から高齢者対象のワクチン摂取が開始すれば、摂取後すぐに一定の割合でワクチン接種した高齢者から一定数の死亡者が発生するはずです。

これらの死亡数は、ノルウェー政府が分析しているように、その大半がそもそもワクチンを打とうが打つまいが余命を迎えた高齢者なのであります。

75歳以上の高齢者が毎週2万人死亡している日本で、高齢者対象のワクチン接種が4月から始まります。

その際、高齢者への“ワクチン接種は危険なのではないか”というイメージだけが独り歩きしてしまうことを心配しています。



(木走まさみず)