木走日記

場末の時事評論

韓国が国際法のルールを守り約束を守る普通の国になるならば、安倍首相は喜んで首脳会談開催に同意することでしょう

さて安倍首相が読売テレビ日本テレビ系列)の報道番組「ウェークアップ!ぷらす」(22日(土)8:00~9:25)に出演いたしました。

ウェークアップ!ぷらす 安倍首相生出演 G20・年金・政局すべて聞く[字]
http://www.ntv.co.jp/program/detail/21879225.html

読売新聞記事によれば、番組で首相はG20首脳会議を「開催する責任を持っている」と語り、政治空白をつくることは望ましくないと「衆参同日選」を改めて否定しました。

(関連記事)

首相、同日選改めて否定「G20首脳会議に責任」
2019/06/22 19:02

 安倍首相は22日の読売テレビの番組で、夏の参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」について、「冷静な判断をしなければならない。私の頭の片隅にもない」と述べ、改めて否定した。

 首相は「自民党の若い衆院議員には、ぜひやってほしいという声は多い」と指摘する一方、28~29日に大阪で開かれる主要20か国・地域(G20)首脳会議を「開催する責任を持っている」と語り、政治空白をつくることは望ましくないとの認識を示した。

 G20首脳会議に合わせた韓国の文在寅ムンジェイン大統領との会談に関しては、「議長国なので大変日程が詰まっている」と見送る可能性を示唆した。

https://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/20190622-OYT1T50247/

さて、記事の結びで安倍首相はG20首脳会議に合わせた韓国の文在寅ムンジェイン大統領との会談に関しては、「議長国なので大変日程が詰まっている」と見送る可能性を示唆したとあります。

番組司会の辛坊治郎氏と安倍首相のやりとりでは、韓国に対してかなり「きつめ」のやりとりがありましたが、読売記事は関心がないのか割愛してしまっています。

番組の発言を「安倍氏、韓国に砲門」と報道している韓国中央日報記事から、安倍発言の詳細をおさえておきましょう。

(前略)

司会者「総理も韓国の提案は絶対に受け入れられないという立場ですよね」

安倍氏「請求権協定というのは日本と韓国の間の国際的な約束であり条約だ。韓国は国際的約束に反するような対応をしている。(日本企業に賠償を命じる)判決が韓国から出たが、国際法上ありえない判決だと考える。そのような意味で、韓国は国際法に見合う対応をしなければいけない。日本は毅然と対応していく」

司会者「今の日韓関係をこのまま引っ張っていくことはできないと思うが、どう打開するお考えか」

安倍氏「先に韓国側がしっかりと判断しなければならない。徴用問題についても、また慰安婦合意についても、日本は誠実に国際法に従い、両国の約束に基づいて対応してきた。今度は韓国が確実にそうした対応をする番だと思う」

安倍氏は28~29日に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)時の韓日首脳会談の可能性については「現時点で何も決まっていない」と述べた。

続いて「日本は議長国なので、大変、日程が詰まっている」とし「時間が制限される中で総合的に判断したい」と述べた。

(後略)

安倍氏、韓国に砲門「これからは韓国が国際法と約束を守る番」 より
https://japanese.joins.com/article/743/254743.html?servcode=A00§code=A10

「これからは韓国が国際法と約束を守る番」(安倍首相)、この発言を「安倍氏、韓国に砲門」と過激なタイトルで煽る中央日報なのであります。

記事の終わりには匿名の元外交部当局者の「韓国政府が日本国内の雰囲気を読めず、あらずもがなの対策を発表して状況をますます複雑にしている」との韓国政府批判の発言を載せています。

匿名を求めた元外交部高位当局者は「日本は『日本企業の賠償』を明示した昨年の強制徴用賠償判決が、1965年の韓日請求権協定を否定する判決であるため受け入れられないという立場を何度も表明した」とし「韓国政府が日本国内の雰囲気を読めず、あらずもがなの対策を発表して状況をますます複雑にしている」と指摘した。

続いて大学教授の「G20首脳会談を最終的に拒否すれば、日本も『小国外交』という批判を避けられないだろう」という日本政府批判の意見で結ばれています。

反面、国民大学日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授は「時期的には遅れたが、韓国政府がひとまず返事を出したということに意味がある」とし「G20首脳会談を最終的に拒否すれば、日本も『小国外交』という批判を避けられないだろう」と話した。

うむ、日本の『小国外交』ですか。

さて朝鮮日報も「韓日首脳会談の開催が事実上、失敗に終わった」と報じています。

(関連記事)

G20大阪:安倍首相「日程詰まっている」韓国政府「我々も…」
開幕四日前も神経戦続く…首脳会談、事実上なし?
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/06/24/2019062480004.html

