おそらく『第一波』はピークアウトしつつあるが、やがて到来する可能性がある本格的な『第二波』に備えるべき
5月10日の確認感染者数が日本全体で70人、東京都で22人と発表されました。
47都道府県の中で10日に感染者発生が確認されたのは、9都道府県に絞り込まれています。
図で確認します。
※日本国内の感染者数(NHKまとめ)
https://blogos.com/article/418708/forum/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
明らかに関東(東京)圏、関西(大阪)圏、北海道などに、局所的に感染者発生が押さえ込まれていることがわかります。
日本のここまでの感染者の発生数推移を『七日移動平均』と合わせて確認いたします。
※日本国内の感染者数(NHKまとめ)
https://blogos.com/article/418708/forum/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
『七日移動平均』で見ると4月15日に535.14人とピークを迎え、その後ほぼ一貫して減少傾向にあると、見てよいでしょう。
念のため東京都のここまでの感染者の発生数推移を『七日移動平均』と合わせて確認いたします。
※都内の最新感染動向
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
『七日移動平均』で見ると4月14日に160.43人とピークを迎え、その後ほぼ一貫して減少傾向にあると、見てよいでしょう。
統計学的には、日本・東京都ともに、発生感染者数は4月中旬(14、15日あたり)に一旦ピークを迎え、その後20日以上減少傾向が継続している、つまりピークアウトしつつあると、言えるかと思われます。
この動きをとらえて、西村経済再生大臣が会見を行い、13の特定警戒都道府県以外の34県について「緊急事態宣言の解除も視野に入ってきている」とする考えを明かしました。
(関連記事)
西村経済再生相、特定警戒以外の34県について「解除も視野に」
https://news.livedoor.com/article/detail/18238847/
会見で「ここから人数が増える可能性もある」という認識も示した西村大臣は、「14日頃の時点でしっかりと評価をしていただきたい」と話すと、13の特定警戒都道府県については「これまでどおりの取組をお願いしている。皆様の努力でせっかくここまで新規感染者の数が減ってきている。なんとか5月中に収束させたい。その間の事業、雇用、生活をしっかりとお守りする方針で臨んでいきたい」と続けています。
「ここから人数が増える可能性もある」と第二、第三の波の発生可能性にふれながらですが、民意を鼓舞するためでしょう、「5月中に収束させたい」とおっしゃる西村大臣なのです。
まず短期的なモノサシでは、ここで油断すると感染者数が再度増えてしまう可能性が大いにありますので、警戒は怠れないでしょう。
そのような動向があれば、再度手綱(たづな)を締めて一部店舗の営業再自粛など必要な策を講じ、あるだろう二波、三波の波を徹底的に封じ込めていかなければならないでしょう。
「5月中に収束」(西村大臣)とは何をもって「収束」とするかでも議論があるとは思いますが、現実的に考えて、短期的なモノサシでも少なくとも半年間は、警戒は怠れないでしょう。
同時に私たちは、中長期のモノサシを持つ必要があります、多くの科学者たちが指摘するように、これだけ世界中に広まった新型コロナウイルスとの戦いはおそらく長い時間を要することになるからです。
一部の学者が危惧しているように、現在のパンデミックが大きな意味で『第一波』なのであり、新型コロナウイルスの本格的な『第二波』は、この冬(11月、12月?)以降から世界中を席巻する可能性があるという見方があります。
100年前のパンデミック『スペイン風邪』の事例から、『第一波』と『第二波』の詳細を検証しておきましょう。
『東京都健康安全研究センター』がスペイン風邪の精密分析を、以下のサイトで公開しています。
日本におけるスペインかぜの精密分析(インフルエンザ スペイン風邪 スパニッシュ・インフルエンザ 流行性感冒 分析 日本):(東京都健康安全研究センター)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/
