木走日記

場末の時事評論

韓国司法で日本企業資産売却命令申請、ついに韓国は「ルビコン川」を渡った〜日本政府は速やかに対抗策を検討・準備し、実行すべき

元号令和で迎えた初日5月1日に、韓国から異常なニュースが飛び込んできました。

韓国の元徴用工や元朝鮮女子勤労挺身隊員らが日本企業に損害賠償を求めた訴訟で、原告側の代理人弁護士は1日、既に差し押さえた日本製鉄(旧新日鉄住金)と不二越の韓国内の資産売却命令を出すよう裁判所に申請いたしました。

一連の訴訟で資産売却命令申請は初めてです。

原告側が1日に売却命令を出すよう裁判所に申請した内容を確認しておきます。

日本製鉄の場合は、韓国鉄鋼大手ポスコとの合弁会社「PNR」の株式19万4千株を売却し、9億7千万ウォン(約9300万円)の現金化をはかるとしています。

不二越については上告審の判決が出ていませんが、裁判所は同社が韓国企業と合弁で設立した「大成・NACHI油圧工業」の株式7万6千株の仮差し押さえを3月に決定しています。売却で7億6千万ウォン(約7300万円)の現金化を想定しています。

三菱重工業に関しても、4月24日付で韓国資産の開示請求手続きを取りました。すでに商標権と特許権を差し押さえていますが、他にも差し押さえ可能な資産がないか調べる目的です。裁判所が資産の提示を命じ、それに応じない場合は韓国内での金融取引に制約が生じ得るといいます。

(関連記事)

日本企業2社の資産売却申請 元徴用工訴訟で原告側
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44389110R00C19A5I00000/

なお、裁判所の決定と企業への売却命令書の送達には、一定の時間が必要とみられ、原告側は「実際の売却までには3カ月以上かかる」との見方を示しています。

ついに国際条約(日韓基本条約)を破り、日本企業の固有資産が韓国司法により一方的に没収され現金化される異常事態となりました。

この異常事態に韓国政府は「韓国民の権利行使の手続きという観点から、政府が介入することではない」(康京和(カン・ギョンファ)外相)と静観の構えです。

(関連記事)

「政府は介入できない」 日本企業の資産売却申請に韓国外相
2019.5.2 15:00国際朝鮮半島

 【ソウル=名村隆寛】韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は2日、いわゆる徴用工訴訟の原告側が、差し押さえた日本企業の資産売却命令を裁判所に申請したことに対し、「韓国民の権利行使の手続きという観点から、政府が介入することではないと思う」と述べ、韓国政府が司法判断に介入できないとの見解を改めて示した。

 韓国メディアを対象とした記者会見で語ったもので、康氏は「被害者(元徴用工ら)が納得できる方策が重要だ」とし、李洛淵(イ・ナギョン)首相を中心に韓国政府が進めている対応策については「状況を引き続き分析、検討している。対外的に政府が発表できる時期ではない」と述べた。

 康氏は会見の冒頭で、「天皇の即位で新たな時代を迎えた日本とは歴史を直視する中で、未来志向の関係発展を持続的に推進していく」とも語った。

https://www.sankei.com/world/news/190502/wor1905020016-n1.html

とんでもない発言です。

韓国政府は、韓国では1965年から両国で守られてきた日韓基本条約国際法)よりも韓国内の判決(国内法)が優先されると言っているわけです。

国際法では国家間の合意順守が原則であり、条約は3権(司法、立法、行政)を超越して国家を拘束します。

『条約法に関するウィーン条約』にも第二十七条(国内法と条約の遵守)に「条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない」と明記されています。

第三部 条約の遵守、適用及び解釈
第一節 条約の遵守

第二十六条(「合意は守られなければならない」) 効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。

第二十七条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。

https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/vclot.htm

国内法で条約を否定されていたら、国家間の外交は成り立ちません。

したがって徴用工判決は明確な「国際法違反」なのであります。

この事実は一部韓国メディアも気づいています。

(関連記事)

