木走日記

場末の時事評論

男系男子維持を主張する孤高の保守メディア「産経」〜このパターン(読売・日経が日和見して産経孤立)の場合、政府も世論に日和見することが多い

今回は皇位の安定的な継承について、メディアの主張を取り上げたいです。

男系男子を維持し続けるのか、女系や女性天皇を認めるのか、意見がきれいに別れていて興味深いのです。

主要5紙の社説では、朝日、読売、毎日、日経の4紙が女性・女系容認派です。

各紙社説の当該部分を列挙します。

朝日社説。

 ■先送りできない課題

 代替わりを受け、いよいよ検討が迫られるのが、皇室活動をどう維持し、皇位を引き継いでいくかという年来の課題だ。

 30代以下の皇族は7人しかおらず、うち6人が女性だ。結婚すると皇籍を離れる決まりのため、野田内閣は7年前に「女性宮家」構想を打ち出したが、直後の政権交代で登場した安倍内閣は検討を棚上げした。

 さらに深刻なのは皇位継承者の先細りだ。今のままでは、秋篠宮家の長男悠仁さまが伴侶選びを含めて、皇室の存続を一身に背負わされることになる。その重圧はあまりに大きい。

 男系男子だけで皇位をつないでいくことの難しさは、かねて指摘されてきた。しかし、その堅持を唱える右派を支持基盤とする首相は、この問題についても議論することを避けている。日ごろ皇室の繁栄を口にしながら、実際の行動はその逆をゆくと言わざるを得ない。

 国会は退位特例法の付帯決議で、政府に対し、法施行後、この問題について速やかに検討を行い、報告するよう求めた。

 新天皇即位でお祝い気分が社会を覆う。その陰で、天皇制は重大な岐路に立たされている。

(社説)即位の日に 等身大で探る明日の皇室 より
https://www.asahi.com/articles/DA3S13998717.html?iref=editorial_backnumber

読売社説。

天皇皇嗣への支えを

 陛下は今年2月、「時代時代で新しい風が吹くように、皇室の在り方も変わってくる」と発言された。今後も新たな皇室像の模索が続くことになろう。

 宮内庁は、陛下、秋篠宮さまと十分に意思疎通を図り、必要なサポートをしなければならない。

 代替わりにより、皇位継承権を持つ男性皇族は3人に減り、戦後最少になった。陛下の叔父の常陸宮さまは83歳、秋篠宮家の長男悠仁さまは12歳である。

 今後、結婚により、女性皇族の皇籍離脱が予想され、公務の担い手が減るのは避けられない。

 安定的な皇位継承と皇室の維持を実現する上で、女性宮家の創設などを検討していくべきだ。

天皇の即位 時代の幕開けを共に祝いたい より
https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190501-OYT1T50328/

毎日社説。

「女性・女系」論が焦点

 59歳の新陛下が高齢になれば、53歳の秋篠宮さまも高齢になっており、即位をめぐり、議論になる可能性もある。次の世代の悠仁さまがいずれ皇位を継承するとしても、男系男子で皇統を継ぐことへの重圧は計り知れない。

 皇位継承をめぐって最も重要な論点は「女性・女系天皇」を認めるかどうかだ。菅義偉官房長官はいったん、即位から間を置かずに皇位継承の議論を始める考えを示したが、その後、即位関連の儀式が終わる11月以降にすると軌道修正している。問題の重要性を考えれば、速やかに議論を始めるべきだ。

 すでに2005年11月、小泉政権下で有識者会議が女性・女系天皇を認める報告書をまとめている。だが、秋篠宮紀子さまの第3子懐妊を機に皇室典範の改正は見送られ、次の第1次安倍政権は議論そのものを棚上げにした。

 右派の人は男系男子でなければ天皇制の性格が根本から変わると主張する。しかし、男女のどちらを優先するかなどの問題ではなく、天皇制そのものの危機である。

 皇室の公務を担う皇族全体としても先細りしている。女性皇族は結婚すれば皇室を離れる。結婚後も皇族として残り、公務を続けられるように、女性宮家を創設することも検討する必要がある。

 イデオロギーの対立を超えて、建設的な議論を進めるのは政治の責任である。

天皇陛下が即位 令和の象徴像に期待する より
https://mainichi.jp/articles/20190502/ddm/005/070/033000c

日経社説。

女性・女系含め議論を

さかのぼれば、2005年、当時の小泉純一郎首相のもと、若い男性皇族が不足し、皇位の継承に支障が出るおそれがあるとして法律家や学者らからなる有識者会議が開かれている。

会議は10カ月にわたる議論を経て「女性・女系天皇」の容認などを柱とした報告書をまとめた。小泉首相皇室典範の改正に前向きだったが、秋篠宮紀子さまの第3子懐妊を機に、国会への提出が見送られた経緯がある。

2年前に成立した退位特例法の付帯決議でも「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について、天皇陛下の即位後、速やかに検討し国会に報告するよう政府に求めた。

