木走日記

場末の時事評論

新型コロナウイルスのPCR検査を今後日本は増やすべき

■指数関数的増加と倍加時間

最近、新型コロナウイルスの「感染者爆発」という言葉に関連して「指数関数的」や「倍加時間」といった専門的な言葉が報道で使われています。

まずは「指数関数的」増加と「倍加時間」について、わかりやすく説明いたします。

細菌の増殖を例に説明します。

細菌の増殖は速く、まな板を洗い流しても洗い方が悪いと数時間後にはその数は元に戻ってしまいます。

いったん細菌が培地に適応すると、数的な増加が指数関数的(exponential)に起こります。

理想条件下では1個のバクテリアでは7時間で 2,097,152個まで増殖することができます。

最初1個の細菌は20分で分裂して2個に増殖します。

この個数が倍増する時間(20分)を倍加時間と呼びます。

したがってバクテリアでは1時間(60分)に2×2×2=8個に増殖します。

f:id:kibashiri:20200409111637p:plain]
※『木走日記』作成

つまり数学的にはバクテリアは一時間に2の3乗倍増殖しますので、7時間では2の21乗倍(2,097,152個)にまで爆発的に増加するわけです。

グラフにすると以下のとおり。

f:id:kibashiri:20200409115019p:plain
※『木走日記』作成

したがって、ある現象が「指数関数的」に増加しているとすれば、その「倍加時間」を求めれば、今後の時間経過ともに増加する変化を予測することができるはずです。

ちなみに個数が倍になる時間は「倍加時間」ですが、逆に個数が指数関数的に減衰して半分に減少する時間半減期と呼びます。



■日本国内の感染者数の「倍加時間」を推定する

さて日本国内の感染者数が「指数関数的」な感染者爆発を招くのか、推定いたします。

NHKの速報では直近の8日、全国で503人の感染者が確認されています。

新たな感染確認 初の1日で500人超え 新型コロナウイルス
2020年4月8日 22時53分

各地の自治体や厚生労働省などによりますと、8日、これまでに全国で503人の感染が確認され、1日に確認された感染者の数が初めて500人を超えました。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200408/k10012376481000.html

これで感染者の累計は4603人となりました。

グラフで確認します。

f:id:kibashiri:20200409120728p:plain
※『木走日記』作成

ここで国内感染者数のこのグラフの「倍加時間」を求めてみましょう。
①500〜1000人の倍加時間、②1000〜2000人の倍加時間、③2000〜4000人の倍加時間
をグラフで求めます。

f:id:kibashiri:20200409122852p:plain
※『木走日記』作成

国内感染者数の倍加時間は、①、②、では11日間でしたが、直近③では6日間と早まっていることが分かります。



新型コロナウイルスのPCR検査を今後日本は増やすべき

日本国内のPCR検査数が国際比較で極端に少ない段階で、国内感染者数のグラフを統計学的に分析するのは意味がないのではというご指摘もいただいております。

その指摘は数学的にはまったくもって正しいと思います。

上記で検証した倍加時間の変動(11日から6日に早まる)は、日本国内のPCR検査数が微増してきたことと無縁ではないでしょう。

日本国内のPCR検査数が増えれば増えるほど当然ながら感染者数も増えていくことでしょう。

さにありながら、社会学的には今表出している感染者数をもとにその総数を推定していくことは医療リソースがパンクしてしまう「医療崩壊」を回避するためにも意味はあるのでしょう。

さて、欧米などから日本のPCR検査数の少なさが批判を受けますが、彼らの批判をまともに受ける必要はありません。

どんなに件数を増やしたとしても、国民の全数検査を実現した国などありませんし、今後も不可能です。

つまりどこの国もPCR検査による感染者数はある精度の範囲で実数より必ず少ないので指標には成り得ません。

より正確に比較する指標は死者数でありましょう。

日本は現在102人ほどですが、アメリカでは13000人を超えています、

BBCによれば、日本が感染者数503人と過去最大を記録した同じ日(現地7日)に、一日だけで死者数が1800人を超えてしまっています。

米国の新型ウイルス死者、1日で1800人超 最大を更新
https://www.bbc.com/japanese/52213050

ただ今後ですが日本国内でPCR検査は強化していく必要があると考えます。

現在は軽い症状ではPCR検査はされていません(医療リソースを守るために必要な側面はありました)が、体制ができれば、本来軽い症状の人にもPCR検査を実施すべきでしょう。

また希望者にもできうる限りPCR検査を実施すべきなのです。

なぜなら、すでにいくつか発生例が出ていますが、無自覚な感染者が病院で無自覚に医療関係者に感染を広めてしまうケースは、貴重な医療リソースにピンポイントでダメージを与える脅威であります、これは自覚のない「テロ」行為と言えましょう。

今後、このような院内感染を避けるためにも、いわゆるサイレントキャリア(無症状感染者)の数的動向の把握も必要になってきます。

もちろんPCR検査を増やせばそうなれば間違いなく日本国内の感染者数は急速に増加しおそらく倍加時間ももっと短くなるのは必至でありましょう。

しかしPCR検査総数が増えればより正確な統計的分析も可能になることでしょう。

感染者数の増加ペースのアップを恐る必要はありません、繰り返しになりますが、感染者数の増大よりも、死者数の増大を抑えることこそが最も優先すべき事項であります。

日本は現状、欧米よりもはるかにうまくやっていると評価できましょう。

その事実のもとにですが、新型コロナウイルスのPCR検査を日本は今後増やすべきと考えます。



(木走まさみず)