とても詳しく分析している優れたレポートです。
1918年から1920年の3年間で、『スペイン風邪』は2回の波で日本に襲来しています。
グラフで確認いたします。
※東京都健康安全研究センター
スペインかぜによる死亡者数の月別推移(実数)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/sflu-trend/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
ご確認できますように、第一波1918年10月頃に日本に到来、翌月には44333人という死者数を記録しています。
そして、第一波到来から1年2ヶ月後の1919年12月頃に到来、翌月には39562人の死者数を記録しています。
ここで細かく数字を抑えるため表でまとめます。
※東京都健康安全研究センター
スペインかぜによる死亡者数の月別推移(実数)
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/sflu-trend/
※上記サイトのデータを情報ソースとして『木走日記』作成
実は第一波(8ヶ月で101790人死亡)よりも第二波(7ヶ月で109621人死亡)のほうが、犠牲者が短期に集中していることがわかります。
『日本におけるスペインかぜの精密分析』によれば、これは「原因ウイルスが変異し,その結果として死亡率が大幅に増加した」、つまり第二波においては致死率が高い変異が発生していたというのです。
第2回目の対患者死亡率が第1回目のそれと比して大幅に大きくなっている点について,「流行性感冒」6)では「患者數ハ前流行ニ比シ約其ノ十分ノ一ニ過キサルモ其病性ハ遙ニ猛烈ニシテ患者ニ對スル死亡率非常ニ高ク三、四月ノ如キハ一〇%以上ニ上リ全流行ヲ通シテ平均五・二九%ニシテ前回ノ約四倍半ニ當レリ」や「流行ノ當初ニ於テハ患者多發スルモ死亡率少ク即チ概シテ病性良ナルモ、流行ノ週末ニ近ツキ又ハ次回ノ流行ニ於テハ患者數少キモ死亡率著シク多ク、之ヲ箇々ノ患者ニ關シ観察スルモ肺炎等ノ危険ナル合併症ハ後期ニ於テ之ヲ來スモノ多キカ如シ」との分析がされている.2004/2005年におけるインフルエンザの流行において,流行の初期と晩期とでは原因ウイルスが微妙に異なっていた.このように,流行時期によりウイルスが変異することが往々にして観測される.スペインかぜ流行の際にも原因ウイルスが変異し,その結果として死亡率が大幅に増加したものと考えることができる.
日本におけるスペインかぜの精密分析(インフルエンザ スペイン風邪 スパニッシュ・インフルエンザ 流行性感冒 分析 日本):(東京都健康安全研究センター) より抜粋
http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/
もちろん、新型コロナウイルスはインフルエンザではありませんし、医学も移動手段もそして情報量も現代とは大きく異なる100年前の事例です、あくまでも参考までにご紹介したまでです。
ただ、今回の新型コロナウイルスとも、人類は長期的に関わるしかないのであって、おそらくその勝利条件は、今のインフルエンザと同様、新型コロナウイルスと「共生」していくことになるのだと思います。
繰り返します。
一部の学者が危惧しているように、現在のパンデミックが大きな意味で『第一波』なのであり、新型コロナウイルスの本格的な『第二波』は、この冬(11月、12月?)以降から世界中を席巻する可能性があるという見方があります。
この最悪のシナリオに備えて、医療的には、冬までに検査体制の不備を整えたり、防御備品や医療装置の国内供給体制の確立など、可能な準備をするべきです。
社会的には、全国的なオンライン授業環境の整備、マイナンバーカードと銀行口座のリンクを進め行政サービスのスピード対応・オンライン化を推進するなど、今回浮き彫りになった日本社会の問題と取り組むべきでしょう。
例え『第二波』が日本に到来しなかったとしても、これらの改善や準備は、決して無駄にはなりませんでしょう、今後も新たなウィルスによるパンデミックはいつ起こってもおかしくはないからです。
この危機を、よりよい日本社会に改善するよい機会だと前向きに考えるべきなのだと思います。
(木走まさみず)