小泉首相時代の報告書も踏まえ、政府は一刻も早く新たな有識者会議を開くなどして議論を前へ進めるとともに、国民各層から幅広く意見を聴くべきだろう。

新しい「令和」の時代、国の内外ともに課題は山積しており、象徴としての天皇陛下の務めや皇族方の活動への期待もますます大きく、かつ多様になるだろう。

長い歴史と伝統を尊重しつつも、社会の変化に柔軟に対応する皇室の姿を多くの国民は待ち望んでいるのではなかろうか。

[社説]社会の多様性によりそう皇室に より
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44369560Q9A430C1SHF000/

ポイントを簡単にまとめればこんな感じ。

(朝日社説)野田内閣は7年前に「女性宮家」構想を打ち出したが、直後の政権交代で登場した安倍内閣は検討を棚上げした。
(読売社説)安定的な皇位継承と皇室の維持を実現する上で、女性宮家の創設などを検討していくべきだ。
(毎日社説)右派の人は男系男子でなければ天皇制の性格が根本から変わると主張する。しかし、男女のどちらを優先するかなどの問題ではなく、天皇制そのものの危機である。
(日経社説)長い歴史と伝統を尊重しつつも、社会の変化に柔軟に対応する皇室の姿を多くの国民は待ち望んでいるのではなかろうか。

さて、産経新聞社説は強く男系維持を主張しています。

【産経社説】天皇陛下ご即位 新時代のご決意支えたい 伝統踏まえ安定継承の確立を
https://www.sankei.com/column/news/190502/clm1905020002-n1.html

産経社説の当該部分を丁寧に見ておきましょう。

まず「次の世代の男性皇族は、秋篠宮殿下のご長男の悠仁さまお一方」と「皇位の安定的な継承」対する危機感をあらわにします。

 まず、皇位の安定的な継承を確かなものとしなければならない。天皇陛下と、皇嗣(こうし)となられた秋篠宮殿下の次の世代の男性皇族は、秋篠宮殿下のご長男の悠仁さまお一方である。

「古代から現代まで、一度の例外もなく貫かれてきた大原則は男系による継承」なのであり、「万世一系の皇統を守ってきた」のだと主張します。

 古代から現代まで、一度の例外もなく貫かれてきた大原則は男系による継承である。父方をさかのぼれば天皇を持つ皇族だけが皇位継承の資格がある。

 この原則が非皇族による皇位の簒奪(さんだつ)を防ぎ、万世一系の皇統を守ってきた。女系継承は別の王朝の創始に等しく、正統性や国民の尊崇の念が大きく傷つく。

そして「今も親族として皇室と交流のある旧宮家皇籍復帰」を検討するよう主張します。

 今も親族として皇室と交流のある旧宮家皇籍復帰により、皇室の裾野を広げるよう検討してもらいたい。皇族はそもそも一般国民とは異なる特別な地位にある。男女平等の原則にしても、伝統に支えられた天皇の本質を損なうことは、憲法上も許されない。

女性宮家」に対しては、「いわゆる女性宮家の創設は、安定継承にはつながらない」と全否定しています。

 国会の譲位特例法の付帯決議が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」と「女性宮家の創設等」を別の事柄と位置づけた点を強調しておきたい。いわゆる女性宮家の創設は、安定継承にはつながらない。

私は各紙の性質を左から右順に、朝日>毎日>日経>読売>産経と並べてみていますが、ある種の問題、この皇位継承問題や靖国参拝問題などでは、読売や日経は保守「産経」を裏切り左派陣営の論説になびいていきます。

これは読売や日経は世論の動向に極めて敏感である種の日和見主義者なのだと、私は見ています。

今回も世論は圧倒的に女系を支持しています。

朝日新聞の最新の世論調査では、女性天皇や母方だけに天皇の血をひく女系天皇を認めるのかと尋ねたところ、女性天皇については76%、女系天皇は74%が、それぞれ認めてもよいと回答、また、今後の皇室の活動を維持するために、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設については、50%が賛成、37%が反対と答えています。

共同通信の最新の世論調査でも、皇室典範で「男系男子」に限るとした皇位継承を巡り、女性天皇を認めることに賛成は79.6%で、反対の13.3%を大きく上回っています。

(関連記事)

「容認」7割超、女性天皇女系天皇も 朝日世論調査
https://www.asahi.com/articles/ASM4H42NFM4HUTIL00P.html

天皇陛下に「親しみ」82%
女性継承賛成79%、共同通信
https://this.kiji.is/496581864020624481

孤高の保守メディア「産経」は、与論の動向には関係なく、自己の信じる論説を主張し続けるのです。

しかし、過去事例では靖国参拝問題のときもそうでしたが、このパターン(読売・日経が日和見して産経孤立)の場合、政府も世論に日和見することが多いのですが・・・

うーむ。

とりあえず、がんばれ産経、負けるな産経。



(木走まさみず)