反日の代償」は高い
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/05/2018120580029.html

たとえば朝鮮日報上記記事では、「外交条約にまで口出しできる司法権を持つ裁判所は、経済協力開発機構OECD)加盟国にはほかにない」と極めて「大韓民国の裁判所らしい」と判決の異常性を記しています。

国家間の約束を破り、国際法違反の状態をつくっている責任は全て韓国側にあります。

1965年に結ばれた協定の内容を確認しておきます。

「日韓請求権並びに経済協力協定」の内容を抜粋すると次の通りであります。

第一条で対韓国経済援助の金額と方法が具体的に明記されています。

第一条 日本国が大韓民国に経済協力(無償供与及び低利貸付け)する
日本国は、大韓民国に対し、(a)現在において千八十億円(108,000,000,000円)に換算される三億合衆国ドル(300,000,000ドル)に等しい円の価値を有する日本国の生産物及び日本人の役務を、この協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて無償で供与するものとする。各年における生産物及び役務の供与は、現在において百八億円(10,800,000,000円)に換算される三千万合衆国ドル(30,000,000ドル)に等しい円の額を限度とし、各年における供与がこの額に達しなかつたときは、その残額は、次年以降の供与額に加算されるものとする。ただし、各年の供与の限度額は、両締約国政府の合意により増額されることができる。(b)現在において七百二十億円(72,000,000,000円)に換算される二億合衆国ドル(200,000,000ドル)に等しい円の額に達するまでの長期低利の貸付けで、大韓民国政府が要請し、かつ、3の規定に基づいて締結される取極に従つて決定される事業の実施に必要な日本国の生産物及び日本人の役務の大韓民国による調達に充てられるものをこの協定の効力発生の日から十年の期間にわたつて行なうものとする。(以下省略)
データベース「世界と日本」(代表:田中明彦) より
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html

第二条では、これにおいて「両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める」と明記されています。

第二条 両国は請求権問題の完全かつ最終的な解決を認める
両締約国は、両締約国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。(以下省略)
データベース「世界と日本」(代表:田中明彦) より
http://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/JPKR/19650622.T9J.html

この第二条は極めて重要です。

これにより韓国人徴用工などへの補償は韓国政府が行うことになったのです。

これは2005年にも当時の盧武鉉ノ・ムヒョン)政権が、日本が当時支払った無償3億ドルの経済協力に請求権問題を解決する資金が含まれている、徴用工問題は韓国政府が担当すべきである、との見解を示しています。

現在の文大統領は当時の側近だったことを忘れてはいけません。

この第二条により国家対国家としては「その国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題」がすべて「完全かつ最終的に解決された」わけです。

これの意味するところは、「個人の実体的請求権の完全消滅」ではなくて、請求権の行為の対象が日本政府から韓国政府に移行した、ということであります。

これにより韓国人徴用工などへの補償は韓国政府が行うことになったのです。

わかりやすく図示するとこうです。


※作成:当ブログ

繰り返しますが、この考えは日本政府だけでなく歴代韓国政府も共有してきたものなのです。

しかるに、韓国政府は個人補償よりも自国の経済成長を優先します。

この協定による日本からの資金で韓国は「奇跡」といわれるほどの戦後の経済発展を果たしたのです。

ここで徴用工の個人補償を韓国政府ではなく日本企業に求める韓国の判決は、二重取りといえましょう。

まとめます。

日本政府はかねて韓国側に「あらゆる選択肢を検討している」と通告してきました。

日本政府はさらに「企業に不利益が及ぶことになれば、何らかの対抗措置を取らざるを得ない」との認識を示しています。

ときはきました。

もはやここまでです。

韓国は本件で最後まで国際法よりも国内法を優先し、ついに日本企業の資産の現金化申請というトリガー(ひきがね)を引いてしまったのです、韓国は二度と戻れない「川」を渡ってしまいました。

韓国のこの出鱈目な認識を改めさせるには、報復的施策しかありません。

日本政府は速やかに対抗策を検討・準備し、実行すべきです。



(木走まさみず)