木走日記

場末の時事評論

社会的距離感(ソーシャル・ディスタンシング)と大相撲

今回は社会的距離感(ソーシャル・ディスタンシング)と大相撲について取り上げたいのです。

最近、テレビの報道番組などで生放送の画面が変わりました。

出演者同士の間隔が以前よりも広がっているのです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、「もし自分が無症状感染者だったら」と考え、周囲の人たちに感染させず、お互いを守るために、「社会的距離2メートルをとりましょう」という取り組みです。

報道番組は、自分たちも社会的距離(2メートル)を実践することで、「3密(密閉・密集・密接)を避けてください」と視聴者に注意を促します。

アメリ疾病対策センター(CDC)は、この社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)を「集団での集まりを避け、できるだけ人との距離(6フィート・およそ1.8メートル)を保つ」と定義しています。

海外のスーパーマーケットなどの行列を紹介した映像を見ると、人々が一定の距離を保って並んでいます。これが、感染予防のための社会的距離感なわけですね。

少し話がとびますが、岩手県鳥取県です。

4月10日現在、東京都で1500人を超える感染者数が累計で発生確認されているのに対し、47都道府県で岩手県鳥取県の2県がいまなお感染者数ゼロを維持しています。

この2県に共通するのは、そもそも他県に比較し「人」の密度が少なく、結果的に、社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)をキープしやすいことです。

鳥取県の人口は都道府県の中で最も少ない555,663人であり、岩手県の人口密度は北海道以外の46都府県の中で最も少ない80.29人/平方キロメートルなのであります。

2県とも大都市圏から離れており、県境を超えて出入りする人数の絶対数も少ないだろうことも幸いしているのかもしれませんね。

結局、新型コロナウイルスのキャリア(運び屋)は人間なのであり、さらにいえば人間と人間との関わりにより、キャリアからキャリアへとウイルスは伝播・拡散していくわけですから、そこを遮断できればウイルスの拡散は止まるわけです。

ウィルスのキャリア(運び屋)である人間を動かさない(stay home)、なおかつキャリアの距離を社会的距離(ソーシャル・ディスタンシング)に保つ、こういうことなんですね、理にはかなっています。

話を戻します。

さて、恐れていたことが起こってしまいました。

日本相撲協会は10日、力士1人の新型コロナウイルス感染を確認したと発表いたしました。

(関連記事)
力士1人が新型コロナ感染 大相撲初 夏場所開催可否に影響も
毎日新聞2020年4月10日 12時29分(最終更新 4月10日 12時29分)
https://mainichi.jp/articles/20200410/k00/00m/050/161000c

これで5月に開催を2週間延期して24日初日の予定だった大相撲夏場所の開催の可否は極めて厳しい判断が求められることになりそうです。

数日前のことですが、テレビのスポーツコーナーで大相撲のある部屋の朝稽古の様子が流れていました。

大きくない部屋の中で大勢の裸の男たちがぶつかり稽古をしているその様子を見て、私は不遜にも「大相撲の稽古って3密(密閉・密集・密接)そのものだなあ」「社会的距離感などすっとんでるな」と感じたのでありました。

私の目には、朝げいこがキャリア(運び屋)同士の濃厚接触に見えてしまったのです。

もちろんこれは力士たちに何の罪もない訳で、見ている私たちのほうが新型コロナウイルス惨禍のせいで、余計な「物差し」を身に付けてしまったからでしょう。

世の中が「3密」とか「社会的距離感」とかに執着する限り、相撲に限らずでしょうが、格闘技系のスポーツの興行は厳しい時代を迎えてしまったようです。



(木走まさみず)