韓国政府関係者は「我々もG20サミット期間中、二国間首脳会談の日程がほぼいっぱいになっている。会談をしたいという国が多い」と日本に対抗します。

 これと関連して韓国政府関係者は「我々もG20サミット期間中、二国間首脳会談の日程がほぼいっぱいになっている。会談をしたいという国が多い」と語った。ある元外交官は「日本が韓国の神経を逆なでしたのは事実だが、ああいう対応の仕方は残念だ。第3者から見たら幼稚な意地の張り合いだろう」と言った。韓国大統領府は今回のG20サミット期間中に中国・ロシア・カナダ・インドネシアという4カ国との首脳会談日程を行うと先日発表した。大統領府は先週までは韓日首脳会談について「引き続き門戸を開いている」と言っていたが、安倍首相が今回、公に「日程」にまで言及した以上、韓日首脳会談は事実上、失敗に終わったものと解釈される。

ここでも「日本が韓国の神経を逆なでしたのは事実だが、ああいう対応の仕方は残念だ。第3者から見たら幼稚な意地の張り合いだろう」(韓国元外交官)、「第3者から見たら幼稚な意地の張り合い」と指摘しています。

まとめます。

国民大学日本学科の李元徳(イ・ウォンドク)教授の発言から。

「時期的には遅れたが、韓国政府がひとまず返事を出したということに意味がある」

「G20首脳会談を最終的に拒否すれば、日本も『小国外交』という批判を避けられないだろう」

教授の言う韓国政府の返事とは、日本政府が瞬殺拒否した韓国政府提案の二重の国際法違反を含んでいるデタラメな「日本・韓国企業の出資を財源に徴用の慰謝料」とする提案であります。

関連エントリー

2019-06-20
この期に及んで「日本・韓国企業の出資を財源に徴用の慰謝料」だと?~日本政府が瞬殺拒否した韓国政府提案の二重の国際法違反のデタラメさ
https://kibashiri.hatenablog.com/entry/2019/06/20/110230

開いた口が塞がらないとはこのことです。

韓国政府は昨年末の大法院(最高裁判所)賠償判決後、首相の主宰により汎政府タスクフォース(TF=作業部会)を設置しましたが、7カ月以上たっても何の対策も打ち出せずに傍観してきました。

現政権は、日本との折衷案を見いだした前政権の対日外交を「積弊(長年の弊害)第1位」と罵倒(ばとう)しているだけに、強制徴用問題でも現実的な代案を見いだすのは難しかったのでしょう。

専門家らが今年初め、「両国企業の拠出金」案を出した時、韓国大統領府は「非常識な発想」だとして無視していたのです。

それを今になって韓国政府は主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)前に、否定していた「拠出金」案にたなびいたというわけです。

韓国政府は日本が受け入れないことを分かっていながら、批判や責任を避けようと提案したのは明白です。

もちろん日本政府は1時間で「国際法違反の是正にならない」とこの韓国政府提案を拒否いたします。

当然です。

日韓両国は請求権協定で戦後賠償に関する問題が「完全かつ最終的に解決されたこと」を確認してます。日本企業に賠償を命じた昨年10月以降の韓国最高裁の判決自体が協定に違反しているのです。

その判決を前提とした韓国側の提案は「二重に国際法違反」(外務省関係者)というのが日本政府の考えです。

そんなデタラメな提案をもとに、「G20首脳会談を最終的に拒否すれば、日本も『小国外交』という批判を避けられないだろう」(李元徳(イ・ウォンドク)教授)と決めつけられては困ります。

次に韓国元外交官のこの発言。

「日本が韓国の神経を逆なでしたのは事実だが、ああいう対応の仕方は残念だ。第3者から見たら幼稚な意地の張り合いだろう」(韓国元外交官)

「第3者から見たら幼稚な意地の張り合い」とありますが、日本政府と韓国政府を同列に並べて「幼稚な意地の張り合い」と表現していますが、これも事実と異なります。

日本はいままで韓国からの意味のある回答をずっと待ってきたのです。

日本政府としては日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を粛々と韓国に求めておりましたが、韓国政府からは一切返事がなかったのでした。

しかたなく19日、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に向け3人の委員全員の指名を第三国に委ねる協定上の次の手続きに移行することを韓国政府に通告しました。

韓国政府が協定上の義務を果たしていないのは明白なのです。

日韓請求権協定に基づき、中央日報記事タイトルを借りれば「これからは韓国が国際法と約束を守る番」(安倍首相)なのです。

韓国が国際法のルールを守り約束を守る普通の国になるならば、安倍首相は喜んで首脳会談開催に同意することでしょう。

「小国外交」(李元徳(イ・ウォンドク)教授)、「幼稚な意地の張り合い」(韓国元外交官)との韓国国内の現状認識、日本批判はこれにあたりません。

日本外交の門戸はいつでも開かれています。



(木走まさみず)